著者
長沼 亮滋 矢部 一郎 高橋 育子 松島 理明 加納 崇裕 佐々木 秀直
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-87, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
27
被引用文献数
2

3,4-diaminopyridine(3,4-DAP)を投与した9例のランバート・イートン筋無力症症候群患者の治療効果について後方視的に検討した.3,4-DAPは筋力低下と自律神経異常症に対し有効である一方,傍腫瘍性小脳変性症の小脳性運動失調に無効であった.有効例8例の投与期間は15~149ヵ月であった.3例が10年以上投与しており,長期間安全に投与できた.2例が小細胞肺癌(small cell lung carcinoma; SCLC)により死亡し,1例がSCLCの悪化で投与中止した.副作用が生じた2例のうち1例は投与中止したが1例は減量し投与継続した.維持用量や副作用の生じた用量には個人差があり,慎重な用量決定を必要とした.
著者
高橋 海 山原 可奈子 伊藤 浩平 岩岡 和博 後藤 雄一 寺山 靖夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001292, (Released:2019-09-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

症例は30歳女性.25歳頃から数回にわたり皮質盲症状を呈し近医を受診した.脳梗塞様の画像所見と糖尿病の病歴からミトコンドリア病が疑われたが,血清および髄液乳酸値が正常,筋病理に異常を認めないことから確定診断には至らなかった.30歳時に意識障害と皮質盲症状,頸部および右上肢の不随意運動を呈して当院を受診.頭部MRIで両側大脳基底核の異常信号とMRスペクトロスコピーで乳酸ピークの増大を認め,髄液乳酸値の高値,ミトコンドリア遺伝子解析でm.4296G>A遺伝子変異を認めたことからミトコンドリア脳症と診断した.成人発症のm.4296G>A遺伝子変異の報告は非常に稀であると考え文献的考察を行い報告する.
著者
高橋 徹至 遠藤 乙音 古閑 寛
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.100-106, 2020 (Released:2020-03-25)
参考文献数
20

要旨:症例は75 歳,男性.X−1 年11 月,左上肢と両下肢の脱力を呈する脳梗塞で他院入院.退院後も症状再燃を繰り返した.クロピドグレル内服にて経過観察となるも両下肢脱力の進行を認めた.ビタミンB12 欠乏性多発神経炎の診断でビタミンB12 投与されたが症状進行.下肢遠位筋の筋力低下と深部腱反射消失,手袋靴下型の温痛覚障害を認め,女性化乳房,肝脾腫,下肢に色素沈着と浮腫を認めた.POEMS 症候群の疑いにてX 年9 月当院に精査入院.入院数日後に構音障害と左上下肢麻痺出現し,右中大脳動脈領域の梗塞と右中大脳動脈閉塞を認めた.血清VEGF 著明高値,神経伝導検査(以下,NCS)で脱髄および軸索障害の所見を認め,POEMS 症候群と診断した.本症例は当初主幹動脈狭窄を認めなかったが,POEMS 症候群の発症とともに閉塞に至った.POEMS 症候群とビタミンB12 欠乏,脳血管障害との関連を文献的考察含めて報告する.
著者
古田島 裕斗 嵯峨 智 高橋 伸 田中 二郎
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2017-HCI-172, no.19, pp.1-7, 2017-02-27

近年情報端末上で閲覧する電子書籍が広く普及している.電子書籍は独自の利点を持っているが,従来の紙書籍も多くの利点を持ち,特にページめくりのような自由度の高いナビゲーションは比較の場においてたびたび取りあげられる.本研究では電子書籍上で,紙書籍のような柔軟で直感的なナビゲーションを再現することで,操作性を向上させる手法を提案する.本手法ではタブレット端末と端末背面に設置した圧力センサのみを用いることで,電子書籍の利点を保ったまま,柔軟なページめくり等のナビゲーションを実現する.また本手法を取り入れた電子書籍閲覧システムを実装し,数種類の評価実験を行った.その結果,本手法は多少の改善点は挙げられるが既存の電子書籍リーダーと遜色なく,改善を行えば更なる高評価が望めると分かった.
著者
佐久川 裕行 山口 さやか 山城 充士 苅谷 嘉之 新嘉喜 長 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.94-98, 2020

<p>31 歳,女性。16 歳頃より自覚していた左足底の黒色斑が,妊娠 25 週頃より急速に増大し,隆起してきたため,妊娠 30 週で当科を紹介された。初診時,左足底に 18×10×2 mm の潰瘍を伴う黒色結節があり,悪性黒色腫を考え 10 mm マージンで全切除生検を行った。病理組織学的には,表皮真皮境界部を主体として,豊富なメラニン顆粒を含有し核小体の目立つ異型細胞が胞巣状に増殖しており,末端黒子型の悪性黒色腫と診断した。Tumor thickness は 3 mm,深部断端,側方断端は陰性であった。pT3bNXMX stage Ⅱb 以上の診断で,早期の全身検索および補助化学療法が必要と判断し,妊娠 32 週 4 日に経膣分娩で早期娩出した。胎盤や出生児に転移所見はなかった。出産後,全身検索,センチネルリンパ節生検を行い,末端黒子型悪性黒色腫 stage Ⅱb(pT3bN0M0)と診断し,術後の補助化学療法として,DAV-Feron 療法を 3 クール行い IFN-<i>β </i>の局注射療法を継続している。術後 4 年が経過しているが,再発,転移はない。</p>
著者
角森 唯子 東中 竜一郎 高橋 哲朗 稲葉 通将
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.DSI-G_1-10, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

