著者
振津 かつみ BERTELL Rosalie LAURENCE Glen BEIVERSTOCK Keith MOHR Manfred JAWAD Al-ali OMRAN Habib DOUG Weier RIA Verjauw GRETEL Munroe 佐藤 真紀 豊田 直己
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「非人道的無差別殺傷兵器」のひとつである劣化ウラン兵器の国際規制について、国際社会が進むべき方向性を決めるための根拠となる、同兵器の環境・健康影響の科学的知見と社会学的論点について、調査研究を行った。以下がその成果である。(1)劣化ウラン兵器が使用されたイラク南部バスラの医師らによる癌登録の整備と疫学調査に協力した。また、現時点での同地域の癌の特徴と動向を確認した。(2)劣化ウラン兵器に関する「国連決議」の議論を調査し、国際規制における意義を確認した。(3)劣化ウランの健康影響に関する科学論文のレビューを行い、広く国際社会が共有できる資料としてまとめた。(4)予防原則の軍縮分野での適用について、文献調査を行い、劣化ウラン問題に即した予防原則のあり方について考察を行った。
著者
金 英子 Lin Ching-Yung 松尾 豊 石塚 満
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

実世界のネットワークの本質は動的に変化する。企業は、他の企業と提携・合併・買収などを続けることで、これらの関係から正と負の影響を受けている。その結果、企業の価値は変わっていく。本研究では、Web上に公開されているニュース記事から、変化する企業のネットワークを自動的に抽出する。そして、動的ネットワークから企業の価値に影響を与える構造的要素を分析し、企業の価値を予測する。
著者
及川 真司 Song Sung-Jun 前山 健司 岸本 武士 戸村 健児 樋口 英雄
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.551-557, 2003-08-05
参考文献数
10
被引用文献数
4 8

海洋環境における放射能モニタリングに海産生物試料を応用することを視野に入れ,日本近海で採取したスルメイカ中に含まれる13元素(V, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ru, Ag, Cd, Cs, Ba, Pb)を,前処理後,誘導結合プラズマ質量分析法によって定量する方法を検討した.このうち,放射能モニタリングを行う上で特に重要であると考えられる9元素(V, Mn, Fe, Co, Cu, Zn, Rb, Ag, Cd)については,中性子放射化分析法によって分析値を比較した.その結果,両者は誤差の範囲内で一致し,誘導結合プラズマに特有な分子イオン形成やマトリックス効果等の影響は見られず,誘導結合プラズマ質量分析法による定量値の妥当性を確認した.この方法で1996年に千葉・銚子沖で採取したスルメイカの可食部,骨部,胃,肝臓及びその他の部位に含まれる上記13元素を定量し,海水に含まれる標準的な濃度と比較することによって濃縮係数を算出した.定量した重金属元素のうち,Mn, Fe, Co, Cu, Ag, Cd及びPb等の肝臓への濃縮が顕著であることが分かった.また,同じ部位であってもZn, Rb及びCsは濃縮係数に差がほとんど見られなかった。一方,その他の元素は同じ部位であっても濃縮係数に差が見られた.本研究で得られた結果から,回遊性のスルメイカが海洋環境の重金属や放射能汚染のための環境影響評価に利用できる天然の指標生物になると考えている.
