著者
相馬 保夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究は,第一に,ヴァイマル期における産業合理化と労働者・労働組合との関係,第二に,労働者生活圏の変容と労働者文化・大衆文化との関係をテーマとした。1.相対的安定期に始まる産業合理化は,ルール炭鉱では,坑内労働の機械化と労働組織の再編成によって,電機・機械工業では,フォード・システムに倣う大量生産方式の端緒的導入によって,労働者の伝統的な労働の世界を変えた。それは,労働運動の基礎となっていた旧来の熟練を掘り崩し,労働者の連帯の構造を破壊した。産業合理化に対して,ドイツ労働総同盟(ADGB)は,生産性の上昇による生活水準の改善という方向で積極的に対応し,これまでの社会主義的な大衆窮乏化論に代えて大衆購買力論を打ち出した。しかし,ADGBの経済民主主義論では経営民主主義は軽視されており,合理化による生産点での労働者文化の変質についての認識は乏しかった。2.1920年代における労働者生活圏については,労働者街の変容と労働者文化,青年労働者層と大衆文化という点について検討した。大都市ベルリンでは,都市計画により中心部の再開発が緒につくとともに,郊外には集合住宅団地が建設され,これによって従来の労働者街は変容していった。一方,ルールの炭鉱住宅にも社会的変容の波は押し寄せていたが,労働者文化と生活圏の一体性はなお比較的よく保たれており,生活の場での労働者の連帯感はかえって強まった。このような社会的変容のなかで青年労働者層は,世界恐慌期に不安定な生活を送っており,両親の世代とは異なる生活観と政治意識を有していた。彼らこそ,労働者文化と大衆文化との間で方向を見定められないこの時期の労働運動文化のディレンマを体現していたといえる。
著者
兼子 忠延
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

網膜中心動脈塞栓症、脳梗塞など脳循環障害の基づく疾患に対して、障害部位への血流改善と酸素供給のために交感神経節ブロック(星状神経節ブロック:SGB)や高圧酸素治療、炭酸ガス併用酸素吸入などが治療法として用いられるが、これらの治療が脳血流に対してどの程度の効果を及ぼすかについては議論が多いところである。そこで本研究では脳における血流両と酸素供給の面から、脳の血流障害時の治療法として何かが効果的であるかを解明することを目的とした。平成2年度には犬でのSGBの実験法を確立し、SGBと酸素、炭素ガス吸入の併用効果については検討し、その結果、脳血流量(レーザードップラー血流計を用い脳表部で測定)は、SGBによってやや減少すること、脳への酸素供給の面からはSGBよりも酸素と炭素ガスとの併用吸入が有用と思われた。平成3-4年度はSGBとプロシタグランジンEI(PGEI)との併用効果について椎骨動脈血流量(VBF)への影響も含めて検討した。PGEIの投与量は、血圧に影響せず総頚動脈血流量(Ca-BF)の増加が得られる200ng/kg/分とした。PGEI投与によって、心拍出量は約5%、Ca-BFは約10%それぞれ増加した。左SGBによって、ブロック側のCa-BFは約35%増加し、対側では約10%減少した。SGB後にPGEIを併用すると、ブロック側のCa-BFはSGBによる増加量のさらに約10%が上乗せされ、また内頚動脈系の血流量を示すCBFは影響されなかったことから、SGBとPGEIによるCa-BFの増加作用は外頚動脈系での血管拡張効果と思われた。VBFはSGBによって増加し、またPGEIに対する反応は、SGB前は約10%程度の増加であったの対し、SGB後はブラック側で30-50%と増加率が大きくなった。このように、SGB側の外頚動脈系と椎骨動脈系ではPGEIの血流増加作用が増強されることから、SGBとPGEI持続静注の併用療法は頭部血流障害に対して有用と思われた。
著者
白尾 恒吉 木村 勇 仲根 孝 井上 政久 岩堀 信子 本間 龍雄
出版者
青山学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