The task of detecting dialogue breakdown, the aim of which is to detect whether a system utterance causes dialogue breakdown in a given dialogue context, has been actively researched in recent years. However, currently, it is not clear which evaluation metrics should be used to evaluate dialogue breakdown detectors, hindering progress in dialogue breakdown detection. In this paper, we propose finding appropriate metrics for evaluating the detectors in dialogue breakdown detection challenge 3. In our approach, we first enumerate possible evaluation metrics and then rank them on the basis of system ranking stability and discriminative power. By using the submitted runs (results of dialogue breakdown detection of participants) of dialogue breakdown detection challenge 3, we experimentally found that RSNOD(NB,PB,B) is an appropriate metric for dialogue breakdown detection in dialogue breakdown detection challenge 3 for English and Japanese, although NMD(NB,PB,B) and MSE(NB,PB,B) were found appropriate specifically for English and Japanese, respectively.
著者
一柳 昌義 高橋 浩晃 山口 照寛 岡田 和見 大園 真子 岡崎 紀俊
出版者
北海道大学大学院理学研究院
雑誌
北海道大学地球物理学研究報告 (ISSN:04393503)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.1-8, 2016-03-19

An M5.0 shallow earthquake occurred on 4 June 2015 in the eastern Hokkaido. In order to evaluate aftershock activity, three temporal seismic stations had been operated in the focal region from 4 June 2015 to 22 August 2015. Hypocenters calculated with a local seismic velocity structure indicated clear southwestern-dipping distribution. This alignment on a plane was consistent with one of nodal plane of mainshock focal mechanism. This earthquake and historical records suggested higher seismic activity in this region.
著者
高橋 淳 影山 和郎 金田 重裕 大澤 勇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

プラスチックス製(ポリエステル等)の柔軟なシートまたは袋による海上輸送技術(シール材またはコンテナとしての利用)が、低コストで低環境負荷型な輸送手段として注目されている。本研究では、このウォーターバッグに関して、疲労メカニズム解明と損傷(すなわち内容物流出のリアルタイム)検知システム開発の2つの検討を行った。すなわち、まず、ウォーターバッグの損傷の主要因と考えられている(内容物輸送後の)リールへの巻き取り時等における疲労損傷発生に関し、室内実験として「巻き取り模擬試験」を行い、それに基づき「損傷発生メカニズム解明」ならびに「疲労プロセス解明」を行った。この際に、万能試験機制御装置を導入し、既存設備である万能試験機(島津UH-500KNI)を本研究用途に改造してデータの収集を行った。その結果に基づき、繰り返しによる疲労損傷プロセスの解明が行なわれ、より長寿命で信頼性の高いウォーターバッグ設計への提言を行うと共に、モニタリングによる損傷検出のための方針を策定した。一方、上記の検討を通して明らかとなった損傷の形態や大きさの情報をもとに、過剰な設計を避けて最適なライフサイクルコストを実現することを目的として、ウォーターバッグ内外の電位差変化に着目した低コストな損傷検知システムの開発を行った。具体的には、「巻き取り模擬試験」のデータと考察をふまえた実際の損傷形態と大きさにもとづき、電位差変化により損傷の有無と場所を検知するための理論構築を行い、検知システムを開発した。
著者
高倉 保幸 山本 満 陶山 哲夫 高橋 佳恵 大住 崇之 大隈 統 小牧 隼人 河原 育美 加藤 悠子 若林 稜子 草野 修輔
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.B0014, 2006