著者
西岡 千惠 (2008-2009) 西岡 千恵 (2007)
出版者
高知大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病細胞株HL60、NB4について、既存の抗癌剤(シタラビン、ATRA)とチロシンキナーゼの下流シグナル阻害剤(MEK阻害剤AZD6244)との併用により、単剤に暴露されたときよりも更に効果的に細胞増殖が抑制されることをMTTアッセイやコロニーアッセイで明らかにした。また、併用の際、薬剤の投与の順番を変えることによっても相乗効果の程度に変化が見られ、薬剤投与の順番も重要であることを確認した。またこれらの薬剤を併用することによって、相乗的に細胞増殖抑制やアポトーシス誘導能が高められることを明らかにした。さらに、MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病患者の末梢血から採取した白血病細胞においても、これらの薬剤の併用による相乗的な細胞増殖抑制効果を確認し、このような薬剤の組み合わせが実際の臨床の現場においても効果的ではないかと思われる。また、長期間のチロシンキナーゼ阻害剤投与による薬剤耐性化のメカニズムを検討し、臨床の現場における問題点の克服につなげていきたいと考えた。まず、チロシンキナーゼ阻害剤(sunitinib)を白血病細胞株に長期間投与し、薬剤耐性株を樹立した。そして、この耐性株を用いて耐性化の機序の検討を行った。その結果、親株ではsunitinibによって抑制されるJAK2-STAT5シグナル活性が耐性株では抑制されないことを確認した。また、耐性株では親株に比べてJAK2を活性化させるIL-6と、IL-6のプロモーター領域に結合する核内転写因子c-Junの量が増加していた。そこで耐性株をIL-6阻害剤やJAK2阻害剤で前処理しその後sunitinibを投与してみたところ、薬剤耐性株は親株同様suitinibへの感受性を取り戻した。以上の結果から、sunitinibによってc-Junを介してIL-6が誘導され、このIL-6によってJAK2-STAT5シグナルが活性化、薬剤耐性化を引き起こしたのではないかと考えられる。このようなケースでは、IL-6やJAK2の阻害によって耐性化が克服される可能性が示唆された。このように症例の状態に合わせて適切な薬剤を組み合わせることでより効果的な治療法となりえることを見出した。
著者
Kim Jin-Soo Kim So-Jung Kim Ho-Gi LEE Duck-Chool UCHINO Kenji
出版者
社団法人応用物理学会
雑誌
Japanese journal of applied physics. Pt. 1, Regular papers & short notes (ISSN:00214922)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.1433-1437, 1999-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
16

High-power piezoelectric materials are presently being extensively developed for applications such as ultrasonic motors and piezoelectric transformers. In this study, the piezoelectric and dielectric properties of Fe_2O_3-doped 0.57Pb(Sc_<1/2>Nb_<1/2>)O_3-0.43PbTiO_3 (hereafter 0.57PSN-0.43PT), which is the morphotropic phase boundary composition of the PSN-PT system, were investigated. The maximum dielectric constant (ε_<33>/ε_0=2551) and the minimum dielectric loss (tanδ = 0.51%) at room temperature were obtained at Fe_2O_3 additions of 0.1 wt% and 0.3 wt%, respectively. The temperature dependence of the dielectric constant and the dielectric loss was measured between room temperature and 350℃. With the addition of Fe_2O_3, the piezoelectric constant d_<33> and electromechanical coupling factor k_p were slightly decreased, but the mechanical quality factor Q_m was significantly increased. The highest mechanical quality factor (Q_m = 297) was obtained at 0.3 wt% Fe_2O_3, which is 4.4 times higher than that of nondoped 0.57PSN-0.43PT ceramics. The P-E and S-E loops of the samples at room temperature and at 1.0 Hz were measured at the same time using an automated polarization measuring system.
著者
Kuh Bong Jin Choo Woong Kil Brinkman Kyle KIM Jai-Hyun DAMJANOVIC Dragan SETTER Nava
出版者
社団法人応用物理学会
雑誌
Japanese journal of applied physics. Pt. 1, Regular papers & short notes (ISSN:00214922)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.6765-6767, 2002-11-30
参考文献数
8
被引用文献数
4

Relaxor Pb(Sc_<1/2>Nb_<1/2>)O_3 (PSN) thin films without pyrochiore phase were proccssed from the modified alkoxide solution precursors. The preparation of single phase PSN thin films has a narrow processing window due to the appearance of an undesirable pyrochlore phase and volatility of PbO. Thin film processing has been improved through selection of precursor solutions, heat treatment and optimized deposition-condition are optimized. Especially, the effects of Pt substrates seeded with additional layers upper of TiO_2 and La_<0.5>Sr_<0.5>CoO_3 are investigated through the scanning electron microscopy (SEM) scanning of filmlelectrode interfaces. Dielectric behaviors of sal-gel derived PSN thin films on two different substrates are observed. They show the evidence of relaxor-like behaviors, i.e. the temperature dependence of the dielectric constant at different applied frequencies. Films on the TiO_2/Pt/TiO_2/SiO_2/Si substrates exhibit better dielectric properties, such as frequency saturation over transition temperature and much lower dielectric loss than those on the La_<0.5>Sr_<0.5>CoO_3/Pt/TiO_2/SiO_2/Si substrates. The differences of transition behaviors between PSN thin films and bulk ceramics are also discussed in relation to the processing temperature, interface phenomena between film and electrode, relatively small thickness and strain effect of films.
