著者
佐々木 貴信 永吉 武志 荻野 俊寛 後藤 文彦
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

秋田県の豊富な地域資源である秋田スギと男鹿石を使い、多自然型護岸工法を開発した。本研究で提案する護岸工事の実現により、河川空間の景観形成や生態系保全のみならず、工事に伴うCO2排出量の削減や、建設資材の地産地消など、環境面や産業振興の面での貢献も期待される。本研究では、秋田県内の農業用水3カ所で試験施工を実施し、開発した工法の施工性や安全性の検証、施工後のモニタリングを実施し、得られた成果を基に最終的に設計手法の検討を行った。
著者
皆月 昭則
出版者
釧路公立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度の研究は,未解決であったマタニティの通院・買い物など移動時の見守りおよび破水の知識学習の支援機能を開発し検証した.見守り支援では非都市部・都市部のマタニティに限らず,1人ひとりの居住地域から店舗や病院までの移動経路が異なるため,移動中においては,各マタニティに合わせた移動における異常データを1つの正解データとして設定することが困難である.そこで深層学習の理論で移動時の異常データを導出し判定する機能を開発した.異常が判定された場合は,マタニティのスマートフォンに安否確認を促し(アプリのポップアップが表示),ポップアップに1分以内にタッチしなければ,あらかじめ登録しておいたマタニティ以外(家族)へ自動通知するように実装した.検証方法は,医療者・妊娠経験者を対象としてアプリの機能の使用感検証・アンケート調査を実施した.使用感検証においては,アプリのデバイス使用者30人,アンケート調査は44人に対して実施した.デバイス使用者の使用感検証の質問では,長距離移動中のQ1.見守り機能についての評価,Q2陣痛の計測・記録機能について評価した.評価方法は【満足・ほぼ満足・普通・やや不満足・不満足】の5段階評価で回答を得た.結果は,Q1.およびQ2.に対して,肯定的な回答が74.9%と高い評価が得られた.次に,Q3.破水の知識,Q4.前駆陣痛・分娩陣痛の知識の認知を質問した.評価方法は【用語を説明できる・用語のみ認知・知らない】の3段階評価で回答を得た.結果は,「用語のみ認知」という回答が,Q3.で70.5%,Q4.で46.3%の結果であった.使用感検証の結果から,開発した見守り支援能が肯定的で高い評価であり,有用性が確認できた.アンケート調査の結果では,医療者および妊娠経験者を対象としても,半数近くが重要な用語に対して,用語の認知段階であることが明らかになった.
著者
田所 摂寿
出版者
作新学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

