著者
上田 博 梶川 正弘 早坂 忠裕 遊馬 芳雄 菊地 勝弘 和田 誠 ソラス M.K.
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

北極域の気候変動や水循環を解明する上で、ポーラーローを含む北極低気圧の発生・発達過程と北欧北極圏やノルウェー海上での水蒸気輸送や雲、降水粒子の形成過程を明らかにするために、地上リモートセンサーを用いた現地観測を行なった。1999年1月から4月までスウェーデン・キルナで現地のスウェーデン宇宙物理研究所の協力を得て気象観測用Xバンド鉛直ドップラーレーダーのデータを取得した。得られたデータを解析した結果、スウェーデン・キルナ地方の降水はスカンジナビア山脈の影響を強く受け、空気塊の斜面上昇による山岳性降水やノルウェー海上を北上する低気圧に伴う上層の前線からの弱い降水と山脈の強制上昇の影響を受けた下層雲との相互作用によって降水が増強されている様子が観測された。また、1999年10月にノルウェー海の中央に位置するベアー・アイランドのノルウェー気象局の観測所、スピッツベルゲン島・ニーオルセンの国立極地研究所の観測施設に出かけ、北極圏の低気圧に関する資料やデータを収集した。また、その際に簡易気象観測機器を設置して北極圏の低気圧に関してのデータを取得した。これらのデータは厳冬季を含む北欧北極圏やノルウェー海上での雲や低気圧の構造・発達過程、水循環・輸送過程が明らかになり、ポーラーローを含む北欧北極圏での気象擾乱の構造や水・エネルギー循環を明らかにするための基礎データとなることが期待される。
著者
Ng Peter K.L. 武田 正倫
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.47, pp.29-32, 1992-06-25

イワガニ科の中で,完全な淡水生活をするのはGeosesarma属のカニ類だけで,東南アジアを中心に,現在までおよそ32種が知られている.分布の北限にあたるフィリピンからはルソン島北部とパナイ島から1種ずつ記録されているが,1985年に国立科学博物館によって行われた学術調査の際にミンダナオ島で採集された3雄,4雌は両種とは明らかに異なっていた.これらの7個体の標本においては,第3顎脚外肢の鞭が完全に退化しており,この点に関してはG.malayanum NG et Limの種群に属す.しかし,甲と鋏脚の特徴が既知種とは異なることから,新種としてG,protosの学名を与えた.
著者
田島 裕 フェンティマン R.G. ミラー C.J. ダイヤモンド A.L. ライダー B.A.K. バークス ペータ 長谷部 由起子 長谷部 恭男 平出 慶道 FENTIMAN R.G MILLER C.J DIAMOND A.L RIDER B.A.K BIRKS Peter ミラー J.C. アダムソン ハーミッシュ デンティス T.C. ゴフ ロード スクリブナ アンソニー
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

