著者
淺野 敏久 金 枓哲 伊藤 達也 平井 幸弘
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.277-299, 2009-07-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
21
被引用文献数
10 6

韓国全羅北道のセマングム地域で大規模な干拓事業が行われている.同国最大の干潟を失うことや事業目的が不明確な公共事業の必要性への疑問などから,セマングム干拓問題は大きな社会問題となった.本稿ではこのセマングム干拓問題を事例として,地域開発に関連した環境問題論争が持つ空間的な特徴を,市民・住民運動団体の主張に焦点を当てて検討した.新聞記事による出来事の整理と5年間の断続的な現地調査(環境運動関係者への聞取り)に基づいた分析の結果,全国・道・地区という三つの空間スケールごとの「セマングム問題」の存在と,その時間的な変化が明らかになった.また,異なる空間スケールを射程に入れた環境問題の争点が,地域的に異なる論争の場において複層的に存在しており,全体としての「セマングム問題」は,各運動体の事情や思惑に応じて,交流や連帯という手段によって,構成・提起され続けていることも確認した.
著者
金 玉実
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.332-345, 2009-07-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
14 15

中国におけるアウトバウンド観光は,経済発展と規制緩和によって大きく発展しており,日本を訪れる中国人観光客も著しく増加している.本研究の目的は,日本における中国人旅行者の観光行動にみられる空間的特徴を明らかにすることである.中国の旅行会社が企画する訪日パッケージツアーの旅程を分析した結果,空間的には,東京と大阪を結ぶ中心軸が明らかになり,両都市における買物と名所見物が観光行動の中心となっている.これに,大都市近郊の温泉や火山,景勝地などを周遊する観光行動が付加されている.中国人の訪日観光に対しては,依然としてさまざまな制約が存在し,そのため,1回の旅行で多数の観光地訪問と観光体験が求められている.
著者
金子 栄廣 山口 稔
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.45-53, 1994-04-30 (Released:2010-05-31)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

溶出試験は廃棄物の有害性評価の一指標として広く用いられている。しかし, その方法が多様であるため, 結果の科学的な解釈が難しい, 異なる方法による結果の比較ができないなどの問題を抱えている。これを解決する手段として最大溶出可能量を測定することを目的とした溶出試験が注目されている。本研究では, 都市ごみ焼却飛灰中に含まれる重金属を対象として攪拌強度, 固液比, 接触時間, pHの溶出操作条件をパラメータとした溶出実験を行い, それぞれの条件下で溶出する金属量を調べることによって最大溶出可能量を調べるための溶出操作条件について検討した。その結果, カドミウム, 銅, 亜鉛およびマンガンについては最大溶出可能量を把握する溶出条件を設定できた。しかし, この条件では鉄の溶出量は接触時間の影響を, 鉛の溶出量は固液比および酸の種類による影響を受けることが明らかとなった。このように成分によって溶出の制限となる操作因子が異なるため, 最大溶出可能量を把握するための溶出試験方法を決めるには, 対象成分に応じて適当な溶出操作条件を検討する必要があることが示された。
著者
金 貴煥 佐藤 誠治 小林 祐司 姫野 由香 張 天オウ
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.588, pp.95-102, 2005
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

The purpose of this research is to show why consumer chose a centrally located urban shopping center or a suburban shopping center in a city, and using quantitative analysis which present factors influenced the customer's choice. The results show that the majority of shoppers under 20 years old chose the central shopping center because of a variety of factors including service, facilities, merchandise, and convenience of public transportation. On the other hand, those shoppers 30 to 50 years old with families chose the suburban shopping center because of the convenience of shopping by car.
著者
金田孝女 著
出版者
金田孫三郎
巻号頁・発行日
vol.下, 1894
著者
金子 龍司
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.25-46, 2016

