著者
阿部 孝哉 河本 大地 森口 洋一
出版者
奈良教育大学
雑誌
奈良教育大学紀要. 人文・社会科学 = Bulletin of Nara University of Education. Cultural and social science (ISSN:05472393)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.73-85, 2020-12

The purpose of this study is to clarify the effect of game materials on the alleviation of disgust tendency toward geography learning in junior high school social studies. First, we analyze the effects and challenges of games "Momotaro Dentetsu" as a tool for geographic learning. Next, game teaching materials "Kyushu Quiz Tour" created based on the analysis results are put into practice for junior high school students. Then, based on the image of students practicing the game materials and the results of the subsequent questionnaire, we examine what kind of game materials are effective in mitigating the detestation tendency of geographic learning. As a result, by developing the class using the game teaching material, it was possible to give stimulation to the class which tends to advance in the same form every time. And it was proven that the detestation tendency was eased by attracting the interest of the students and repeating the experience which made the geography learning to be fun. In addition, playing games with other students has the potential to lead to the formation of human relationships.
著者
木内 大佑 久永 貴之 萩原 信悟 阿部 克哉 長田 明 東 健二郎 杉原 有希 沼田 綾 久原 幸 森田 達也 小川 朝生 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.169-175, 2019 (Released:2019-07-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

研究目的は緩和ケア病棟入院中の難治性せん妄患者に対する,クロルプロマジン持続皮下注射による有効性を観察することである.2013年7月〜2014年5月において2施設の緩和ケア病棟で,せん妄に対し規定量以上の抗精神病薬治療が行われているにもかかわらずDelirium Rating Scale Revised-98(DRS-R-98)≥13で,クロルプロマジン持続皮下注射で治療したすべての患者を対象とした.評価は治療開始前と48時間後と7日後に行い,DRS-R-98<12となる,もしくはDRS-R-98が低下しかつCommunication Capacity Scale(CCS)≤2であるものを有効例とした.評価対象84名中60名(71.4% 95%CI:61-80%)が有効例であった.CCSの平均値は治療前後で1.48から1.03に改善した(p<0.001).持続皮下注射の安全性についてはCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)注射部位反応でGr2以上は1名(1.2% 95%CI:0-7%)であった.難治性せん妄患者に対するクロルプロマジン持続皮下注射は,コミュニケーション能力を保ったまま,せん妄重症度を増悪させない可能性がある.
著者
田村 純 俵原 敬 諏訪 賢一郎 野中 大史 尾関 真理子 浮海 洋史 中野 秀樹 井手 協太郎 阿部 克己 高橋 元一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, pp.1972-1974, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
3

肺動静脈瘻は先天性の中胚葉性血管形成不全を原因とする疾患である.症例は26歳,男性.Hugh-Jones II度の労作時呼吸困難あり,健康診断にて胸部X線上結節状陰影を指摘され当院紹介受診.3次元CT等で右上下肺,左下肺に肺動静脈瘻を認め,肺血流シンチグラムではシャント率16.5%であった.経カテーテルコイル塞栓術を施行し,術後血液ガス所見および臨床症状の著明な改善を認めた.
著者
中沢 啓 吉永 繁高 関根 茂樹 岡村 卓真 奥田 奈央子 小山 洋平 福士 剛蔵 山崎 嵩之 春日 健吾 川島 一公 水口 康彦 張 萌琳 江郷 茉衣 阿部 清一郎 野中 哲 鈴木 晴久 小田 一郎 斎藤 豊
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1036-1042, 2020-07-25

要旨●当院で胃型腺腫(幽門腺腺腫)と診断された25例25病変を検討した.H. pylori未感染胃に発生した症例(癌化例含む)は2例(8.0%)のみであり,23例(92.0%)はH. pylori現感染胃,もしくは既感染胃に発生した症例であった.全症例U領域もしくはM領域に位置しており,L領域の症例は認めなかった.色調は白色調,褪色調,発赤調,同色調までさまざまであり,特徴的な所見は認めなかった.肉眼型は隆起型,もしくは表面隆起型に鑑別できるものが大部分であった.全25例中12例(48.0%)に癌合併を認めており,胃型腺腫に対して内視鏡治療を行うことを検討すべきと考えられた.
著者
阿部 奈保子 阿部 洋
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.005-010, 2017 (Released:2017-01-26)
参考文献数
27
被引用文献数
1