平成6年4月から3年間にわたる日英間の共同比較法研究の全体を総括し、今後の継続的な研究協力の在り方を検討した。研究者ネットワーク作りに重点を置いて研究活動を行ったが、その目的のために、本年度も田島(研究代表者)がバ-ミンガム大学で研究会(24回)を開催した。バ-ミンガム大学では、英国大学における日本法研究の在り方を問題とし、憲法、民商法、企業法、独占禁止法、訴訟手続法、刑法など12の主要テーマについて、具体的な検討をした。これは昨年度に続く二度目の経験であり、非常に大きな反響を呼んだ。研究会の基礎となるプレゼンテーションをレクチャー.レジュメの形でまとめ、最終報告書に添付した。この研究成果は、田島(研究代表者)の責任で、Western and Asian Legal Traditionsと題する著書(添付書類参照)として近く公刊される。予定どおり平成8年9月にケンブリッジ大学において学会を開催し、本格的な比較法研究を行った。その結果は、Anglo-Japanese Journal of Comparative Lawと題する著書として近く刊行されることになっている。また、予定どおり、平成8年4月に、高等法院裁判官フィリップス卿およびウッド教授(ロンドン大学)を招聘し、企業法学シンポジウム(法的紛争の処理)を開催した。約200名の法律家(学者、裁判官、実務家)が参加し、とくに国際企業取引をめぐる法的紛争の処理に当たりイギリス法を準拠法とすることの問題点を論じた。フィリップス裁判官は、筑波大学などでも陪審制と黙秘権の問題について特別講義を行った。また、マスティル卿(貴族院裁判官)も予定どおり8月に来日され、安田記念講義およびブリティッシュ・カウンシル特別講義を開いた。民事司法改革をテーマとしたが、この講義には約300名の法律家が参加した。平成8年8月に公表されたばかりのウルフ報告書に基づくもので、別途開いた専門家セミナー(国際商事仲裁協会)において、三ケ月章東京大学名誉教授を中心として日本の民事訴訟改正とパラレルに検討する機会をもった。この講義は安田火災記念財団から単行本『英国における紛争処理の動向』(平成8年8月)として既に公刊された。平成8年11月、長谷部(東京大学)、長谷部(成蹊大学)はロンドン大学およびバ-ミンガム大学を訪問し、憲法および訴訟法の領域における共同研究を行った。そして、9月のケンブリッジ大学の学会には、平出(中央大学)と田島(筑波大学)が出席した。その学会で特に焦点を当てたのは会社法および金融法・銀行法の領域である。正式の学会とは別に、この共同研究が今後も継続されるようにするため、研究参加者の間で具体的な検討を数日に渡って熱心に行った。その結果、平成9年10月に東京で学会を開催し、その折りに新たな共同研究の基礎づくりをすることになった。その主要研究テーマは、会社法と金融法・銀行法の他、司法制度と国際法・国内法の融合の問題とする。来日が既に確定しているのは、ライダー教授(ケンブリッジ大学)、ア-デン裁判官(高等法院;現在は、法律委員会の委員長と兼任)夫妻、およびヘイトン教授(ロンドン大学)である。なお、オックスフォード大学のバ-クス教授(オールソールズ・カレッジ)は、まだ来日していないが、平成10年に来日を約束している。その機会に日英学会の創設を本格的に検討することになると思われる。なお、研究協力者以外にも数多くの学者、実務家の協力を得たことも付記しておきたい。上記の三ケ月教授のセミナーはその一例である。平成9年4月にはジョン・ボールドウイン教授(バ-ミンガム大学)が来日されるが、これもわれわれの研究活動につながるものである。3年に渡る共同研究を通じて、日本法に関心のある非常に若いイギリス人研究者を数多く(約100名)育てることができたことも協調しておきたい。現在、そのうち2人のイギリス人大学生が日本を訪問し、研究を続けている。最後に、当該研究は、将来も継続されるべきものであり、今回の3年の研究を通じて問題を別に添付した『研究報告書』の中で説明した。それも読んでいただきたい。
著者
宮下 純夫 木村 学 MELINIKOV M. ROZHDESTVENS SERGEYEV K.F 榊原 正幸 石塚 英男 岡村 真 木村 学
出版者
新潟大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