数学の各分野において近年国際的発展のはなはだしい研究を見る組合せ論的な扱いを主として、我が数学教室においては、代表者白尾は、マルコフ過程の從来の解析的思考を組合せ論的な立場から見直すべく出来るだけ夛くの知識と概念を導入して来年度への研究の活力とした。分担者岩堀は、組合せ論properな未解決問題をプログラムし、計算実験をくりかえし、いくつかの部分的な成果および予想を得た。分担者本間,井上は或る種の非代数的曲面の変形の研究から新しい非代数的低次元複素夛様体を構成することを試みた。分担者小池は、昨年夏の日米合同セミナー"可換群と組合せ論"(バークレイ)において、Littlewood's公式に基き、(対称な有理関数のShier関数への展開公式)偶数次の対称群とワイル群の間の既約表現に関連する分解公式を得た。以上、いくつかの方面からの研究をひろく行ったが、いづれもコンピューターによる補助計算、実験計算等に夛くの時間をかけているので、結果を得られたものもあるが、未だその途上に研究をつづけているものが夛数あるのでこれらを来年度の課題としたい。
著者
杉山 勝三
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.ヒスタチン類の分離、精製ヒスタミン遊離物質として、ヒト唾液から分離した高ヒスチジン含有ペプチド、F-Aは1988年にヒスタチン5と命名されたものと同一ペプチドであった。そこで酸性下に熱処理した唾液からヘパリンカラムと高速液クロ(HPLC)を用いてヒスタチン1、3および5を同時に迅速精製する方法を開発した。唾液中に存在するヒスタチン1、3と5の割合は1:1:1であった。これらのアミノ酸組成および一次構造を決定した。2.ヒスタチン類のヒスタミン遊離機構精製したヒスタチン類を用いてラット腹腔から分離した肥満細胞からのヒスタミン遊離の機構について検討した結果 1)ヒスタチン類によるヒスタミン遊離は濃度依存的におこり、ED_<50>はヒスタチン3と5は13μM、ヒスタチン1は100μMであり、ペプチドの塩基性の強さと分子量に関係していた。2)このヒスタミン遊離反応は温度に依存しており27°ー37℃に至適温度があり、pHは中性から酸性側で著明であった。3)温度37℃において反応は10秒以内に最大に達した。4)このヒスタミン遊離は肥満細胞内の乳酸脱水素酵素の漏出を伴わなかった。従ってヒスタチンによるヒスタミン遊離は開口分泌様式によるものと考えられる。3.ヒスタチン類の抗菌作用の機構1)カブトガニの血球抽出液を用いるLimulus testにおいてグラム陰性菌の内毒素成分リポポリサッカリド(LPS)によるゲル形成反応をヒスタチンは阻害した。2)感作血球から補体による溶血反応はLPSにより阻害されるが、ヒスタチンはこの阻害を反転した。3)LPSとヒスタチンはゲル内沈降物を形成した。以上の成績は唾液中には一群のヒスタチンが存在し、口腔内の自然防禦成分として役立っていることを示唆している。
著者
桑山 浩然 渡辺 正男 井上 洋一 渡辺 融
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1.研究の目的:平安時代から江戸時代に至る蹴鞠技術の変遷を総合的に考察するため、(1)文献の研究および翻刻、(2)現在まで蹴鞠の技法を伝承している団体である蹴鞠保存会の会員を対象にした、技法の調査や練習法の聞き取り調査、(3)鞠の復元製作とこれを利用した実技再現、を行なう。2.研究成果の概要:(1)蹴鞠関係の文献は、宮内庁書陵部・国立公文書館内閣文庫・国立国会図書館など各所に所蔵されるが、ここでは天理大学付属天理図書館・滋賀県大津市平野神社の2箇所に所蔵されるものに重点を絞って調査した。天理図書館は、かつて蹴鞠保存会にあった文献200余点を一括収蔵する。その中から今年は27点の調査を行なった。平野神社は、江戸時代に飛鳥井家と並ぶ蹴鞠道家(家元)であった難波家の史料を一括収蔵する。江戸時代中期の難波家当主がまとめた『蹴鞠部類抄』など他所にはない文献も多く、写真によって逐次解読作業を進めている。以上の調査を踏まえて、鎌倉時代初期に成立したと考えられる『蹴鞠口伝集』と、鎌倉時代末頃にまとめられた『内外三時抄』の2点を翻刻した。(2)実技の調査は、蹴鞠保存会の練習日に合わせて2度京都まで出張したが、いずれも豪雨となり、実現しなかった。やむなく聞き取り調査のみを行なった。(3)鞠の復元は、各所に問い合わせてみたが研究費の範囲では実現不可能との返事で、断念せざるをえなかった。ただ蹴鞠保存会が行なった鞠の「突直し」(補修)は見学することができた。3.研究発表:スポ-ツ史・日本史・日本文学などの研究者に呼び掛け、東京および京都で研究会を行なった。特に京都では蹴鞠保存会会員の参加があり、鞠・装束・沓などを実見出来た。報告書は、研究報告(3編)・文献研究(2編)・文献の翻刻・参考文献・平野神社所蔵史料目録など、計388ペ-ジとなっている。