本稿は、太平洋戦争末期の娯楽政策について考察する。具体的にはサイパンが陥落した一九四四年七月に発足した小磯国昭内閣期以降終戦までの政策に注目する。小磯内閣期の思想・文化統制については、先行研究により、東條内閣期の言論弾圧が見直されて言論暢達政策が採用され、思想・言論統制の緩和によって戦意昂揚を目指したことが指摘されている。娯楽統制についてもこの枠組みで語られ、従来強化一方だった統制がサイパン陥落・同内閣の成立を契機として一転して緩和されたと整理され、その画期性が指摘されている。しかし、この統制緩和は小磯内閣が娯楽に対して講じた措置のひとつに過ぎないし、画期といっても、この統制緩和に限らなければ、娯楽への積極的な措置は小磯内閣発足以前からすでに講じられていた。つまり先行研究は、統制緩和の画期性を重視するあまり、小磯内閣の娯楽政策の全容を明らかにしておらず、しかも従前の政策との連続性も見過ごしているきらいがある。したがって本稿は、小磯内閣期の娯楽政策をできるだけ詳しく分析することで右の二点を明らかにし、同政策を歴史的に位置づける試みを行う。具体的には、当事者たちの問題認識や政策決定過程や政策の実効性を検討材料とする。本稿が明らかにするのは以下の事柄である。第一に、娯楽統制史上、小磯内閣期の統制緩和は個別の措置としてはたしかに画期的であったが、娯楽に対する積極的な姿勢や問題認識に関してはむしろ前内閣との連続性が目立っていたこと。第二に、政策の実効性といった観点からは、個別具体的な措置については一定の成果が見られ、戦争末期にあっても興行の機会は確保され盛況も珍しくなかったこと。第三に、それにもかかわらず、政策全体の評価としては、絶望化する戦況下で観客や興行者たちが娯楽を供給・享受して戦意昂揚に結びつけるだけの精神的余裕を失っていたため、失敗に終わったと結論せざるを得ないことである。
著者
川本 諒 五條堀 眞由美 柴崎 翔 松吉 佐季 鈴木 総史 平井 一孝 植田 浩章 金澤 智恵 高見澤 俊樹 宮崎 真至
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.402-409, 2016 (Released:2016-10-31)
参考文献数
24

目的 : 歯科疾患の予防という概念の普及に伴って, 機械的歯面清掃 (PMTC) を行う機会が増加している. その際に用いられるPMTCペーストは, さまざまな製品が市販されているものの, プラーク除去効果あるいは歯質に対する影響については不明な点が多い. そこで, PMTCペーストの使用がエナメル質および歯冠修復物の表面性状とプラーク除去効果に及ぼす影響について検討した. 材料と方法 : 疑似エナメル質としてステンレス板 (SUS304), コンポジットレジン試片としてFiltek Supreme Ultra (3M ESPE), 金銀パラジウム合金試片としてキャストウェルM. C. 金12% (ジーシー) を用い, それぞれ通法に従って10×10×1mmの平板に調整したものをPMTC用試片とした. これらの試片に対し, 等速コントラアングルに歯面清掃ブラシを装着し, PMTCペースト0.1gを用い, 回転数2,000rpm, 荷重250 gfの条件で, 15秒間PMTCを行った. なお, 供試したPMTCペーストは, クリンプロクリーニングペーストPMTC用 (CP, 3M ESPE), コンクールクリーニングジェル (CJ, ウェルテック), メルサージュレギュラー (MR, 松風), メルサージュファイン (MF, 松風) およびメルサージュプラス (MP, 松風) の合計5製品とした. PMTC終了後の試片について, その表面をレーザー走査顕微鏡を用いて観察するとともに付属のソフトウェアによって表面粗さRa (μm) を求めた. また, 表面に塗布した人工プラークの残存面積 (mm2) を計測することによって, 人工プラーク除去率を算出した. 成績 : PMTC後のステンレス, コンポジットレジンおよび金銀パラジウム合金試片の表面粗さは, 用いたPMTCペーストによって異なる傾向を示した. 特に, CJ, MRおよびMFはBaselineと比較してPMTC後の表面粗さが増加し, MRはほかの製品と比較して有意に高いRa値を示した. 一方, CPにおいては, コンポジットレジンおよび金銀パラジウム合金でPMTC後の表面粗さが増加したが, ステンレス板においては変化が認められなかった. また, プラーク除去率についても使用した製品によって異なる傾向を示した. 結論 : エナメル質, コンポジットレジンおよび金銀パラジウム合金のPMTC後の表面粗さの変化ならびにプラーク除去率は, 用いたPMTCペーストによって異なるものであり, 配合されている研磨粒子の成分や粒径によるものであったことが示された.
著者
金井 雅仁 湯川 進太郎
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.71-81, 2017-02-28 (Released:2017-04-06)
参考文献数
55
被引用文献数
1 1

