著者
高木 廣文
出版者
東邦大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

質的研究での主観的なテクスト解釈の問題点について、構造構成主義、ウィトゲンシュタインの言語に関する論考、科学的言語学であるソシュールの一般言語学およびチョムスキーによる普遍文法に基づき検討した。医療関係者、看護関係者及び哲学者等からテクスト解釈の問題点について情報収集し、心脳構造の言語システムの仮説的モデルを考察した。その結果、テクスト解釈の一般的方法をある程度は定式化できることが示唆された。さらに、ヴィエルジュビツカによる言語の概念的原子要素を用いたテクスト解釈、脳科学からのアプローチ、クワインの科学的な言語哲学の理路が、今後のテクスト解釈の科学的研究上で有用ではないかと考えられた。
著者
高木 英典 花栗 哲郎 HAROLD Y. Hwang 笹川 崇男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題では、強相関エレクトロニクスヘの展開を念頭に置き、モット絶縁体における半導体物理を構築することを目的とした。具体的にはモット絶縁体中の不純物状態、界面障壁、トランジスタ動作の研究を進め、それらが通常の半導体物理からどのような修正を受けるのかということについて実験的検証を進めた。その結果、以下のような成果を得ることに成功した。1.STM/STSを用いた実空間局所電子状態観察を行い、強相関系特有の磁気・軌道臨界状態にある遷移金属酸化物Sr_3Ru_2O_7を対象として不純物状態および界面状態の考察を進めた。意図的に導入したMn不純物の影響の長さスケールが数nmに及ぶことや表面での電子再構成・強磁性臨界性に由来する低エネルギーでの電子状態密度の異常を発見した。2.有機ゲート薄膜を用いた酸化物トランジスタの構築を考案し、そのペロブスカイト酸化物SrTiO_3への適用を試みた。その結果、低温で世界初の電界誘起金属-絶縁体転移を実現し、その状態において1000cm^2/Vsを凌駕する移動度を達成した。また、磁気抵抗の異方性の評価からSrTiO_3界面において厚さ数nm程度の二次元金属層が生じていることを明らかにした。3.遷移金属酸化物の抵抗変化メモリ効果がNiOやCuOなどの単純な二元系遷移金属酸化物で普遍的に観測されることを見出した。そして、平面型素子の作製、その表面状態の直接観察や電圧電流特性の系統的な評価から、抵抗スイッチングが酸化物バルク領域の伝導フィラメント形成に由来していること、伝導フィラメント-金属電極界面における障壁がメモリ評価を生じていることを実験的に明らかにした。
著者
天間 雄祐 小尾(永田) 紀翔 林(高木) 朗子
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.94-99, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
23

昨今の脳神経科学の発展は著しく,脳の作動原理を次々に明らかにしてきたものの,統合失調症の病態生理は未解明な部分が多く,したがって病態生理に立脚した根治薬は存在しない。しかしながら,人類遺伝学をはじめとするさまざまなヒト由来サンプルや所見より,グルタミン酸作動性シナプスの異常が統合失調症の病態生理として示唆されている。そこで本稿では,精神疾患関連遺伝子のモデル動物を切り口に,モデル動物だからこそ可能となる操作的・侵襲的実験手法を用いた実験で,どのようなシナプスパソロジーが明らかにされているかについて述べる。最後に,われわれが開発したシナプスを時空間的に直接光操作することができるシナプスプローブを紹介する。このように最先端の技術を駆使した仮説検証を繰り返すことにより,精神疾患の解明を目指すわれわれの戦略について述べる。
著者
池澤 秀起 高木 綾一 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.261-264, 2015 (Released:2015-06-24)
参考文献数
7
被引用文献数
1

