著者
西岡 心大 髙山 仁子 渡邉 美鈴 漆原 真姫 桐谷 裕美子 肱岡 澄
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.1145-1151, 2015 (Released:2015-10-20)
参考文献数
26
被引用文献数
3

【目的】回復期リハビリテーション病棟における栄養障害の実態、および脳卒中患者における栄養障害の程度が Activity of Daily Living(ADL)帰結や転帰先に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は2012年2月に調査協力施設の回復期リハビリテーション病棟を退棟した患者230名(脳卒中134名、運動器疾患47名、廃用症候群14名、その他35名)で、身体計測値、血液検査値、転帰先、Functional Independence Measure(FIM)を後ろ向きに調査した。【結果】Geriatric Nutritional Risk Indexにより43.5%が栄養障害と判断された。脳卒中患者における入退棟時 FIMは栄養障害群の方が有意に低く、退棟時 FIMを目的変数とした重回帰分析では栄養障害の程度が入棟時 FIMとは独立した説明変数となった(R2=0.734)。また栄養障害が重度であるほど自宅復帰率は低い結果となった(オッズ比 =0.580)。【考察】回復期リハビリテーション病棟では高率に栄養障害を認め、ADL帰結や在宅復帰に影響する可能性が示唆された。回復期リハビリテーション病棟において ADL向上や在宅復帰を果たすためには栄養状態の迅速な評価が重要である。
著者
西郷 甲矢人 日髙 昇平 高橋 康介 布山 美慕
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.70-83, 2021-03-01 (Released:2021-03-15)
参考文献数
16
被引用文献数
2

The aim of this article is to provide references to cognitive scientists, who are interested in learning category theory and using it in their research. This article consists of the three sections, question-and-answers on category theory, utility of category theory on cognitive science, and tutorial materials. In the question-and-answers on category theory, we answered to questions, with which beginners of category theory may come up. In the utility of category theory on cognitive science, we raised the three items of utility of category theory in building cognitive models. The learning materials share the books, slides, and videos on the web, recommended to start with.
著者
田代 雄一 髙嶋 博
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.1387-1399, 2017-12-01

自己免疫性脳症は,臨床的および免疫学的に多様な疾患である。少なくとも20種類の自己免疫性脳炎・脳症が報告されており,最も一般的なタイプは橋本脳症と思われる。患者はしばしば機能的,心因性の運動障害または身体表現性障害を示すと誤って診断されることがわかっている。自己免疫性脳症患者は,主に運動障害,覚醒障害,感覚異常,および振戦,筋緊張亢進,または不随意運動などの不随意運動を中心に運動障害を示した。さらに,記憶喪失,心因性非てんかん性発作,解離性健忘症,てんかん,または自律神経症状を観察した。自己免疫性脳症を診断するために,われわれは,脳の障害の部位別の組合せによりびまん性脳障害を検出する方法を提案する。びまん性脳障害では文字どおり,麻痺,運動の滑らかさ障害,不随意運動,持続困難な運動症状,痛みなどの感覚異常,記憶の低下や学習能力低下などの高次脳機能障害,視覚異常などの視覚処理系の障害がみられる。これらの複合的な脳障害は自己免疫性脳症の全脳に散在性に存在する病変部位と合致する。3系統以上の脳由来の神経症候は,おおよそ「びまん性脳障害」を示し得る。はっきりと局在がわからない神経症候は,一般的な神経学的理解では,転換性障害または機能的(心因性)運動障害に分類される傾向があるので,医師は自己免疫性脳症を除外することなく,心因性神経障害と診断するべきではない。 *本論文中に掲載されている二次元コード部分をクリックすると,付録動画を視聴することができます(公開期間:2020年11月末まで)。
著者
脇 司 中尾 稔 佐々木 瑞希 髙野 剛史 池澤 広美 宮崎 晋介
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.37-47, 2022-02-28 (Released:2022-03-01)
参考文献数
28

