著者
髙本 尚彦 嶋田 純 白石 知成
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.325-343, 2017-11-30 (Released:2018-02-13)
参考文献数
35
被引用文献数
2

地層が堆積した当時の水文情報が残っている可能性のある霞ヶ浦において,海水準変動,塩濃度変化,堆積物の堆積過程といった長期的な変遷を考慮した非定常の2次元鉛直断面地下水流動解析を行った結果,既往調査で得られた2地点のコア間隙水の塩濃度プロファイルを概ね再現することができ,2地点の陸域からの淡水地下水の寄与の違いを定量的に示すことができた。解析結果からも,湖岸に近いSiteK-1は地表水だけでなく陸域からの地下水の影響を受けやすい環境であるのに対し,湖心付近のSiteK-2は陸域からの地下水の影響を受けにくい環境であった。非定常解析を行うことにより,以上なような詳細な水文環境の変遷状況が明らかとなった。
著者
髙島 英二郎
出版者
公益社団法人 日本下水道協会
雑誌
下水道協会誌 (ISSN:00214639)
巻号頁・発行日
vol.55, no.663, pp.95-99, 2018-01-01 (Released:2018-12-04)
参考文献数
16

降雨強度mm/hは1時間降雨量とは異なり,強度(率)として異なる継続時間どうしでの比較を可能にする. 流達時間は,排水区域(流域)のスケールを時間で表わした性格のもので,合理式の重要な要素である. 下水道排水区域においては,流達時間は1時間より短い場合が多く,合理式は「流達時間内の平均降雨強度」を用いる点で,雨水流出量算出手法として合理的である. 合理式・合理式合成法とタイムエリア法は同種の手法である. 雨水流出量ピークの発生要因は,排水区域全体から雨水流出が集中することと併せ,降雨強度に変動があるため,流達時間内の平均降雨強度が最も大きい時間範囲の雨水が流達することである. 流出係数については総合的な補正係数として捉え,今後,雨水流出量の実測データを積み重ねることにより,当該排水区域に合わせた流出係数等の調整を行い,流出計算の精度を高めていくのがよい.
著者
髙田 和子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.475-488, 2015-07-15 (Released:2015-07-28)
参考文献数
32

体内での栄養素の動態や利用についての研究において,安定同位体を利用する価値は高い。本稿では,二重標識水(Doubly labeled Water:DLW)法と,指標アミノ酸酸化(Indicator Amino Acid Oxidation:IAAO)法を紹介する。DLW法は,H218Oと2H2Oを使用し,自由に生活している状況でのエネルギー消費量を最も正確に評価する方法とされている。IAAO法は,多くの場合,13Cで標識したL-フェニルアラニンを指標として,体内でのアミノ酸の利用を評価する。安定同位体の活用により,従来の方法より対象者への負担が少なく,栄養素の利用を評価でき,幅広い対象における研究が可能である。
著者
髙橋 珠州彦
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.41-51, 2017-03-30

昭和初期の吉祥寺地区で実施された府道拡幅事業を事例に、沿道住民の行動と商店街の形成過程について検討した。府道180号線は、吉祥寺駅に通じる唯一の府道であると同時に、井之頭恩賜公園への接続道路としての役割を担っていた。同道では、拡幅事業の前後で沿道商店街の姿が大きく変わった。事業前後で多くの商業経営者が入れ替わった理由は、家屋所有者か借家人かという属性の違いに関わっていた。また、移転や立退きに伴う補償料の支払い額は家屋所有者と借家人で大きく異なっており、彼らの判断材料になっていた。沿道で最多の家屋を所有していた春山庄右衛門は旧家出身であり、拡幅事業以前は多くの貸家経営を行なっていた。事業完了後も沿道に戻り商業を継続する一方、他所出身の商店主らによって結成された商店街組織の代表者として署名している。地域住民の紐帯としての役割を果たした春山氏の行動は、地域形成において重要なものであった。
著者
鈴木 裕之 中村 達也 宮浦 誠治 猪岡 京子 八木 朋美 我妻 恭行 鈴木 常義 髙村 千津子 鈴木 幹子 村井 ユリ子 中村 仁
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.503-509, 2018-10-10 (Released:2019-10-10)
参考文献数
17

