著者
浜田 恵 伊藤 大幸 片桐 正敏 上宮 愛 中島 俊思 髙柳 伸哉 村山 恭朗 明翫 光宜 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.137-147, 2016

<p>本研究では,小学生および中学生における性別違和感を測定するための尺度を開発し,性別違和感が示す,内在化問題および外在化問題との関連について検討することを目的として調査を行った。小学校4年生から中学校3年生までの5,204名(男子2,669名,女子2,535名)を対象として質問紙を実施し,独自に作成した性別違和感に関する13項目と,抑うつおよび攻撃性を測定した。因子分析を行った結果,12項目を含む1因子が見出され,十分な内的整合性が得られた。妥当性に関して,保護者評定および教員評定による異性的行動様式と性別違和感との関連では,比較的弱い正の相関が得られたが,男子の本人評定による性別違和感と教員評定の関連には有意差が見られなかった。重回帰分析の結果では,性別違和感と抑うつおよび攻撃性には中程度の正の相関が示された。特に,中学生男子において性別違和感が高い場合には,中学生女子・小学生男子・小学生女子と比較して抑うつが高いことが明らかになった。</p>
著者
野田 航 辻井 正次 伊藤 大幸 浜田 恵 上宮 愛 片桐 正敏 髙柳 伸哉 中島 俊思 村山 恭朗 明翫 光宜
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.158-166, 2016

<p>本研究では,単一市内の全公立小・中学校の児童・生徒(小学3年生から中学3年生)を対象とした縦断データの分析を行うことで,攻撃性の安定性に関して検討した。3つの学年コホート(合計約2,500名)の小・中学生の5年間の縦断データを対象に,潜在特性–状態モデル(Cole & Maxwell, 2009)を用いた多母集団同時分析を行った。攻撃性の測定には,小学生用攻撃性質問紙(坂井ほか,2000)を用いた。分析の結果,攻撃性は特性–状態モデルの適合が最も良好であり,特性変数と自己回帰的な状況変数の双方が攻撃性の程度を規定していることが明らかとなった。また,性差が見られるものの,攻撃性は中程度の安定性をもつことも明らかとなった。さらに,特性変数による説明率は,学年段階が上がるにつれて上昇することが明らかとなり,小学校中学年頃までは攻撃性の個人差はまだそれほど安定的ではないが,思春期に移行する小学校高学年頃から中学校にかけて個人差が固定化していくことが示された。</p>
著者
髙谷 正敏
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.423-428, 2013

エリスリトールは,ショ糖の約75%の甘味をもつ四炭糖の糖アルコールである。ブドウ糖を原料として酵母の発酵により生産される "ブドウ糖発酵甘味料" であり,糖質では唯一のカロリーゼロの甘味料である。消費者の健康志向を背景として,エリスリトールは,あらゆる分野での低カロリー製品の検討やシュガーレス菓子の検討などに利用されている。本稿では,エリスリトールの生理的特性や物理化学的特性を中心に紹介し,その特性を利用した使用例についても紹介する。
著者
髙附 亜矢子 石田 豊 垣渕 和正 櫻井 直樹 村田 芳行 中野 龍平 久保 康隆
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.197-206, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
38
被引用文献数
2

収穫後の短時間近赤外光照射(中心波長850 nm,100 μmol・m−2・s−1,5分間)が3種の葉菜の重量減少と気孔開度および外観品質に及ぼす影響を調査した.リーフレタス,ホウレンソウ,コマツナに貯蔵前1回または毎日,近赤外光を5分間照射し,ポリ袋密封包装または有孔ポリ袋包装を行い,10°C暗所に保存した.いずれの葉菜でもポリ袋密封包装と有孔ポリ袋包装にかかわらず,貯蔵3日後の近赤外光照射区の重量減少率と気孔開度は無照射区と比較して小さくなり,照射区では外観品質も優れた.その効果は近赤外光1回照射区より毎日照射区の方が大きくなる傾向を示した.有孔ポリ袋に包んだ葉菜類を10°C下で暗所および明所に保存し,近赤外光照射の効果を経時的に調べたところ,いずれの条件でも近赤外光照射による蒸散抑制,外観品質保持効果が確認された.その効果は1回照射よりも毎日照射区で優れ,特に,ホウレンソウでその効果が大きかった.本研究の結果は収穫後の短期間近赤外光照射は流通中の葉菜類の付加的な品質保持技術として応用できる可能性を示すものである.
著者
北村 泰佑 後藤 聖司 髙木 勇人 喜友名 扶弥 吉村 壮平 藤井 健一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000884, (Released:2016-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
4