【目的】脳出血で最も高い割合を占める被殻出血では、血腫の進展を示すCT分類や出血量、意識障害と予後との相関が高い事が知られているが、急性期病院の平均在院日数である発症後3週での予後との関係は明らかにされていない。また、臨床的には急性期の機能的予後にはCTにおける脳浮腫の程度と相関が高いという印象を持っているが、その評価基準は確立されていない。本研究の目的は、急性期被殻出血の機能的予後を予測する指標について検討することである。<BR>【方法】対象は当院にて初回発症で理学療法を行った被殻出血47例とした。年齢は60.1±10.7歳(平均±標準偏差)、性別は被殻出血が男性32例、女性15例であった。予後予測の因子として検討した項目は、脳卒中の外科学会によるCT分類(以下CT分類)、総出血量(長径×短径×高さ÷2)、出血径(長径)、脳浮腫、発症時意識(JCS)、発症翌日意識(JCS)とした。脳浮腫の判定は独自に3段階の評価基準を作製、いずれのレベルでも脳溝の狭小化がみられないものを1、脳溝の狭小化がみられるものを2、モンロー孔のレベルから3cm上部での病巣側の脳溝が消失しているものを3とした。基本動作能力の判定には11項目からなる改訂された機能的動作尺度(以下FMS)を用いた。FMSの検査時期は21.9±2.0日であった。各因子とFMSおよび因子間におけるスピアマンの相関係数を算出し、基本動作能力の予測に有用な因子を考察した。<BR>【結果】各因子およびFMSの結果をみると、CT分類の中央値はIII、総出血量の平均は36.8ml、出血径の平均は4.7cm、浮腫の中央値は2、発症時意識の中央値はII-10、発症翌日の意識の中央値はI-3、FMSの平均は14.8点であった。FMSとの相関は、CT分類では0.64(p < 0.01)、総出血量では0.61(p < 0.01)、出血径では0.57(p < 0.01)、脳浮腫では0.55(p < 0.01)、発症時意識では0.14(p = 0.34)、発症翌日意識では0.29(p = 0.45)となった。また、浮腫との相関は、CT分類では0.40、総出血量では0.50(p < 0.01)、出血径では0.54(p < 0.01)となった。<BR>【考察とまとめ】機能的予後を予測する指標としてはCT分類、出血量、脳浮腫が有用であることが示された。出血量では総出血量を算出する方が指標としての精度は高くなるが、長径により代用する方法も簡便で有用であると考えられた。新たに作製した脳浮腫の評価は予後と有意な相関を示し、CT分類や出血量と強い相関を示さないことから評価指標としての有用性が示された。意識はリハ開始前の死亡例が除かれていることおよび発症3週間という短期間で調査であることから相関が低くなったと考えられたが、発症日の意識よりも発症翌日の意識を指標とする方が有用であることが示唆された。<BR>
著者
高橋 保 Tamotsu Takahashi
出版者
創価大学法学会
雑誌
創価法学 (ISSN:03883019)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1/2, pp.3-24, 2011-12-20
著者
高橋 徹
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

能動的低代謝とは、一部の哺乳類が故意に基礎代謝を低下させる現象である。能動的低代謝は冬季や飢餓を生延びるための省エネルギー生存戦略であり、継続期間によって冬眠(数週間)と休眠(数時間)に分類される。冬眠ではリス、休眠ではマウスが代表動物である。これら安全な低代謝の原理を理解し人為的に医療応用できれば、重症患者の一時的延命などが実現し得る。しかし、冬眠・休眠が誘導される仕組みは全く不明なままである。基礎代謝(生命活動維持に最低限必要な代謝)の可逆的な抑制というこの驚異的な現象は、いかにして成されるのか。本研究ではその誘導中枢が脳に存在すると仮説し、冬眠・休眠の神経経路・誘導因子特定を目指す。
著者
古島 終作 金井 理 高橋 秀智
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.969-974, 1993-06-05 (Released:2009-07-23)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究の結論は以下のようにまとめられる.(1) 手書きの線画の位相情報と幾何情報をもとに, 1枚の線画中で左右対称な頂点と曲線の対応付けと, 2線画間で同一な頂点と曲線の対応付けを自動的に行う手法を提案した。(2) 2次元曲線と3次元曲線との透視変換の関係が明らかである有理Bézier曲線の性質を用いて, 左右対称又は2線画間で対応付けられた2次元曲線を表わす点列から, その点列と投影された曲線との距離が投影面上で最小になる3次元有理Bézier曲線を直接計算する手法を提案した.(3) (1), (2) の手法を統合し, 容易かっ高速に手書きの線画から3次元自由曲線モデルを生成できるシステムを開発し, 手法の有効性を確認した.なお, 本研究は東京工業大学工学部知能化機械研究設備を用いて行われた.
著者
石垣 賢和 竹林 崇 前田 尚賜 久保木 康人 高橋 佑弥
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.575-584, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
18

回復期の脳卒中後上肢片麻痺者に対し,15日間のロボット療法の効果検証を行った.対象は,2015年6月から2018年8月の期間に当院に入院した,初発の脳卒中後上肢片麻痺者のうち,15日間のロボット療法を実施した群(介入群)と,1ヵ月間の通常訓練を実施した群(対照群)とした.方法は,介入群と対照群で傾向スコアマッチングを実施し,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA)肩・肘・前腕の変化量を比較した.結果は,介入群36名,対照群62名で,22ペアがマッチングされた.FMA肩・肘・前腕の変化量は,介入群が対照群に比べ有意に改善を示した.ロボット療法を用いた介入は,効率的に回復期の脳卒中患者の上肢機能を改善させる可能性がある.