著者
宮下 陽子 (2009) 関口 陽子 (2007-2008)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

申請者は研究実施計画に基づき、以下の研究を実施した。現代トルコの右派民族政党である民族主義者行動党(MHP)の組織とイデオロギーに関する研究を前年度及び前々年度に行い、主に論文の形で発表してきたが、今年度はMHPと思想的傾向は類似しつつも国家政党として長らくトルコを支配してきた共和人民党(CHP)を研究対象とした。その際、CHPのイデオロギーにおけるナショナリズム認識の変化はやはり既に確認したため、そのイデオロギー変化を実施した党エリートの変遷の有無について今年は確認し、学会発表の形で発表した。発表では、党イデオロギー変化の起こった時代、同時並行して党幹部の顔ぶれにも明確な変化が起こっていたこと、それは明らかに党内の権力闘争に起因することを明らかにした。前々年に行った党イデオロギーに関する研究成果と併せて、党内の権力闘争が党イデオロギーの変化に便乗し、党幹部の変化をもたらしたこと、それが第二共和制下での政党再編に繋がったと結論付けた。年度末に行った海外調査ではトルコ国外(主に中央ユーラシア諸国)における団体の活動に関する新聞や雑誌記事の収集、刊行物の購入を目的とする資料収集をイスタンブル市にて行った。これらの資料から、90年代以降国外での諸団体の活動が活発化したこと、それらは学校の開校や企業進出といった民間団体の活動に拠るところが大きいことが判明した。また、中でもイスラーム色の強さが特徴であることが分かった。
著者
蔡 兆申 BILLANGEON Pierre-marie
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

この研究では、如何に超伝導量子ビット(コヒーレント制御可能な2準位の量子システム)を多数集積し、それらを自由に結合させ、コヒーレンスを保ちながら、量子状態の操作を行うことができるか、ということを研究することがその主題である。このような研究は、将来の量子コンピュータの実現を視野に入れて行っている。2009年度では、二つの量子ビットと結合させる幾つかの方法を研究した。まず二つの量子ビットを、第三の量子ビットを介して結合させる方式を考慮した。この方法はすでに本研究グループで以前より研究されていたものを改良・発展したものである。この新結合方式は、この量子系の時間発展を解析的に研究したことにより得られたものである。現在この最新の結果を論文にまとめている最中である。またこの結合方式の回路を実現するため、新たな多層超伝導配線を備えた微小アルミトンネル接合回路の作製法を開発した。このような多層配線構造は、量子ビット数のスケールアップには欠かせないものであると考えている。すでにこの新結合式を取り込んだ資料の作成を終え、現在その評価をする準備を行っている。二番目の結合方式の研究のアプローチは、既にイェール大学で研究が進んでいる超伝導マイクロ波共振器を介した量子ビットの結合方法である。我々のグループでも超伝導共振器関連の研究を過去数年間行ってきた。我々はこの共振器を介し、遠方にある量子ビット同士を結合させることを考えた。このような結合方式の資料を作成し、現在その特性評価を行っている。上記二つの結合方式の違いは、量子ビット型結合器を使うものが隣接するする量子ビットを結合させる機能を持つが、共振器型の結合器は遠方の量子ビットを結合できる特徴を備えている。二つの方式は量子誤り訂正などの重要なアルゴリズムを実行するにあたり、異なった特性を示すので、実際に実験的に確かめる必要がある。
著者
首藤 もと子 小嶋 華津子 キンポ ネイサン サーベドラ ネアントロ フォーシェ キャロル ルイ ジャン=オーグスタン ALICE Sindzingre ANGELA Uforo Shanyo BRAHIMA Songore CLAUDE Sumata EDSON Kenji Kondo 江 時学 MBATIA Hiram Mwangi SAAVEDRA Neantro SEIFUDEIN Adem SHERLON Chi-yin Ip ZHANG Wei Wei
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、中国の開発援助がどのような分野で供与され実施されているか、それは受入側の社会でどのように評価され、どのような経済的、社会的変化をもたらしているかについて、主として受入国での現地調査を基に分析した。平成20~22年度に現地調査を行った国は、アフリカ(タンザニア、ケニア、エチオピア、コンゴ、マリ)、東南アジア(インドネシア、フィリピン、ベトナム、メコン流域諸国)および中南米諸国(ブラジル、ペルー、コスタリカ、キューバ)である。現地調査とは別に、中国の対外援助の政策決定過程についての研究も行った。本研究の成果は2011年中に編集作業を進めて英文で出版する計画である。
著者
MORI James Jiro 伊藤 久男 柳谷 俊 松林 修 加納 靖之 木下 正高 MA Kou-fong
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

我々は,車籠埔断層を横断する温度プロファイルを観測するために,深さ250mのボアホールを掘削した.この掘削場所は1999年集集地震による温度異常が2000年に観測された場所のごく近傍である.2008年と2010年の温度測定では,温度異常は観測されなかった.このことは,2000年に観測された温度シグナルが地震による摩擦発熱による真のシグナルであったことを示している.
