著者
加藤 茂明 高田 伊知郎 山本 陽子 大竹 史明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本年度、研究実施計画にある2. 細胞及び軟骨細胞での各種核内受容体群の機能については、各種骨細胞種特異的受容体遺伝子欠損動物を作製、その骨変異を引き続き解析した。昨年度、骨芽細胞特異的なエストロゲン受容体欠損マウスの解析と骨細胞特異的な核内受容体欠損マウスを作出したが、骨芽細胞特異的なエストロゲン受容体欠損マウスに関しては、雄が骨形成と骨吸収が低下することによる低回転型の骨量減少を示し、この表現型についてさらなる詳細な解析を引き続き行なった。具体的には、昨年度骨芽細胞におけるエストロゲン受容体の骨量維持機構の分子メカニズムを明らかにする目的で、骨芽細胞特異的エストロゲン受容体ノックアウトマウスと対照群でマイクロアレイ解析を行ない、その結果発現変動を示した遺伝子がいくつか得られので、これら候補の遺伝子群の発現を定量的PCRなどにより確認し、有意に変動する遺伝子を同定した。また新たな骨細胞特異的なCreトランスジェニックマウス作出に関して昨年度は、Dmplプロモーターを用いたCreトランスジェニックマウスのキメラマウスの作出に成功し、1個体のキメラマウスを取得した。現在得られたキメラマウスと野生型マウスの交配を行い、染色体レベルでの相同組換えを確認している。さらに研究実施計画にある1. 破骨細胞内のゲノムネットワークの解析と3. 細胞及び軟骨細胞特異的な核内受容体転写共役因子群の生化学的同定については、成熟破骨細胞の機能においては性ホルモン受容体が極めて重要な役割を果たすことが分かりつつあるので、性ホルモン受容体群に結合する複合体群を生化学的に同定しその分子機構をさらに解析するために、タグ付きの性ホルモン受容体の発現ベクターを作製し、安定細胞発現株の作製を行っている。
著者
武山 健一 加藤 茂明 高田 伊知郎 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

申請者はポリグルタミン伸長異常タンパクによるSBMAモデルショウジョウバエを用いた神経変性誘導を指標とした(1)分子遺伝学的アプローチおよび(2)生化学的アプローチによる候補因子探索と、(3)その性状解析からクロマチン構造変換機能異常によるエピジェネティック制御破綻への情報基盤を構築した。(1)分子遺伝学的アプローチによる新規神経変性制御因子の探索SBMAモデルショウジョウバエのpolyQ-AR誘導性の個眼神経変性を指標として、神経変性の変動が観察された25系統を単離した。中でも神経変性を顕著に回復する遺伝子としてRbfの同定に成功し、RbfによるE2F-1転写活性化を破綻させている事を見出した(Suzuki et al.,投稿中)。(2)生化学的アプローチによる新規polyQ-AR相互作用因子の探索クロマチン画分からのpolyQ-ARタンパク複合体精製はトランスジェニックショウジョウバエ個眼より精製後、MALDI-TOF/MS法あるいはLC/MS法にて同定する。その結果、ヒストンシャペロンやelongation factor、RNA結合タンパク等を同定した。3 候補因子の性状解析とエピジェネティック制御情報基盤の構築(1,2)で同定した相互作用因子のクロマチン構造変換能をヒストン修飾や構造、クロマチン構造変換能に着目した生化学的解析を行った。具体的にはヒストンアセチル化、メチル化、ユビキチン化およびリン酸化assay、MNase assay、クロマチンsupercoiling assayやdisruption assayによりin vitro系を構築した。これに必須材料となるヒストン八量体およびDNAとのクロマチン再構築は、HeLa細胞核抽出液およびrecombinant系を両者で整えた。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史 高田 伊知郎 大竹 史明 武山 健一 北川 浩史 大竹 史明
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌などのホルモン依存性癌の治療薬として用いられている「選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)」は、組織特異的な転写制御能を発揮するがその分子機構は明らかではない。我々は、SERM依存的にエストロゲン受容体ERαに結合するタンパク質群の精製を試み、ブロモドメインを有するBRD4を同定した。BRD4はpositive transcription elongation factor b(P-TEFb)と共に転写伸長反応を促進する因子であることから、SERMによる転写制御は、転写伸長の促進/抑制による可能性が示唆された。
著者
加藤 茂明 武山 健一 高田 伊知郎 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