In an E. coli cell-free translation system, we found that a circular RNA containing an infinite open reading frame produced more translation product than its linear counterpart by two orders of magnitude, because a ribosome can work more effectively towards the elongation on circular RNA than it can on linear RNA. We then tested circular RNAs containing an infinite open reading frame could be translated in eukaryotic systems, in the absence of any particular element for internal ribosome entry, a poly-A tail, or a cap structure. We found that the circular RNAs also produced long peptides in eukaryotic translation systems, possibly owing to the rolling circle amplification mechanism.
著者
森田 一三 森岡 久尚 阿部 義和 野村 岳嗣 稲川 祐成 近藤 由香 亀山 千里 近藤 香苗 小林 尚司
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.167-179, 2021-03-15 (Released:2021-03-30)
参考文献数
30

目的 高齢者における多剤併用は唾液の流量低下や口腔乾燥症を引き起こす可能性を高める。口腔の乾燥は口腔機能の低下をもたらすが,多剤併用と自覚的な口腔機能低下や客観的な口腔機能低下の関連について報告は見られない。そこで,本研究は投薬薬剤成分数と自覚的および客観的口腔機能低下の関連を明らかにすることを目的として行った。方法 2019年1月から2月に歯科健康診断のために中部地方の歯科医院を受診した,75歳以上の在宅高齢者215人を対象とした。自覚的口腔機能の評価として3項目の問診,客観的口腔機能として4項目の実測調査を行った。また,現在治療中の疾患および服薬している薬剤の情報を得た。自覚的口腔機能の3項目のいずれかに低下がある者を自覚的口腔機能の低下が認められるとした。客観的口腔機能の低下は2つのタイプについて検討した。1つは客観的口腔機能の4項目すべての項目に低下がある,もう1つは客観的口腔機能の4項目のうち2つの項目に低下があるとした。性別,年齢階級および治療中の疾患を調整した,自覚的および客観的口腔機能低下と投薬成分数の関連についてロジスティック回帰分析を用いて分析した。結果 8種類以上の成分を投薬されている者は7種類以下の者に比べ,自覚的口腔機能低下がみられた(オッズ比:95%信頼区間,2.3:1.0-5.1,P<0.05)。8種類以上の成分を投薬されている群は7種類以下の群に比べ4項目すべての客観的口腔機能に低下が見られた(4.4:1.5-12.6,P<0.01)。4項目のうち2項目以上の客観的口腔機能の低下は10種類以上の成分の投薬と関連していた(4.3:1.2-16.2,P<0.05)。 さらに,8種類以上の投薬成分数は自覚的口腔機能または客観的口腔機能4項目すべての低下をもたらした(8.1:2.1-30.8,P<0.01)。自覚的口腔機能または客観的口腔機能4項目のうち2項目以上の低下と10種類以上の成分を投薬されていることが関連していた(4.9:1.6-15.6,P<0.01)。結論 高齢者において薬剤成分数で8種類以上の投薬は,自覚的または客観的口腔の機能低下が見られることと関連した。
著者
阿部 恒之 北村 英哉 原 塑
出版者
日本感情心理学会
雑誌
エモーション・スタディーズ (ISSN:21897425)
巻号頁・発行日
vol.6, no.Si, pp.31-41, 2021-03-22 (Released:2021-03-25)
参考文献数
8

This article is a modified record of “Philosophy and Psychology III: Contrastive approaches to the COVID-19 problems,” a public symposium held at the 84th annual convention of the Japanese Psychological Association on September 9, 2020 via webinar. Before this symposium, philosophers and psychologists joined and discussed emotions (2018) and justice (2019) to stimulate psychologists to have greater interest in and to devote more attention to philosophy. It had been noted that psychologists tend to be quite indifferent to philosophy despite the fact that historical origins of psychology as an established discipline can be traced back to philosophy and physiology. In the last symposium, we, two psychologists and a philosopher, discussed COVID-19 as a problem, particularly addressing topics of “freedom and publicness” and “the future of embodiment.” Through that discussion, results showed that philosophy and psychology can be complementary and productive for both.
著者
阿部 純一郎
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.31, pp.60-71, 2018-08-25 (Released:2019-08-29)
参考文献数
37