著者
TRENSON Steven (2010) 西山 良平 (2008-2009) TRENSON Steven
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成22年度は、醍醐寺の龍神信仰の日本中世の宗教における意義についての研究をまとめる作業をした。本研究の主眼は、醍醐寺の龍神信仰の日本中世の宗教における重要性に光を当てることである。日本宗教史学では11世紀末~12世紀初めに真言密教思想を基層とする日本中世の宗教が確立したとされているが、この真言密教思想の内容と特徴が十分に理解されているとは限らない。というのは、中世の真言宗の神髄が宝珠信仰にあることはすでに先学の研究によって明らかにされたが、この宝珠信仰の内容、そしてその成立と展開については、なお検討する余地が多いのである。しかし、11世紀末~12世紀初めの醍醐寺(真言宗の主要寺院の一つ)では龍神信仰が発達し、その後、その信仰が醍醐寺を中心とする宗教ネットワークの中で広まった。それゆえに、龍神信仰が宝珠信仰と不可分であるので、日本中世の宗教の形成史と有様を解明するために、醍醐寺の龍神信仰とそれと直接にかかわると考えられる諸宗教形態(神道灌頂、玉女信仰、室生山や三輪山の龍神信仰、宇賀弁財天信仰など)について検討することにした。この研究の成果・意義として主に次の点があげられる。(1)真言宗の宝珠信仰(仏舎利と龍神の宝珠との同体説)が、まず真言宗の雨乞儀礼を背景に展開し、その後、醍醐寺の密教の根本教義として伝承されたという点。(2)中世の醍醐寺では、龍とその宝珠が、天地陰陽及び両部曼荼羅(胎蔵と金剛界)を一体化する霊物と見られたが、その化身がほとんど女性の密教の神(仏眼、愛染明王、ダキニ天)であるという点。(3)醍醐寺で葬られていた白河院の中宮賢子が"玉女"(女性として現れる宝珠)として崇敬され、その崇敬が宝珠を女性の神と見る観点を促した可能性。(4)神道・即位灌頂の本尊が宝珠の女性の化身であるという説、(4)醍醐寺の龍神・宝珠信仰が地方の霊場(伊勢神宮室、生山、三輪山)へ伝承され、この信仰こそがこれらの霊場と縁が深い両部神道の基盤となったと考えられる点である。
著者
竹谷 和之 アンドレス オルティス・ 武内 旬子 東谷 頴人 ORTIZ-OSES Anders オセス アンドレス・オル アンドレス オルティス.