患者は86歳女性である.入院1年前より認知機能低下を指摘され,入院2週間前より食思不振,幻視が出現し,意識障害をきたしたため入院した.四肢に舞踏病様の不随意運動を生じ,頭部MRI拡散強調画像で両側基底核は左右対称性に高信号を呈していた.血液検査ではビタミンB12値は測定下限(50 pg/ml)以下,総ホモシステイン値は著明に上昇,抗内因子抗体と抗胃壁細胞抗体はともに陽性であった.上部消化管内視鏡検査で萎縮性胃炎を認めたため,吸収障害によるビタミンB12欠乏性脳症と診断した.ビタミンB12欠乏症の成人例で,両側基底核病変をきたし,不随意運動を呈することはまれであり,貴重な症例と考え報告する.
著者
髙橋 護 谷 万喜子 鈴木 俊明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.22-27, 2016-01-20 (Released:2016-05-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【背景】我々は集毛鍼刺激を用いた鍼治療で臨床的効果を得ているが,その神経生理学的機序は明らかでない。 今回,2分間の集毛鍼刺激が筋緊張に与える影響を検討するために H 波を用いて検討した。【方法】健常者18名を対象とした。集毛鍼刺激前後に脛骨神経刺激によるヒラメ筋 H 波を導出した。集毛鍼刺激はアキレス腱付着部に2分間刺激した。得られた波形から振幅 H/M 比を算出し,集毛鍼刺激前後で比較した。【結果】振幅 H/M 比は,安静時と比較して刺激中に有意な低下を認めた(p < 0.05)。全員が安静時と比較して集毛鍼刺激中にヒラメ筋振幅 H/M 比の低下を示した。【考察】集毛鍼刺激は抑制性介在ニューロンを興奮させ前角細胞の興奮性を低下させたことが考えられた。集毛鍼刺激は筋弛緩を誘導ができる可能性が考えられた。【結論】アキレス腱付着部への2分間の集毛鍼刺激はヒラメ筋に対応する脊髄神経機構に刺激中に抑制効果をもたらすことが示唆された。
著者
富山 眞吾 五十嵐 敏文 井伊 博行 髙野 日出男
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.132, no.5, pp.80-88, 2016-05-01 (Released:2016-05-14)
参考文献数
30
被引用文献数
6

The understanding of source and flow path of the groundwater provides important strategy for the environmental management of mines. Thus, groundwater samples from the shaft and level in the Shimokawa mine and the surrounding river water samples were taken and the stable isotopes of hydrogen and oxygen and water quality of the samples were analyzed. The results indicate that shallow groundwater starts mainly from mountain-sides and passes through rocks above ore bodies. The simulation of groundwater flow was also conducted. The distribution of velocity vector of the simulated result showed that down streamlines which flows more than 2×10-3 m per day from mountain-sides to the ore bodies were observed. By considering the altitudes of mountain-sides range from 300 to 550 m, these results correspond well with the altitudes estimated from δD and δ18O values of samples.
著者
加藤 眞義 舩橋 晴俊 正村 俊之 田中 重好 山下 祐介 矢澤 修次郎 原口 弥生 中澤 秀雄 奥野 卓司 荻野 昌弘 小松 丈晃 松本 三和夫 内田 龍史 浅川 達人 高木 竜輔 阿部 晃士 髙橋 準 後藤 範章 山本 薫子 大門 信也 平井 太郎 岩井 紀子 金菱 清
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、東日本大震災のもたらす広範かつ複合的な被害の実態を明らかにし、そこからの復興の道筋をさぐるための総合的な社会学的研究をおこなうための、プラットフォームを構築することである。そのために、(1)理論班、(2)避難住民班、(3)復興班、(4)防災班、(5)エネルギー班、(6)データベース班を設け、「震災問題情報連絡会」および年次報告書『災後の社会学』等による情報交換を行った。
著者
髙本 真寛 高田 治樹
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.596-602, 2016
被引用文献数
2

This study used structural equation modeling to investigate directional relationships between coping with interpersonal stress and received support. One hundred and seventy-seven undergraduates who had experienced interpersonal stress during the past month answered questions about coping with interpersonal stress and received support. Structural equation modeling based on third-order moment structures was used to examine the directionality of the relationship between these two variables. The results revealed interactive associations between distancing and emotional support. Received support affected coping with interpersonal stress in terms of active coping, planning and monitoring, and positive reappraisal. These results suggest that received support functions as a coping resource.
著者
髙野 陽太郎 伊藤 言
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.584-588, 2016

Volpi (2004) pointed out that Alessandro Valignano, a 16th century Christian missionary, had considered the Japanese extreme collectivists. According to Volpi, his remark was based on Valignano's reports (1583, 1592) edited by Alvares-Taladriz (1954). However, it is highly questionable whether Volpi examined these texts directly because the information about them provided by Volpi involved many serious errors. A thorough inspection of Valignano's translated reports found no mention of Japanese collectivism. On the contrary, he had actually reported exceedingly individualistic behaviors of Japanese warriors. Such behaviors are consistent with what is widely known about the 16th century Civil Wars in Japan. It has thus turned out that no reliable evidence is present for the alleged observation by Valignano.
著者
髙橋 昭雄
出版者
明石書店
巻号頁・発行日
1994-03
著者
髙本 真寛
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.302-312, 2015
被引用文献数
4