公認心理師法が制定された現在、カウンセラー養成において理論や知識の教育だけでなく、臨床実践におけるカウンセリングコンピテンス(態度・姿勢、技術、能力)の教育が喫緊の課題となっている。本研究の重要なテーマは,ゲートキーピングでである。これは,カウンセリング学習者の資質と能力を評価し,必要な改善策を提供するシステムである。 日本においてゲートキーピングシステムを導入するために、カウンセリングコンピテンシーの概念を明確にし、カウンセラーのアイデンティティを再定義し、カウンセラーの教育内容を検討を行った。 これらの調査に基づき、最終的に日本におけるゲートキーピングに関する調査を実施した。
著者
千葉 篤彦 飯郷 雅之
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.時計遺伝子のcDNAクローニングを縮重プライマーを用いたPCR法により試み、イモリからPer2、アユからPer2,Per3,Clock, BmallをコードするcDNA断片の塩基配列決定に成功した。両生類や魚類の脳における時計遺伝子の発現部位やリズムを調べることは脳内概日時計の所在の検索に有力な手段となることが期待される。2.イモリでは毎日定時刻のメラトニン投与は行動の概日リズムだけでなく、松果体自身の概日リズムも同調させることが松果体光受容細胞のシナプスリボンの数の概日リズムを指標とした実験で明らかになった。3.イモリの血中メラトニン濃度は夜間に上昇するが最大でも100pg/ml以下とかなり低いレベルであること、また、眼あるいは松果体のどちらかを摘出した個体では血中メラトニンは顕著に減少し日周リズムが消失することがわかった。イモリのメラトニン受容体は視床下部、中脳など脳内に広く分布していた。4.アユとニジマスの血中メラトニン濃度は明暗条件下で暗期に高く明期に低い明瞭な日周リズムを示した。このリズムはアユでは恒暗条件下でも存続し概日リズムを示したが、ニジマスでは常に高値を示し、概日リズムは観察されなかった。恒明条件下では両種とも低値を示した。5.明暗サイクル下でイモリの頭蓋にアルミホイル片を貼って松果体を遮光し、その直後に明暗サイクルを逆転させた。その結果、シナプスリボンの数のリズムを指標とする松果体の時計の位相は大きく変化しなかったが、行動リズムは数日の移行期を経て新しい明暗サイクルに同調した。このことは明暗サイクル下では脳内概日時計が松果体を介さずに直接明暗サイクルに同調できることが示唆された。6.ニジマスの自発摂餌活動を指標として検討した結果,松果体除去はニジマス脳内概日時計に影響を与えないことが判明した。
著者
宇根 ユミ 野村 靖夫
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1)「ヒョウモントカゲモドキ由来のクリプトスポリジウムのヘビへの感染性と病原性」第137回日本獣医学会(日本大学・神奈川)申請者はヒョウモントカゲモドキ(LG)由来のクリプトスポリジウム(Cr)の宿主域とその病原性を確認するためヘビへの感染実験を行った。先の報告と同様にLG由来C.saurophilumを接種したLGの腸内容および糞便をナミヘビ科レッドコーンスネーク(Elaphe guttata guttata.CS)幼体3匹、アオダイショウ成体2匹、ボア科ボールパイソン(Python regius.BP)幼体3匹、キューバボア(Epicrates angulifer)若齢1匹計9匹に経口接種し、一部を除き各4,6,9週後(PIW)に剖検、病理学的に検索した。なお、CSとBP各1匹を無処置対照群として実験開始前に剖検した。結果、CSのみで感染が成立した。臨床症状は見られなかったが、原虫は小腸に感染し、経過とともにその数は増加した。PIW4では原虫は食道にもみられた。組織学的に粘膜上皮の過形成、絨毛の萎縮、リンパ・プラズマ細胞性炎症や腸上皮の弧在性壊死が観察され、経過とともに緩慢に進行していた。これらの病変はLGと同質であったが、Crの増殖はLGより高度で、炎症反応は軽度であった。牛のC.parvumを除けば、一般的にCrは宿主特異性が強く、種を超えて感染しないとされているが、今回、国内で分離されたLG由来Crは、トカゲ類に留まらず一部のヘビにも感染性と病原性を示した。今回感染が成立したCSはナミヘビ科のヘビで、在来種のほとんどがこの科に属していることから、広宿主域を持つCrによる飼育下爬虫類の損失と在来種への影響が懸念される病原体と考える。2)「爬虫類におけるCryptosporidiumの保有状況」第37回日本原生動物学会(山口大学・山口)3)「誌上剖検・外科病理シリーズ トカゲのデルマトフィルス症」小動物臨床(23(6):396-398,2004)4)第3回爬虫類と両生類の臨床と病理のための研究会ワークショップ「トカゲ」を2004年10月30日に麻布大学で開催し、本研究室から口頭1題(トカゲのウイルス)、ポスター6題(ヒガシウォータードラゴン(Physignathus lesueuri)の心筋症の2例 グリーンイグアナの全身性細菌性肉芽腫性炎の1例 マラカイトハリトカゲの真菌症Nannizziopsis vriesii(anamorph : Chrysosporium sp.)トカゲ類にみられたDermatophilosisツリーモニターのヘルペスウイルス感染症、フトアゴヒゲトカゲPogona vitticepsの胃原発カルチノイドの2例)を発表した。また、ワークショップで使用するテキストの作成も行った。
著者
新田 哲夫 下地 理則
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、福井県安島方言に見られる特異な重子音の研究、および風位語彙の体系について重点的に取り扱った。重子音については、その共時的・通時的な現象に関して、(1) 安島方言と標準語の対応関係を明らかにし(2) 重子音の歴史的な変化を推定し(3) 琉球宮古方言との類似性を指摘し、琉球語の歴史研究に寄与することを述べたまた、風位語彙については、「風の移ろい」という概念を導入することにより、風位語彙の内容を詳しく具現化できることを明らかにした。
著者
梅田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

