著者
松井 克憲 鹿野 共暁 長橋 ことみ 大川 直子 有澤 奈良 成瀬 香織 鈴木 留美 稲本 裕
出版者
静岡産科婦人科学会
雑誌
静岡産科婦人科学会雑誌 (ISSN:21871914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.126-130, 2019-09

ペグフィルグラスチムは持続性のG-CSF刺激作用を保持し、末梢血中の白血数を増加させる働きをもつ。症例は55歳。再発卵巣癌に対して、DC療法 (ドセタキセル70 mg/m2+カルボプラチン AUC≓ 5) とペグフィルグラスチムを投与中であった。DC療法4コース投与後に発熱と全身倦怠感を主訴に来院した。抗菌薬投与を行ったが、解熱を認めなかった。精査目的に撮影した造影CTで胸部大動脈の壁肥厚と左側優位の両側胸水貯留を認めたため、大動脈炎と診断し、プレドニゾロンの投与を開始した。症状はただちに軽快し、大動脈の壁肥厚も改善した。がん化学療法時に発熱とCRPの上昇を認めた症例は、細菌感染症以外にも血管炎を考慮する必要がある。
著者
三木 千栄 小野部 純 鈴木 誠 武田 涼子 横塚 美恵子 小林 武 藤澤 宏幸 吉田 忠義 梁川 和也 村上 賢一 鈴木 博人 高橋 純平 西山 徹 高橋 一揮 佐藤 洋一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ed0824, 2012

【はじめに、目的】 本学理学療法学専攻の数名の理学療法士と地域包括支援センター(以下、包括センター)と協力して、包括センターの担当地域での一般高齢者への介護予防事業を2008年度から実施し、2011年度からその事業を当専攻で取り組むことした。2010年度から介護予防教室を開催後、参加した高齢者をグループ化し、自主的に活動を行えるよう支援することを始めた。この取り組みは、この地域の社会資源としての当専攻が、高齢者の介護予防にためのシステムを形成していくことであり、これを活動の目的としている。【方法】 包括センターの担当地域は、1つの中学校区で、その中に3つの小学校区がある。包括センターが予防教室を年20回の開催を予定しているため、10回を1クールとする予防教室を小学校区単位での開催を考え、2010年度には2か所、2011年度に残り1か所を予定し、残り10回を小地域単位で開催を計画した。予防教室の目的を転倒予防とし、隔週に1回(2時間)を計10回、そのうち1回目と9回目は体力測定とした。教室の内容は、ストレッチ体操、筋力トレーニング、サイドスッテプ、ラダーエクササイズである。自主活動しやすいようにストレッチ体操と筋力トレーニングのビデオテープ・DVDディスクを当専攻で作製した。グループが自主活動する場合に、ビデオテープあるいはDVDディスク、ラダーを進呈することとした。2010年度はAとBの小学校区でそれぞれ6月と10月から開催した。また、地域で自主グループの転倒予防のための活動ができるように、2011年3月に介護予防サポーター養成講座(以下、養成講座)を、1回2時間計5回の講座を大学内で開催を計画した。2011年度には、C小学校区で教室を、B小学校区で再度、隔週に1回、計4回(うち1回は体力測定)の教室を6月から開催した。当大学の学園祭時に当専攻の催しで「測るんです」という体力測定を毎年実施しており、各教室に参加した高齢者等にそれをチラシビラで周知し、高齢者等が年1回体力を測定する機会として勧めた。A小学校区内のD町内会で老人クラブ加入者のみ参加できる小地域で、体力測定と1回の運動の計2回を、また、別の小地域で3回の運動のみの教室を計画している。また養成講座を企画する予定である。【倫理的配慮、説明と同意】 予防教室と養成講座では、町内会に開催目的・対象者を記載したチラシビラを回覧し、参加者は自らの希望で申し込み、予防教室・養成講座の開催時に参加者に対して目的等を説明し、同意のうえで参加とした。【結果】 A小学校区での転倒予防教室には平均26名の参加者があり、2010年11月から自主グループとして月2回の活動を開始し、現在も継続している。B小学校区では毎回20名程度の参加者があったが、リーダーとなる人材がいなかったため自主活動はできなかった。2011年度に4回コースで再度教室を実施し、平均36名の参加者があった。教室開始前から複数名の参加者に包括センターが声掛けし、自主活動に向けてリーダーとなることを要請し承諾を得て、2011年8月から月2回の活動を始めた。A・B小学校区ともにビデオあるいはDVDを使用して、運動を実施している。C小学校区では2011年6月から教室を開始し、平均14名の参加者であった。教室の最初の3回までは約18名の参加であったが、その後7名から14名の参加で、毎回参加したのは3名だけで自主活動には至らなかった。2010年度3月に予定していた養成講座は、東日本大震災により開催できなかったが、25名の参加希望者があった。A小学校区内の小地域での1回目の予防教室の参加者は16名であった。大学の学園祭での「測るんです」の体力測定には139名の参加者があり、そのうち数名であるが教室の参加者も来場された。【考察】 事例より、予防教室後に参加者が自主活動するには、活動できる人数の参加者がいること、リーダーとなる人材がいること、自主活動の運営に大きな負担がないことなどの要因があった。自主グループの活動やそれを継続には、2011年3月の地震後、高齢者の体力維持・増進が重要という意識の高まりも影響を及ぼしている。C小学校区の事例で、自主活動できなかった要因を考えるうえで、A・B小学校区と異なる地域特性、地域診断を詳細にする必要性があると考える。リーダーを養成することでC小学校区での高齢者が自主活動できるか検討する必要もある。高齢者の身体状況に合わせて、自主活動できる場所を小学校区単位、小地域単位で検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 介護予防事業を包括センター、予防事業所などだけが取り組む事業ではなく、理学療法士が地域の社会資源としてそのことに取り組み、さらに介護予防、健康増進、障害、介護に関することなどの地域社会にある課題を住民とともに解決するための地域システムを構築していくことは、現在の社会のなかでは必要であると考える。
著者
渡司 悠人 佐野 雅人 鈴木 勉 大澤 義明
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.393-399, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