著者
平山 久雄
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

上田正『切韻諸本反切総覧』に復元推定されている原本『切韻』の反切を,吟味を加えつつカ-ド化し,反切上字の韻母・反切下字の声母の全体的分布に関する詳しい統計表を作成した。これは随唐音韻史の基礎である『切韻』の音韻体系に関する考察を進める際の基本資料として永く役立つものである。現代諸方言の調査資料についても鋭意収集し,音韻の地理的分布について知見を増すことができた。これらの資料を用いて,従来から議論の多い随唐音韻史上の諸問題について考察し,自分として一応納得のゆく結論に達した。「舌上音」の音価については現在有力なretroflex説を否定しpalatal説を支持する結論を得た。「重紐」については声母によって音価のニュアンスが異なること,喉音韻尾については円唇性の弱化と口蓋性の強化とが随唐音韻史の経過において相互に関連すること,などを立証しえた。声調に関しては,方言資料・文献資料および押韻資料の分析を通じて,上古音より随唐を経て現代官話諸方言に至る声調調値価変化の大筋を初めて描くことができた。その結果,上古音時期には音韻論的な意味での声調はまだ存在せず,主母音・韻尾における喉頭緊張の有無が声調の区別に転化したとの結論を得た。これは中国語とチベット語との親近性に一つの追証をもたらすものである。以上のような中国語音韻史に関する新知見を織り込みながら,研究代表者の旧稿「中古漢語の音韻」(大修館『中国文化叢書』所収)を大幅に改訂補充した「中古音講義」なる原稿をほぼ完成した。更に多少の改訂を加えて出版を考える予定である。
著者
志水 義房 渡辺 真珠
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

高濃度カリウム培養液が培養初期の脊髓神経節細胞の生存率を著しく上昇させることが報告されている. しかし, その他の種類の神経細胞についての報告, ならびに長期培養による発育分化に対する影響についての報告は殆んど見られない. そこで本研究ではニワトリ胚の脊髓神経節と交感神経節, ならびに脊髓の神経細胞を培養し, 高濃度カリウムの効果について検討を加え次のような結果を得た.1.高濃度カリウム培養液は脊髓神経節のみならず, 交感神経節の神経細胞の生存率を著しく上昇させた. しかし, 脊髓の神経細胞の生存率の上昇は見られなかった.2.高濃度カリウム培養液は脊髓神経節細胞の分化を抑制した. 交感神経節細胞ではコリン作動性への転換を抑制し, アドレナリン作動性を保持した.3.上記2.の効果はカルシウム拮抗薬であるマグネシウム, ジルチアゼムで抑制されたので, カルシウムが関与しているものと考えられる.4.対照培養液下で交感神経節細胞を脊髓と併置して培養した場合にも, 交感神経節細胞のアドレナリン作動性が保持されることが判明した.5.高濃度カリウム培養液下では脊髓神経節と交感神経節の神経細胞の生存率が上昇するので, これまで困難であった培養初期の遊離単独神経細胞の動態を微速度映画に撮影して分析することが容易となった.6.分離培養脊髓神経節細胞に細胞内可溶性蛋白を除去後, 急速凍結・ディープエッチング法の適用を試みた結果, 細胞骨格, 細胞小器官の三次元的微細構造を詳細に観察することが可能となった. 高濃度カリウム培養液下では微小管とニューロフィラメントによる束状構造が著明となり, 小胞体から多数の輸送小胞が形成されている像が観察され, 細胞内活動の増加を示唆する所見が得られた.
著者
椛 秀人 奥谷 文乃 佐藤 隆幸
出版者
高知医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