サハリン島は地質学的に日本列島の延長であり,環太平洋造山帯の一部を担っている.本研究では,サハリン南部の詳細な調査をおこない,サハリンにおける沈み込み・付加テクトニクスについて解明するとともに,日本での結果とあわせ,環太平洋造山帯のテクトニクスに迫ることを目的としている.これまでの成果は以下のように要約される.1.アニバ岩体:アニバ湾の北部及び東海岸には白亜紀付加体ーアニバ岩体が露出している.本岩体は緑色岩類が卓越する点で,白亜紀付加体の典型である四万十帯とは異なる.北部海岸の岩体は構造的・岩相的に二つのユニットに区分される.上部ユニットでは玄武岩から陸源砕屑物に至る一連の層序が観察され,下部ユニット上に衝上している.下部ユニットは主に玄武岩とメランジェからなり,石灰岩ブロックもしばしば含まれる.構造は,沈み込み帯における初生的な構造を表していると考えられる.スラストシ-トが繰り返す東フェルゲンツ構造を示す.アニバ湾東海岸ではメランジェが卓越しており,石灰岩のブロックを多数含むという点でやや異なる.構造的には,北部海岸と同様の覆瓦構造を示す.石灰岩とチャ-トの互層の出現は,本地域の付加体が海洋島などから由来していることを示唆している.2.ススナイ帯:本帯は神居古潭帯の延長に位置する高圧変成帯で,サハリン東海岸の50Kmにおよぶ調査により,南へ向かって各々が多数のスラストシ-トからなる5つのドメインが識別された.ドメイン1は緑色片岩ーチャ-トー泥質片岩と緑色片岩の互層から,ドメイン2は玄武岩質岩ーメタチャ-ト,泥質片岩と緑岩片岩ないしメタチャ-トの互層,泥質片岩からなっている.ドメイン3の最下部はメランジェから,上部は砂質岩を伴う泥質片岩からなる.ドメイン4は玄武岩が大量に出現することで特徴づけられ,上位は石灰岩ないしチャ-トを含む玄武岩質堆積岩,黒色頁岩によって覆われている.ドメイン5は黒色頁岩と珪質片岩の互層からなっている.緑色岩やメランジェが出現しない点で異なっている.変形作用は3時相が識別された.D1時相は東ないし北東方向のL1線構造とS1片理面の形成,D2時相は全域に発達する,北東走向の非対称褶曲,シ-ス褶曲,北西方向の線構造などによって示される.センスは南方を示す.D3時相は直立した褶曲軸面をもつ開いた褶曲で,褶曲軸は北東走向で水平に近い.D1ーD2時相はダクタイルな変形であるが,D3時相はブリットルな変形を示している.変成作用は塩基性岩の鉱物組み合わせに基づいて,パンペリ-石ーアクチノ閃石帯(ドメイン3,4,5)とパンペリ-石ーエピド-トーアクチノ閃石帯(ドメイン1,2)の二つに分類される.前者に出沼する青色片岩はNa角閃石ーNa輝石ー緑泥石ーヘマタイト,後者の青色片岩はエピド-トーNa角閃石ーNa輝石ー緑泥石の組み合わせを示す.Na角閃石はマグネシオリ-ベカイトでありNa輝石はジェ-ダイト成分に乏しいエジリン輝石ないしエジリン普通輝石である.最高変成条件は200ー300℃,4ー5Kbarと見積られる.また,変成作用の時期はD2時相と考えられる.3.玄武岩類の岩石学的特徴:主要成分・微量成分分析に基づいて,アニバ岩体とススナイ岩体に大量に出現する玄武岩類には,NーMORB,TーMORB,EーMORB,OIT,アルカリ玄武岩にわたる様々な岩石が存在していることが明かとなった.大局的な傾向としては,アニバ岩体はアルカリ玄武岩とOITが,ススナイ岩体ではTーMORBが卓越しているという特徴がある.これらのことから,アニバ岩体の多くは海山ないし海洋島に,ススナイ岩体は海台に由来する可能性が強い.4.化石年代:アニバ岩体のチャ-トや灰緑色頁岩からチトニアンとコニアシアンを示す放散虫が確認されている.5.今後の展望:現在,化石年代や岩石の放射年代,鉱物分析などが進行しつつある.これらのデ-タが得られて全体的な検討が進むと,海洋地殻物質の付加・上昇過程が解き明かされ,サハリン南部は付加体の形成を解明する世界的な典型となることが期待される.また,そのためにはさらに広域的な調査が求められる.
著者
BOSS P. K.
雑誌
Plant Mol. Biol.
巻号頁・発行日
vol.27, pp.429-433, 1995
被引用文献数
8 90
著者
K Loganovsky
出版者
CODATA
雑誌
Data Science Journal (ISSN:16831470)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.BR13-BR35, 2009-09-24 (Released:2009-09-24)
参考文献数
183
被引用文献数
35

The aim of this paper is to analyze the current evidence on radiocerebral effects following exposure to 20 mSv on the fetus and >300 mSv on the thyroid in utero; at 16-25 weeks, abnormalities were >10 mSv and >200 mSv, respectively. In adults, radiation-associated cerebrovascular effects were obtained at >0.15-0.25 Sv. Dose-related neuropsychiatric, neurophysiological, neuropsychological, and neuroimaging abnormalities following exposure to >0.3 Sv and neurophysiological and neuroimaging radiation markers at doses >1 Sv were revealed. Studies on radiation neuropsychiatric effects should be undertaken.
著者
M・K
出版者
日本幼稚園協會
雑誌
幼兒の教育
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.57-62, 1934-03
著者
若月 利之 石田 英子 増田 美砂 林 幸博 広瀬 昌平 TRAORE S.K.B ALLURI K. OTOO E. OLANIYAN G.O IGBOANUGO A. FAGBAMI A. 小池 浩一郎 宮川 修一 鹿野 一厚 中条 広義 福井 捷朗
出版者
島根大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