オフグリッド(独立電源)を導入するにあたり,配電網維持管理コストと,切り離された住民へ電力を供給する独立電源コストとの間にトレードオフが生じる.ここでのオフグリッドとは,電力会社の配電網から完全に分離した電力システムを意味している.本研究の目的は,このトレードオフを二目的最適化問題として定式化し,配電網の電源位置の影響も含めオフグリッド政策を分析することである.第一に,単純な地理条件を想定し,直線モデルを用いて,電源と建物の位置関係からオフグリッドの基本的構造を分析した.第二に,ネットワークモデルを用いて,高速処理の算法を提案するとともに,最適なオフグリッド領域は入れ子構造になることを明らかにした.さらに,現実の電柱と建物データを使用し,この算法をつくば市へ適用して,モデルで得られた知見を解釈した.
著者
川口 昌宏 鈴木 英実 嶋津 外志彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.374, pp.603-610, 1986-10-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
4

It is said that the concrete filled steel column, so called the composite column, possesses good strength and ideal ductility. However, its behavior under load is not clear enough at present. We made experiments to compare the effect of shear connectors with that of projections on steel plate for the simplest column under the axial load. During the axial loading, the authors gave impact on the specimens and measured induced elastic wave. Spectrum analysis of the elastic wave gave the information about composite action between concrete and steel. By these experiments the following were observed. The column with shear connectors had the highest rigidity, the one with projections the second and the one of flat steel the lowest. The strength was almost the same to the column with shear connectors and the one with projections. As for the ductility, the steel with projections was better than the one with shear connectors.
著者
山口 開 奥瀬 千晃 鈴木 啓弘 小林 裕太郎 長田 達郎 巴 雅威 遠山 裕樹 林 毅 吉田 秀樹 高橋 泰人 前山 史朗 打越 敏之 飯野 四郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.18-22, 1998-01-25
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は23歳, 女性. 飲酒歴, 輸血歴および鍼灸治療歴はない. 常用薬剤なし. 感冒様症状に伴う食欲不振, 腹部不快感および2週間で約4kgの体重減少を主訴に近医を受診した. 生化学検査でtransaminaseの上昇を認め急性肝炎が疑われ当科紹介, 入院となった. 入院時現症では標準体重の-32%のるいそうを認め, 入院時検査所見では総蛋白, コリンエステラーゼの低下及びtransaminaseの上昇が認められた. しかし肝炎ウイルスマーカーはすべて陰性で, 抗核抗体および抗ミトコンドリア抗体も検出されず免疫グロブリンはいずれも正常ないし軽度低下を呈した. 腹部超音波およびCTでは著明な脂肪肝を認めた. 肝生検像では肝実質にacuteyellow collapsed cellを含む巣状壊死を散見し, 大脂肪滴沈着をzone 2~3に小葉の1/2以上に認め飲酒歴がないことからnon-alcoholic steatohepatitisと診断した. 本例は肥満, 耐糖能異常を伴わず, 薬剤服用歴もなく経過より急激な栄養障害による飢餓状態が原因と考えられた