From 2018 to 2021, land snail surveys were carried out from Okinawa to Hokkaido, Japan to find metacercariae of the trematode genus Brachylaima. When metacercariae were obtained from land snails, their morphologies were recorded and partial sequences of mitochondrial DNA (cox1) and nuclear 28S rDNA were determined for DNA barcoding. As a p-distance value of less than 1.8% was considered to be intraspecific variation for cox1 (630 bp) based on the sequences of known species of this genus, the metacercariae obtained in this study were discriminated into five putative species. Two of the five putative species were molecularly identified to two known species, B. lignieuhadrae and B. phaedusae, respectively, whereas the remaining three were treated as unidentified species. It is unknown whether the unidentified metacercariae were larvae of known species without genetic information or new species. Morphological and molecular comparisons of adults are necessary for the taxonomic clarification of these unidentified metacercariae.
著者
林 衛 大瀧 慈 髙橋 博子 小山 美砂 森松 明希子 藤岡 毅 瀬川 嘉之 八巻 俊憲

科学技術社会論学会 第19回年次研究大会, 日程:2020年12月5日(土)~6日(日), 会場:遠隔会議システムによるオンライン開催
著者
髙桒 祐司
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.5-17, 2021-03-31 (Released:2021-04-17)

The research history of fossil Chondrichthyes in Japan has started more than 100 years ago. This paper presents an overview of the studies that have been published since the 1990s, and also advocates future perspective of research subjects of fossil Chondrichthyes in Japan based on the studies. The fossil record of Japanese chondrichthyans, which are mainly composed of elasmobranchs, is an important representative of the present Northwest Pacific region. Those from the Paleozoic (with part of the Triassic) include in limestone blocks within accretionary prisms of subduction zones in the main. They show the developmental process of elasmobranchs in the pelagic region during the Late Paleozoic and the Early Mesozoic. Those from the Mesozoic and Cenozoic are derived from normal clastic deposits. The fossil assemblages from these eras include some of few deep-sea species in the world and tooth sets from some species. These are important evidence of the chondrichthyan faunal transition of the Northwest Pacific region after the Mesozoic. In recent years, some of the fossil records that have passed time since their initial report need to be reclassified based on new taxonomy. Morphological studies on chondrichthyan fossils using CT scan, studies with chemical analyses and other advanced technological methods are also increased. On the other hand, many foreign specimens with high research potential are housed in domestic museums. It is hoped that further research on these foreign specimens and other domestic fossils, such as tooth sets, will reveal much about the evolution of chondrichthyans and the paleoecology of extinct species.
著者
柴田 寛 髙橋 純一 行場 次朗
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.571-578, 2014 (Released:2015-02-25)
参考文献数
29
被引用文献数
4

The current study used video clips of bowing actions depicted by three-dimensional computer graphics. The bend angle (15° and 45°) and duration of the bent posture (0–4.5 seconds) were varied. In the first experiment, the participants rated their subjective impressions of the bowing actions. The bowing actions that were made at a 45° angle and held for more than 1 second were rated as courteous. Bowing motions held for shorter durations were rated as smooth. In the second experiment, the participants evaluated whether a bowing action was appropriate for a specific social context. The participants judged 15°-angle bowing of no / very short duration appropriate for greeting, 45°-angle bowing of no / short duration appropriate for gratitude, and 45°-angle bowing for about 2 seconds appropriate for an apology. The results of these two experiments are discussed in terms of how angle and duration influence the impressions and evaluations of the appropriateness of a bowing action.
著者
髙橋 小百合
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
北海道大学大学院文学研究科研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
no.16, pp.85-100, 2016