ナイジェリア中部ニジェール洲、ビダ市付近のエミクパタ川集水域のヌペ人の村落から農民の参加意欲と土と水条件より5ケ村のベンチマーク村落を選んだ。アジア的な水田稲作とヌペの伝統的低地稲作システムを融合させながら展開するための実証試験をニジェール洲農業開発公社の普及研究員と国立作物研究所の研究員の協力を得ながら、農民参加により実施した。又、多目的樹種を中心にした育苗畑の整備と管理法及び成熟苗を利用したアップランドにおけるアグロフォレストリーの実証試験も実施した。東北タイより収集した品種特性の異なるタマリンドの種より育苗した。次年度には移植する予定。ガーナのクマシ付近のドインヤマ川小低地集水域でも、同様の水田農業とアグロフォレストリーを農民参加により実施することにより、劣化集水域を再生するための実証試験を実施するに当たって必要な土と水と気象条件、在来の農林業システム、村落の社会経済的条件等、各種の基礎的調査を実施した。一部では水田造成と稲作、村落育苗畑等の小規模実証試験を行った。ニジェールのドッソ付近のマタンカリ村付近のサヘル帯の小低地集水域でも同様の基礎調査を実施した。タイとインドネシアでは西アフリカに応用可能な農林業システムの文献資科や、上述のように樹木のタネ等を収集した。アジアと西アフリカの研究者と意見交換し、農林業システム融合の条件を検討した。又、タイで採取した樹木種子はナイジェリアの苗畑で発芽生育させ、生育は順調なので移植を準備中である。フィリピンでは世界の稲作システムに関する既存の資料を収集した。
著者
Ng Peter K.L. 武田 正倫
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology (ISSN:03852423)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.111-116, 1993-09

The identity of the poorly known Philippine freshwater crab, Telphusa cumingii, is clarified on re-examination of the type in the British Museum. The species, briefly described by MIERS in 1884 and never reported since, has been regarded as belonging to the superfamily Gecarcinucoidea, and allied to species like Sundathelphusa picta and Holthuisana transversa. Telphusa cumingii in fact, belongs to the superfamily Potamoidea, family Potamidae, in the recently established genus Ovitamon NG et TAKEDA, 1992.
著者
Mizuseki H. Tanaka K. Ohno K. Kawazoe Y.
出版者
東北大学
雑誌
Science reports of the Research Institutes, Tohoku University. Ser. A, Physics, chemistry and metallurgy (ISSN:00408808)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.55-59, 1997-03-20

A new Monte Carlo model is introduced to describe the Diffusion-Limited Aggregation (DLA) with extra forces arising from the Lorentz's and/or Coulomb forces. Specific patterns grown under the external force are produced by Monte Carlo simulation. In the present model, the basic movement of particles is the random walk, with different transition probabilities in different directions, which characterize stochastically the effect of the extra forces. In some cases, pattern-formations which are qualitatively different from the standard DLA model are observed and they are compared with preexisting experiments.fractal dimensionDiffusion-Limited Aggregation (DLA)magnetic fieldcrystal growthcomputer simulationrandom walkMonte Carlo method
著者
野村 亨 WOLLNIK H. MEUSER S. ALLARDYCE B. SUNDEL S. 稲村 卓 RAVN H. 中原 弘道 松木 征史 HANSEN G. D'AURIA J.M. 永井 泰樹 篠塚 勉 藤岡 学 和田 道治 池田 伸夫 久保野 茂 川上 宏金 福田 共和 柴田 徳思 片山 一郎 NITSCHKE J.M BARNES C.A. KLUGE W.K. BUCHMANN L. BARMES C.A. MEUSEV S. D´AURIA J.M. SUNDELL C.
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