著者
楠本 大 鈴木 和夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.G05, 2004

はじめに針葉樹の師部は、傷害や菌の感染に対して、防御反応を引き起こす。それにともない師部内では様々な化学変化が起こる。これまで多くの組織化学的研究によって、師部の化学物質の変化が示されているが、それら化学物質の経時的・空間的変化を定量的に明らかにしたものは少ない。本研究では、フェノール系物質を中心に防御反応による化学物質の量的変化を、組織化学的観察と対応させながら、明らかにすることを試みた。材料と方法実験には東京大学演習林田無試験地植栽の5年生ヒノキを用いた。7月にヒノキの主幹に傷を付け、その後継続的に5本ずつ選び、傷の周りの樹皮を採取した。解剖観察:樹皮切片を作成した。ポリフェノールはジアゾ反応法とニトロソフェノール反応法で、リグニンはフロログルシン-HCl法で染色した。スベリンはフロログルシン-HClで染色した切片にUV光を照射して蛍光を観察した。フェノール類の抽出と定量:樹皮を傷害カルス、壊死部(コルク組織を含む)、傷から1mmまでの生きた師部(コルク形成層とコルク皮層を含む)、傷から1_から_2mmまでの生きた師部に分け、凍結乾燥した。10mgの組織片を粉砕し、80%メタノールで2回抽出した。総ポリフェノール量をFolin-Denis法で定量した。タンニン量は、抽出液にゼラチンを加えてタンニンを沈澱させたのち、上澄みに残ったポリフェノール量を総ポリフェノール量から引くことで計算した。壁結合フェニルプロパノイドの抽出と定量:メタノール抽出を行った後の残渣から細胞壁に結合したフェニルプロパノイドを1N NaOHで抽出した。抽出されたフェニルプロパノイドはHPLCで分析した。リグニンの定量:NaOHで抽出した後、残渣のリグニン量をアセチルブロミド法により測定した。結果傷害カルスにおけるポリフェノール量は健全部よりも測定期間を通じて有意に高く、解剖観察においてもポリフェノール粒が多数観察された。一方、壊死部では3日目で既にポリフェノール粒は消失し、量的にも減少した。0-1mm師部では、parenchymatic zoneにおいて多量のポリフェノール粒が観察された。また、師部柔細胞では14日目以降液胞の拡大とポリフェノールの染色性の低下が観察された。0-1mm師部のポリフェノール量は健全部よりも若干増加したがその差は有意ではなかった。1-2mm師部のポリフェノール量は健全部と変わらず、解剖観察によっても変化はみられなかった。タンニン量は、いずれの部位においてもポリフェノール量の20_から_35%を占め、ポリフェノールとほぼ同じ経時変化を示した。傷付け7日目に壊死部の細胞壁にリグニンの蓄積が認められ始め、14日目まで蓄積の範囲が増加した。壊死部のリグニン濃度は14日目から増加し始め、28日目に一定に達した。傷害カルスでは、カルス形成が始まったばかりの14日目に健全部に比べてリグニン濃度が低かったが、28日目以降は健全部と同様の濃度を示した。壁結合フェニルプロパノイドについては、p -クマル酸、カフェー酸、フェルラ酸、シナピン酸のうち、フェルラ酸のみが検出された。フェルラ酸は壊死部と傷害カルスで7日目以降増加した。考察傷害カルスのポリフェノールは、その発達初期から多量に含まれており、傷害カルスの防御に強く関与していると考えられた。一方で、師部柔細胞では、化学性の変化によると思われる染色性の低下が認められた。壊死部ではポリフェノールの減少がみられたが、これは細胞が傷付けられたときに遊離した酸化酵素がポリフェノールを酸化重合させたためと考えられた。壊死部のリグニンは、染色によって7日目に認められたが、実際に細胞壁中の濃度が増加するのは14日以降であった。また、その増加は28日目まで続き、壊死部であっても1ヵ月程度は生理活性を維持している可能性が示唆された。壁結合フェルラ酸はリグニン濃度に変化が認められた壊死部と傷害カルスにおいて有意に増加し、リグニン合成との関連が示唆された。このように、ヒノキ師部の防御反応は部位によって多様であり、その発現のタイミングも異なっていた。病原体に対する抵抗性は、こうした種々の防御反応の総合的な効果によって決定されると考えられた。
著者
星 靖子 鈴木 整
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.120-126, 2016 (Released:2018-05-30)
参考文献数
7