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究ではバスク民族スポーツの分布地域を都市部(平成8年度)、山間部(平成9年度)および海岸部(平成10年度)に区分し調査・研究を実施した。都市部(主にビルバオ市やビトリア市)ではバスク経済の発展とともに、新しい価値意識が浸透しており、バスク人の民族スポーツに対する深い思い入れは希薄になりつつある。しかしスペクタクル性の高いバスクスポーツ(ペロタ)には多くの人が観戦に赴き、勝敗に賭けることにより昔ながらの「スポーツ」を維持している。形態は近代化してはいるもののバスク人のアイデンティティを確認する装置として機能している。守護聖人祭では、プログラムの中にバスクスポーツのエキシビションが組み込まれているが、これは観光としてのスペクタクルである。山間部(スペイン・ナバラ県北部、フランスバスク東部)では都市部のような急激な変化は見られないものの、経済中心社会の影響は徐々にではあるがバスクスポーツにも及んでいる。余暇や娯楽が少ない地域ではバスクスポーツに多くの人々が集まる。これは民族スポーツが伝承されてきた自然環境の中で行われることに意味があると思われる。つまりバスクスポーツの原初形態である労働が残存している地域ではまだその価値は失せていない。労働がよく理解できるからこそより人々の関心が集中するのである。海岸部(スペイン・ギプスコア県やフランス・ラブール地方)では動物を使用した儀礼的なスポーツが多く見られることである。とくに「ガチョウ」「アヒル」といった名称で知られているスポーツは、水、船、落下及び耐久力などが構成要素であり、参加者の勇気と「残酷性」をあわせもった内容となっている。この残酷性を除去する方法として、都市近郊の村落ではこれらの動物の代わりにボールが使用される。ここでは動物使用の本来の意味は消失し、単なるスポーツへと変容しているのである。伝統を重んじるとされるバスク人の価値基準が変化していることもここで確認することができる。これらのスポーツに共通するのは、民族スポーツに固有の精神的側面が見られないことである。キリスト教の普及により、バスクスポーツはキリスト教文化に組み込まれているのである。
著者
玉川 安騎男 CADORET Anna Gwenaelle-Lu CADORET Anna Gwenaelle-Lucile
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

与えられた有限群と素数の組に対し、その普遍フラティニ被覆の標準的な商群の系に付随してフルヴィッツ空間(=射影直線の分岐ガロア被覆のモジュライ空間)の射影系が定まるが、その有理点に関するM. Friedのモジュラータワー予想は基本的である。この予想へのアプローチの一環として掲げた研究目的の内、本年度は、「1、モジュラータワー予想とアーベル多様体のねじれ点の普遍的限界の関係の精密化」に関して、特別研究員と研究代表者の共同研究が大きく進展した。特に、元のモジュラータワー予想で分岐点の数が4以下の場合を肯定的に解決することができた。この証明の鍵となったのは、次の幾何的命題である。Sを標数0の体上の代数曲線、AをS上のアーベルスキームとし、Aの生成ファイバーは0でないアイソトリビアルな部分アーベル多様体を含まないものと仮定する。このとき、与えられた自然数gと素数pに対し、次の条件を満たす自然数N=N(A,g,p)が存在する:Aの位数p^nの点vに対し、n>Nならばvに付随するSの被覆の種数はgより大きい。以上の結果については、特別研究員と研究代表者の共著論文"Uniform boundedness of p-torsion of abelian schemes"の第一稿が既に完成している。なお、研究目的の内「2、フルヴィッツ空間の点の"base invariant"のモジュラータワー予想への応用」については、特別研究員と研究代表者の共著論文"Stratification of Hurwitz spaces by closed modular subvarieties"を平成18年8月に完成し投稿中である。
著者
大庭 喜八郎 呂 綿明 楊 政川 LIBBY Willia 津村 義彦 丹下 健 松本 陽介 戸丸 信弘 中村 徹 内田 煌二 荒木 眞之 山根 明臣 YANG Jeng-chuan LU Chin-ming GAVIN F.Mora 黄 啓強
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

