著者
川岡 勉 片桐 昭彦 新谷 和之 古野 貢 遠藤 ゆり子 佐々木 倫朗 野田 泰三
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の活動の柱は、全国の守護の受発給文書の調査・収集作業であり、活字史料の検索・集約と並んで、対象史料を収蔵している研究機関・各種施設・個人などへの出張調査を分担して行った。こうして集めた史料をもとに、国別または守護ごとのデータベースを作成し、これを収録したCD―ROMを添付した報告書を作成した。データベースを読み解く上で便宜を図るために、手引きとなる解説文も掲載した。本研究のもう1つの活動の柱は、各自が調査・収集した史料やその分析結果を持ち寄り、共同で検討を加える研究会・史料検討会であり、年に2~3回の割合で会合をもった。途中でシンポジウムも開催して研究成果を広く公開・発信した。
著者
岩田 雅史 戸田 眞佐子 中山 幹男 辻山 博之 遠藤 済 高橋 雄彦 原 征彦 島村 忠勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.487-494, 1997-06-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
20
被引用文献数
9 11

紅茶エキスによるうがいが, インフルエンザを予防できるかどうかを検討した.実験は, 平成4年10月18日から平成5年3月17日までの5カ月間行なった.まず同一職域集団297人を2群に分け, 実験群151人は, 原則として8時と17時の2回, 1回約100ml程度の紅茶エキス (0.5W/V%) でうがいをした.対照群146人は, 特に何も行なわなかった.実験期間中にインフルエンザ症状を呈した者56人の咽頭ぬぐい液からウイルスを分離し抗原分析をした結果, A型ウイルスH3N2が2株およびB型ウイルス10株が分離された.感染の判定は, 実験開始時および終了時に採血を行い, A/Yamagata/120/86 (HIN1), A/Saitama/55/93 (H3N2), B/Saitama/5/93と赤血球凝集抑制反応を行ない, 抗体価が4倍以上上昇したものを感染とみなした.その結果, 感染者は実験群35.1%に対して対照群では48.8%で, 有意な差 (p<0.05) が認められた.この結果, 紅茶エキスによるうがいは, インフルエンザを阻止しうる可能性が示唆された.
著者
遠藤 匡俊
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.19-37, 2009 (Released:2011-12-08)
参考文献数
55
被引用文献数
2 1

集団の空間的流動性は,おもに移動性の高い狩猟採集社会で確認されてきたが,移動性の程度と集団の空間的流動性の程度の関係が必ずしも明確ではなかった。本研究では,定住性が高いアイヌを事例に,定住性の程度と流動性の程度の関係を分析した。1856∼1869年の東蝦夷地三石場所におけるアイヌの27集落を対象として集落の存続期間を求めた結果,最低1年間,最高14年間,平均4.4年間であった。全期間中に消滅した集落は18,新たに形成された集落は14,そして14年間ずっと存続し続けた集落は3であった。分裂の流動性が高い集落(S<0.82)および結合の流動性が高い集落(J<0.79)は,いずれも集落の存続期間の長さには関わりなく多くみられた。このように,集落の空間的流動性の程度は集落の存続期間の長さとは関係しなかった。消滅した集落の分裂の流動性は存続し続けた集落よりも低く,新たに形成された集落の結合の流動性も存続し続けた集落よりも流動性が高いという傾向はとくに認められなかった。この結果は,アイヌのように移動性の低い狩猟採集社会だけでなく,移動性の高い狩猟採集社会においても,移動性の程度と流動性の程度はあまり関係がなかったことを示唆する。
著者
中村 年子 遠藤 仁子 本間 恵美 平光 美津子 渡辺 久美子 Toshiko Nakamura Hitoko Endo Emi Honma Mitsuko Hiramitsu Kumiko Watanabe
雑誌
東海女子短期大学紀要 = The journal of Tokai Women's Junior College (ISSN:02863170)
巻号頁・発行日
no.12, pp.47-51, 1986-03-31