〔目的〕腹臥位での下肢空間保持課題において,肩関節外転角度の変化が下肢空間保持側と反対側の僧帽筋下部線維の筋活動に与える影響を検討した.〔対象〕健常男性16名とした.〔方法〕課題は腹臥位での下肢空間保持とし,肩関節の外転角度を変化させ,各々の肢位での筋活動を比較した.測定筋は下肢空間保持側と反対側の僧帽筋下部線維とした.〔結果〕下肢空間保持側と反対側の僧帽筋下部線維の筋活動は,肩関節外転角度が0度・30度・60度に対して90度・120度において有意に増大した.〔結語〕僧帽筋下部線維は脊柱の固定に加え,上肢を重さとして利用するために肩甲骨の上方回旋作用にも関与したのではないかと考えられた.
著者
茂手木 義男 濵島 秀徳 華岡 眞幸 岡本 行人 三澤 一男 谷 博一 岡田 菜穂子 宮澤 康 櫻井 千里 高木 智幸
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.76-89, 2022-06-30 (Released:2022-07-07)
参考文献数
8
被引用文献数
1

現在日本において臨床で広く用いられている歯周炎分類(日本歯科医学会 JDA 2007)とCAL(臨床的アタッチメントレベル)の関係を調べる臨床研究を全国10名の臨床医が2016年から2021年まで5年間行い,1,375名のべ125,468歯の調査結果を得た。また歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)との関係を精査することで,歯周炎指標をより有用に使用できると考えた。元々歯周炎分類はCALの検査項目はない。その為1歯毎に歯周炎分類とCAL値がひも付いた臨床研究結果から,CAL値(一部PD値,動揺度)を介して歯周炎分類と歯周炎新分類(ステージ,グレード)の関係を調べた。歯周炎新分類(AAP・EFP 2018)の重症度について「最大CAL値」から見た場合,ステージ(I,II,III,IV)各々に占める歯周炎分類値(P0,P1,P2,P3,P4)の被験歯数の分布は,IはP0,IIはP1,IIIとIVはP2が大多数だった。また複雑度について「最大PD値と動揺度」から見た場合,IはP1,IIとIIIはP2,IVはP3が大多数だった。その他ステージ重症度の「歯の喪失」及びグレード進行の直接証拠「最大CALの経年変化」では両者の関係は不明であった。
著者
梶迫 美沙子 光田 尚代 高木 綾一 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.101-108, 2012 (Released:2012-12-27)
参考文献数
5

A patient with a trochanteric fracture of the left femur presented at our hospital. Initially, muscle strengthening of the left lower leg was attempted. This led to subsequent improvement in muscle weakness, and the patient could walk by herself with a cane. However, when she tried walking without a cane, the movement of her first step seemed unstable. We realized that the major impairment was instability at the first step of walking. To resolve this issue, we aimed at practical improvement of the instability. We focused on alignment of the pelvis and trunk, and on the center of pressure at the first step of walking. Efficient, smooth walking is possible due to a reverse reaction phenomenon derived from the standing position in a healthy person. However, in the present case, the movements of the center of pressure and the patient’s standing position at the first step were different from the general pattern. We concentrated on improving her posture and control in the standing upright position. Thereafter, the patient’s standing upright position and the center of pressure at the first step changed remarkably and she acquired smooth walking following the first step.
著者
小林 真弓 小貫 琢哉 稲垣 雅春 西田 慈子 高木 香織 佐川 義英 中村 玲子 尾臺 珠美 藤岡 陽子 市川 麻以子 遠藤 誠一 坂本 雅恵 島袋 剛二
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.56-60, 2015 (Released:2015-07-10)
参考文献数
19
被引用文献数
2