This paper explores the interconnection between war and tourism, focusing on the “Rest and Recuperation (R&R)” program of the U.S. Army during the Korean War (1950–1953). The R&R program was a system that provided military personnel with a five-day period of leave to Japan for every six or seven months of frontline service. First, I argue that the idea of limited wartime service originated from scientific research on war neurosis (or combat fatigue) and the U.S. Army’s recreational services called “Special Services” during the Second World War. Second, I analyze how the Japanese tourist industry and GHQ/SCAP worked together to provide recreational services for U.S. armed forces stationed in Japan and other Asian countries. Finally, I consider the possibility that the R&R program had negative effects on morale, discipline and combat efficiency.
著者
阿部 亮吾
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.14, pp.951-975, 2005-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
70
被引用文献数
4 3

1980年代以降急増したフィリピン人女性エンターテイナーの存在は,アジア系ニューカマーの中でも看過できない存在である.なぜならば,彼女たちは外国人を厳しく規制する日本の入管行政において,合法的な入国・就労が認められてきたエスニック集団だからである.本稿の目的は,システム化された移住労働の今日的状況のもとで,彼女たちを他者として位置づけているポリティクスを明らかにすることである.本稿では,名古屋市栄ウォーク街のフィリピン・パブを事例に,雇用者との労使関係,顧客との相互関係に着目し,彼女たちが雇用者と顧客双方からどのようなパフォーマンスを期待されているのかを議論した.そこで明らかとなったのは,ミクロ・スケールの日常空間で作用する雇用者の空間的管理のポリティクスと顧客のまなざしのポリティクスが,移住労働の制度・法的背景と相互に関係し作用する様相であり,それに果たすフィリピン・パブという空間の役割であった.
著者
山田 文雄 杉村 乾 阿部 慎太郎 半田 ゆかり
出版者
日本熱帯生態学会
雑誌
Tropics (ISSN:0917415X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.87-92, 2000 (Released:2009-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
21 21

アマミノクロウサギPentalaglls fllrnessi は琉球列島の中部の奄美大島と徳之島だけに生息する固有種である。本種の保護を目的に,現存個体数の推定,活動性の時間的・空間的パターンの解明,及び本種の生存を脅かす移入種(とくに移入マングース)の影響の解明について研究を行った。アマミノクロウサギの生息域は縮小化と断片化が進み,生息数も減少傾向にあり, 1995 年現在の生息数は両島で2700~6500 頭と推定された。本種の行動圏面積は比較的狭く(雄1.3 ha ,雌1. 0 ha) ,夜間,森林に覆われた谷などにある巣穴から出て100-200 m 移動し,林縁部で採食と脱糞を行っていた。奄美大島では,移入捕食者であるマングースがアマミノクロウサギや生態系に及ぼす影響の大きいことが明らかになり,その対策が緊急に求めらている。
著者
宮澤 仁 阿部 隆
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.13, pp.893-912, 2005-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
5 23

本稿は,国勢調査の小地域集計結果の分析から,1990年代後半の東京都心部の人口回復に寄与した住民の特性ならびに人口増加地区における住民構成の変化を明らかにした.その結果,この時期にアフォーダビリティに関して多様な条件の住宅が供給された東京では,特定の属性の住民のみが都心居住を可能にしたわけではなく,特定の町丁へ転入した住民は,家族構成と社会階層に応じて居住地・住宅を選択していた.このことは,都心部の居住地構造にミクロスケールの量的・質的変化を生じさせ,短期間にその不均一性を高めたと考えられる.この不均一性の高まりに伴い発現する都市の新たな現象や社会問題の解明に取り組むことが今後の課題である.
著者
阿部 史郎
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.474-485, 2005-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本稿は,製造業が製品の納入において高速道路をどのように利用しているのかを,JITが典型的にみられる自動車部品産業の事例を用いて明らかにする.製品ごとに事業所間分業が行われているため,工場は分散していても製品の納入の空間はどの企業も広い.納入先までの距離が長いと高速道路の利用が高まる.企業が高速道路を利用する場合は,輸送において輸送時間の短縮と定時性の確保を重視している場合である.これは安定した生産を行うためである.企業が高速道路を利用しない場合は,輸送費の削減を重視している場合である.高速道路の利用には納入先の影響もある.下請のピラミッドの階層が下がると製品の単価が下がり,納入先からのコストの要求が厳しくなる.そのため輸送時間の短縮と定時性の確保を重視しているとしても,比重としては輸送費を無視できなくなる.
著者
新田 孝作 政金 生人 花房 規男 星野 純一 谷口 正智 常喜 信彦 後藤 俊介 阿部 雅紀 中井 滋 長谷川 毅 濱野 高行 三浦 健一郎 和田 篤志 山本 景一 中元 秀友
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.579-632, 2020 (Released:2020-12-28)
参考文献数
23
被引用文献数
22