Panvitan® powder for prescription (PP) administrated in combination with pemetrexed sodium hydrate (PEM) for the purposes of folic acid supplementation is significantly degraded by exposure to humidity or light. Hence, we investigated the influence of humidity and light on the color of the powder and concentration of folic acid in PP. We prepared samples by placing 1 g of PP into separate bags and stored them for 28 d under normal delivery conditions, intermediate humidity, high humidity, and light exposure. The amount of folic acid was quantified by high-performance liquid chromatography, where the percentage was calculated assuming the initial amount was 100%. Under normal delivery conditions (room temperature, 50% RH, shielded light) and intermediate humidity conditions (25℃, 75% RH, shielded light), no significant changes in appearance or folic acid content were observed. The sample stored under high humidity conditions (25℃, 91% RH, shielded light) changed in color from yellow to brown. The decrease in folic acid content was time dependent, and decreased to 47.1% after 28 d. Under light exposure (room temperature, 50% RH, 5,000 lux, 0.56 W/m2), the yellow color of PP becomes thin with time, while the folic acid content decreased to 73.2% after 28 d. The amount of folic acid may have decreased without any concomitant visible changes in the powder. The results of this study are expected to facilitate the management of adverse effects of PEM.
著者
髙坂 康雅
出版者
日本青年心理学会
雑誌
青年心理学研究 (ISSN:09153349)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.77-80, 2018-08-31 (Released:2018-09-19)
参考文献数
12
著者
下村 剛 藤浪 麻美 油布 邦夫 齋藤 聖多郎 竹中 隆一 中嶋 辰徳 三城 英昭 岡田 憲広 髙橋 尚彦 坂本 照夫
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.671-679, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
14

大分県では2017年4月17日より,大分県遠隔画像伝送システムへの機能追加の形でクラウド型12誘導心電図伝送システムの運用を開始した。各消防本部に1台ずつのクラウド心電計を配置し,伝送には,既存のタブレット端末および回線を利用した。このシステムでは5地域中核病院を含む18施設が参加し,大分県の広い範囲を網羅している。運用開始から 2018年3月12日までに,111件(男性71例・女性40例:平均年齢75.6±12.7歳)の心電図伝送を行った。搬送先は,救命救急センター36例,PCI施設36例,地域中核病院32例で,そのほか7例あった。緊急心臓カテーテルが行われた22例(19.8%)の72.7%がACSであり,PCIが行われた14例は,コントロール群に比べ,有意にdoor to balloon time(DTBT)が短縮した。また,心電図所見からACSが否定的な45例(40.5%)は,近隣の施設で対応することにより不必要な遠隔地への搬送が回避できた。
著者
髙橋 由紀子 升屋 勇人 窪野 高徳
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-7, 2017-01-31 (Released:2018-01-31)
参考文献数
16

Sydowia japonicaはスギ雄花に選好的に寄生し,スギ花粉の飛散を阻害することから,スギ花粉症対策の生物資材として期待が寄せられている.本研究では,生物資材としての効果の持続性や二次感染の可能性評価のための基礎的情報を得ることを目的として,国内2箇所のスギ人工林において,S. japonicaの雄花序における感染率と感染雄花からの分離頻度を調査した.健全雄花序数と感染雄花序数を形成年ごとにそれぞれ計数し,各枝における感染率を算出した結果,雄花序の形成数と感染率は調査地毎にかなりばらついたが,当年感染雄花序数は当年雄花序数と前年以前感染雄花序数のそれぞれと正の相関があった.このことから,当年形成した雄花序が多く,前年以前に感染した雄花序が多いほど当年の感染数は多くなると考えられた.また組織分離の結果,感染雄花からのS. japonicaの分離頻度は,感染から2年以上経過すると低下したが,感染から2年後までは雄花内で生存可能であることが明らかになった.
著者
髙坂 康雅
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.221-231, 2016

