著者
森 裕紀子 鈴木 邦彦 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.250-255, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1

白朮附子湯は『傷寒論』に「風湿相摶身體疼煩」1)と記載があるが報告は少ない。今回梅雨時に発症した四肢の痛みの再発例に対して白朮附子湯が著効した症例を経験した。症例は45歳女性。X-1年6月に,両手足の痛みとしびれが出現し暖まると痛みは改善し,疲れると痛みは増し筋肉痛のようなだるさがある。1年半前に同じ症状で主に駆瘀血薬を1年間服用し症状が消失していた。前回同様に瘀血所見が強く駆瘀血薬を処方したが症状は消失しなかった。以前の痛みの発症も梅雨時だったことに注目し,表湿に冷風が加わり生じた痛みと考え白朮附子湯に転方したところ2週で痛みは消失した。翌年6月も痛みが再発し白朮附子湯を処方し11日で治癒した。痛みの性質と発症時期から初診時の痛みも湿による痛みだったと推測する。梅雨時に発症する痛みは,冷房設備の整った環境で生活する現代において今後増える病態であり,白朮附子湯は考慮すべき処方の1つである。
著者
坂井 敦 丸山 基世 鈴木 秀典
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.219-227, 2019-09-20 (Released:2019-11-08)
参考文献数
51
被引用文献数
1

Non–coding RNAs affect various cellular processes through interaction with DNA, RNA and protein. Accordingly, non–coding RNAs, microRNAs and more recently long non–coding RNAs, have been shown to be involved in pain disorders, including neuropathic pain. MicroRNAs inhibit translational step of gene expression and dysregulation of microRNAs underlies the neuropathic pain. On the other hand, lncRNAs regulate diverse steps of gene expression, including epigenetic modulation, transcription, alternative splicing and translation, although a role of lncRNAs in the pain disorders remain poorly understood. Interestingly, a part of non–coding RNAs are released to extracellular space and mediate a cell–cell communication. Extracellular microRNAs are shown to modulate nociceptive transmission. Furthermore, extracellular non–coding RNAs are expected as a specific biomarker for neuronal damage or pain in the blood. In this review, we summarize current insights into non–coding RNA significance in the neuropathic pain.
著者
植阪 友理 鈴木 雅之 清河 幸子 瀬尾 美紀子 市川 伸一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.397-417, 2014-02-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
4

全国学力調査の結果などを受け,教育現場では日本の子どもの学力について,「基礎基本はおおむね良好,活用に課題」と論じられることが多い.しかし,認知心理学を生かした教育実践では,基礎基本が必ずしも十分ではない可能性が指摘されている.そこで本研究では,これらの実践的な知見や認知心理学を参考に開発された,構成要素型テストCOMPASS(市川ら2009)を中学2年生682名に実施し,もし一般的な社会の認識とは異なり,基礎基本が十分なのではないとするならば,特にどのような学力要素が不十分であるのかという実態について検討した.また,調査対象となった生徒の数学担当教師15名に,中学2年生にとって「十分満足」「やや不十分」「極めて不十分」と考えられる基準を評定するよう求めた.教師が評定した基準と,COMPASSの実施結果を比較した結果,数学的概念の不十分さ,基本的な文章題において演算を迅速に決定する力の弱さ,問題解決方略を自発的に利用する力の不十分さなどに課題があることが明らかとなった.これらの結果は,日本の子どもの学力に対する従来の捉え方に再考を促すものである.

1 0 0 0 銭の考古学

著者
鈴木公雄著
出版者
吉川弘文館
巻号頁・発行日
2002
著者
田中 康裕 山田 哲弥 村田 明子 北後 明彦 鈴木 毅
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.76, no.664, pp.1101-1109, 2011-06-30 (Released:2011-11-16)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

The purpose of this article is to clarify residents' attitudes toward social relationships in condominiums. We conducted questionnaire to residents who live in large scale condominiums, and clarified the following things. About 75 percent of respondents seek some relationships with other residents. The respondents who have children are more satisfied with their present relationships than those who don't have children. The respondents who don't seek relationships and who regard intimate relationships as important, tend to be satisfied with their present relationships. Social relationships in the large scale condominiums are not weak, but it doesn't spread into all residents.
著者
鈴木 由加里
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.39-56, 2007-03-26