日本透析医学会統計調査 (JSDT Renal Data Registry: JRDR) の2019年末時点における年次調査は, 4,487施設を対象に実施され, 施設調査票は4,411施設 (98.3%), 患者調査票は4,238施設 (94.5%) からほぼ例年通りの回答を得た. わが国の慢性透析患者数は年々増加し, 2019年末の施設調査結果による透析患者数は344,640人に達し, 人口百万人あたりの患者数は2,732人であった. 患者調査結果による平均年齢は69.09歳で, 最も多い原疾患は糖尿病性腎症 (39.1%), 次いで慢性糸球体腎炎 (25.7%), 第3位は腎硬化症であった (11.4%). 2019年の施設調査結果による透析導入患者数は40,885人であり, 2018年から417人増加した. 患者調査結果による透析導入患者の平均年齢は70.42歳であり, 原疾患では糖尿病性腎症が最も多く41.6%で, 昨年より0.7ポイント少なかった. 第2位は腎硬化症 (16.4%) で, 初めて慢性糸球体腎炎 (14.9%) を上回った. 2019年の施設調査結果による年間死亡患者数は34,642人であり, 年間粗死亡率は10.1%であった. 主要死因は心不全 (22.7%), 感染症 (21.5%), 悪性腫瘍 (8.7%) の順で, 昨年とほぼ同じ比率であった. 2012年以降, 血液透析濾過 (HDF) 患者数は急増しており2019年末の施設調査票による患者数は144,686人で, 維持透析患者全体の42.0%を占めた. 腹膜透析 (PD) 患者数は9,920人であり2017年から増加傾向にある. 腹膜透析患者のうち19.2%は血液透析 (HD) やHDFとの併用療法であり, この比率はほぼ一定していた. 2019年末の在宅HD患者数は760人であり, 2018年末から40人増加した. 2019年調査では, 2009年から10年ぶりにCKD-MBDに関する総合的な調査が行われた. 今後は新しく開発された薬剤の治療効果や問題点, 2012年に改訂されたガイドラインの影響等を詳細に解析する予定である. これらのデータは, CKD-MBDガイドラインの改定の基礎資料となり, より治療効果の高い日常臨床の治療パターンの提案が期待される.
著者
阿部 富士子
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.40-47, 2020

「扇絵」は扇にするために扇面に描かれた絵である。しかし扇はその形態ゆえに傷みやすく、経年劣化した過去の扇は、保存修復の為、しばしば扇骨を抜かれ平らに表装されている。そしてそれらの扇絵が調査される際は、その平面になった状態のままで研究が続けられている。しかし扇絵を正しく解釈するには、元の姿を推定することが重要と考え、ここで元の扇を復元的に制作したものを「再現扇」と呼び、「扇絵」の理解の為の手段として提案した。 「再現扇」の制作には、推定が必要であり、1.折面と扇骨の位置関係、2.折目線と折面の状態、3.扇面比に伴う歪みの変化、などの扇そのものの物的・工作的特性と、4.扇絵自体の描画特性、の4項目を手掛かりとした。またそれらに加え過去の扇の計測数値や、江戸時代の絵師が描いた現存する扇の描画例も推定の参考にした。 次に先行研究から、「写楽扇面」の調査分析、及び「源氏物語絵扇面」の構図分析の二事例を取り上げた。それらに対し、具体的に「再現扇」を作成することによって従来とは異なる観点からの解釈を行った。 結果、①写楽扇面は、折目の存在からそれぞれ異なる履歴を想定した二説があったが、再現扇の作成を通じて新たな履歴が想定された。そしてその立体となった扇からは平面とは異なり登場人物の視線が自然と向き合う動きのある歌舞伎の一場面を感じさせるものとなった。また調査対象となった、同じく写楽作とされる「老人図」の扇とも類似する扇の形態を妥当と考えるに至った。②源氏物語絵扇面は室町時代の作である。扇絵に描かれた不自然に見える柱や床の歪みを矩形に変換することで構図解明が追求されてきたが、矩形の再現図では歪みは解消できていなかった。それに対し「再現扇」からは「歪み」の不自然さは感じられず、凹凸を生かした奥行きのある構図となった。源氏絵を得意とした土佐派は、当時より、扇絵の描画特性を備えた固有の描画法を確立していたのではないかと考えさせる結果となった。