アルコールの種類を問わず,スパークリング飲料は場を華やかに変え,気分を爽快にさせてくれる。マイナーだった発泡清酒を一躍注目商品に変えたのが,この「すず音」と言えよう。日本酒らしさを排除しながら日本酒の独自性は守る,固定観念にとらわれない新たな商品開発に必要な姿勢を教えていただいた。
著者
岡本 康介 鈴木 美幸
出版者
FIT(電子情報通信学会・情報処理学会)運営委員会
雑誌
情報科学技術フォーラム一般講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2002, no.4, pp.41-42, 2002-09-13

インターネットにおける通信の安全性の確保や確実な本人確認を行うための仕組みとしてPKI(Public Key Infrastructure : 公開鍵基盤)導入を検討する企業が増加しつつあり、『電子認証による電子署名』は電子商取引き、電子申請を行う上で非常に重要な位置を占めている。しかしながら、現在のところ電子認証(公開鍵暗号方式でいう秘密鍵=電子企業印と本論では呼ぶ)を安全に共有できる仕組みは提案されていない。本論文では、電子認証を安全に共有できる仕組みを提案する。この仕組みにより電子企業印が安全に企業内で共有できるようになった。また、GPSレベルでの実装によりアプリケーションからも電子鍵の共有が可能になった。
著者
鈴木 寛 山本 由美子 松本 慶蔵 麻生 卓郎
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.119-127, 1988-06-30

長崎県において,つつが虫痛が発生している平島(283名)と発生していない江ノ島(270名)の住民を対象として,リケッチア・ツツガムシ感染症に関する血清疫学的研究を行った.IgG抗体は抗原としてギリアム株を用い,酵素抗体法により測定した.全住民に対する抗体陽性率は平島(33.2%)が江ノ島(22.6%)より高値であったが,抗体レベルは平島(1.65±0.47)より江ノ島(1.88±0.47)で高値であった.年齢別抗体の陽性率とレベルの比較では,平島では19才以下が40才以上より高値であったが,江ノ島では差異を見い出し得なかった.これらの成績は平島では年齢による感染時期の差,つまり若年者が比較的最近感染し,江ノ島では全住民が同じ時期に感染していること,更に,つつが虫病患者が発生していない江ノ島においても弱毒性リケッチア・ツツガムシが存在していることを示唆した.