本研究の目的は,原子核反応で生成するさまざまな短寿命の不安定核種を,その場で分離・選別し,さらに加速して二次ビ-ムとして実験に供する技術の開発とそれによる先駆的研究の実施であった。上記の実験技術は,現在世界的に注目されている先端的技術で,原子核物理学と関連基礎科学分野に全く新しい研究手法を導入するものと期待されている。本研究では,以下の研究課題を設定し,東大核研を軸にして,欧米の主な関係大学・研究所と共同開発・研究を実施した。その成果は,国際会議等に発表するとともに,論文として雑誌に報告されている。A.大効率・高分解能オンライン同位体分離器(ISOL)の開発・・・不安定核のその場分離・選別(ア)大効率ISOLイオン源の開発CERN(スイス)とTRIUMF(カナダ)等と共同開発を実施。表面電離型,FEBIAD型,ECR型イオン源を試作し,さまざまな不安定核原子のイオン化効率を測定。その結果を踏まえてイオン源の改良を行った。アルカリ金属元素については40%以上の大効率イオン化に成功した。また,ビ-ムバンチングについても成功した。(イ)超高質量分解能ISOLの光学計算M/ΔM【greater than or similar】20,000のISOLイオン光学系の設計を,東大核研・東北大・ギ-セン大学(独)の共同研究として実施。機械精度や放射線ハンドリングの観点から,そのフィ-ジビリティを検討。その成果は,東大核研の不安定核ビ-ムファシB.不安定核ビ-ムの加速技術の開発(ア)世界の現状の調査・検討不安定核ビ-ムの加速は,唯一例としてベルギ-の新ル-バン大学でサイクロトロンによって試験的に実施されている。そこでの現状を調査の上,CERN(スイス),GANIL(仏),TRIUMF(カナダ)等の加速計画を吟味し,種々の加速器の長所・短所を明らかにした。この結果は次の(イ)に反映されている。(イ)分割同軸型RFQリニアックの開発電荷質量比の極めて小さい,入射エネルギ-の非常に低い重イオンリニアックの設計・開発を東大核研で行った。そのさい,GSI(独)とTRIUMF(カナダ)の研究者に詳細な検討・批判をあおいだ。試作した分割同軸型RFQリニアックは順調に稼動し,世界的な注目を集めている。C.不安定核ビ-ムによる核物理・天体核物理学の研究(ア)レ-ザ-による不安定核の精密核分光GaAs,AlGaInPなどの固体結晶中に, ^<75>Br, ^<114m>In等の不安定核を打ちこみ,レ-ザ-による光ポンピングにより,娘核( ^<75>Seや ^<114>In)のスピン偏極を実現した。固体中の不安定核のスピン偏極は世界的に稀な成功例である。さらに,RADOP法により,娘核の核磁気能率を精密に測定した。これは,CERN(スイス)との共同研究である。(イ)不安定核の天体核反応率の測定東大核研・理研・GANIL(仏)との共同研究として宇宙における重元素合成機構において,不安定核の天体熱核反応に役割の研究を実施。 ^<13>Nの熱核反応率の測定に成功した。上述の研究成果の多くは,平成3年度に開催された国際会議(原子核・原子核衝突に関する第4回会議,於金沢;第2回放射性核ビ-ム国際会議,於新ル-バン大学[ベルギ-];第12回EMIS会議,於仙台等)の招待講演として発表されている。また,国際誌等に論文として報告した。本研究成果は国際的な反響をよび,東大核研の研究プロジェクトにその結果が活用されたばかりでなく,CERN(スイス),TRIUMF(カナダ),LANL(米)等の研究所から共同研究が期待されている。
著者
堀井 憲爾 和田 淳 SUNOTO M.A. SOEKART J. SIRAIT K.T. 河崎 善一郎 仲野 みのる 角 紳一 依田 正之 中村 光一 山部 長兵衛 鬼頭 幸生 SUNOTO M. E. SOEKARTO J. SIRAIT K. T. 堀井 憲爾
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

