著者
遠藤 慎 髙橋 武 佐鳥 新
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.95-98, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)

映像のRGB強度から生体情報を読み取ることにより,非接触で人間の心拍数の測定および感情の識別を試みる本研究は,精神作用(感情)が生体に及ぼす効果, 相関関係を明らかにし, 感情認識機能を確立するという目的に基づく. この機能は,監視カメラや車などに感情認識機能を追加することで潜在的な事故や犯罪を抑止,または防止することも可能である.加えて, 精神医療分野や,生理心理学などの分野で応用されていくことが考えられる.本講演では, 蛍光灯下で被験者をビデオカメラで撮影し,顔の動画を10FPSごとに切り出し, そのRGB画像に写るヘモグロビンやメラニンなどの人体の色素成分から,数値解析ソフトウェアMATLABを用いてプログラムを組み,人体の特徴スペクトルの抽出をおこなった.さらに,得られた特徴スペクトルを用いて心拍数の波形を求め,心拍数の時間変化を数値化(特徴量の算出)をおこなった.また,特徴量を使用し,数値解析ソフトRを用いてクラスター分析をすることにより感情の分類をおこなった.結果,情動喚起(joy, fear)においておよそ70から80%の精度で識別ができた.
著者
遠藤 基
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.208-214, 2022-04-05 (Released:2022-04-05)
参考文献数
15

ミューオンの異常磁気モーメントの研究の歴史は長い.ミューオンのスピン磁気モーメントが初めて測定されたのは,1950年代にコロンビア大学ニーブズ(Nevis)研究所でのことだ.その後,60年以上にわたって研究されてきた背景には未知の素粒子理論の存在がある.素粒子の振る舞いは標準理論と呼ばれる基礎理論によってとてもよく説明することができる.この理論は2012年にヒッグス粒子が発見されたことで確立したが,時代とともに,それでは説明のつかない現象が見つかってきた.そのため,なにか新しい理論が存在するのは確かなのだが,その正体は依然として明らかではない.ミューオン異常磁気モーメントの測定は新しい理論を探索する有力な手段として注目されてきた.とてもよい精度で測定することができるうえに,未知の粒子がつくる量子効果の影響を強く受けるからだ.20年近く前にブルックヘブン国立研究所で行われた実験結果は標準理論の予想と大きく食い違っていた.この結果に多くの研究者は頭を悩ませてきた.はたして素粒子の未知の理論がついに見えてきたのだろうか.それとも実験結果が間違っていたり,標準理論に見落としがあるのだろうか.ブルックヘブンの結果の確認と,さらなる高精度の測定を目指して,2018年にフェルミ国立加速器研究所で新しい実験が開始された.データの解析には長い時間がかかったが,2021年4月7日についに最初の結果が発表された.多くの研究者が待ち望んでいた結果だ.解析に使われたデータ量はまだ多くないが,結果はブルックヘブンの実験を追認するものであった.もう一方の標準理論の予想はというと,じつは,依然として混沌としている.量子論によれば,ミューオンは仮想的に光子(フォトン)を放出して,さらにそのフォトンからクォークをつくり出すことができる.クォークは強い相互作用をもつために計算がものすごく難しい.これまでは,この難しさは実験データを使うことで回避されてきた.つまり,この部分を理論的な関係式を使って別の観測量に置き換えてしまうという方法だ.このアプローチはうまくいっており,異常磁気モーメントの理論値を決める方法として長いこと使われてきた.これで標準理論の計算は決着がついたと思われていたが,最近そこに一波乱あった.Budapest–Marseille–Wuppertalグループが発表した格子QCD計算の結果だ.それによると,クォークの寄与はこれまでの実験データを使った値から大きくずれている.もし本当であれば,ブルックヘブンやフェルミの実験結果と標準理論の間にあった食い違いは消えてしまうというのだ.いまだにどちらの結果が正しいのか決着はついていない.もし従来の結果が正しくて,そしてミューオン異常磁気モーメントの実験の検証も進めば,いよいよ未知の素粒子理論の発見に期待が高まる.これまでに様々な模型が提唱されてきたが,実験と理論の発展によって候補はかなり絞られてきた.興味深いことに,ほとんどの模型は近い将来に実験で検証できるようになることが予想されている.ミューオン異常磁気モーメントのこれからの実験と理論の進展に関心が高まっている.
著者
遠藤 利彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.150-161, 2010-03-30 (Released:2012-03-27)
参考文献数
85
被引用文献数
6 2

