著者
青木 茂 佐藤 壽彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.204-218, 2004-11-30

南大洋季節海氷域における生物・化学物質循環過程の解明を中心課題として,第43次日本南極地域観測隊「専用観測船」観測が,2002年2月に観測船「タンガロア」号によって実施された.本報告では海洋物理観測の実施状況および測器の運用結果について報告する.CTD電気伝導度に対する航海前後でのキャリブレーションはドリフトの小さいことを示し,塩分換算での差も平均で0.0014に収まった.XCTDの精度を検証する試みも2キャスト実施され,XCTDとCTDとの比較結果についても議論する.本航海では,概ね,良好な精度の物理観測が実施されたものと結論される.
著者
青木 俊明 荒砥 真也 塩野 政徳
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.55-64, 2007

公共事業の合意形成では、周囲の他者の意向が自己の態度形成に強く関わることがある。特に、地方部では、強いコミュニティーが残っている地域も多く、この傾向は強まると思われる。一般に、交渉においては、その過程の公正さが重要であることが報告されているが、他者の意向の影響を取り込んだ検討は十分には行われていない。そこで、本稿では、不利益を想起させる同調圧力が、行政担当者から示される場合を想定し、市民の態度形成の仕組みについて検討を行った。東北工業大学の学生を対象にシナリオを用いた心理実験を行ったところ、次のような知見を得た。すなわち、1) 周囲の人の反対を相千に伝えた場合には、同調圧力が生じる一方で手続き的公正さの評価が高まる。2) 周囲の反対とそれによる不利益受忍の可能性が知覚された場合には、自己利益保護の観点から賛否態度が形成される傾向が示唆された。このとき、手続きの公正さは重要な態度形成要因ではないことも示唆された。3) 周囲の人の反対が知覚されない場合には、自己利益感と手続きの公正さに基づいて態度が形成されることが改めて確認された。
著者
青木 美奈 藤田 昌彦 町澤 朗彦 皆川 双葉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2338-2345, 2001-10-01
被引用文献数
1

サッカード中には, 網膜に写った外界の像は激しく揺れ動いているにもかかわらず, 我々はその動きを知覚することはない.このサッカード抑制という現象について, 従来から様々な実験が行われてきており, その要因には中枢性の抑制説, マスキング説などが考えられてきた.本論文では, 水平サッカード中に色縞のパターンを垂直, 水平にして瞬時呈示し, その判別をさせる実験を行って, サッカード中にも視覚が成立していることを示した.また, 背景輝度を様々に変化させた実験も行い, 輝度差によるマスキングの効果を確認した.これらの実験結果より, サッカード中の知覚が低下する要因として, 主にマスキングが働き, 更に網膜像の濁りや中枢性の抑制も多少なりとも存在し, それらが合成されていることを単一の実験手法で確認できた.
著者
青木 宏文 大野 隆造 山口 孝夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.68, no.563, pp.85-92, 2003
被引用文献数
2

In Part 1, a simulation system was developed to examine human spatial orientation in a virtual weightless state. By conducting experiments in several routes of connected modules, we found some relevant variables for spatial cognition errors. Part 2 clarifies the causes of spatial cognition errors by the similar experiments using more complicated routes. The results showed the errors were able to be explained by two causes. One cause was that subjects did not recognize the rotation of the frame of reference, especially more often when they turned in pitch direction rather than in yaw. The other cause was that subjects were incorrect in the place, the direction, and the sequence of turns.
著者
大野 隆造 青木 宏文 山口 孝夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.558, pp.71-77, 2002
被引用文献数
3 3

In a virtual weightless environment, pointing and modeling tasks were conducted to examine subjects'orientational skills. Subjects who wore a head-mounted display in a reclining chair moved from one end to the other end in several routes that were made by three or four modules that were connected by cubical modules, and pointed to the start point and made the experienced route by a scale model. Analyses of the results show the ability of spatial orientation varies with such variables as the number of bends, the number of embedding planes and the number of planes with respect to the body posture. Subjects who miss the tasks have a tendency not to take the change of the direction of their body axes into account.
著者
青木 恵子
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

安全で安心な食品の流通のために必要な情報公開の方法を検証するため、一般的な人々の嘘に対する意識を金銭的インセンティブがある実験環境で検証した。実験の結果は、嘘をつく割合は全体で約40%であった。匿名性で貰える金額が多く、対象者が若い人の場合が一番嘘をつく割合が多かった(約50%)。相手の顔が見える場合は、匿名性の場合に比べて、嘘をついたことを自白する人が多い傾向が観察された。嘘をつかれて、その通りの行動をした(騙された)人の割合は、嘘をつかれた人達の中で約68%であった。騙された人は、実験の種類や個人属性に大きな差がなかったが、相手を信じる傾向が観察された。
著者
岡本 依子 須田 治 菅野 幸恵 東海林 麗香 高橋 千枝 八木下(川田) 暁子 青木 弥生 石川 あゆち 亀井 美弥子 川田 学
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.23-37, 2014

親はまだしゃべらない乳児と,どのようにやりとりができるのだろうか。本研究は,前言語期の親子コミュニケーションにおける代弁の月齢変化とその機能について検討するため,生後0~15ヶ月の乳児と母親とのやりとりについて,代弁の量的および質的分析,および,非代弁についての質的分析を行った。その結果,代弁は,「促進」や「消極的な方向付け」,「時間埋め」,「親自身の場の認識化」といった12カテゴリーに該当する機能が見いだされた。それらは,「子どもに合わせた代弁」や「子どもを方向付ける代弁」,および,「状況へのはたらきかけとしての代弁」や「親の解釈補助としての代弁」としてまとめられ,そこから,代弁は子どものために用いられるだけでなく,親のためにも用いられていることがわかった。また,代弁の月齢変化についての考察から,(1)0~3ヶ月;代弁を試行錯誤しながら用いられ,徐々に増える期間,(2)6~9ヶ月;代弁が子どもの意図の発達に応じて機能が限られてくる期間,(3)12~15ヶ月;代弁が用いられることは減るが,特化された場面では用いられる期間の,3つで捉えられることが示唆された。そのうえで,代弁を介した文化的声の外化と内化のプロセスについて議論を試みた。
著者
青木 千帆子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

