著者
遠藤 直樹
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.23-36, 2019-11-01 (Released:2020-01-07)
参考文献数
78

菌根性きのこはマツ科やブナ科などの森林樹木の根系上に外生菌根を形成し,宿主植物と相利共生するきのこ類である.本菌群はそのような生態学的重要性に加え,マツタケやトリュフに代表される食用価値の高い菌種を多く含む経済学的重要性を有した菌群である.しかし,菌根性きのこは腐生性きのこ類と比較して難培養性であり,様々な基礎研究や応用研究の材料となる菌株がごく限られた分類群でしか得られておらず,分類や生態に未解明の要素が多い.本稿では,菌根性きのこ類の中でも特に林産資源として重要な食用種を多く含むAmanita属(タマゴタケ類),Boletus属(ヤマドリタケ類),Tricholoma属(マツタケ),およびHygrophorus属(ユキシロ)を対象に,筆者が取り組んできた分類や生態,および培養技術の開発に関する一連の研究について論じた.
著者
遠藤 薫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.118-121, 2016-01-15

いま「カワイイ」文化に世界が注目している.なぜ,「カワイイ」文化に人びとは惹きつけられるのか.「カワイイ」といった感性的価値は,単なる表層的な感覚,社会や人生に重大な意味をもたない残余的な事柄と扱われがちである.しかし,本稿では,日本の「カワイイ」文化の系譜をたどることによって,それが通時的不変性と経時的可変性性の双方によって構成されていること,およびその本質が弱者や対抗者の包摂と異文化間のハイブリッドにあることを明らかにし,グローバリゼーション時代におけるその社会的意義について考察する.
著者
遠藤 辰雄
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.12-18, 1986-03-31 (Released:2016-11-18)

We describe the fundamental general features of the milieu of correctional institutions, the first reactions of criminals and delinquents in confinement situations, and their later adjustment to those situations. The first reactions include: relief that the trial is over, hurt and sorrow, wonderment about his or her own sanity, self-pity, anger or resentment toward individuals and society in general, determination to be revenged; despair, defeat; helplessness, suicidal thought, and determination to reform. The later adjustment includes the following types: (1) wholesome; (2) pseudowholesome, (3) maladjusted (including following subtypes-aggressive hostility, compensation, projectin, psychological escape, and actual physical escape), and (4) abnormal reaction (the so-called prison psychosis or prison reaction). But this first reaction and the later adjustment types may be very different in concentration camps or locked mental hospitals.
著者
遠藤 美紀子 村上 和代 楢本 和美 古賀 江利加 恒川 浩二郎 小澤 幸泰 加藤 秀樹 湯浅 典博
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.70-77, 2018-01-25 (Released:2018-01-27)
参考文献数
18

血液製剤の廃棄量を減少させることはその有効利用のために重要である。1998年から2015年までの当院における血液製剤廃棄量を減少させるための取り組みと,廃棄率,廃棄要因を検討し,最近の廃棄要因の特徴を明らかにした。廃棄率は18年間で0.24%から0.04%に減少した。職種別では,医師と検査技師が要因による廃棄量が減少していた。手順別では,近年,運搬と取扱い要因の廃棄量が増加していた。血液製剤廃棄量を減少させるために,輸血療法に関する正しい知識を輸血療法に携わる医療スタッフ全体で共有することが重要である。
著者
遠藤 由美
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.53-62, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
25
被引用文献数
5 4

人はしばしば,自己の主観的な状態が他者に対して露わになったと信じる傾向があり,これは透明性錯覚として知られている。本研究では,自己紹介場面での緊張においてこの透明性錯覚が重要な役割を果たし,また感じている緊張の関数として透明性推測が作り出される,という仮説を検討した。人前で話す時に緊張を強く感じる人は,そうでない人に比べて,聴衆に対してその緊張が明らかなものとして伝わったと信じる程度が強かった(研究1)。対人不安特性の強い人においても同様のことが示唆された(研究2)。研究3では,これらの結果を再現し,さらに動機的説明ではうまく行かないことを立証した。最後にこれらの結果に対して,透明性錯覚と係留・調整リューリスティックスの観点から議論が加えられた。
著者
草野 寿之 奥津 史子 松川 高明 豊田 有美子 根来 理沙 頼近 繁 濵坂 弘毅 眞木 信太郎 遠藤 舞 松井 藍有美 大川 周治
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.145-156, 2013 (Released:2014-01-30)
参考文献数
53
被引用文献数
4 2