本論文は、明治期における木戸孝允と幾松に関する言説を、二人の関係性の描写から分析し、同時代の男女交際論等、男女関係についての思潮をふまえながら、文化史中に占める二人の描写の位置および意義について考察したものである。論者には『日本近代文学会北海道支部会報』一九号掲載予定の別稿「<木戸孝允>像の生成」があり、そこでは木戸孝允が死去から明治末年までのあいだ、どのように語られていったのか、その変容と文脈パターンについて論じた。本論文では、そこで見出した六つの文脈パターンのうち、以後、大正、昭和期とより重要性を濃くするであろう<木戸と幾松> <幾松あっての木戸>について一歩踏み込んだ論を展開したつもりである。本論文の第一章「木戸表象の傾向と類別」は、木戸を語る文脈パターンについてまとめ、右の別稿の内容を引き継いだかたちである。よって、本論文の核は第二章以降にあるといえる。幾松はなぜ、木戸を語る言説のなかで存在感を増し、大衆的歓迎をうけたのか。第二章では、木戸と幾松の関係が、近代的恋愛の文脈に読み替え可能であることを論じ、同時に、幾松の芸妓という出自に着目して、近代と前近代の微妙なあわいに、ふたりの「恋愛」があることを明らかにした。第三章は、一方で二人の関係表象がもつ「復古」性について論じている。「王政復古」「一君万民」のイデオロギーとからめながら、<尊いから尊い>カミの論理で語られる木戸と、太古、国運を占う巫でありえた(元)芸妓幾松との関係が、国生み神話に準ずる「復古」の国づくりを表徴しうると指摘した。幾松あることによって、木戸のイメージは①愛妓とついには恋愛結婚を遂げた②<勤王の志士・桂小五郎>として定型化していく。それは同時に<近代>化と<復古>の二律背反、あるいは混淆を示す営為でもある。これこそ、日本の<近代化>の姿そのままであり、本論文のもっとも強調しておきたいところである。
著者
栗田 慎也 髙橋 忠志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.41-45, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
22
被引用文献数
3

〔目的〕急性期病院で脳卒中片麻痺患者に長下肢装具(KAFO)を作製することが回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)退院時の歩行能力と下肢装具の使用継続の有無を調査した.〔対象と方法〕重度運動麻痺を呈した脳卒中片麻痺患者18名を対象とし,KAFOの作製群と非作製群に振り分け,機能的自立度評価法(FIM)の歩行と階段の経過と下肢装具の利用状況を調査した.〔結果〕両群ともにFIM歩行・階段が時間経過で有意な差を認めたが,作製群で回復期リハ病棟退院時のFIM歩行・階段と下肢装具の脱却割合に有意な差を認めた.〔結語〕急性期病院における KAFO の作製は,回復期リハ病棟退院時の歩行・階段能力改善と下肢装具脱却の効果があることが示唆された.
著者
近藤 夕騎 宮田 一弘 板東 杏太 中村 拓也 原 貴敏 髙橋 祐二
出版者
一般社団法人 日本神経理学療法学会
雑誌
神経理学療法学 (ISSN:27580458)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.24-34, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
30

【目的】脊髄小脳失調症(spinocerebellar ataxia: 以下、SCA)患者個々のバランス能力を評価するために、Balance Evaluation Systems Test(以下、BESTest)が使用されることがある。近年、理学療法の優先順位を明確にできるKeyformが注目されている。Keyformは評価指標における項目毎の難易度を数値化および序列化することで、難易度を可視化することができる。そこで本研究では、SCA患者におけるBESTest各セクションのKeyformを開発することを目的とした。【方法】SCA患者述べ81名を対象とし、BESTestを評価した。一次元性および内的信頼性を確認し、Rasch分析にてBESTest各セクションの項目別適合度指標と難易度を求めたのち、Keyformを作図した。【結果】Section IおよびIIは一次元性を確認できず、内的信頼性はSection V以外で優れた信頼性を得られた。また、2項目の適合度が不良であったため、一次元性を確認できなかったSectionの二つと適合度が不良であった2項目を解析から除外したうえでKeyformを開発した。【結論】SCA患者を対象として開発した本Keyformは、BESTestにおけるバランス課題の難易度を可視化できることから、個々のSCA患者に対して理学療法の目標設定と治療計画を適切に行う上で、利用価値のあるツールになると考えている。
著者
髙谷 新 安保 寛明 佐藤 大輔 新宮 洋之
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.28-37, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
29