1.目的現生のスギ科(Taxodiaceae)樹種には10属15種・1雑種(推定)が知られ、わが国の林業上重要な樹種の一つであるスギが含まれている。本研究はスギ科樹種を対象とし以下の3点を目的とした。(1)葉緑体等のDNA分析によりスギ科樹種の遺伝分化の分子的基礎を明らかにし、それらの系統分類を行う。(2)生態学、生態生理学さらに集団遺伝学の3分野からスギ科樹種の種特性を解明する。(3)この(1)と(2)の成果を基礎とし、スギをはじめとする各樹種の分類学的位置づけについて論じる。2.研究項目と研究方法(系統分類)(1)スギ科樹種の分子系統分類:PCR法を用いた葉緑体の特定遺伝子(rbcL,PsbA等)のRFLP分析(種特性に関する研究)(2)成育立地の生態学的研究:立地環境調査・植生調査、文献調査(3)生態生理学的研究:光合成特性・水分特性調査(4)集団遺伝学的研究:アイソザイム分析、DNA分析、文献調査(総合取りまとめ)(5)スギの系統分類学的位置づけとスギ科樹種の種特性の解明3.研究成果(1)系統分類スギ科樹種の系統分類と伴に針葉樹におけるスギ科の位置づけを明らかにするため、スギ科の10属15種・1雑種(推定)、ヒノキ科の6樹種、マツ科の18種、イチイ科の2種及びイヌガヤ科の1種について、DNA分析用試料として筑波大学や森林総合研究所等に植栽してある個体から若芽を採取した。これらの若芽から抽出した全DNAを用い、PCR法による6種類(frxC,psbA,psbD,rbcI,trnK)の遺伝子の増幅を行い、得られたPCR産物を用いて各遺伝子あたり約10種類の制限酵素によるRFLP分析を行った。得られた塩基置換のデータから、Wagner parsimony法とNJ法による分子系統樹を作製した。その結果、スギ科とヒノキ科は非常に近い科であり、Sciadopitys verticillata(コウヤマキ)はそのスギ科とヒノキ科から系統的に大きくことなることがわかった。(2)種特性(1)生育立地の生態学的研究:中華人民共和国に分布するTaiwania fousiana(ウンナンスギ)、Cunninghamia lanceollata(コヨウザン)、Metasequoia glyptostroboides(アケボノスギ)の各林分、さらにオーストラリアのタスマニアに分布するAthrotaxis cupressoides(タスマニアスギ)、A.laxifolia(ヒメタスマニアスギ)、A selaginoides(オオタスマニアスギ)、台湾に分布するCunninghamia konishii(ランダイスギ)及びTaiwania cryptomerioides(タイワンスギ)の各林分について、植生調査等の生態学的調査い、これらのスギ科樹種の構成林分の種組成が判明した。(2)集団遺伝学的研究:わが国に分布するCryptomeria japonica(スギ)の17集団から集団遺伝学的解析のための試料である針葉を採取し、アロザイム分析を行った。その結果、現在のこの種の分布が離散的でかつそれぞれの分布面積が小さいにも関わらず、種内の遺伝的変異量は木本植物の中では大きいが(H_t=0.196)、集団間の遺伝的分化は非常に小さいことがわかった。この遺伝的多様性の保有パターンの理由として、かつての分布は現在のものよりも広く、連続的なものであったこと、遺伝子流動がかなり起こっていること、寿命の長さが考えられた。一方S.verticillata(コウヤマキ)の6集団から集団遺伝学的解析のための試料である針葉を採取し、DNA分析のために全DNAを抽出した。制限酵素EcoRIで消化し、イネのrDNAをプローブとして用いてRFLP分析を行った。その結果、この種のrDNAの集団内の変異は大きく、さらにその変異は集団間で明らかに異なることがわかった。
著者
杉山 あかし KOGA Browes.S.P KOGA-BROWES Scott KOGA-BROWES S
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

入社プロセスならびに入社後の社内教育過程において、ニュース取材者の専門性や倫理観は形成されると考えられ、それはメディアの内容に直接反映されると考えられるが、ニュース制作者のあり方はこれまで明確ではなかった。テレビが現実についてのイメージを作り出すにあたって、テレビの内容を創り出す制作者の現実観は大きな影響を持っていると考えられるので、その人々のあり方を明らかにするのが本研究の目的である。具体的には、以下の項目に関する詳細な理解を可能とする情報収集を行なった;(1)テレビニュース制作者が職業上のこの立場を獲得する過程、(2)テレビニュース制作者の典型的な職業履歴パターン、(3)経営者・同僚から評価される個人的・専門的資質。本年度は、1、中堅現役報道カメラマンに同行取材し、長時間録画カメラにて本人のバックグラウンド及び学歴、今までの研究研鑽経歴を調べた。映像を作る際の基準や価値観、倫理観まで切り込んだ。/2、入社から退職までをカメラマンとして過ごした既退職カメラマンにインタビュー取材し、現在のカメラマンの在り方及び価値観と比較した。/3、人事採用担当者に採用基準をインタビューした。/4、入社内定者に入社前インタビューを行ない、テレビ局で働くイメージとキャリアへの展望を聞いた。/5、NVivoソフトを使って、インタビュー取材した映像をデータベース化した。/6、NHK資料館、TBS資料館、慶応大学メディア・コミュニケーション研究所、東京大学図書館(情報学際情報学環)を尋ね必要な資料を収集した。ただし、東日本大震災のため、テレビ局が多忙となり、当初予定したものよりも調査は小規模なものにならざるをえなかった。