電子捕獲型超新星とは重力崩壊型の超新星のうち最も質量が軽い星の爆発である。一般に星の数は軽い星ほど多いため、この型の超新星が実在するのであれば超新星の光度曲線などの観測にも、元素の起源に関しても重要なはずであるが、これまでそれらの研究対象としてあまり考えられて来なかった。その主な理由の一つは、より重い鉄の核を形成するものとその進化過程が大きく異なり複雑なため親星の計算がほとんどなされていなかった事があげられる。今回我々はほぼ30年ぶりにその進化計算を更新された物理を用いて計算することができた。この親星モデルを爆発させることにより、今後この超新星に関する理解が深まることが期待できる。
著者
陳 淑梅 大野 澄雄 しゃ 錦華 亀田 弘之
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、中国語発音学習において最も基本となる声調、母音、子音の「発音の質」を可視化することを通じて、学習者が楽しく学習できる中国語発音学習システムを構築することである。本研究の特徴は、音声の質の可視化により中国語発音のメカニズムを目で見て理解できること、学習者の発音と手本となる発音との差異が直観的に確認できること、その結果、発音を自ら修正・改善し、さらに、改善結果がフィードバックされ、学習の動機付け強化に繋がることである。いままで、発音の質の可視化手法と発音改善法を確立し、個々人の改善点を具体的にアドバイスするルールを作成した。また、中国語発音改善法を確立し、その手法をNHKテレビ「テレビで中国語」で実践し、その成果と有効性を確認した。令和元年度には、複母音、そり舌音と舌面音以外の子音の可視化の制作に着手した。また、作成した中国語発音改善法に基づく発音学習システムについて、東京工科大学令和元年度の中国語初級クラスで実際に採用し、提案手法の有効性とユーザビリティについて評価を行った。具体的に、授業と自宅での復習で本システムを繰り返し利用させ、学んでいる各段階でどのような改善が見られるか随時チェックをし、最終的には、学期末の発音テストで効果を確認した。各段階におけるアンケート調査によりアドバイスの適確性を調べ、また、学期末のアンケート調査で総合評価を行った。本システムを採用していないクラスに比べ、本システムを採用したクラスの成績は全般的によく、特に、五段階評価(S, A, B, C, D)でSとAの学生合計は全体の半数以上となった。
著者
中村 隆志 矢谷 博文 古川 惣平 荘村 泰治 絹田 宗一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

マイクロフォーカスX線CTを用い歯科修復物と模型等の断層撮影を行い、得られたデータから歯科修復物の適合性や内部欠陥等を3次元的および非破壊的に評価することを目的に研究を行った。まず歯科修復物の適合性について、Angel Crown(Mddia)、Procera Allceram(Nobel Biocare)、IPS Empress(Ivoclar Vivadent)、4)Estenia Crown(クラレメディカル)の4種類のオールセラミックをマイクロCTを用いて計測し分析した。その結果、1)Angel crownの間隙量の標準偏差は他のクラウンより小さく,安定した適合性を有していると考えられた。2)Procera Allceramはマージンを除き全体的に均一な間隙を有していた、。3)IPS Empressは本実験に用いたCAD/CAMシステムより優れた適合性を有していた.本実験結果より,CAD/CAMオールセラミッククラウンは安定した内面の適合性を有することを,マイクロフォーカスX線CTを用いた三次元的および非破壊的評価により明らかにすることができた。次にEstenia crownを除くの3種類の材料に関して、マイクロフォーカスX線CTを用い、気泡などの内部欠陥の形や大きさ、位置を非破壊的に分析した。その結果、CAD/CAMにより作製されたオールセラミッククラウンは内部欠陥が少なく、試料間でのばらつきも少ないことがわかった.一方で、手作業でポーセレンを築盛する部分では、内部欠陥が多く見られること、また試料によって大きさ、数、場所にばらつきが見られることが示された。以上のように、マイクロフォーカスX線CTを用いることで、歯冠修復物の内部欠陥の存在や適合性を非破壊的に分析することができた。本装置を臨床の場において簡便に使用することができればオールセラミッククラウンなどメタルフリークラウンの破折をより減少させることができると考えられた。
著者
森田 龍義 西野 貴子
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