書籍アクセシビリティを確保するための支援技術や制度、道具など、必要な要素は既にそろっている。しかし、現実には読書障害者に対する円滑なデータ提供は行われていない。そこで解決の手がかりを得るため、(1)書籍アクセシビリティの国際比較、(2)支援技術の活用の分析、(3)関係機関の連携のあり方の検討を行った。著作物へ接近する努力は「障害者の問題」として処理されてきた歴史がある。故に、読書障害者の読書を可能にする法や技術が整備されたとしても、それがどのように維持活用されているかは、一般に共有されていない。今後、データ提供のための関係機関による連携や、ルールに関する具体的な対話が強く求められる。
著者
青木 健一
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.6, pp.849-855, 2002-12-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
30

Aspects of cultural transmission in humans are reviewed with special reference to evidence for and against vertical (parent-to-child) and non-vertical transmission. Henrich's (2001) model of biased horizontal transmission may satisfactorily account for the S-shaped adoption curves (e.g., for the spread of hybrid seed corn). The demic expansion hypothesis for the spread of early farming in Europe (Ammerman and Cavalli-Sforza, 1971, 1973) is reevaluated in the light of new theoretical results (Aoki et al., 1996). Hewlett et al.'s (2002) test of the demic expansion, acculturation, and cultural-materialistic hypotheses on 36 African ethnic groups is described.
著者
保坂 遊 青木 一則
出版者
聖和学園短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

保育所における3歳未満児への造形活動の実態調査より抽出された課題を基に、臨床美術を取り入れたプログラム開発と実践研究を行い、更に保育者養成カリキュラムの具体的なモデルを示した。宮城県内保育士1430名のアンケート調査では、発達の個人差への配慮、活動テーマや具体的内容、評価方法、子どもの満足度に対しての問題意識に有意差が認められた。また感覚を多用する臨床美術を導入したプログラム開発、保育園2カ所での実践を通し、乳幼児の活動に対する意欲向上や変化、保育士の気づきと理解について効果が認められた。更保育者養成における保育表現技術演習のカリキュラム案を作成し、造形表現技術の効果的な教授内容を提案した。
著者
青木 亮三
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.621-628, 1990-09-05

脳は人間存在の根元に関わるものとして究極の興味ある対象であるが, まるで分かっていない. 高度の判断を司る神経線維の絡み合いは余りに複雑で, 実体の解析を拒否している. ところがその脳が全体として電気信号を発している, しかも, それが驚くほど単純な波形で観測されている. 多数の構成要素からなる系の単純な集団振動, これこそは相関の強い多体系として, 物理学研究者にとって好個の対象と考えられる. いままで生体については, ともすれば性急に物理的概念を当てはめようとしたり, 手近の解析的手法をそのまま応用することが試みられてきたが, この解説から対象に即した新しい観方やアプローチが触発されれば幸いである.
著者
青木 淳一
出版者
神奈川県自然環境保全センター
雑誌
神奈川県自然環境保全センター報告 (ISSN:13492500)
巻号頁・発行日
no.2, pp.81-85, 2005-03

丹沢生物相の異変。私が丹沢の調査に関わったのは今から43〜44年前の「丹沢大山学術調査」で、まだ私が26歳の時です。学術調査ですから、研究者や専門家が自分達の専門分野を興味の赴くままに調査したということです。その報告書をなくしてしまったので神田の古本屋で探したら大変高価であったのでびっくりしました。みなさんが報告書を入手するのも大変ですから、第1回目の調査以降どんなことがわかったかについて、私の専門の動物の観点からお話ししていきます。
著者
赤澤 威 西秋 良宏 近藤 修 定藤 規弘 青木 健一 米田 穣 鈴木 宏正 荻原 直樹 石田 肇
出版者
高知工科大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

旧人ネアンデルタール・新人サピエンス交替劇の最大の舞台のひとつ西アジア死海地溝帯に焦点を当て、事例研究として、一帯における交替劇の真相解明に取り組み、次の結果を得た。両者の文化の違いは学習行動の違いに基づく可能性が高いこと、その学習行動の違いは両者の学習能力差、とりわけ個体学習能力差が影響した可能性が高いこと、両者の学習能力差を解剖学的証拠で検証可能であること、三点である。以上の結果を統合して、交替劇は両者の学習能力差に基づく可能性があり、この説明モデルを「学習仮説」と定義した。
著者
青木 茂樹
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、公共施設などに設置された監視カメラ映像から、注視すべき映像を見落とさずに検出するための自動監視システムが注目されている。これまでの研究では、検出すべき行動やイベントなどのモデルデータを予め与え、モデルデータと合致する行動を検出する手法や、初めて観測された行動や観測頻度の低い行動を検出する手法が提案されている。これらの手法は特定の環境に依存した情報を学習しているため、学習結果を別の環境に適用できないことが課題となっていた。本研究課題では、複数の環境に共通の特徴に注目することによって、ある環境で学習した日常的な行動を基に、学習環境とは異なる環境で非日常状態を検出する手法を提案している。