This study examined the relationships between cultural self-construal (independence/interdependence) and the clarity of emotional awareness, and if the relationships were mediated by interoceptive accuracy. Participants included 100 graduates and undergraduates. After completing scales that assessed cultural self-construal and private self-consciousness, participants performed a heartbeat tracking task, which assessed their interoceptive accuracy. They then viewed negative pictures and evaluated their emotional states. We found that, in males, independence was positively linked to the clarity of emotional awareness, and interdependence was negatively linked to it. Furthermore, when controlling private self-consciousness and heart rate during the heartbeat tracking task, only the relationship between a high sense of interdependence and unclear emotional awareness was mediated by inaccurate interoception. On the other hand, independence and interdependence were not linked to the clarity of emotional awareness in females. These results suggested the possibility that males who had a high sense of interdependence were not clearly aware of their own emotional states because of their insensitivity to internal bodily states.

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著者
金城 芳秀
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.1, 2017-01-31 (Released:2017-02-24)
著者
金子民雄著
出版者
北宋社
巻号頁・発行日
1997
著者
辰巳 佐和子 金子 一郎 瀬川 博子 宮本 賢一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.408-416, 2014-11-25 (Released:2015-02-27)
参考文献数
26
被引用文献数
1

無機リン酸(以下リン)は、細胞膜構成、エネルギー代謝、酵素反応を含むさまざま生理学的機能に必須な栄養素である。血中リン濃度の維持は主に腎臓、腸管および骨が担っている。そしてリンを輸送するトランスポーターの働きによって厳密に制御されているのである。このトランスポーターの発現調節は、古典的にはリン調節ホルモンである副甲状腺ホルモン(PTH)、1,25-dihydroxyvitamin D3によって知られてきた。近年、最初に同定されたフォスファトニンであるfibroblast growth factor 23(FGF23)のリン利尿作用についての研究が飛躍的に進んだ。FGF23は骨細胞から分泌され遠隔臓器である腎臓に作用しリン排泄を制御することから、リン代謝における骨腎連関が重要であることが認識された。本稿では多臓器にわたる生体内リン恒常性維持機構について最近の知見を加えて概説する。
著者
金子 龍司
出版者
学習院大学大学院
巻号頁・発行日
2019-03-01