<p>本研究の目的は,大学生活の重点によって大学生を分類し,自立欲求や全能感,後れをとることへの不安,モラトリアムの状態,学習動機づけの比較を行うことで,現代青年のモラトリアムの多様性を明らかにすることである。大学生624名を対象に質問紙調査を実施し,大学生活の重点7標準得点をもとにクラスター分析を行ったところ,4クラスターが抽出された。クラスター1は自己探求や勉強に重点をおき,自己決定性の高い学習動機づけをもっていた。クラスター2はいずれの活動にも重点をおいておらず,大学での活動に積極的に取り組めていない青年であると判断された。クラスター3はすべての活動に重点をおき,自立欲求や後れをとることへの不安をもち,内発的動機づけだけでなく,外発的動機づけももっていた。クラスター4は他者交流や部活動,サークル活動に重点をおき,全能感が強いが,学業とは異なる領域での活動を通して職業決定を模索していた。これらの結果から,クラスター1はEriksonが提唱した古典的モラトリアムに相当し,クラスター4は小此木が提唱した新しいタイプのモラトリアム心理によるモラトリアムであり,クラスター3は近年指摘されている新しいタイプのモラトリアム(リスク回避型モラトリアム)であると考えられた。</p>
著者
松井 豊 髙本 真寛 MATSUI Yutaka TAKAMOTO Masahiro
出版者
Division of Physhology, Faculty of Human Sciences, University of Tsukuba
雑誌
筑波大学心理学研究 = Tsukuba Psychological Research (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.59-66, 2018-08-31

Within psychology, it is often necessary to analyze qualitative data, such as interview data, in terms of the multivariate analysis framework. Many analytical methods have been developed for qualitative data; representative among them is the quantification theory that has been theoretically systematized by Chikio Hayashi. Within quantification theory, type III is a method of simultaneous multipurpose classification, but it is rarely utilized and is often misunderstood. This paper first outlines the mathematical distinctions of type III quantification theory and then summarizes the points to keep in mind, illustrating with some applications for psychological research.
著者
髙橋 紀穂
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.187-195, 2015

本稿の目的は,ジョルジュ・バタイユが思考するコミュニケーションと道徳を明確化することにある。最初に,1940年代にバタイユが思考した内的体験を素描する。次に,バタイユの思考する内的体験においては他者とのコミュニケーションが主張されているにもかかわらず,それを可能にする「超道徳」が死へ向かわせるものであることを指摘する。続いて,生と死のあいだの引き裂きの中での贈与こそがコミュニケーションと共同性を可能にすること,および,このような所作を求める道徳こそがバタイユのコミュニケーション的道徳であることを導き出す。そして,最後にこれらの議論の小括を行う。
著者
日髙 恵喜 青木 光広 村木 孝行 泉水 朝貴 藤井 岬 鈴木 大輔 辰巳 治之 宮本 重範
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.325-330, 2008-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
20

【目的】本研究の目的は,未固定遺体8股を用いて腸骨大腿靭帯の上部線維束と下部線維束を選択的に伸張することができる股関節肢位を明らかにすることである。【方法】変位計測センサーを各線維束の中央部に設置し,伸び率を測定した。また3次元動作解析装置を用いて股関節角度の測定を行った。靭帯を伸張させた際に緩みがなくなったときの変位の値を開始距離(L0)として計測を行った。上部線維束は6肢位,下部線維束は7肢位で伸び率を測定した。【結果】上部線維束の伸び率は内転20°+最大外旋,最大外旋,内転10°+最大外旋の順に大きく,最大伸展の伸び率より有意に大きな値を示した。下部線維束の伸び率は最大伸展,外旋20°+最大伸展の順に大きく,最大外転の伸び率より有意に大きな値を示した。【考察】上部線維束では最大外旋,内転位の最大外旋,下部線維束では最大伸展,外旋位の最大伸展が腸骨大腿靭帯のストレッチング肢位として有用であると考えられた。本研究結果は腸骨大腿靭帯の解剖学的走行に基づいた伸張肢位と一致した。