フランス哲学が日本に輸入されて以来、多くの哲学者が紹介されたが、現在では忘れられている哲学者も少なくない。ジャン─ マリー・ギュヨーもそのような哲学者の一人である。ギュヨーは、中江兆民の編んだ『政理叢談』において、その著作が紹介され、明治末期から大正期にかけては、多くの邦訳が出版され、また英訳を介して文壇及び大正期の文化に影響を与えた。アカデミズムでも美学・教育学・道徳学において一時期取り上げられたが、その後アカデミズムでは取り上げられず、主体的に論じられることもないまま現在に至っている。 明治末から大正期にかけて発展した大学制度においては、哲学といえば新カント派のドイツ哲学であり、それに対抗するものとして、当時のフランス哲学が在野の文化人や一部の大学の研究者によって取り上げられてきたものである。フランス哲学の受容において、重視されたのは、「現代性」「同時代性」であり、それ故、明治大正期に取り上げられたベルクソンやブートルーなどは「現代哲学」として受容されていたのである。 難解であるけれども思想的な深さをもつドイツ哲学に対して、明晰判明であるが浅いフランス哲学という批判を退けるために、ギュヨーを初めとするフランス哲学者がアカデミズムにおいて紹介されたのである。その目的は、ギュヨーの思想の研究ではなく、むしろフランス哲学の特性を証明するためであった。 そこには、ドイツ哲学を経由したフランス哲学観を離れてフランス哲学を研究することへの希求が存在している。しかし、そのフランス哲学受容の必要性の主張の裏には、「現代哲学」としてのフランス哲学を研究し、それを日本的な哲学の創生に役立てるという目的も同時に存在しているのである。欧米の思想の輸入過多に対して、日本的なるもの、日本独自の哲学という西欧思想との融合に際して、フランス哲学が利用されていたのである。そのような目的において、ギュヨーの哲学は役立つと考えられなかったためにアカデミズムの中で研究されなくなっていった。ギュヨーの生命の哲学を日本的な文脈の中に置き換えることは難しく、19 世期末に夭逝した哲学者であったために哲学史における評価も定まらず、ベルクソンの哲学ほど利用価値がないと判断されたために忘れられた哲学者となっていったのである。
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.A0850, 2006

【目的】体幹機能の評価および機能改善の方法に座位での側方移動がある。座位側方移動に関しては、骨盤・胸椎の傾斜角度や腹斜筋群、脊柱起立筋などの筋活動について研究がなされており、その研究成果は臨床で活用されてきている。臨床においては頭頚部筋や肩甲帯周囲筋の過剰努力を呈し、座位バランスを保持している症例を頻繁に経験する。しかし、座位での側方移動における頭頚部筋や肩甲帯周囲筋の機能に関しては明確にされていない。本研究目的は、肩甲帯周囲筋である僧帽筋に着目し、健常者の座位側方移動時の僧帽筋の筋活動について筋電図を用いて検証することである。<BR>【方法】対象は健常男性5名(平均年齢30.2±4.3歳)両側。対象者には事前に本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。測定筋は両側の僧帽筋上部、中部、下部線維とし筋電計myosystem1200(Noraxon社製)を用いて測定した。具体的な運動課題は両腕を組み、両下肢を浮かした座位姿勢を開始肢位とした。開始肢位より5cm、10cm、15cm、20cmと前額面での延長上に設置した目標物に対し三角筋外側最大膨隆部を接触させていくよう側方移動を行った。各移動距離における測定時間は5秒間とし、これを3回施行した。なお、被検者には頭部・体幹は前額面上に、両側の肩峰を結んだ線は水平位を保持するよう指示した。分析方法は開始肢位における僧帽筋各線維の筋積分値を基準として各移動距離の筋積分値相対値を算出し、各線維ごとに移動距離間での分散分析(Turkeyの多重比較)を行った。<BR>【結果】非移動側僧帽筋の筋積分値相対値は下部線維のみが移動距離20cmにおいて5cm、10cm、15cmと比較して有意に増加した。<BR>移動側僧帽筋の筋積分値相対値は中部線維のみが移動距離20cmにおいて5cm、10cm、15cmと比較して有意に増加した。<BR>【考察】座位側方移動での体幹機能の特徴には非移動側の腹斜筋群による抗重力的な求心活動によって胸郭と骨盤を連結させること、非移動側骨盤の水平面上での前方回旋に対し体幹上部では反対側の回旋が生じ、カウンタームーブメントによる体幹の安定化が図られるなどがある。本研究での非移動側僧帽筋下部線維の筋活動が有意に増加したことについては、胸郭上を浮遊する肩甲帯を積極的に下制、内転させることで肩甲帯と胸郭の連結を行い、かつ胸郭を垂直に保持することに関与したのではないかと考える。これにより肩甲帯-胸郭-骨盤といった体幹の安定化が図られると考える。一方、移動側僧帽筋中部線維の筋活動が有意に増加したことについては、カウンタームーブメントによる体幹の安定化とは異なり、本研究では前額面上の目標物に到達させる課題であることから、移動側肩甲帯を内転位に保持する必要がある。移動側中部線維の活動は肩甲帯を内転方向へと導いていく方向舵としての機能に関与したのではないかと考える。<BR><BR>
著者
木村 宏樹 元田 英一 鈴木 康雄 金井 章 吉倉 孝則 種田 裕也
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.225-232, 2010 (Released:2016-04-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