〔緒言〕月経随伴性気胸 (Catamenial Pneumothorax, 以下CP) は胸腔内子宮内膜症の一種であり, 詳細な病態や標準治療は明らかではない。診療科をまたぐ疾患であり, 呼吸器科医と婦人科医の連携が必要となる。今回, 当院で経験したCP症例の臨床経過を検討した。 〔方法〕1989年1月から2014年8月の間に当院で気胸に対して胸腔鏡下肺手術が施行された症例のうち, 病理学的に肺・胸膜・横隔膜のいずれかに子宮内膜症を認めた8例を対象とし, 臨床像,治療を後方視的に検討した。 〔結果〕発症年齢中央値は37歳。8例中7例 (87.5%) が右側発症であった。骨盤内子宮内膜症の検査をした例が6例, うち5例が骨盤内子宮内膜症を有していた。手術後からの観察期間中央値は33.5か月。8例中6例が術後気胸再発, うち2例はジエノゲスト内服後の再発であった。いずれの症例もジエノゲスト内服またはGnRHa・ジエノゲストSequential療法で再発を防ぐことができた。 〔結語〕気胸は緊急で脱気等の処置が必要であり再発防止には治療薬服用の高いコンプライアンスが求められる。GnRHa投与症例では術後再発を認めておらず, 術後薬物療法としてGnRHaまたはGnRHa・ジエノゲストSequential療法が望ましいと考える。ただし, ジエノゲストのみで再発しない症例もあり, 治療法の選択に関してさらなる症例の集積が必要である。
著者
高木 忠雄
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.250-253, 1994-08-25 (Released:2011-08-11)

閃光発光の調光方式の主流となっているTTL調光方式には, 被写体サイズや反射率の大小に影響されて, 露出が適正値からずれる場合があるという未解決の問題があった。本論文で紹介するマルチエリア調光システムは, 1) 調光エリアの分割化, 2) モニタ発光の実施, 3) 距離情報の利用という3要素を新たに導入することで, 上記課題を解決した。これにより, 閃光撮影における適正露出の確度を飛躍的に向上させることに成功した。
著者
高木 美嘉
出版者
待遇コミュニケーション学会
雑誌
待遇コミュニケーション研究 (ISSN:13488481)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.17-33, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
23