1.正月用餅と鏡餅の入手方法は,自宅が最も多かったが,正月以外の餅では,店頭購入が最も多く,梶本らの調査の賃搗き,自宅,店頭購入の順とは異っていた。店頭購入では,正月用餅・鏡餅とも餅菓子屋がマーケットより遙に多いが,正月以外の餅はマーケットでの入手が多かった。自宅については,きね搗きは少なく,特に正月以外では電気餅搗き器の使用が圧倒的に多かった。このことは最近の電気餅搗き器の普及によるものと考えられる。2.餅の嗜好度は,嫌いが1.6%で一般に好まれていた。3.正月3が日の餅の喫食量は,最少量37g,最大量705gで個人差が多かった。1日平均喫食量は74.1gであり,1972年の短大生の喫食量の調査における125gの約60%に当り,かなりの減少が見られた。4.餅は白餅の角餅が圧倒的に多く,特に正月用では93%を占めていた。正月以外では行事に因んで餅を食することもあって,丸餅も20%使用されていた。5.餅の食べ方については,一般に朝食に喫食されることが多い。正月用餅は,雑煮が圧倒的に多く,正月以外では焼き餅が最も多かった。雑煮については,元旦が82%で2日は約半数に減った。元旦でさえ食さない者が18%もあり,雑煮を全然食さない者も11%あった。また元旦の朝から焼き餅やぜんざいを食している者もあって,若い世代の正月の雑煮離れの傾向が僅かながら見られた。この地方の雑煮は,澄まし仕立ての汁に角餅を入れて煮込み,小松菜とけずり節を添えるといったものが一般的であった。正月以外の餅は約2/3の者が喫食してはいるが,いつも食べるは0で,時々食べるも僅か10%であり,短大生にとって餅は好きな食品ではあるが,やはり正月のものであり,法事,節句,祭り等の行事に因んで喫食していることがわかった。
著者
遠藤 史郎 徳田 浩一 八田 益充 國島 広之 猪俣 真也 石橋 令臣 新井 和明 具 芳明 青柳 哲史 山田 充啓 矢野 寿一 北川 美穂 平潟 洋一 賀来 満夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.50-56, 2012 (Released:2012-03-23)
参考文献数
16
被引用文献数
3

2011年3月11日の東日本大震災に伴う宮城県名取市館腰避難所においてインフルエンザアウトブレイクが発生した.同避難所では200名の避難者が共同生活を営んでおり,40%が65歳以上の高齢者であった.初発例発生から5日目の4月8日当避難所の巡回診療を行っていた名取市医師会会長よりインフルエンザアウトブレイクに対する介入要請があり,対応策構築のために同避難所へ介入した.介入時既に,non-pharmaceutical interventions: NPIとして,発症者全員の隔離が行われていたが,隔離以外の手指衛生をはじめとするNPIは十分には行われていなかった.一方で,計22名への予防投与が行われていた.したがって,NPIを中心とした基本的対策の強化(ⅰ:マスク着用率の向上,ⅱ:手指衛生の適切な実施の啓発,ⅲ:換気の実施,ⅳ:有症状者の探知および発症者家族のモニタリング強化,ⅴ:発症者の隔離)を現場スタッフと確認し,一方,現場医師と予防投与は基本的対策を徹底したうえで,なお,感染が拡大した場合のみ考慮すべき対策であること,また,その範囲・適応などに関して協議した.4月13日,2度目の介入を行い新規発症者は18日の1人を最後に終息した.避難所におけるインフルエンザアウトブレイクは過去にも報告が少なく,初めての経験であった.予防投与はあくまで補助的な方策であり,アウトブレイクの規模や感染リスクを考慮し,さらにNPIの強化徹底を行った上で行うことが必要であると考えられた.
著者
斎藤 公明 遠藤 章
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.585-602, 2014-12-15 (Released:2014-12-27)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

環境中における適切な外部被ばく線量評価に必要な基本情報を提供する。まず,環境中に分布する典型的な線源から放出されるγ線の基本的な性質について説明するとともに,この性質を考慮して行われた被ばくシミュレーションにより得られた,広い年齢層に対する線量換算係数をまとめて紹介する。さらに,様々な要因による被ばく線量の変動の様子,また,空間線量率の測定値と被ばく線量の関係についても議論する。
著者
西山 昴志 當間 愛晃 赤嶺 有平 山田 孝治 遠藤 聡
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:21888701)
巻号頁・発行日
vol.2020-CVIM-220, no.4, pp.1-3, 2020-01-16

日本においてアニメの歴史は長くそれに伴い様々な変化を経ている.例えば 1980 年代はセルアニメーションの作品が多かったが,現在ではコンピュータの発展に伴い,ほとんどがコンピュータアニメーションとなっている.製作方法の変化や技術の発展に伴い,アニメ作品の画風 (絵タッチ,背景,色合い等) も同様に変化していると考えられる.画風を変換する研究分野においては,芸術絵画や写真の画風を別の画風に変換する方法が提案されている.そこで,対象画像をアニメの静止画像とし,セルアニメーションが主流であった年代のアニメ画像を,現代のデジタル作画のアニメの画風に変換するタスクを考えた.本研究では,Image-to-image の手法の 1 つである CycleGAN をベースにアニメ画像の画風変換結果を報告する.
著者
蝦名 克彦 矢部 哲雄 早坂 治敏 植木 保吉 遠藤 禎一
出版者
Japan Society of Engineering Geology
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.160-173, 1988-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
6