われわれは、数年に渡って、雌マウスに形成される交尾相手の雄の匂いに対する記憶のメカニズムを研究してきた。この匂いの記憶は妊娠の維持に不可欠である。この記憶の形成過程は、副嗅球へ投射する青斑核ノルアドレナリン神経の交尾刺激による活性化によって駆動される。われわれは、この記憶の神経・シナプス・分子のレベルのメカニズムを明らかにしてきた。この一連の記憶システムは、この系だけにとどまらず、母子の絆形成にも当てはまる性質のものであるとの考えで、検討を加えた。嗅球へ薬物の注入が可能なようにステンレス管を前もって植え込んでおいた妊娠21日目の雌ラットに、薬物の連続注入を開始し、これらのラットが分娩後に行う母性行動を観察した。行動の観察は主に母性行動の基本型である子運び動作、子なめ動作、授乳姿勢を計測した。興奮性アミノ酸受容体アンタゴニストであるD-AP5を注入しても、上記の母性行動に有意な変化は認められなかった。本結果は、妊娠の維持に不可欠な匂いの記憶の成立にNMDA受容体が関与しないことと一致していた。さらに、non-NMDA受容体アンタゴニストのCNQXの知果を目下、検討中である。ウレタン麻酔下の雌ラットを用いて、嗅球内情報伝達に対する青斑核の電気刺激の影響を検討した。青斑核の刺激は、顆粒細胞による僧帽細胞のフィードバック抑制を感じた。目下、この効果にかかわるアドレナリン作動性受容体のタイプを検討中である。さらに、青斑核と外側嗅索の連合刺激によって、このフィードバック抑制に可塑的変化が誘導されるか検討を加える予定である。
著者
赤池 孝章 野口 陽一郎 前田 浩
出版者
熊本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

ウイルス感染病態における一酸化窒素(nitric oxide,NO)の役割を解析するため、マウスインフルエンザウイルス肺炎モデル、ラット狂犬病ウイルス/単純ヘルペス脳炎モデルを作製し、各ウイルス感染病巣におけるNOの過剰生成を解析し、NO合成阻害剤であるN^G-monomethyl-L-arginine(L-NMMA)を投与し、生体内のNO合成を制御することで、ウイルス感染病態がどのように修飾されるかを検討した。その結果、マウス、ラットの肺、および脳内において、ウイルス感染に伴い誘導型NO合成酵素(NOS)が強く誘導されることが、誘導型NOSのcDNAプローブを用いたRT-PCR/Sourthern blot法、およびNorthern blot法により明らかとなった。また、ウイルス感染局所におけるNO生成を電子スピン共鳴(electron spin resonance,ESR)法により、110Kにて解析したところ、過剰に産生したNOに由来するNO-ヘモグロビンアダクトの有意な生成が認められ、これは、NOS阻害剤であるL-NMMAを動物に投与することにより著明に抑制された。さらに、L-NMMA投与により、インフルエンザウイルス感染マウスの生存率が有意に改善(100%致死率→50%生存)した。以上の知見より、マウスインフルエンザウイルスをはじめとする各種ウイルス感染の病原性発現機構において、NOが重要な増悪因子として作用していることが明らかとなった。
著者
河本 昌志 大澤 恭浩 藤井 宏融 弓削 孟文 向田 圭子
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

日本国内での悪性高熱症(MH)を発症した患者やその血縁者およびMHと関連性が疑われる疾患の患者を対象とし,骨格筋小胞体のCa-induced Ca release(CICR)機構の以上亢進と,CICRチャネルであるリアノジン受容体(RYR1)の遺伝子の異常との関連性について研究した.方法は,対象者の同意を得て末梢血からDNAを抽出し,RYRl遺伝子領域のPCRプライマー7組を用いて増幅し,制限酵素断片長多型(RFLP)による解析と同近傍領域のマイクロサテライトプローブを用いた解析を行った.また,骨格筋を生検してサポニン処理して化学的にスキンドファイバーを作製し,遠藤らの方法でCICR速度を測定した.これまでの2年間に26家系72名よりDNAを抽出した.また筋生検によるCICR速度の測定は26名で行った.このうち臨床的に劇症MHを発症した4名とその家系の3名でCICR速度の異常亢進が認められたが,C1840Tの変異はいずれの対象者にも認められなかった.しかし,1家系でRFLPとマイクロサテライト法により,RYRl遺伝子領域の異常とMH素因(CICR速度異常亢進および劇症MH)との関連性がより明らかになった.従ってこの家系では末梢血採血という最低限の侵襲で,より広範囲の遺伝子検索ができる可能性が高くなった.さらに従来報告された遺伝子変異を検出するためのPCRプライマーを作製中で,これを用いて広範囲のDNA異常を検討する予定である.MHは希な疾患であり,しかも筋生検は侵襲的であるために,承諾を得てCICR速度測定を実施できる症例数は限られる.今後はこのプライマーを用いて最低限の侵襲で広範囲のDNA異常を検討する必要があると考えている.