ステロイドホルモン核内受容体の転写制御機能を分子レベルで理解する目的に、性ステロイドホルモン受容体の転写促進能及び新たな核内受容体転写共役因子の検索・同定を試みた。多くの前立腺癌や乳癌の発症は、アンドロゲンやエストロゲンといった性ステロイドホルモンに依存する。性ステロイドホルモンが標的細胞内において機能を発揮する主要な経路は、核内受容体を介した転写制御である。このような転写制御には転写共役因子複合体群が必須であり、クロマチンリモデリングやヒストン修飾といった様々な異なる機能の複合体群が同定されてきている。性ホルモン依存性癌の発症メカニズムを解明するためには、未知の複合体群の同定とその複合体機能の解明が必要である。そこで我々はエストロゲン受容体α(ERα)と機能的に相互作用する複合体の同定を試み、スプライソソーム主要構成因子複合体を同定した。更に、この複合体とERαとの結合はMAPキナーゼによるERαのリン酸化に依存することを見出した。またこの複合体はERαの標的遺伝子群に対してスプライシング効率を調節する機能をもつ。このような機能は、乳癌に関わりの深いエストロゲンシグナルと成長因子シグナルとのクロストークがmRNAスプライシングの調節を介して乳癌発症に関わる可能性を示唆する。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史 高田 伊知郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

染色体構造調節複合体について、新規核内複合体群の検索及び機能解析を目的として、本年度は下記の3点に焦点をあて、研究を進めた。1.細胞種特異的複合体構成因子の同定:核内複合体の機能は細胞種特異的と考えられる。そこで既知複合体の既知構成因子を各種組織株に高発現させ、複合体を再精製することで細胞種特異的構成因子の同定を試みた結果、組織特異的な発現因子を含む複合体の存在が明らかになった。2.染色体構造調節複合体を共役する因子の分子遺伝子学的検索:染色体構造調節複合体と転写共役因子複合体の協調作用により、ヒストンタンパクの修飾やヌクレオソーム配列の再整備が行われ、その結果としてより転写制御反応を潤滑化もしくは難化すると予想されている。機能未知因子を検索・同定することを目的とし、ショウジョウバエに男性ホルモン受容体を発現するハエラインを確立している。そこで、特定染色体領域欠失、あるいは遺伝子が機能的に欠損したハエラインと掛け合わせることで、受容体機能に必須な共役因子を分子遺伝子的に検索・同定し、いくつかの候補因子を同定した。今後このようなアプローチによって同定された修補因子については、前述した生化学的アプローチにより、その核内複合体の同定、機能解析を行う予定である。3.染色体構造調節複合体構成因子群の生体内機能の解明:染色体構造調節複合体は、同様の活性を有するものが複数見出されており、in vitro系での解析では、その機能的生理的な差異は見出されないでいる。一方、多くの転写共役因子複合体構成因子群のノックアウトについては、胎生致死となるか、もしくは全く異変が見出されない例が多い。従って、これら複合体種特異的な機能を評価する強力なアプローチの一つとして、構成因子遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウス)の作出が挙げられる。本年度は、染色体構造調節複合体種特異的構成因子に焦点を合わせ、Cre-loxP系を用いた時期・組織特異的遺伝子破壊法により胎生致死を回避し、当該因子の生体内高次機能を評価した。特に、前年度で同定された有力候補因子を同様な手法により、骨を中心に解析した。
著者
松本 多恵 高田 雅美 城 和貴
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.27, pp.1-6, 2011-09-08

本稿では,e-口コミを用いた新たな学習支援手法を提案する.この手法の目的は,1)高いドロップアウト率,2)モチベーション維持の困難さ,3)少ないインタラクティブ性という 3 つの e-learning が抱える問題を解決することである.提案する学習支援手法は,従来の学習支援と大きく異なり,メンターなどの学習支援者を必要とせず,学習者自らが意欲的・主体的に学習をする仕掛けを与えるものである.我々は,この e-口コミを発生させるために,消費者購買行動モデルの 1 つである AISAS に着目する.このモデルを応用し,マンガ教材を利用した e-learning 学習教材の開発を行う.開発された教材が e-learning が抱える問題を解決する方法として有効であることをアンケートから示す.In this paper, we propose an e-learning support method using e-WOM (e-Word of Mouth) for three problems in e-learning: 1) learners drop out at high rate 2) it is difficult to maintain motivation 3) it has few interactive. The proposed method is a lot different from existing methods. The proposed method does not need support persons such like a mentor, and set up a case that learners work aspiringly and actively. To go on e-WOM, we adopt AISAS, which is a model for buying behavior. We put AISAS into the development of the e-learning support method using comic learning tools. To validate the method, we have questionnaires.
著者
高田 弘一
出版者
札幌医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