本稿は、現在、広く使用されている「やさしい日本語」の既存のガイドラインの中で、敬語はどのように取り扱われているかを検証した上で、「やさしい日本語」における敬語の取り扱い方の課題を提示するものである。このテーマを取り上げたのは、筆者が授業等で「やさしい日本語」を解説する際、一般書籍や資料の中では、敬語の使用に関して、「使わない」とただ書かれていることが多く、理論的な説明があまりなされていないことに気付いたことが契機になっている。敬語の運用に関する指針についても明確に作成することで、「やさしい日本語」がさらに使いやすいものになることが期待できると考え、現状を調査、整理することにした。調査と考察は次の手順で行った。まず、既存の「やさしい日本語」の中で敬語がどのように扱われているか、現状を整理した。現状を知る資料として、一般に販売されている「やさしい日本語」を解説した一般書籍6冊と行政組織がホームページなどで一般市民に公開している「やさしい日本語」の7つのガイドラインの中から、敬語に関する記述内容を検索、抽出し、整理した。その結果、全体的な傾向として、尊敬語と謙譲語は使わないこと、文末の「です・ます」は欠かさないようにすること、依頼表現は「〜てください」に統一することといった、一定の傾向があることがわかった。最後に、「やさしい日本語」における敬語の扱いについて、「丁寧さの原理(蒲谷2013)」と「敬語の指針(文化審議会答申2007)」などと照らし合わせて考察し、今後の「やさしい日本語」における敬語の使い方の検討課題を提示した。
著者
真鍋 由美子 石崎 祐子 高木 菜波 窪田 幸生 竹井 仁
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0624, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】臨床では、大殿筋の簡便な強化方法として、ブリッジ動作が用いられる。しかし、ブリッジ活動では、大殿筋だけでなく脊柱起立筋やハムストリングスなどの体幹背面の筋も活動する。実際にブリッジ動作を行うと、大殿筋と比較してハムストリングスが優位に活動していると感じることがある。本研究では、足関節の肢位を変化させることで、ブリッジ活動におけるハムストリングスの活動に変化が見られるか検討したので報告する。【方法】対象は、実験の趣旨を説明し、同意を得た健常者17名(男性9名・女性8名、平均年齢27.8歳、平均身長165.8cm、平均体重58.0kg)とした。運動課題は、3条件(1.足関節中間位による足底接地、2.足関節背屈位による踵接地、3.足関節底屈位による足先接地)によるブリッジ動作とした。3条件とも、背臥位にて上肢を体幹前面で組み、股関節を50度とした膝立て位を開始肢位とした。ブリッジ動作は、肩甲骨を床に接地した状態にて肢位の安定が得られてから5秒間保持し、10秒の休憩を挟んで5回反復した。3条件の順番は無作為とした。ブリッジ動作中に、バイオモニターME6000(日本メディックス)を使用し、表面筋電図を記録した。被験筋は、蹴り足側の外腹斜筋・腹直筋・大腿直筋・前脛骨筋・腰腸肋筋・大殿筋・大腿二頭筋長頭・腓腹筋外側頭とした。表面筋電から全波整流平滑化筋電図を求め、後に2~4回目のブリッジ動作中の1秒間の積分筋電値を算出し、3回の平均値を解析に用いた。解析にはSPSS(ver.14)を用い、条件1の積分値に対する条件2と3それぞれの積分値の割合を算出し、分散分析と多重比較検定を実施した。有意水準は5%未満とした。【結果】条件1と比較して条件2の背屈位では、前脛骨筋(平均7.35)が有意に増加し、大腿二頭筋長頭(0.65)が有意に低下した。条件1と比較して条件3の底屈位では、外腹斜筋(平均1.28)・腹直筋(1.22)・大腿直筋(1.44)・前脛骨筋(3.59)・腰腸肋筋(1.29)・大殿筋(1.5)・大腿二頭筋長頭(1.98)・腓腹筋外側頭(5.33)の全筋で有意に活動が増加した。【考察】ブリッジ活動には、殿部を持ち上げるために膝関節と股関節の伸展が必要である。しかし、条件2では、前脛骨筋の筋収縮によって脛骨が前方に引き出されて大腿骨は尾側に引かれ、さらに、腓腹筋が伸張されることで膝関節に屈曲の力が加わる。このことで、ブリッジ活動による膝伸展に伴う股関節伸展が制御され、股関節伸展作用を持つハムストリングスの活動が低下したと考える。一方、底屈位では、肩甲骨と足部がなす支持点の距離が中間位に比べて長くなり、かつ殿部を挙上する高さが中間位に比べて高くなるため、位置エネルギーも増加する。また、中間位に対して足関節の安定性を増やす必要も増え、全ての筋活動が大きくなったと考える。よって、ハムストリングスの活動を抑制するためには、足関節背屈位でのブリッジ動作が有効であることが示唆された。
著者
小田 寿 高木 信嘉 常田 康夫 矢花 真知子 金子 好宏
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.221-225, 1988-02-25 (Released:2010-07-05)
参考文献数
20

It has been reported that rifampicin attenuates an effect of corticosteroid. We observed nonresponsiveness to prednisolone treatment during rifampicin administration in a case of adult nephrotic syndrome. A 21 years old man had the onset of facial edema and ascites in and was diagnosed as nephrotic syndrome (minimal change) at a certain hospital. He was treated with prednisolone and obtained complete remission. He had the complaint of chest pain in May 1984, and was transfered to our hospital. We diagnosed him as nephrotic syndrome and tuberculous pleuritis. We administered him isoniazid 300 mg/day, rifampicin 450 mg/ day, streptomycin 3 g/week and prednisolone 30 mg/day. His urinary protein was not decreased. Subsequently, we administered him predonisolone 60 mg/day. But his urinary protein was not changed. We thought that rifampicin might attenuate the effect of pre-dnisolone. After rifampicin was discontinued, urinary protein was decreased rapidly. He obtained complete remission and was discharged from our hospital. It was reported that a patient with Addison's disease required increased corticosteroid dosage whilst receiving rifampicin and had cortisol catabolism following hepatic microzomal enzyme induction by rifampicin. Our case of nephrotic syndrome showed the nonresponsi-veness to prednisolone treatment during rifampicin administration. The corticosteroid is essential to treatment of nephrotic syndrome and collagen disease, and rifampicin is an important drug in treatment of tuberculosis. We should pay attension to drug interac-tion between corticosteroid and rifampicin in the cases with combination of these drugs.