This study used daily diary methods to investigate if fear of interpersonal stress in daily affect could be explained by coping strategies, and if daily affect and coping would vary randomly across personality traits. Every day for one week, 103 undergraduates recorded their daily events, perceived interpersonal stress, cognitive appraisal, coping strategies, positive events, and positive and negative affect twice a day. A hierarchical linear model and multilevel structural equation modeling were used to examine the relationships between variables. Results suggest that problem-focused coping was associated with within-level maladjustment, while positive reappraisal was associated with within-level adjustment. In addition, neuroticism appeared to moderate the relationship between coping and daily affect. Furthermore, there is evidence that higher fear of interpersonal stress predicts greater active coping, and positive affect.
著者
髙坂 康雅 小塩 真司
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.225-236, 2015

本研究の目的は,髙坂(2011)が提示した青年期における恋愛様相モデルにもとづいた恋愛様相尺度を作成し,信頼性・妥当性を検証することであった。18~34歳の未婚異性愛者750名を対象に,恋愛様相尺度暫定項目,アイデンティティ,親密性,恋愛関係満足度,結婚願望,恋愛関係の影響などについて,インターネット調査を実施し,回答を求めた。高次因子分析モデルによる確証的因子分析を行ったところ,高次因子「愛」から「相対性―絶対性」因子,「所有性―開放性」因子,「埋没性―飛躍性」因子にパスを引き,各因子から該当する項目へのパスを引いたモデルで,許容できる範囲の適合度が得られた。また,ある程度の内的一貫性も確認された。「恋―愛」得点について,アイデンティティや親密性,恋愛関係満足度,結婚願望,恋愛関係のポジティブな影響と正の相関が,恋愛関係のネガティブな影響と負の相関が確認され,また年齢や交際期間とは有意な相関がみられなかった。これらの結果はこれまでの論究からの推測と一致し,妥当性が検証された。また,3下位尺度得点には,それぞれ関連する特性が異なることも示唆された。
著者
髙谷 幸
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.554-570, 2012

本稿の目的は, 在日フィリピン人女性のDV被害者支援を行ってきたNGOを, 家族とは異なるオルタナティブな親密圏として位置づけ, 家族との関係からその実践を分析することである.<br>近年, 近代家族とは異なるかたちの, 生の基盤となる関係性, 「具体的な他者の配慮/関心にもとづく」親密圏をめぐる議論が活発になされている. それらは, 近代家族にたいする批判を踏まえつつも, そこで育まれる関係性や役割を積極的に再考するものといえる. しかし一方で, これらの議論では, 家族とそれ以外の親密圏がいかなる関係にあるかは論じられてこなかった.<br>これに対し, 本稿が取り上げたNGOでは, 暴力的な「家族からの自由」を, フィリピン人女性と子どもたちに保障すると同時に, 母子世帯というケア関係を核とした「家族への自由」を保障する活動を行っていた. またワークショップによる経験の共有を通じて, 家族の期待と責任を相対化し, そこでの葛藤を「ニーズ」として解釈する活動を行っていた.<br>つまりこの<親密圏>は, 家族にとって代わるというよりも, 家族が負担してきたケア責任を分有し, また家族規範を相対化し, 他の信頼しうる<親密圏>をつくり出す実践として捉えることができる. その戦略は, それ自体が<親密圏>として, 女性や子どもたちに複数の親密圏への帰属を可能にし, それによって家族への自由が保障されることを目指すものである.
著者
石岡 良子 石崎 達郎 髙橋 龍太郎 権藤 恭之 増井 幸恵 中川 威 田渕 恵 小川 まどか 神出 計 池邉 一典 新井 康通
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.219-229, 2015
被引用文献数
3

This study examined the associations between the complexity of an individual's primary lifetime occupation and his or her late-life memory and reasoning performance, using data from 824 community-dwelling participants aged 69–72 years. The complexity of work with data, people, and things was evaluated based on the Japanese job complexity score. The associations between occupational complexity and participant's memory and reasoning abilities were examined in multiple regression analyses. An association was found between more complex work with people and higher memory performance, as well as between more complex work with data and higher reasoning performance, after having controlled for gender, school records, and education. Further, an interaction effect was observed between gender and complexity of work with data in relation to reasoning performance: work involving a high degree of complexity with data was associated with high reasoning performance in men. These findings suggest the need to consider late-life cognitive functioning within the context of adulthood experiences, specifically those related to occupation and gender.