著者
森山 茂徳
出版者
独協大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究は1910年の朝鮮総督府設置から1945年の植民地統治終焉までの36年間において、朝鮮における言論機関の果した役割を政治的観点から明らかにしようとするものであった。言論機関を(1)邦字紙、(2)韓字(ハングル)紙とに分けて、研究の結果得られた知見を記すこととする。 (1)邦字紙-発行邦字紙数は時期によって異なるが40種以上にのぼり、その果した役割も多様である。第1に総督府機関新聞とされる『京城日報』の果した役割は特筆されるが、これについては「現地新聞と総督政治-『京城日報』について-」という論文を成果として発表し、同紙の人的構成、経営面の特性、論調の変遷、総督府との関係などについて詳細な分析を試みた。同紙は時期によりその性格を異にし、総督政治との緊張・対立をはらんだ時期と純然たる御用紙的役割を果した時期とに分けられ、とくに緊張期に生彩のある紙面を構成したこと、朝鮮人記者の重要なリクルート源であったことなどを明らかにした。第2に他の邦字紙は概ね日本人の朝鮮進出と朝鮮人独立運動の弾圧とを主張し、『京城日報』よりも尖鋭的な時期もあったが、時代が下るにつれて『京城日報』の独占体制構築の前にその下請的役割に甘んじてゆくことを明かにした。 (2)韓字(ハングル)紙-1920年代「文化政治」の開始により発行が許可され、朝鮮人の言論表明・政治表明・政治参加の機会の増大をもたらすチャネルとなったが、総督政治に対する支持調達よりも要求・抵抗の性格を多くもち時として弾圧を蒙った。しかし1930年代に発行部数の増加とともに商業化し、この中から民族的伝統を守りつつ総督政治に一定の支持・合意を与える部分も現われた。この中から戦後韓国の言論界、政界を担う人々が養成された(尖鋭化した部分は弾圧された)。この意味で言論は政治参加と主張穏健化、民族的伝統維持の主要な担い手としての役割を果した。これらの点については第2の論文で成果を発表する予定である。
著者
錦見 盛光 河合 敏秀
出版者
(財)応用生化学研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

ヒトやサルはビタミンCを生合成することができないため、このビタミンを食物より摂取せねばならない。その原因がビタミンC合成経路で働くグロノラクトン酸化酵素(GLO)の欠損にあることが分っているので、これらの動物の細胞へGLOのミニ遺伝子を導入しGLOの発現を試みた。ラット肝臓GLOのcDNAを発現ベクタ-pSVLの後期プロモ-タ-と後期ポリA付加部位の間へ挿入した構築体を作製した。これをアフリカミドリザルの腎臓由来のCOSー1細胞へリン酸カルシウム共沈殿法で導入し、抗ラットGLOウサギ抗血清を用い免疫組織化学的方法で細胞を染色したところ、5ー10%の細胞でGLOタンパク質が発現されていることが分った。発現されたGLOタンパク質が酵素活性を持つことを高速液体クロマトグラフィ-用いるGLO活性測定法により確認した。さらに、COSー1細胞で発現されたGLOがラット肝臓のGLOと同じ分子量を有することをウエスタンブロット法で明らかにするとともに、ミクロソ-ム画分に局在することを細胞分画法で調べた。また、恒常的にラットGLOをヒト由来のHeLa細胞で発現させるため、マウスMoloney白血病ウイルスのLTRとバクテリアのネオマイシン耐性遺伝子をpBR322へ組み込んだベクタ-(N2)のXhoIサイトへ、SV40の前期プロ-モ-タ-の下流へラットGLOのcDNAをつないで連結した。得られた構築体をHeLa細胞にリン酸カルシウム共沈殿法によりトランスフェクトしG418に耐性を示す細胞を得た。その細胞がGLOを発現することを免疫組織学化的に染色して確認した。現在、GLO活性を発現するようなクロ-ンを得る試みを行っている。
著者
服部 征雄
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

イリドイド配糖体のaucubinは腸内細菌とインキュベーションすると腸内細菌由来のβ-グルコシダーゼにより加水分解され、真正アグリコンであるaucubigeninの他、新規含窒素化合物であるaucubinine A,Bに変換されることを見いだした。腸内細菌のうちKlebsiella pneumonia,Bifidobacterium breve,Bifidobacterium pseudolongum,Peptostreptococcus intermedius and Bacteroides fragilisなどの菌種は特にこの含窒素化合物の生成が顕著であった。また、和漢薬の山梔子中に含まれる代表的イリドイド配糖体であるgeniposide,gardenosideも腸内細菌とインキュベーションすることによりそれぞれの真正アグリコンの他、genipinine,gardenineと命名した含窒素化合物を生成することが判明した。