本研究の目的は,純音ないし音楽による聴覚刺激が味覚機能,特に甘味と塩味に対する味覚の感受性に及ぼす影響を明らかにすることである. 実験1では,被験者として健常有歯顎者22名を選択し,純音が甘味および塩味に対する味覚閾値に及ぼす影響について検討を行った.聴覚刺激に用いた被検音は10Hz,4,000Hz,20,000Hzの3種類の純音とし,音の大きさは50dBに設定した.味覚閾値の検査に用いる味質は甘味(スクロース)と塩味(塩化ナトリウム)の2種類とし,各味質の濃度は0.005M,0.010M,0.050M,0.100Mとした.聴覚刺激の負荷は15分間とし,味覚閾値の検査は全口腔法を用いた. 実験2では,被験者として健常有歯顎者22名を選択し,音楽が甘味および塩味の味覚に及ぼす影響についてVASを応用して検討を行った.聴覚刺激に用いた被検音には,3種類の音楽(1)癒しのモーツァルトBEST,(2)refine 身近にできる音楽療法,(3)究極の眠れるCD を用いた.味覚閾値の検査は実験1と同様に行い,さらに自覚した味の強さをVASによりスコア化し,味覚の感受性として評価した.また,今回用いた音楽の嗜好に関するアンケート調査を同一被験者に行い,音楽刺激前と後との間における味覚VAS値の差を嗜好別に算出し,音楽の嗜好が味覚の感受性に及ぼす影響についても検討した. その結果,純音による聴覚刺激では味覚機能への影響は認められなかったが,音楽による聴覚刺激では味覚機能,特に甘味における味覚の感受性に影響を及ぼすことが示唆された.さらにその音楽に対する嗜好は甘味における味覚の感受性に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
遠藤 求
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.033-035, 2016 (Released:2016-01-27)
参考文献数
10
著者
遠藤 匡俊
出版者
歴史地理学会
雑誌
歴史地理学
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.48-59, 2002-01-01
著者
高屋 快 鈴木 龍児 梅邑 明子 鈴木 雄 遠藤 義洋 北村 道彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2725-2728, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
13

症例は76歳,男性.平成18年10月12日17時頃温泉のサウナ内で倒れているところを発見され救急車にて当院搬送された.来院時体温38.2℃,血圧126/70mmHg,脈拍147回/分,意識レベルJCS 300点,全身皮膚にI度熱傷あり.CT,MRIなどで意識障害の原因を検索したが明らかなものは認められなかった.全身管理目的にて当科入院となり2病日には意識レベル回復し経口摂取開始したが,3病日朝より39℃を超える発熱と意識障害(JCS 20~30点)をきたし,採血にてDICと判断し中心静脈カテーテルを留置しメシル酸ガベキサート持続静注を開始した.また肝機能障害も認めた.意識レベル,凝固能・肝機能はともに日数経過とともに改善認め,6病日より経口摂取開始,7病日にメシル酸ガベキサート投与中止し中心静脈カテーテルも抜去した.その後皮膚の所見も軽快し16病日に独歩退院となった.サウナによる熱中症に伴う意識障害の報告は散見されるが,本症は遅発性に意識障害,DIC,肝機能障害をきたしたもので,興味深い病態と考えられた.
著者
遠藤 瞭太 後藤 春彦 山村 崇
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1083-1088, 2014
被引用文献数
1