ボウルビーの主要な関心は, 元来, 人間におけるアタッチメントの生涯にわたる発達(すなわち連続性と変化)と, 情緒的に剥奪された子どもとその養育者に対する臨床的な介入にあった。近年, 幼少期における子どもと養育者のアタッチメント関係が, 子どもの, アタッチメントの質それ自体を含めた, その後の社会情緒的発達にいかなる影響を及ぼすかということについて, 実証的な知見が蓄積されてきている。本稿では, まず, 児童期以降におけるアタッチメントとその影響に関する実証研究と, 乳児期から成人期にかけてのアタッチメントの個人差の安定性と変化に関するいくつかの縦断研究の結果について, 概観を行う。次に, アタッチメント理論の臨床的含意について, 特に, 無秩序・無方向型アタッチメントとアタッチメント障害, そして, そうした難しい問題を抱えた事例に対するアタッチメントに基づく介入に焦点を当てながら, レビューし, また議論を行う。最後に, 日本の子どもと養育者のアタッチメント関係の特異性をめぐる論争とそれが現代アタッチメント理論に対して持つ理論的含意について批判的に考察し, さらに日本におけるアタッチメント研究の現況が抱えるいくつかの課題を指摘する。
著者
遠藤 美智子 中島 滋 中村 宗一郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.228, 2007 (Released:2008-02-26)

<目的>高齢社会が進む日本と韓国において,近年,欧米化に伴うメタボリックシンドロームの発症率増加が懸念されている。そのため,健康長寿社会の構築を目指した調査が積極的に行われている。両国は同じ海を共有することから日常的に食べる食材も共通することが多いと考えられる。しかし,日本の平均寿命は男女平均82歳であるのに対し,韓国は77歳である。この差異には食べ方や調理法の違いが関連していると考えられる。そこで本研究では,日本と韓国で公表されている最新の国民健康・栄養調査結果をもとに両国の「食」の現状の比較を試みた。 <方法>日本及び韓国で公表されている最新の国民健康・栄養調査の結果(日本2004年,韓国2005年)をもとに,両国の食品群別摂取量および栄養素等摂取量の比較検討を行った。 <結果及び考察>両国の食品群別摂取状態の特長として,日本ではきのこ類,海藻類,乳類,調味料・香辛料類及び嗜好飲料類の摂取量が高く,韓国では種実類,野菜類及び肉類が高いことがわかった。また,日本の調査項目にある補助栄養素・特定保健用食品が韓国では調査対象ではなく,この項目が日本の食生活の中で重要視されていることが示唆された。栄養素等摂取量を比較したところ,韓国ではエネルギー源である炭水化物の摂取量が高く,日本では脂肪摂取量が高いことがわかった。韓国では日本より肥満の出現頻度が高い。この要因として,この炭水化物摂取量の高さが示唆された。ビタミン類では,両国を通じて,VA,VB群およびVC摂取量が高いことが示された。食物繊維では日本は韓国の2倍量近くを摂取しており,一方,ミネラル類では全体的に韓国が高いことが明らかになった。
著者
尾羽 秀晃 遠藤 聖也 松尾 雄司 玄海 亨 長尾 吉輝
出版者
一般社団法人 エネルギー・資源学会
雑誌
エネルギー・資源学会論文誌 (ISSN:24330531)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.162-171, 2022-07-10 (Released:2022-07-10)
参考文献数
32