前十字靱帯(ACL)再建術術後の大腿四頭筋筋力訓練の一つにレッグプレス運動がある.本研究では,レッグプレス運 動において,姿勢の違いがACL にかかる負荷である脛骨引き出し力や筋張力に与える影響について考察した.矢状面から動作計測を行い,下肢関節角度と足部に作用する反力から筋骨格モデルを用いて脛骨引き出し力や筋張力を推定した.11 種の姿勢について検討した結果,脛骨へは常に後方引き出し力が作用しACL 再建術術後の大腿四頭筋筋力訓練としてレッグプレス運動は安全であること,体幹を屈曲させることでより大きな後方引き出し力が作用しより安全に行えることが示唆された.
著者
關 義和 鈴木 貴大
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.247-252, 2018 (Released:2019-01-30)
参考文献数
14

ツキノワグマUrsus thibetanusは,神奈川県レッドリストにおいて絶滅危惧I類に指定されている.本研究では,これまで体系的な調査が行われてこなかった神奈川県南西部におけるツキノワグマの生息状況を明らかにするために,箱根町と湯河原町の境界周辺に位置する玉川大学箱根自然観察林において自動撮影カメラを用いた調査(2,122カメラ日)を実施した.2017年の5月から10月にかけて15地点に自動撮影カメラを設置した結果,6地点でツキノワグマが延べ10回撮影された(撮影頻度0.47/100カメラ日).1945年以降に,箱根町南部や湯河原町においてツキノワグマの確実な生息が確認されたのは本研究が初めてである.撮影月についてみると,5月と8月を除く複数月で撮影された.また,体の特徴から個体識別を行った結果,少なくとも3個体が本地域に生息していたと推測された.これらの結果から,本地域にツキノワグマが恒常的に生息している可能性は高いと考えられる.今後,神奈川県のツキノワグマの保護管理を適切に実施していくためには,箱根町から湯河原町にかけても保護管理の対象とし,個体数や分布に関する継続的なモニタリングを実施していくことが求められる.
著者
鈴木 健太 三品 美夏 渡邊 俊文
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.185-189, 2013-03-20 (Released:2013-06-15)
参考文献数
20