The Seikan Tunnel is located 100 meters below the seabed. The maximum depth of the sea above the tunnel is 140 meters, and there are strong currents of up to 8 knots.Because of the considerable depth and the strong currents, there were limits to the types of surveys which could be conducted from the sea surface.This was especially true of the central area of the straits, where both the number and precision of surveys were inadequate.Thus, it was necessary to supplement these surveys with surveys conducted from within the tunnel.The surveys were based mainly on pilot boring and daily investigation of the face.It is believed that the Seikan Tunnel project was the first project in which these methods were used on a daily basis.This report describes how underground geological surveys were conducted in the under sea tunnel during construction, explaining both the method employed and the results obtained. Furthermore, reconsiderations and suggestions from both the parties which conducted the geological survey and the parties which used the data from these surveys are also included.
著者
水町 海斗 中山 透 手良村 知功 遠藤 広光
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.21-027, (Released:2022-02-08)
参考文献数
34

The parazenid genus Cyttopsis Gill, 1862 includes two valid species, C. rosea (Lowe, 1843), known from the Atlantic and Indo-west Pacific Oceans, and C. cypho (Fowler, 1934) restricted to the eastern Indian and western Pacific Oceans. Around Japan, the former species is common, whereas the latter has not been recorded to date. However, two Cyttopsis specimens [51.6 and 71.8 mm standard length (SL)] collected from Tosa Bay and Enshu-nada, Japan in 2008 and 2019, respectively, have been identified as C. cypho. In addition to previous means of distinguishing between the two species, a faint dark lateral spot posteriorly on the body (absent in C. rosea) and fewer lateral-line scales (55–64) in C. cypho (vs 73–82), the following additional diagnostic characters were found: interspace between spines on 4th and 5th abdominal scutes very narrow (C. cypho) vs. wide (C. rosea); orbit diameter 13.6–16.6% vs. 14.7–19.1% of SL; interorbital width 5.8–6.6% vs. 5.8–8.0% of SL; snout length 21.1–27.4% vs. 17.8–23.3% of SL; and mandible length 22.6–25.6% vs. 22.1–26.9% of SL. The two specimens, representing the first Japanese records of C. cypho (for which the new standard Japanese name “Ittenkagomatodai” is proposed), extend the northern range of the species from off northern Mindanao Island, Philippines (type locality).
著者
岩田 雅史 戸田 眞佐子 中山 幹男 辻山 博之 遠藤 済 高橋 雄彦 原 征彦 島村 忠勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.487-494, 1997
被引用文献数
11

紅茶エキスによるうがいが, インフルエンザを予防できるかどうかを検討した.実験は, 平成4年10月18日から平成5年3月17日までの5カ月間行なった.まず同一職域集団297人を2群に分け, 実験群151人は, 原則として8時と17時の2回, 1回約100ml程度の紅茶エキス (0.5W/V%) でうがいをした.対照群146人は, 特に何も行なわなかった.実験期間中にインフルエンザ症状を呈した者56人の咽頭ぬぐい液からウイルスを分離し抗原分析をした結果, A型ウイルスH3N2が2株およびB型ウイルス10株が分離された.感染の判定は, 実験開始時および終了時に採血を行い, A/Yamagata/120/86 (HIN1), A/Saitama/55/93 (H3N2), B/Saitama/5/93と赤血球凝集抑制反応を行ない, 抗体価が4倍以上上昇したものを感染とみなした.<BR>その結果, 感染者は実験群35.1%に対して対照群では48.8%で, 有意な差 (p<0.05) が認められた.この結果, 紅茶エキスによるうがいは, インフルエンザを阻止しうる可能性が示唆された.
著者
遠藤 智比古
出版者
日本英学史学会
雑誌
英学史研究 (ISSN:03869490)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.23, pp.41-55, 1990 (Released:2010-05-07)
参考文献数
26

Most current dictionaries say that “Kirin” is a correct Japanese translation of giraffe, which is an Arabic word meaning “fast walker.” Japanese and Chinese words usually use the same Chinese characters, but the Chinese word for giraffe is Changjinglu (長頸鹿) “long-necked deer”, whereas Kirin is a mythical animal that traditionally appeared in connection with the arrival of a saint.In the Ming dynasty, Kirin was used in the meaning of giraffe in China, some of which passages the writer found in 'The History of Ming (明史).'But as more people saw giraffes, they became more aware of the differences between Kirin and giraffe.In 1860, Gempo Mitsukuri tried translating the Latin name Camelopardalis (camel-panther) into 'Hyoda.'But in 1907 when the first giraffe was actually imported to Japan and called a Kirin by Dr. Chiyomatsu Ishikawa (first director of Ueno Zoo), “Kirin” became the official word in Japan.
著者
伊藤 仁久 大西 雄己 三澤 紅 藤阪 芽以 友廣 教道 松川 哲也 遠藤 雄一 梶山 慎一郎 重岡 成
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.14-20, 2023-07-15 (Released:2023-07-18)
参考文献数
35