Genipinineの生成には、Peptostreptococcus anaerobius,Klebsiella pneumonia,Fusobacterium nucleatum,Bacteroides fragilis ssp.thetaotusなどの菌種が顕著な生成を示すことが判明した。これらの含窒素化合物の生成は、β-グルコシダーゼの作用により生成したアグリコンのヘミアセタール構造の開環、ジアルデヒド中間体とアンモニア、あるいはアンモニウムイオンとの反応により生成するシッフ塩基を経由するものと思われる。このように、イリドイド配糖体が腸内細菌の作用により、含窒素化合物に変換されることは、非常に興味あることであり、今後これらの新規化合物の薬効が明らかにされれば、和漢薬の薬効発現機構の解明に繋がるものと思われる。
著者
渋谷 和雄 金尾 政紀
出版者
国立極地研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1.1992年1月に行われた昭和基地を含む南極SCAR・GPSキャンペーンの解析を行うため、GAMITプログラム入力データファイル作成及び編集を行った。平成6年度用いたCVIEWに替わって平成7年度ではAUTCLN操作が出来るようになったので能率が上がった。SIO暦、GFZ暦を用いた比較解析を行った。2.平成6年度は3日間データの解析しかできなかったが、平成7年度では17地点、10日間データを用いた解析ができた。SIO暦によると、昭和基地GPS基準点(No.23-16金属標)のITRF92地心座標値はX=1766182.964m,Y=1460336.492m,Z=-5932285.883mであった。同じデータセットについてGFZ暦を用いるとX=1766182.947m,Y=1460336.521m,Z=-5932286.005mであった。標準誤差はいづれも4-5cmであった。Z成分の差が大きい(12cm)が系統的な差かどうかは今後の課題である。3.GPS基線解析により2-3cmの収束精度を保証するためにはsite information table, session information tableの確証が必要である。日々の解は4-5cm確度で安定はしているが各基地のアンテナオフセットが、どの点でも1cm精度で安定しているかどうかは心許ない。測量用の三脚ではなく恒久的なピラ-での観測が重要である。4.昭和基地においては1993年2月からDORISビ-コンが運用されている。No.23-16金属標のDORIS解による地心座標値はX=1766182.526m,Y=1460336.784m,Z=-5932285.380mであった。比較解析結果の一部を測地学会誌に発表した。5.1998年より定期的なVLBI観測を開始する計画が具体化した(APT95 International Workshopにて発表)。GPSとVLBIの同時比較観測により地球動力学基礎データが得られるであろう。
著者
上参郷 祐康 大貫 紀子 野川 美穂子
出版者
東京芸術大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

名古屋の箏曲地歌演奏家団体のひとつである財団法人国風音楽会は、1893年に全国的組織の国風音楽講習所の名古屋支部として発足した。当初の会員は多くは江戸時代の盲人音楽家の組織である当道に所属していたので、国風音楽講習所では、多くの当道の制度や行事をとりいれた。これらのうちのあるものは、今日でもなお国風音楽会に伝えられ、また当道音楽のレパートリーの中でも、平曲や一部の胡弓曲のように、他には伝わらないものもある。本研究は、この国風音楽会の活動状況や活動内容を調査・記録し、その結果を、江戸時代以降の当道資料や音楽資料などと照らし合わせ、近世音楽史の重要な部分を担ってきた盲人音楽の実態を立体的に解明する事を目的としたものであり、その成果は主に以下の3点にまとめることができる。1.国風音楽会の年中行事について-年間約15種の行事を行うが、このうち室町時代に起源を持つ人康祭を含む重要な7種の行事については録音・撮影等による記録を作成し、調査検討を進めている。2.国風音楽会の教習制度について-盲人男子、盲人女子の場合、晴眼者の場合にわけて、教習上の曲の進度と弟子の側の資格取得(免状、許し等)との対応関係、盲人音楽家の資格の種類、およびその実態について戦前と戦後の変化にも留意しながら調査した。3.国風音楽会独自の伝承レパートリーについて-国風音楽会で伝承する、箏曲・地歌・胡弓曲・平曲について調査記録するとともに、国風音楽会所蔵の曲集の調査や名古屋で出版された曲集の収集も合わせて行った。
著者
加藤 昭 齋藤 靖二 松原 聰
出版者
国立科学博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