本稿は、レコード、映画、舞台興行、ラジオなど、1920年代以降の都市化とともに勃興・発達した大衆娯楽に対する統制を考察する。時期は日中戦争開戦前後から日本政府による統制が廃止される1945年10月前後までとする。方法としては、政府機関による娯楽統制や個々の措置が立案され講じられるまでの力学をたどり、その効果や影響を検証する。これにより、日本政府による娯楽統制のあり方に一定の見通しを与えることを目的とする。本稿が特に注目するのが、流行歌をはじめとした音楽を対象とした統制である。理由は、音楽は映画や舞台興行など他の視聴覚メディアと比較して再生が容易なため(ラジオ、レコード、実演に加え、子供から大人までの消費者による歌唱など)、人々への浸透性が高かったと評価できるからである。研究史を踏まえたうえでの本稿の課題は、以下の4点である。1.娯楽統制に関わる主体相互の力学の解明:90年代以降の先行研究において、戦時下の娯楽には、官僚、業者、製作者、観客、教育者など様々な主体が関与したことが明らかになっている。しかし、各主体間の力学に対しては関心や分析が十分及んでいないため、統制については2010年代に至っても政府対業界という固定的で二項対立的な図式で解釈がされることがある。そのため、各主体がどのように統制に関わっていたか力学的に考察し、二項対立的な図式の有効性を検証する必要がある。2.統制に対する娯楽の受け手の動向の解明:統制に関与した主体のうち、聴取者・観客など娯楽の受け手は、現在までほとんど分析が及んでこなかった。しかし、彼ら受け手は新聞雑誌や当局に対して投書を通じた意見表明を行い、統制に少なからぬ影響を及ぼしていた。このため、彼ら受け手の動向を注視して考察を進める必要がある。 3.当局の受動的な態度の解明:本稿が注目する戦時下の娯楽は、1920年代に勃興した新興メディアであり、当局の関心もさほど高くなかった。それゆえにこそ、上記2.で述べたように受け手の動向が統制に影響を及ぼす余地も生じていた。言い方を変えれば、娯楽統制は、受け手によって問題視され社会問題化した事象に対して当局が事後的に火消しをする程度で当局内でも社会的にも許容されていたことに大きな特徴があった。しかし、この点は先行研究で十分に検討されているとはいえない。 4.敗戦直後の日本政府による娯楽統制の動向の解明:日本政府による娯楽統制は、敗戦後45年10月まで存続していたが、先行研究において8月以降の動向はほとんど明かにされていない。しかし、該時期は戦争末期以来の国家存続の危機が続いていたことから、この極端な状況で娯楽に期待された役割を確かめることにより、日本政府による娯楽統制の特徴を考えるうえで多くの示唆が得られるはずである。 以上の課題を念頭に、本稿は以下の章立てで構成する。「第一章 検閲官の思想と行動‐警視庁保安部保安課興行係の場合‐」:警視庁の興行統制に注目し、総論的に検閲官とはどのような人たちであり、娯楽に対する検閲や取締りがどのように行われていたか論じる。検閲官たちの発想は「芸術至上主義」と教養主義を柱としており、大衆娯楽を弾圧しつつも、軍部に対して演劇を「保護」する役割をも果していた。 「第二章 「民意」による検閲‐『あゝそれなのに』から見る流行歌統制の実態‐」:1936年発売の大ヒット流行歌『あゝそれなのに』の取締り過程に注目し、流行歌の取締りが受け手―具体的には「投書階級」と呼ばれた中間層の意向に規定されていたことを明らかにする。 「第三章 日中戦争期の「洋楽の大衆化」と「洋楽排撃論」に対する日本放送協会、内務省の動向」:日中戦争期に人気を博して「大衆化」した「洋楽」に対する排撃論と、これへの当局の対応に注目する。内務省と日本放送協会は、日本主義と結びついて影響力を増した「洋楽排撃論」に対応せざるを得なかったが、決して「洋楽」排撃論者の言いなりになるのではなく、むしろそれぞれの方法によって「洋楽」を排撃論者たちから保護しようとしていた。 「第四章 太平洋戦争期の流行歌・「ジャズ」の取締り―音楽統制の限界―」:1941年の太平洋戦争勃発以後の流行歌や「ジャズ」を始めとした音楽の取締方針の厳格化とその実態を明らかにする。当局はたしかに取締りを強化したが、実態としては音楽の取締りは技術的に困難であり、最も取締りが強化されていた1944年頃でさえ、これを貫徹させることはできなかった。 「第五章 太平洋戦争末期の娯楽政策‐興行取締りの緩和を中心に」:サイパン陥落後に成立した小磯国昭内閣の娯楽政策に注目する。戦局が絶望するなか、小磯内閣は戦争を支える下層階級の戦意高揚のため、従来、中間層の意向を踏まえて強化してきた大衆娯楽の取締りを一転して緩和し、さらに奨励した。しかし、娯楽の享受の前提となる国民の生活基盤は、多くが空襲の激化とともに徹底的に破壊されたため、政策の所期の目的の達成は困難だった。 「第六章 敗戦直後の娯楽政策―東久邇宮内閣期を中心に」:敗戦直後の日本政府による娯楽政策に注目する。8月15日に天皇から国民に対して敗戦が告げられても、大日本帝国の国家存亡の危機は依然として続いていた。このとき、天皇および宮中グループは、国民の批判の矛先が天皇に向かないようにするため、「仁慈」として灯火管制の解除・私信の検閲の停止とともに娯楽の復活を講ずることを東久邇宮首相に指示した。本章は、これを受けた東久邇宮内閣の娯楽政策とその効用を、GHQによる娯楽政策とも対比させつつ論じる。 