本研究は,看護師長のリーダーシップと看護職員の心身のストレス反応の関連において,仕事のストレス要因の高低による看護職員のワーク・エンゲイジメントの媒介効果の影響を明らかにすることを目的とする.16病院の看護職員1,213人を対象に無記名自記式質問紙調査を行い,マルチレベル相関分析および調整媒介分析を行った.有効回答は403部であった.マルチレベル相関分析では,個人レベルでワーク・エンゲイジメントと看護師長のリーダーシップに正の相関が,職業性ストレスとは負の相関が認められた.また,集団レベルでは看護師長の人間関係志向のリーダーシップと職業性ストレスに負の相関が認められた.調整媒介分析では,高ストレス状況下での変数間の関連について推定を行い,結果として課題志向,人間関係志向両方のリーダーシップの発揮が看護職員のワーク・エンゲイジメントを媒介し,心身のストレス反応に影響を与えていたことが明らかとなった.
著者
久保 大輔 髙木 武蔵 鈴木 智高 菅原 憲一
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
pp.JJPTF_2021-05, (Released:2022-06-21)
参考文献数
21

【目的】本研究の目的は,予測的姿勢調整を制御するために補足運動野が活動するタイミングを経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation:以下,TMS)を用いて検討することである。【方法】健常成人11 名は,ビープ音に反応して上肢を挙上する課題を行った。課題中,ビープ音から0 ms,30 ms,50 ms,70 ms 後のタイミングで補足運動野へTMS を付与し,三角筋と大腿二頭筋から筋電図を記録した。【結果】三角筋の筋活動開始のタイミングから前100 ms の時間帯にTMS が補足運動野へ付与された場合,TMS のない試行と比較して大腿二頭筋の筋活動開始のタイミングが有意に遅延した。【結論】立位での上肢挙上課題において,補足運動野が活動するタイミングは三角筋の筋活動開始から前100 ms の時間帯にあると推察された。
著者
上野 雄己 髙橋 亜希 小塩 真司
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.104-109, 2020-05-30 (Released:2020-06-05)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

This study aimed to examine the relationship between sensory processing sensitivity and subjective well-being, in terms of life satisfaction and self-esteem, in 4,333 Japanese adults (2,625 men and 1,708 women; mean age=49.05 years, SD=10.84, age range=20–69 years). A one-way ANCOVA indicated that participants in the high sensitivity group had lower life satisfaction and self-esteem than those in the low sensitivity and medium sensitivity groups. After controlling for age, sex, educational level, household income, and marital status, the levels of low sensory threshold and ease of excitation were significantly negatively associated with life satisfaction and self-esteem. Further, there was a significant positive association between aesthetic sensitivity, life satisfaction and self-esteem. These findings suggest that highly sensitive persons in Japan tend to have low subjective well-being, which corroborates the findings of previous foreign studies, whereas the sub-dimensions of sensory processing sensitivity have a different relation to subjective well-being.
著者
髙橋 実里 中道 圭人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20032, (Released:2021-10-15)
参考文献数
33
被引用文献数
1

This study examined whether children could infer emotions of those crying with joy. Participants (N=121, 5- to 9-year-olds) were shown a short story of a protagonist who cried with joy. Then participants were asked why the protagonist cried and which emotion the protagonist was experiencing. The results showed that 8- and 9-year-olds judged the protagonist’s emotion as happiness more than 5-year-olds. Many 5-year-olds answered, “He/She was sad because he cried,” and “I do not know why he cried.” These results suggested that at 8 to 9 years old, children may begin to understand that positive emotions can cause crying.
著者
髙橋 儀平
出版者
東洋大学ライフデザイン学部
雑誌
ライフデザイン学研究 (ISSN:18810276)
巻号頁・発行日
no.10, pp.283-297, 2014