インドネシアは、11月から4月に至る雨期には、ほゞ連日の雷雨に見舞われ、年間雷雨日数は、多いところでは150日にも達する世界的な雷多発地帯の一つである。雷の特性は、わが国の夏形雷に近いと思われるが、高緯度のわが国の雷との比較研究は意義がある。一方、インドネシアの電力施設は、現在、急速な開発途上にあり、送配電システムの雷防護対策は、極めて重要な技術として,その基礎となる雷の研究が重視されている。雷の研究は、自然雷の観測と共に,人工的に雷を制御し、誘発させて、雷放電特性を詳細に解明するロケット誘雷実験が欠かせない。ロケット誘雷実験は、わが国において、本研究組織のメンバ-により十数年の実施経験がある完成された技術である。このメンバ-とインドネシア側の大学、研究所のメンバ-の共同によるロケット誘雷実験が、昭和64年度より開始されて、平成2年4月6日には、インドネシアではじめての誘雷に成功した。本年度のロケット誘雷実験は、昨年度に引続き,ジャカルタの南ボゴ-ル地区のプンチャ峠近くの国営グヌンマス茶園内で、平成3年12月19日から平成4年2月19日までの2ケ月間実施された。同地点は、標高が1400mあり、ジャカルタ平原を見下ろす絶好の実験地である。この茶園内の小山の頂上に9基の発射台を立て,地上電界の測定・監視により、雷雲の接近時に、直径0.2mmの接地されたスチ-ルワイヤ付きロケットを真上に向って発射した。ロケットは英国製の船舶用救命索発射用ロケットを利用し、約500mの高度に上昇する。上昇途中でロケットから上向きのリ-ダ放電が進展し、その直後にロケットに落雷が起り、ワイヤに沿って雷電流が流れ、ワイヤは爆発燃焼してア-ク放電となる。実験期間中に30回近くロケット発射の機会があったが、ロケット不良が多く、うち15回の正常飛行により6回の誘雷に成功した。電流値は、現在詳細解析中であるが、最大12KAに達し、電流の極性はわが国の夏雷と同じく、負が5回と多く,正が1回であった。地上電界は、針端コロナ電流で最大3μAに達し、10kV/mを越える強電界を示した。今回の実験での特記すべき結果は、わが国の実験でもこれまで観測されなかった,避雷針への誘雷に成功し、流し写真の撮影にも成功したことである。12月25日,17:30の最大ー12kAに達する雷放電の第1線が、ワイヤに沿って発射台へ放電した後、約0.5秒後の第2撃が,発射台より約4m離れた10mの高さの避雷針へ放電した。その後,0.06秒後の第3撃もやはり避雷針へ放電しており、避雷針の保護効果は、多重雷の後続電撃に対して極めて有効な場合があることが確認された。15回の発射のうち1回は、ロケットが上昇途中でワイヤが地上から切れ、雷雲と大地との間の空間にワイヤが張られるという珍しい状況となり、いわゆる雷雲内放電誘発の実験となったが、残念ながら誘電には成功しなかった。今後,この方式の実験を再挑戦する必要を認めた。また,1回は空間電界計を塔載したロケットを打上げたが、電界計の不調のため観測に失敗した。この他,インドネシア電力公社の援助により、実験場内に300mの試験用配電線を架設し、誘雷放電時にこの配電線に誘導されるサ-ジ電圧の観測の準備を進め、特に分圧測定システムの技術について指導を行った。今年度は、実験の開始時と中間段階で、日本側から計5名が実験に参加し、技術指導と共同観測を行ったが、ロケットの操作、デ-タの観測記録は,すべてインドネシア側の責任で実施され、この実験に関する技術移転はほゞ完了したと考えてよい。しかし、英国製ロケットの不良が多く、次回からはわが国のロケットを輸出する必要があり、また一部の高度測定技術(電流波形記録,電磁界変化記録など)については、来年度以降も引続き技術指導と援助が必要であり、これに沿った施策推進が望まれる。なお、次年度以降も、乏しい資金ではあるが、インドネシア側で実験を継続する意向があり、日本側もできる限りこれに協力する覚悟である。
著者
BURTON C. K.
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.65, pp.27-46, 1967-04-10
被引用文献数
1