Stabilized Alpha-Helix of BCL9 peptide (SAH-BCL9) を設計・合成し,SAH-BCL9 が Wnt/β-カテニン転写活性を特異的かつ効果的に阻害し,大腸癌細胞株の増殖を抑制するのみならず、大腸癌の浸潤・転移、血管新生を抑制することを明らかにした. SAH-BCL9 は BCL9/Wnt シグナルが活性化している大腸癌において新たな分子標的薬として有用である可能性が示唆された.
著者
清野 陽一 山田 太造 高田 智和 古瀬 蔵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.4, pp.1-6, 2014-07-26

『古事類苑』 および芳賀矢一編 『日本人名辞典』 から抽出した人物等を対象とする 「人名一覧表示システム」 について紹介する.本システムは,近代以前の人名の一覧中に,『日本人名辞典』 に掲載されている 「解説」 を説明文として提示する.また,姓名等をキーワードとして,人間文化研究機構の統合検索システム nihuINT での検索を実行する機能により,人名等に関連した様々な人文科学研究資源にアクセスすることが可能となる.This paper describes a system listing personal names constructed from humanities databases such as "Kojiruien" and "Nihon Jinmei Jiten" by Yaichi Haga. In this system, the source of descriptions about each pre-modern person in the list are referenced in "Nihon Jinmei Jiten". In addition, each personal has links to "nihuINT" search provided by National Institutes for the Humanities, which enables us to access various humanities' resources related to personal names.
著者
高田 豊 安細 敏弘 邵 仁浩 粟野 秀慈 中道 郁夫 吉田 明弘 後藤 健一 園木 一男 藤澤 律子
出版者
九州歯科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

心機能と口腔機能の関連について高齢の患者で検討した。心機能は携帯型24時間心電図と心エコー検査と血清NT-pro-BNP濃度で、口腔機能は歯数、アタッチメントロス、ポケット深さ、アイヒナー指数で評価した。重回帰分析を使用して性別と年齢の影響因子を補正しても、アイヒナー指数と上室性期外収縮、心室性期外収縮、心室性頻拍に有意な関係を認めた。現在歯数と心室性期外収縮連発、上室性頻拍との間にも関連があった。本研究結果から、咀嚼機能や残存歯数と不整脈の間には関連があることが示唆された。
著者
真野洋平 高田敏弘 齋藤洋典
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.70, pp.1-6, 2014-03-06

本論文は、複数のユーザによって楽曲に付与された時間区間アノテーション (コメントや評価) の集約によって得られる楽曲のダイジェストを用いた、楽曲推薦システムを提案する。本システムは、ユーザが楽曲内の気に入ったフレーズを検索クエリとして選択すると、そのクエリと各楽曲のダイジェストとの類似度を計算し、クエリによく似たダイジェストを持つ楽曲を推薦する。本手法は、時間区間アノテーションに基づいたダイジェストに着目することで、部分的フレーズに対する楽曲推薦を可能にする。このダイジェストは、計算機による構造抽出とは異なり人の音楽に対する感性を反映しているため、よりユーザの嗜好に適した推薦を行うことができると考えられる。楽曲推薦実験を通じて、提案手法が正解率とセレンディピティ (思いがけず価値のあるものを発見する能力) に関して優れた推薦能力を持つことを示す。
著者
高田 秀志
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では,情報の発信元を判断可能とする情報として,情報の公共性および状況の公共性に基づいて,個人に関わるどのような情報を開示すれば良いかの枠組みを構築した。また,情報自体の配信と,配信情報に付与された情報に対する評価を,リング型P2Pネットワークで構築した場合の実現可能性についてシミュレーションにより検証した。さらに,どのような個人であるかを認識できるように,SNS上への投稿から特徴的なものを抽出する手法およびユーザをランキングする手法について検討し,アンケート調査により評価を行った。
著者
與那嶺 諭宏 王 家宏 児玉 英一郎 高田 豊雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.11, pp.1-6, 2013-12-12