昨今我が国を含めた先進諸国においては、社会の成熟とともに知識重視社会に向かいつつあり、教育インフラの重要性が高まっている。本研究では、サードプレイスで学習をする都市生活者を調査・分析したところ、以下の3点が結果として明らかになった。1)サードプレイスで学習する際の意思決定プロセスには、「学習を目的として場所を選択する場合」と「場所を選択する事を目的とする場合」の2種類がある。居住地や就学先周辺では、前者が多くみられた。2)サードプレイスで学習する理由には、物的な側面の動機と心的な側面の動機がある。このうち、心的な動機は、学習意欲に対して強い影響を与えている。3)サードプレイスで学習する人は「人がいる」「一人になれる」という2つの対極的な欲求を持っている。それを満たし、かつ求める物的環境の快適性を有する場所として、サードプレイスが利用されていた。以上のようにサードプレイスは都市における学習場所として価値を有していた。
著者
柴田 靖 遠藤 聖
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.150-153, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
7

症例は69歳の男性で,刑務所服役中に自室で意識障害で発見された.全失語,右片麻痺を認め,CT/MRIでは左中大脳動脈領域脳梗塞であった.保存的加療により意識障害,片麻痺はやや改善したが,失語は残存した.服役中であり,家族へは連絡せず,常に刑務官により拘束され,放射線検査以外はリハビリも個室内で行った.保険加入はなく,全額自費,刑務所負担であり,治療内容は病院に任されたが,転院は刑務所の都合で決められた.刑事収容施設および被収容者等の処遇に関する法律には受刑者も適切な医療を受ける権利があるとされるが,入院などは刑務所所長の権限とされている.本症例の医療倫理を考察すると,患者本人に意識障害,失語があるため,自己決定権が行使できず,利益,無害,正義も入院中は病院任せで,転院では倫理は守られていなかった.受刑者では発症前の本人の希望,living willの確認記録,受刑者に対する倫理的対応の診療ガイドライン整備が必要であろう.
著者
遠藤 剛史
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.80-88, 2020-01-11 (Released:2020-01-11)
参考文献数
40
被引用文献数
1

永年の間,多くの革新的なアイディアによって発展してきた日本料理業界において,日本人の食嗜好も変わっていくなか,その技術を将来に効果的な方法で普及・伝承していくことが必要とされている。また,グローバリゼーションの進展により,海外へ向けて普及させていく方法論も確立が急務である。経営学において,伝統的な日本料理を取り上げた研究は多くはないが,その研究は「食べる」という行為の性格上,多くの学問分野に広く渡っている現状がある。本論では日本料理産業内の職業料理人の組織という視座に基づき,料理の構造化,組織と技術伝承,必須食材の供給という3つの視点から先行研究のレビューを行っていき,日本料理の普及・再現について検討すべき課題の抽出を試みるものである。
著者
藤田 大誠 青井 哲人 畔上 直樹 遠藤 潤 菅 浩二 森 悟朗 藤本 頼生 佐藤 一伯 岸川 雅範 今泉 宜子 福島 幸宏 齊藤 智朗 昆野 伸幸 柏木 亨介 北浦 康孝 河村 忠伸 吉原 大志 吉岡 拓
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、「公共空間」や「公共性」をキータームとして、神道史と都市史・都市計画史、地域社会史の分野などを接続することで、具体的な史料に基づく新たな「国家神道」研究を試みた。神社境内やその隣接空間を「公共空間」として捉え、新旧〈帝都〉である東京と京都との比較の観点を導入することによって、寺院とは異なる神社独自の「公共性」の歴史や、神社の造営と環境整備に係わる人的系譜やその相関関係について解明した。
著者
原口 浩一 遠藤 哲也 阪田 正勝 増田 義人 Mark SIMMONDS
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.287-296, 2000-08-25 (Released:2008-01-11)
参考文献数
25
被引用文献数
17 27

1999年, 全国6都市で販売されていた鯨肉製品61点について, 重金属 (水銀, カドミウム, 鉛) 及び有機塩素系化合物 (PCBs, DDTs, HCHs, HCB, dieldrin) の汚染実態調査を行った. ハクジラの赤身肉では水銀汚染が, ハクジラ及び北太平洋産ミンククジラの脂身にはPCB及び有機塩素系農薬の汚染が顕著にみられた. 鯨肉の多食によってこれらの汚染物質の摂取許容量を超えることも考えられるので, 食品としての安全性を再検討する必要がある.