近年北西マライから多数の筆石とtentaculitesが発見されている。筆石の大部分はLlandovery期のもので一部Wenlock型がある。Tentaculitesは明らかに中下部デボン系のものである。時代が異るにもかかわらず両者は密接に伴っていて, 16産地では同一層理面上に伴って産出している。集められた事実を照合し再検した結果判ったことは, このようなシルル紀筆石とデボン紀tentaculitesの共存という異常な産状は, 北西マライからタイ西部, ビルマ東部をへて雲南西部に続く地向斜地帯ではごく普通にみることができる。このようなフォーナの混合は, 一時的な隔離と, その結果として浮游生物が堆積地帯から消失し, 続いて外的連繋が復旧した時に造山的擾乱が起った結果であると考えられる。この古生代中期の地向斜は, 雲南から北東に中国にのび, それから恐らくはヨーロッパと連絡があったことを示すいくつかの証拠がある。この雲南-マライ地向斜はまた, ヒマラヤ地域とも時々連っていた。南方では, Kalimantan(インドドネシアのボルネオ)からニューギニアのIrian Baratをへて東オーストラリアにのびていた可能性がある。時代の異るシルル紀筆石とデボン紀tentaculitesとが相伴って産出することは, Victoriaでも知られている。
著者
池淵 周一 土屋 義人 VIEUX Baxter WAHL Iver M. CONNER Harol YEH Raymond CRAWFORD Ken 亀田 弘行 中北 英一 田中 正昭 桂 順治 村本 嘉雄 光田 寧 土屋 義人 SASAKI Yoshi EMERRY Garry w. SHARFMAN Mark GARY W. Emer HAROLD Conne BOXTER E Vie IVER N. Wahl KENNETH C. C 土岐 憲三 池渕 周一 YOSHI K. Sas RAYMOND W H IVAR M Wahr CRAIG St Joh MARK Sharfma STEPHAN Ewan GARY W Emery J R Cruz KENNETH C Cr YOSHI K Sasa
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

弱点を改善する方策を見い出すために、いくつかの実験を行った.これらの研究を通して家の軒高における耐風速設計や,気象情報に応じた有効な避難方法,強風災害の予防策などを提言した.3)局地的に激しい気象災害の防止軽減に関する日米防災会議;科学技術庁防災科学技術研究所,京都大学防災研究所,オクラホマ大学国際災害研究センターなどが協力して上記国際会議をオクラホマ大学で開催し,日米あわせて約50名の参加のもと,メソスケールの激しい気象擾乱のメカニズム解明とその観測システム,洪水予測,土砂害予測,災害リスクの評価などについて研究の現状と今後の共同研究のテーマ等を議論した.風水害の防止軽減に関する世界戦略の研究討議;本共同研究のメンバーが2回会合をもち,3年間にわたる共同研究の成果とりまとめ方針を協議するとともに,とくに日米の暴風雨に伴って発生する風水害の軽減化の知見,技術をさらなるステップアップするため今後とも共同研究を継続していくことを合意した.戦略としては防災産業のコンセプトを提言し,今後はそのための研究予算を保険会社等の民間資金の導入も含めて日米双方とも鋭意努力することを確認した.なお,阪神・淡路大震災に関しても日米双方のメンバーが現地に入り,建物被害の実態を調査し,今後,日米双方の耐震設計のあり方を協議する素材を取得した.最終報告書は英文で100ページ程度にまとめて発行することにした.
著者
Groff David K.
出版者
国際短期大学
雑誌
紀要
巻号頁・発行日
vol.23, pp.49-63, 2008
著者
K.Ikeda
出版者
イタリア学会
雑誌
イタリア学会誌 (ISSN:03872947)
巻号頁・発行日
no.8, pp.133-136, 1959-12-30

第三回国際イタリア文学会が、一九五九年四月、南仏プロヴァンスのエクス大学で開催されることについては、昨年度の本誌上をかりて簡単に紹介しておいたが、あいにくわが国からの参加者はいなかった様子である。ところで最近到いたイタリアの学会紀要や文芸雑誌をみると、国際学会の内容がかなり詳細に報告されている。そこで、一九五九年度第二号の「レッテレ、イタリアーネ」誌Lettere Italianeに発表されたエットレ、カッチァ教授Ettore Cacciaの報告「ペトラルカとペトラルキズモ-第三回国際イタリア文学会報」Il Petrarca e il Petrarchismo., III Congresso dell' Associazione Internazionaleper gli studi di Lingna e Letteratura italiana等を参照して、今回の学会でどのような問題が論議されたのか、又、主な研究発表の傾向といった点を参考までに記しておきたい。
著者
高嶺 豊 KHAN Imran Ahmed BALARAJU Kasupa DAS D.K.Lal REDDY Sudhakara MURTHY Krishina PRATAP Kumar Raja
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

南インドのアンドラプラデッシ州における障害者の自助グループとその連合体の構築の取り組みが、開発途上国の農村部における障害者のエンパワメントと貧困削減に効果的であることが検証された。この取り組みは、さらなる研究が必要であるが、今後、この取り組みが、他の開発途上国においても障害者の貧困削減のための重要な解決策となることが期待される。