2011 年 3 月 11 日に東日本大震災が発生し,岩手県を含む広域にわたり電力設備や通信設備が機能しなくなった.被災地では,既存の通信インフラを用いたコミュニケーンョンが行えず,情報の入手が困難であった.しかし,被災地にいる人々が所持していた無線通信機能を有する通信端末は機能しており,アドホックネットワークの構築は可能であった.このことから本研究では,無線による端末間通信を行うアドホックネットワークを用いた緊急用コミュニケーションシステムモデルを提案する.本システムを利用することにより,通信インフラの復旧までの間,人々のコミュニケーションのサポートが可能である.On March 11, 2011, Tohoku earthquake and tsunami occurred, which caused extensive and severe damages to the power supply system and communication supporting system in north-eastern Japan, including the Iwate. Due to the damage, communication based on the existing communication infrastructure became impossible, and it became hard for people to obtain information. It is found that, however, most people at the disaster-hit area held wireless mobile terminals, and the ad hoc network could be constructed to support obtaining information. In this paper we propose approach to constructing a wireless ad hoc network based communication supporting system, which can be used for the emergency use at a disaster-hit area until the communication infrastructure becomes restored.
著者
山田 真大 林 和宏 鈴木 章浩 岡本 幸太 小林 良岳 本田 晋也 高田 広章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.18, pp.1-7, 2013-07-24

組込み向け機器に利用されるハードウェアの高性能化に伴い,組込み OS として Linux などの汎用 OS が搭載されるようになった.組込み機器では,リアルタイム性が重要視されるため,Linux を採用する場合,カーネルに改良を施すことでリアルタイム性を確保している.また,マルチコア CPU を搭載する組込み機器では,Linux が持つ CPU affinity の機能を用いることで,シングルコアでは不可能であった高負荷時におけるリアルタイム性も確保することが可能になった.しかし,CPU コア毎に存在するカーネルスレッドは CPU affinity を適用することができず,また,この処理がまれに引き起こすタイマのカスケード処理には多くの処理時間を必要とし,リアルタイム性を阻害する原因となる.本論文では,マルチコア CPU の各コアを,リアルタイム性を必要とする CPU コアと不要とする CPU コアに分割し,リアルタイム性を必要とする CPU コアでは,タイマのカスケード処理を発生させないよう事前に対策を施すことで,リアルタイム性を確保する手法を提案する.With the increase in hardware performance of modern embedded systems, general-purpose operating systems (OS) such as Linux are commonly used as embedded OSs. Furthermore, the use of multi-core CPUs enables Linux to improve its real-time performance even on high-load scenarios which is rather hard to achieve on single-core CPUs thanks to its "CPU affinity" functionality. However, we found two issues in the current version of the Linux kernel: the CPU affinity of some kernel threads cannot be specified; and the use of timer cascading (use of multiple hardware timers to count time) increases the worst-case response time of real-time tasks. In this paper, we classify the cores in a multi-core CPU into 2 different groups: cores which require real-time performance guarantees; and cores which do not require such guarantees. Then, we propose and evaluate a method that improves the real-time performance of the system by disabling timer cascading on cores which require real-time performance guarantees.
著者
三成 美保 栗原 麻子 福長 進 山本 秀行 高田 京比子 京樂 真帆子 長 志珠絵 森 紀子 山辺 規子 河村 貞枝 井出 千春 沖野 真理香 田端 泰子 小浜 正子 田端 泰子
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「マスキュリニティの比較文化史」につき、3点を明らかにした。(1)「マスキュリニティ史」は「男性史」とは区別されるべきであり、ジェンダー史の一領域として「歴史学におけるジェンダー主流化」を牽引する重要な役割を果たす。(2)「マスキュリニティ」は多様であり、男性の属性とは限らない。「覇権的/従属的マスキュリニティ」の差異化は、時代と社会により異なる。(3)「同性愛」概念は19世紀に登場し、私的な同性愛関係はしばしば公的領域(政治・経済・軍隊)の人的紐帯を決定した。
著者
田口 誠 村山 研一 古田 浩之 高田 政幸 濱住 啓之 澁谷 一彦
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, no.32, pp.43-46, 2009-07-30
参考文献数
5
被引用文献数
6

緊急地震速報とは、地震直後の小さな揺れをとらえて大きな揺れの前に震度や震源などを予測して発表する気象庁のサービスである.NHKでは,気象庁からの緊急地震速報を放送番組の中で自動送出している.日本の地上デジタル放送の伝送方式には、映像や音声などの本線信号を送るキャリア以外にAC(Auxiliary Channel)と呼ばれるキャリアがある.このACは、映像符号化やインターリーブの処理を行わないため遅延時間が少なく,DBPSK変調を用いていることから雑音や干渉に強い特長がある.今回、部分受信セグメント(ワンセグ)内のACを利用して緊急地震速報を伝送する方式の検討を行い,雑音やフェージング環境におけるワンセグACの伝送特性をシミュレーションと実験により評価した.