精油の皮膚の健康と美に関する機能性を探索することを目的に,アロマテラピーの分野で汎用される精油30種の終末糖化産物(Advanced Glycation End Products : AGEs)産生抑制およびチロシナーゼ阻害効果を評価した。その結果,ローズマリー(Rosmarinus officinalis)精油にAGEs産生抑制効果を見いだした(IC50:124 µg/mL)。また,メリッサ(Melissa officinalis)精油にチロシナーゼ阻害効果が認められた(IC50:276 µg/mL)。ローズマリー精油はAGEs産生抑制に基づくアンチエイジング効果,メリッサ精油はチロシナーゼ阻害に基づくメラニン産生抑制効果をもつ可能性があり,今後の香粧品あるいは機能性食品の分野での活用が期待される。
著者
遠藤 きよ子 高橋 まり子 功刀 恵美子 野口 和孝 佐藤 政男
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.43-50, 2014-06-10 (Released:2015-08-11)
参考文献数
20

The Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (FDNPP) Accident happened in Fukushima prefecture in March, 2011 and various efforts have been carried out to prevent health damage, including thyroid cancer, caused by radioactive-iodide. In this present report, we tried to discover whether stable-iodide for the prevention against the development of thyroid cancer was properly administered to radioactive-iodide-exposed persons or not. Since pharmacists play an important role in the treatment of stable-iodide, we investigated how the pharmacists in Fukushima contributed to the treatment of stable iodide in the FDNPP accident. In addition, we introduce a new revised method for the treatment of stable iodide published by the Nuclear Regulation Authority, discuss the important role of pharmacists in the Nuclear Power Plant Accident, and propose possible ways of preparation to protect the health of citizens.
著者
百瀬 響 遠藤 匡俊
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、平成25~28年度科研費(挑戦的萌芽研究)「北海道・東北を中心とする北方交易圏の理論的枠組み構築のための総合的研究」(研究代表者 百瀬響、課題番号25580150)での成果を発展させ、東北・北海道の日本海沿岸地域(石狩・余市地方)・樺太における「北方交易圏」の交流の実像を通時的に明らかにする。近世から近代を通じ、東北-樺太-北海道日本海沿岸地域に存在した交易圏と婚姻圏に関して、各地域の博物館・アイヌ系住民らと連携し、物質文化・古文書・オーラルヒストリー等の史資料から、地理学・歴史学・文化人類学等諸分野の手法を用い、かつてこれらの地域に存在した交易・婚姻圏の実態を探る。
著者
豊田 有美子 奥津 史子 松川 高明 草野 寿之 根来 理沙 濵坂 弘毅 眞木 信太郎 遠藤 舞 松井 藍有美 大川 周治
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.115-129, 2014 (Released:2015-04-01)
参考文献数
69
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,味覚機能検査の全口腔法とVisual Analogue Scale(以下,VASと略す)を併用し,全ての被験者が認知し得る最低濃度を基本味ごとに1種類選定することにより,1味質につき1種類のみの検査液を応用した,4基本味における味覚機能スクリーニング検査法を構築することである. 実験1では,被験者として健常有歯顎者84名を選択し,すべての被験者が認知し得る最低濃度を基本味ごとに1種類選定するための検査濃度設定について検討を行った.また,その時に感じた味の強さに関してはVASによりスコア化し(以下,味覚VAS値と略す),平均値を算出した. 実験2では,被験者として実験1で選択した被験者の中から4名を無作為に抽出し,4基本味における日内変動および日間変動について検討を行った. 実験3では,被験者として健常有歯顎者25名を選択し,実験1で求めた濃度の検査液を用いて味覚機能検査を実施し,本研究の味覚機能スクリーニング検査法としての可能性について検討を行った.その結果,全員が味を認識できた最低濃度は,甘味0.075 M,塩味0.2 M,酸味2.0×10-3M,苦味7.5×10-5Mとなり,すべての被験者が認知し得る最低濃度を基本味ごとに1種類選定し得ることが示された.また,本研究の味覚機能スクリーニング検査法を用いることにより,被験者25人中7人(28%)に味覚障害が認められた.以上より,全口腔法にVASを併用した本法が若年者における味覚機能のスクリーニング検査法として有用となる可能性が示唆された.