終章では、本稿の結論として、先にあげた本稿の4つの課題を念頭に、議論を整理して日本政府による娯楽統制の特徴と問題点を指摘する。娯楽統制の特徴としては、①統制の対象となった映画、ラジオ、レコード、娯楽興行は当時としては新興のメディアであったため、取締官庁であっても管理職クラス以上の役人の関心が薄かったこと、②各官庁は、それゆえに実務には専門職的な検閲官を配置して大きな裁量を与え、世上問題化した事案を場当たり的に取り締まるだけで良しとする受動的で「緩い」運用へと傾いていたこと、③したがって中間層が統制に容喙し、当局をして取締りを強化させる余地が存在していたこと、④ただし、戦争末期以降は統制方針が一変し、戦争遂行や秩序維持の観点から下層階級に受け入れられる大衆娯楽が奨励されたことなどを指摘する。また、上記の特徴を有する体制から生じた問題としては、統制の不公平さ―たとえば、世上問題となった有名人だけ取り締まられるなど―をあげる。こうした不公平さは、検閲官に大きな裁量が与えられた反面、再審制の導入などのチェック機構の整備が必ずしも充分でなかったことや、検閲官に場当たり的な対応が許容されていたことから生じていた。検閲を受ける側にとっては、こうした不公平感が検閲に対する怨恨へとつながった。従来の研究の多くは、彼ら被害者の証言を引用することで、検閲当局と被害者との二項対立の図式を再生産してきた。本稿が指摘したのは、こうした検閲官たちの不公平な取締りを可能にし、それを支えた構造であった。
著者
水野 紀子 嵩 さやか 鳥山 泰志 石綿 はる美 池田 悠太 渡辺 達徳 大村 敦志 得津 晶 早川 眞一郎 小粥 太郎 森田 果 藤岡 祐治 中原 太郎 久保野 恵美子 吉永 一行 澁谷 雅弘 今津 綾子 金谷 吉成
出版者
白鴎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年度は、高齢者財産管理に関する諸問題を、.死亡時の財産処理、生前の財産保全・運用、消費者被害の分野ごとに、社会問題班が、具体的な社会問題について、A. 手続班、B. 後見班、C. 消費者班ごとに検討し、カテゴリ班Iが、公的介入の在り方についての総論的検討を行った。具体的には、A. 手続については今津が近時話題となる子の引渡事件を中心に家事事件について公的介入の要否・在り方を検討し、B. 後見班では、国家の後見的介入についてインプットの代表例の税制について分担者渋谷、藤岡が相続税及び資産税を検討し、かかる税制・国民負担の関係を踏まえた上で、アウトプットの代表例である社会保障について分担者嵩が所得保障や医療・介護保障の問題点の分析を行った。また、A.,B.両面にわたる問題として、分担者石綿が近時の相続法改正における生存配偶者の保護を素材に、遺産分割の交渉のスタートとなり、かつ、「後見的保護」となる民法のルールについて分析を行った。C. 消費者班では、消費者法のみらず消費者保護を一部取り込んだ民法(債権法)も含めて分担者渡辺が総論的な検討を示し、分担者中原が具体的なトピックを素材に検討を深め、分担者得津は投資商品(金融商品)の売買契約のプロセスの瑕疵について検討を行った。これらの諸問題の分析手法について、分担者森田が、法制度の現実社会に与える影響(相関関係・因果関係)の析出の検討を深め、その具体的な成果を海外で公表した。これに対して、総論的検討を行うカテゴリ班Iでは、代表者水野が、A.手続、B.後見、C.消費者のすべてにわたる高齢者の財産管理を保護する制度的インフラの不存在を指摘し、諸外国を参考に、いかなるインフラが不足しているのか、国家的保護の「類型」の候補を指摘した。そして、水野、中原、石綿は2019年度比較法学会のシンポジウム報告の準備を進めた。
著者
大西 隆 瀬田 史彦 片山 健介 菅 正史 瀬田 史彦 片山 健介 金 昶基 金 昶基 菅 正史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

日本の全都市圏を対象とした実証分析を行うことにより、日本の都市圏がどのような空間構造の変容過程を経たのかを明らかにすることを目的として研究を行った。その結果、大都市では人口の都心部への還流、地方都市では人口減少と都市圏内での拡散という全く対照的な動きが顕在化してきていることが明らかとなった。また、典型都市圏の事例研究により、市町村を超えた結びつきの強い広域都市圏で有効性の高い地域計画を作成しようとする動きがあることなどの知見を得た。
著者
大西 隆 松行 美帆子 瀬田 史彦 片山 健介 金 昶基 林 和眞
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、逆都市化時代に予測される課題を示し、その改善と持続可能な都市圏実現のためにどのような地域計画が必要かを明らかにすることを目的とした。成果として、(1)特に人口の安定と地域イノベーションに着目して、指標をもとに都市圏の特徴を明らかにした。(2)定住自立圏等の地域政策の有効性を検証するとともに、都市構造に関わる意思形成プロセスの構造化を試みた。(3)大都市圏郊外の計画手段を明らかにするとともに、地方都市圏における地域計画の実践的提案を行った。
著者
金聖歎 評
出版者
柏悦堂
巻号頁・発行日
vol.巻之1-7, 1883