Increasing variable renewable energies with zero marginal cost cause the decline of wholesale electricity prices and undermine their own value by “cannibalization effect”. While capital costs of renewable energies are expected to decline, their income is also to decrease because of declined wholesale electricity prices. This study integrated GIS (geographic information system) model that assesses business feasibility into an optimal power generation mix model that assess wholesale electricity prices. By developing an integrated model, it is possible to assess potential installation capacity of solar and wind energy by considering both economic rationality and land use restrictions. In the case of Japan, this study revealed that increasing solar and wind energies cause the significant decline of wholesale electricity prices in specific electric network area such as Hokkaido. Even if capital costs of these energies decrease through learning effect, economic potential of installed renewable capacities is significantly limited if business feasibility is considered. Thus, the decline of electricity prices by cannibalization effect can seriously stagnate installation of both solar and wind energies. This study implies that further cost reduction faster than previous trend is needed to realize “subsidy-free” energy sources when cannibalization effect is considered.
著者
遠藤 昌克
出版者
日本薬学図書館協議会
雑誌
薬学図書館 (ISSN:03862062)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.13-19, 2022-04-30 (Released:2022-05-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

オープンアクセス(OA)で出版される論文数は近年急速に増加しており,約9割のジャーナルでOA出版のオプションを提供しているシュプリンガー・ネイチャーでは,ハイブリッドジャーナルの機関購読コストの一部をOA出版コストと組み合わせる転換契約を展開してきた。転換契約は,従来の図書予算への依存度を下げつつ,研究成果の迅速なアクセス,共有および利用を永続的に保証するゴールドOA出版による論文数を飛躍的に増加させる効果的なモデルと言え,研究成果の国際的な発信力を高めるためにも,日本での導入に向け積極的な検討が期待される。
著者
矢後 勝也 平井 規央 小沢 英之 佐々木 公隆 谷尾 崇 伊藤 勇人 遠藤 秀紀 中村 康弘 永幡 嘉之 水落 渚 関根 雅史 神宮 周作 久壽米木 大五郎 伊藤 雅男 清水 聡司 川口 誠 境 良朗 山本 以智人 松木 崇司
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.233-246, 2020-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
11

シカの急増に伴う林床植生の食害により国内で最も絶滅が危惧されるチョウと化したツシマウラボシシジミの保全を目的として,a)保全エリアでの実践的な保護増殖活動,b)保全エリア候補地の探索に関する活動,c)希少種保全と農林業との連携に関する活動,の大きく3つの課題に取り組んだ.保護増殖活動では,環境整備やシカ防護柵の増設により保全エリアの改善を試みた他,現状の環境を把握するためにエリア内の林床植生および日照・温度・湿度を調査した.今後の系統保存と再導入のために越冬・非越冬幼虫を制御する光周性に関する実験も行った結果,1齢幼虫から日長を感知する個体が現れることが判明した.保全エリア候補地の探索では,本種の好む環境を備える椎茸のホダ場30ヶ所を調査し,良好な環境を保持した11ヶ所のホダ場を見出した.保全と農林業との連携では,アンケート調査から多くの地権者や椎茸農家の方々は本種の保全に好意的なことや,本種を育むホダ場で生産された椎茸のブランド化に賛成で,協力可能であることなども明らかとなった.
著者
片岡 良治 遠藤 斉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.37-45, 2000-05-15
参考文献数
11
被引用文献数
8

本論文では,MPEG符号化情報から直接的に求められる映像の特徴情報を用いて,映像に含まれる類似シーンを精度良く検出する方式について述べる.ここでいう類似シーンとは,例えば野球中継の映像に含まれる個々のホームランシーンのように,理論的に同じ意味を持つが物理的な構成が異なるシーンを指す.類似シーンを精度良く検出できれば,それらに一括して同じタグ情報を付与できるようになり,映像データベースのインデクシング作業の効率化が図れる.提案法は,特にスポーツ映像へのタグ付け処理の効率化を狙いとしており,スポーツ映像の類似シーン共通するカメラワークの存在に着目してシーン検出を行う.また,音声認識の分野で提案された連続DPマッチングをカメラワーク情報の照合処理に適用することで,類似シーン毎のシーン長の違いに柔軟に対応する.実際の野球中継の映像を用いて実験した結果,提案法は従来法よりも高い適合率と再現率を提供できることが明らかとなった.This paper describes a similar detection method using feature information directly obtained from MPEG encoded video data. Scenes are regarded as similar ones when they have the same logical meaning while each of them conteins sifferent physical data. For instance, all home run scenes in a baseball program have the same logical meaning of "home run"while each of them contains different image data. Similar scene detection is effective for eliminating trouble in making an index of a video databese since it makes it possible to assign the same keyword to all derected scenes at once. The proposed method derects similar scenes based on their camera work similarity. Its main application is sports scene detection since similar sports scenes are generelly captured with the same camera work. To cope with the difference of scene length among similar scence, it adopts the continuous DP matching algorithm to compare camera work features obtained from MPEG encoded video data. It is evaluated using a broadcastung baseball prigram. The results show that it can provide higher precision and recall rates than traditional methods.
著者
石埼学 遠藤比呂通編
出版者
法律文化社
巻号頁・発行日
2012
著者
遠藤 俊郎 星山 謙治 安田 貢 斉藤 由美
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.25-34, 2007