バリアフリー、ユニバーサルデザイン(以下BF、UD)の政策的起点を、1961年の米国基準協会における世界最初のアクセシビリティ&ユーザビリティ基準の制定と捉えると、既に50年以上を経過している。2015年は日本で初めてオリンピック大会が開かれた1964年から51年目の節目でもある。1964年11月の大会は、わが国の障害者にとって初めて世界に触れ、その後の障害者の生活環境改善の転機となる大会でもあった。東京体育館を始め幾つかの施設が一時的にせよバリアフリー化され、この大会に集った障害者がその後の日本におけるバリアフリーを牽引したことは良く知られている。その30年後、1994年にわが国で初めて建築物のバリアフリー化を促進するハートビル法が成立した。本論文では、このようなわが国のバリアフリーの動きを軸に、この間の欧米の先進的なバリアフリー法制度を根底に、近年特に活発な動きを示している中国、韓国との比較考察を行った。 日中韓の3カ国は歴史的にさまざまな社会、文化交流が行われ、都市、建築物、ある日は人々の暮らしに共通する部分も少なくはない。しかし今日の日中韓は政治経済体制、生活習慣、言語等に大きな相違がある。BF、UDも同様である。そこで、本論では、1)日中韓の3カ国がどのようにBF、UD化の経緯を辿ったか、その要因は何か、2)その際に障害者、利用者の参画はどうであったか、3)現状における各国のBF、UDの到達点はどうか、4)今後におけるBF、UD活動の共通性、各種基準の標準化の可能性、等について比較考察を試みる。結論として、BF、UDの沿革と到達点については、出発点は異なるものの3カ国とも国際的な動きに強く影響されていることが判明した。特に中国では、国際障害者年、北京オリンピックを契機とした変革があった。一方、韓国では、日本と同様に障害者運動が大きな役割を果たした。今後3カ国によるBF、UD施策の共有化や意見交換が極めて重要であることが確認された。日中韓の標準化については、交通機関、建築物、公共トイレ等で一定の可能性があるのではないかと考えられる。
著者
髙坂 康雅
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.9, pp.5-17, 2016-03

本研究の目的は、2004年4月から2013年3月までに刊行された恋愛に関する学会誌論文を概観することで、現在の日本における心理学的恋愛研究の動向と課題を明らかにすることである。検討対象となった31本すべてが質問紙法を採用しており、調査手法の偏りが明確になった。また31本のうち28本は、立脇・松井・比嘉(2005)が示した恋愛研究の4つの方向に該当していることから、方向によって進捗状況は異なるが、それぞれが着実に知見を積み重ねていることも示された。そのうえで、調査手法や調査対象者の拡充、無批判に欧米の理論や知見を取り入れ、日本での適用を確認するだけではなく、日本特有の恋愛現象・行動に着目した研究を行うこと、セクシャルマイノリティの認知・理解が広がるなか、恋人の定義を明確にすること、などの課題や展望が指摘された。
著者
阿部 光司 廣瀬 翔子 本田 隆文 安川 久美 武藤 順子 髙梨 潤一
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.110-115, 2022-06-25 (Released:2022-06-25)
参考文献数
12

An 18-month-old boy developed toxic shock syndrome (TSS) after a minor burn. He sustained a second-degree burn (superficial partial thickness) over 4-5% of the total body surface area on the right upper arm and lateral chest. Four days later, he developed a fever and was brought to the emergency room of our hospital. At presentation, he had tachycardia and peripheral coldness despite the fever. There were no signs of infection at the burn site, but diffuse erythema was observed on the left upper arm and lateral chest. He was admitted to the pediatric intensive care unit for suspected TSS and compensated shock. Gradually, his condition stabilized and he was transferred to the general ward on day 4 of hospitalization. On day 7, desquamation away from the wound was observed. Staphylococcus aureus positive for the TSS toxin-1 gene was detected in the wound culture on admission, and we diagnosed probable TSS. Based on the course and physical examination findings, the patient was treated for TSS and had a good outcome without developing hypotension or multiple organ failure. TSS progresses rapidly and can be fatal, so it is important to be aware of TSS when treating febrile children with burns.