11歳齢,去勢雄の雑種猫が繰り返す高窒素血症を主訴に麻布大学附属動物病院に紹介来院した.各検査結果より左腎周囲への尿の漏出が疑われ試験開腹を実施した.開腹下において左腎腹側面の腎門部に欠損孔が存在し,同部位から尿の漏出が確認されたため腎盂破裂と診断した.治療は破裂部位を修復するため,膀胱壁の一部を利用し欠損孔に補塡した.術後1週間後に手術部位の近接部にて尿の漏出を認めたが,同手技にて再度修復を行ったところ再発は認めず良好な経過が得られている.
著者
松坂 昌宏 小林 豊 萩原 紫織 望月 真太郎 高田 正弘 井出 和希 川崎 洋平 山田 浩 諏訪 紀衛 鈴木 高弘 横山 美智江 伊藤 譲 北村 修 小野 孝彦 米村 克彦
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.15-27, 2017 (Released:2018-04-19)
参考文献数
10

静岡腎と薬剤研究会は腎臓病薬物療法について学習する機会が限られていた静岡県の病院・薬局薬剤師の取り組みの現状を把握し、課題を見出すためにアンケート調査を行った。対象は第1回静岡腎と薬剤研究会に参加した病院・薬局薬剤師とした。アンケートは多肢選択式20問とし、腎機能評価や疑義照会の他、処方箋やお薬手帳への検査値の記載に関する質問を作成した。回答者は病院薬剤師42名、薬局薬剤師20名の合計62名であった。調剤時の処方鑑査の際に腎機能を表す検査値を確認する薬剤師は53名(85%)であり、薬物投与量を確認する際の腎機能評価にeGFRを使用する薬剤師は40名(65%)であった。体表面積未補正eGFRを使用するのは40名中17名(43%)と半数以下であった。腎機能を評価した上で疑義照会をしている薬剤師は48名(77%)であり、病院薬剤師42名中37名(88%)に対して薬局薬剤師20名中11名(55%)と異なっていた。その理由に検査値の入手方法と確認頻度に違いがみられ、病院薬剤師38名(90%)が検査値をカルテから入手するのに対し、薬局薬剤師18名(90%)は患者から入手していた。確認頻度では薬局薬剤師15名(75%)が検査値を入手できた時に確認しており、腎機能評価が不定期に実施されていた。疑義照会内容は過量投与が48名中45名(94%)と最も多く、薬物相互作用は7名(15%)と少なかった。処方箋に腎機能を表す検査値の記載を希望する薬局薬剤師は20名中17名(85%)であり、検査値を記載している施設の病院薬剤師は42名中7名(17%)であった。お薬手帳に検査値の記載を希望する薬局薬剤師は13名(65%)であったが、検査値を記載している施設の病院薬剤師は3名(7%)と少なく、病院薬剤師の取り組みが進んでいないことが明らかとなった。以上の結果から、地域の腎臓病薬物療法の質的向上には、腎機能評価に関する研修会の実施や薬局薬剤師が検査値を入手しやすいように薬薬連携の推進を図ることが重要である。
著者
加藤 章信 鈴木 一幸
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.1051-1056, 2010 (Released:2010-10-25)
参考文献数
17

肝硬変の栄養代謝異常として蛋白質・エネルギー栄養不良が特徴的である。このうち蛋白アミノ酸代謝異常には経口分岐鎖アミノ酸製剤が用いられ、栄養学的効果とともに有害事象の減少を含めた予後に対する有用性が明らかになっている。
著者
只石 朋仁 鈴木 英樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.351-359, 2019 (Released:2019-10-20)
参考文献数
46

【目的】高齢在宅パーキンソン病(以下,PD)患者45 名を対象に,生活空間の評価と関連する因子を検証した。【方法】評価項目はLSA,MDS-UPDRS part Ⅲ,転倒予防自己効力感尺度(以下,FPSE),10 m 歩行テスト,Timed up & go test とした。MDS-UPDRS part Ⅲの下位項目を振戦,固縮,無動,軸症状にそれぞれ割りあてた。LSA と各項目の関連性をスピアマンの相関係数で検討し,LSA を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。【結果】LSA に関連したのはFPSE(β = 0.39, p < 0.01)と軸症状(β = –0.54, p < 0.01)であり,自由度調整済み決定係数は0.66 であった。【結論】軽症から中等症のPD 患者において生活空間の狭小化にはFPSE と軸症状が関係していた。PD 患者の活動支援には軸症状に対する理学療法と,運動能力に見合った自己効力感を保つための心理的支援が必要と考える。