本研究は、児童遊びの実態と共に心理的発達に与える影響を、特に攻撃性・社会性に着目して検討することを目的とした。今日、児童による暴力、犯罪などの様々な問題が増え、深刻化されている現代社会において、児童の実態を見直す必要性がある。特に児童の遊びが変容しているといわれる中で、その遊びの変容が児童の心理的発達にどのように影響を与えているかに焦点を当てた。現代の児童の生活実態を把握することで、学校教育における児童理解の一参考になると期待される。児童は、主として外遊びよりも内遊び(室内遊び) を好み、遊ぶ集団の人数も少数化しているという現状が見受けられた。テレビゲームやマンガを読むといった一人で行なう内遊びをする児童が多くなっていることも特徴として挙げられる。また、内遊びは児童の攻撃性を高める傾向が、外遊びは社会性を高めるという結果が示された。
著者
遠藤喜道 編
出版者
奎文房
巻号頁・発行日
1874
著者
村本 由紀子 遠藤 由美
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.213-233, 2015-03-20 (Released:2015-06-07)
参考文献数
44
被引用文献数
2

This micro-ethnographic research focuses on a traditional custom on Toshi Island, in Japan. When first-born sons on the island graduate from junior high school, they form a small group of neya-ko (quasi-brothers) and sleep over at the house of their neya-oya (quasi-parents) every night until they reach the age of 26. They maintain the quasi-family relationship and help each other all their lives. Why does the neya custom still continue on this island, while most similar customs have already disappeared in other parts of Japan? To answer this question, we conducted participant observations and unstructured interviews. The results suggest that the ecological environment of the island has exerted an important influence on the neya custom. In spite of recent drastic social and economic changes in the islanders’ lives, the neya custom still plays a key role in building sustainability in the community. Based on these findings, we discuss how the multi-layered environments of the island interact with this specific custom that has been fostered through the years.
著者
石森 洋行 遠藤 和人 山田 正人 大迫 政浩
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.39-49, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
11
被引用文献数
2

放射性物質に汚染された廃棄物の焼却灰はその濃度によって埋立方法が異なるものの,放射性物質の拡散防止対策として土壌吸着層の設置は義務付けられており,その性能評価は重要である。本研究では,放射性セシウムに対する土壌や廃棄物,吸着材等の吸着特性を把握するために,放射能汚染飛灰から作製した4 種類の飛灰溶出液を溶媒として,22種類の試料を対象に吸着試験を行った。その結果より分配係数を評価し,その影響因子を検討した。また試料に吸着した放射性セシウムの脱着特性を調べるために,純水,1 mol/L 酢酸アンモニウム,人工海水,飛灰溶出液を溶媒とした溶出試験を行い溶出率を評価した。
著者
本田 麻希子 遠藤 麻貴子 中釜 洋子
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.269-286, 2012-03-10

In this article, we have reviewed the research on divorce and policy interventions for divorced families conducted during the past decade in Japan and in the United States, and examined the future prospects of family support practices. In Japan, because case study and interview have been two frequently adopted methods, it is necessary in the future to focus more on finding out general trends and evidences for the impact of divorce through longitudinal studies or with larger samples. In the U.S., although there exists a numerous research on divorce impact, gaps still remain in the search for factors which differentiate children's adjustment following parental divorce. While the U.S. make active attempts in openly providing psycho-educational support program designed in accordance with research results, interventions in Japan remain limited as they are often in small scale based on the U.S. models. The need of developing programs that are tailored to fit Japanese culture that target larger numbers of divorced families are stressed in this article.