本邦各地の層状マンガン鉱床産の鉱石試料中に含まれるニッケル・コバルト鉱物の同定を行った。それらのうち、三種について化学組成を決定した。又一部のゲルスドルフ鉱・輝コバルト鉱については、購入のプリセションカメラにより晶系を決定(等軸)した。最も重要な事実は、栃木県鹿島鉱山産試料中の含ニッケル黄鉄鉱(最高Ni0.46重量%)の確認、ニッケルの分布状態の把握、その成因の推定で、そのニッケルは本来テフロ石(【Mn_2】Si【O_4】)中の微量成分として含まれていたものが、そのバラ輝石(〜MnSi【O_3】)化に伴なって濃集されたものであろうという結論に達した。この結論はバラ輝石の集合中に含まれるニッケル・コバルト鉱物の成因を説明することができる。またこれらが砒素を含む場合、その砒素の根源も恐らくテフロ石にあるであろうと考えることができる。また栃木県板荷産のバラ輝石を主とする鉱石中に見出されたシーゲン鉱(【(Co,Ni)_3】【S_4】)+輝コバルト鉱((Co,Ni)AsS)の組合せではCo/(Co+Ni)比は前者中で後者より小さいことを明らかにした。なお鹿島鉱山ではテフロ石(最高NiO 0.07重量%)以外にも、チロディ内石(〜$$Mn_2$$$$Mg_5$$$〔OH|Si_4O_11〕_2$$)中に最高NiO 0.18重量%が認められた。これらの鉱物中に含まれるニッケル・コバルトの根源については、現世の深海底に堆積しつつあるマンガンノジュール様のものの生成が過去の地質時代にもおこっており、これがそれに該当するとして説明される。まずこれを構成する二酸化マンガンの鉱物がニッケル・コバルトを取り込んで結晶化しその後の中間過程は不明であるが、最終的には上述のような含ニッケル・コバルトテフロ石となり、この中ではこれらはマンガンを置換しているが、テフロ石からバラ輝石の生成や硫黄の供給などによってニッケル・コバルトは硫化物等として結晶したものである。またこれらの過程を通じて、両元素の地球化学的挙動は似通っていた。
著者
常木 和日子
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

現生の脊椎動物のうちで最も原始的な体制を示す円口類(ヤツメウナギ類、ヌタウナギ類)の横断連続切片を作成し、比較解剖学、比較組織学的観点から、この類の体制の機能的および系統的特徴を明らかにしようとした。ヤツメウナギ類に関してはアンモシ-テス幼生も観察した。器官、組織レベルで円口類の最も特徴的な点は、広大な血洞系の存在と、多様に分化した軟骨系、および顕著な赤筋の存在であった。この3つの系は、特に呼吸器官を特徴づけていた。アンモシ-テス幼生では、口腔と咽頭の間に縁膜が存在する。この縁膜の絶え間ない運動により口から呼吸水と食物であるプランクトンが取り込まれる。縁膜内には血洞系と赤筋が発達しており、またひずみがかかる口腔壁への付着部には繊維性の粘液軟骨がみられた。縁膜の運動は一義的には赤筋によるが、この収縮を縁膜全体に伝える上で、血洞系が一種の液体骨格の役割を果しているらしい。ヤツメウナギ(スナヤツメ)成体では縁膜は退化的になり、呼吸水は鰓孔と鰓嚢の間を往復する。成体では血洞系が体内各所にみられるが、鰓嚢を囲むものがよく発達していた。閲嚢外壁には赤筋が広く分布するが、この収縮が囲鰓血洞を運動伝達装置として鰓嚢の収縮、呼吸水の流出を引き起こすものと考えられる。その後の呼吸水の流入は、鰓嚢壁に存在する特異的な胞状軟骨を連結する繊維性構造の弾性に基づく鰓嚢の拡張によるらしい。ヌタウナギでも広大な血洞系が体内各所にみられるが、やはり縁膜内血洞や囲鰓血洞が存在する。また縁膜内にはヤツメウナギのものとは組織学的に異なる胞状軟骨と赤筋がみられた。円口類では特異的に分化した筋肉系と軟骨系が呼吸運動に関与しており、また血洞系がその運動の円滑な遂行に、一種の液体骨格として重要な役割を果していると推定された。しかしナメクジウオや軟骨魚類との比較から、血洞系の存在は円口類の共有派生形質とはみなせなかった。
著者
局 博一 桑原 正貴 土井 邦雄 菅野 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

鼻粘膜の感覚を支配する三叉神経、および喉頭粘膜の感覚を支配する上喉頭神経には、触刺激、温度、圧力、呼吸筋運動に応答する神経受容器が存在することを明らかにし、それらの受容器を介する反射機構を追求してきた。今回の研究課題では、鼻粘膜および喉頭粘膜の侵害受容に関与すると思われるC線維の活動記録を通じて、各種化学的刺激に対する応答能と刺激伝導特性を明らかにした。1)鼻粘膜:モルモット鼻粘膜の篩骨神経から、合計36本の単一神経活動を記録した。C線維を選択的に刺激しうるcapsaicin(0.3mM)を作用させたところ、19本(53%)が明瞭に刺激された。一方、ammonia(1.5M)およびnicotine(6mM)に対してはそれぞれ17本、6本が刺激された。同一の神経線維が2種類以上の物質に応答する交差反応も認められた。capsaicinとnicotineに対する応答様式は放電が長時間持続する遅順応型を示す一方、ammoniaに対しては放電が一過性に終わる速順応型を示した。前者の応答は、鼻粘膜のかゆみ、充血、鼻汁分泌などに、後者の応答は痛み感覚などに関与することが推測されるとともに、いずれもくしゃみ反射の誘発に欠かせないものと思われる。実際capsaicinの反復投与によりC線維が脱感作されたモルモットでは、くしゃみ反射の誘発がかなり困難になった。また、正常な鼻粘膜に高濃度のbradykininやhistamineを作用させても、明瞭な神経応答を示さないことが解った。2)喉頭粘膜:モルモットおよびラットの喉頭粘膜にcapsaicin(100μg/ml)またはhistamine(200μg/ml)を作用させ、呼吸循環反射と上喉頭神経求心性活動を記録した。capsaicinの作用では、いずれの動物種でも強い呼吸抑制、血圧降下、徐脈が生じたが、とくにラットでは著しかった。ヒスタミンは、一部のモルモットに対して軽度の呼吸抑制を生じたが、ラットに対しては何等の効果がなかった。これらの成績は、両動物種(とくにラット)において喉頭粘膜にC線維が多く分布するという知見や、ラットにおいてはモルモットほどirritant receptorが見いだされないという知見に一致する。神経活動記録では、capsaicinに対して強い応答を、histamineに対してはモルモットで弱い応答が示された。histamineの全投与によりcapsaisinに対する応答性が増強されることも明らかになった。
著者
笹川 英夫
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.窒素固定活性発現機構の解析にあたり、ニトロゲナーゼおよびレグヘモグロビンの抗体調製を試みた。ダイズ根粒よりニトロゲナーゼMoーFeタンパク質およびレグヘモグロビンタンパク質を精製し、ウサギ抗体を調製した。これらの抗体を用いてクサネムの茎粒・根粒およびダイズ根粒におけるニトロゲナーゼ、レグヘモグロビンの相同性について調べた。クサネム茎粒と根粒におけるニトロゲナーゼは極めて相同性が高く、ダイズ根粒のそれとは部分的に相同であることが明かとなった。調製したレグヘモグロビン抗体とクサネム茎粒および根粒のレグヘモグロビンとのreactivityは極めて弱くそれらの相同性について確かな情報を得るにはいたらなかった。非マメ科植物根粒内ニトロゲナーゼはFrankiaの小胞体に特異的に局在することを免疫化学的電子顕微鏡法で明らかにした。2.茎粒形成に関わる温度、光、栄養など環境要因について調べた。外部より与えられた化合態窒素、菌接種部位の光の有無は茎粒形成にほとんど影響を与えなかった。これに対し温度は極めて重要であり、20℃において茎粒形成は著しく抑制された。また基部に近い節間および先端付近の節間では茎粒が形成されにくく、中央部の節間ではよく茎粒は形成された。茎粒の形成は皮目の発達と密接に関連していることが強く示唆された。3.いわゆるカウピータイプに属し、宿主を異にするリゾビウム(クサネム、セスバニア、ギンネム、ラッカセイ)を用い、それらの茎粒形成能力について調べた。セスバニア、ギンネム、ラッカセイからの分離菌はクサネムに対して茎粒形成能力は認められなかった。また有用マメ科作物への茎粒導入を試みるためラッカセイに対して上記リゾビウムを接種したが、いずれにおいても茎粒形成は認められなかった。
著者
一ノ瀬 充行
出版者
島根医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

補体成分C5aはマクロファージにおいて走化性の亢進、スーパーオキサイド産生、IL-1・TNF放出促進作用等が知られている。チオグリコレート刺激により誘導した腹腔マクロファージにC5aを微少投与したところtonicとphasicの2種の外向き電流を生ずることが見出された。両成分とも逆転電位は外液K濃度に依存して変化した。KチャネルブロッカーであるキニジンとTEAにより抑制された。intermediate型のCA^<2+>依存性K^+チャネルブロッカーのキャリブドトキシンはphasic相のみ抑制した。外液Ca^<2+>を除去するとphasic成分は消失したがtonic成分は存続した。以上の結果よりC5aによる活性化に伴いCa^<2+>依存性と非依存性の二種のK^+チャネルが活性化されことが明らかとなった。神経修飾物質と考えられているニューロメジンCがマクロファージ貪食能を亢進したり、LPSの作用を増強することが知られており、神経系から免疫系への介在物質として作用することが考えられている。電気生理学的に検討したところ、ニューロメジンCにより外向き電流を生じた。しかし、その関連ペプチドであるニューロメジンB、ボンベシンやサブスタンスPで顕著な作用が認められなかった。外液K^+、C1^-依存性を調べたところ、K^+濃度変化にのみ逆転電位が変化した。TEA、キニジンにより弱いながら抑制されたが、アパミンやキャリブドトキシンによっては抑制されなかった。外液Ca^<2+>を除去したところ、完全に消失した。以上の結果、ニューロメジンCによって生ずるK^+電流はC5aによって生ずる二種のK^+チャネルとも異なるK^+チャネルを活性化することが明らかとなった。以上、二つの活性化物質の研究よりマクロファージ活性化過程において、K^+チャネルが活性化されることが電気生理学的に明らかとなった。