東アジア産タンポポ属の2倍体種の種分化について、日本列島において分化したケースと、日本列島以外の地域において分化した後、移住してきたケースが考えられる。この問題を解く手がかりを得るため、台湾のタカサゴタンポポの5つの自然集団からサンプリングを行い、12酵素14遺伝子座の酵素多型を用いて、日本列島の2倍体分類群との遺伝的距離を測定した。調査した日本産2倍体は、カンサイタンポポ5集団、カントウタンポポ2集団、トウカイタンポポ1集団、シナノタンポポ5集団、オキタンポポ2集団、ユウバリタンポポ1集団である。分子系統樹作成のプログラム(PHYLIP)を用いて系統樹を作成した結果、(1)台湾のタカサゴタンポポ5集団が1つのクレードを作り、最初に分岐すること、(2)次いで、隠岐のオキタンポポが分岐すること、(3)カンサイタンポポとカントウタンポポの各分類群及びユウバリタンポポが1つのクレードを作り、その中ではカンサイタンポポと他の群が分岐することが明らかとなり、日本産2倍体分類群が日本列島内で分化した可能性が高いことを示唆する結果が得られた。2.シロバナタンポポ(5倍体種)は1クローンであり、カンサイタンポポを種子親とし、未知の4倍体種を花粉親とする雑種起源の可能性が高いことがすでに明らかにされている。そこで花粉親の4倍体種を明らかにする目的でアイソザイム分析を行った。調査した種は、西日本に分布する4種:キビシロタンポポ、ケンサキタンポポ、クシバタンポポ、ツクシタンポポ及び、韓国の2種:ケイリンシロタンポポ、コウライタンポポである。花粉親としての条件は、(1)シロバナタンポポによりカンサイタンポポにない対立遺伝子(SKDH-D、MDH-C)を持つこと、(2)シロバナタンポポにない対立遺伝子を持たないことであるが、これらの条件を満たす種は、ケイリンシロタンポポであることが判明した。
著者
松田 宙 水島 恒和 西村 潤一 清水 重臣
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

オートファジーの減弱は、過剰な炎症応答を介して腸管炎症に影響することが知られ、オートファジー誘導が腸炎緩和に寄与するとの報告がある。そこで、天然成分ライブラリよりオートファジー活性物質をスクリーニングした内、腸管炎症緩和効果を有する3物質を同定した。最も活性の高かったサンプルAでは、腸管マクロファージにおいて、オートファジーの誘導を介した炎症性並びに抗炎症性サイトカインの産生調整が腸炎緩和に寄与したことを確認した。さらには、サンプルAに含まれるエラグ酸、ガリル酸、カテキン酸といったタンニン類がオートファジー誘導を介した腸炎緩和に主要な役割を担うことが示唆される結果を得た。
著者
中井 浩三
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

マクロファージは自然免疫の中心となる細胞である。我々はアトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚のマクロファージの活性化を調べた。アトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚では通常マウスの皮膚と比べて異常なマクロファージの活性化がみられた。マウスのアトピー性皮膚炎の治療薬として、インターロイキン17Aの阻害薬を投与したところ、アトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚のマクロファージは通常皮膚のマクロファージとは違った活性化抑制がみられた。
著者
福元 圭太
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

リチャード・ドーキンスが『利己的な遺伝子』で「ミーム論」を提唱する70年以上前の1904年にリヒャルト・ゼーモンが打ち出した「ムネーメ理論」については, 「ミーム学」の中でもほとんど言及されることがなく, したがってそれがどういう概念であるのかも, まったくといって良いほど究明されていない。ゼーモンはドイツにおいてはすでに「忘れ去られた科学者」であり, 本邦においてはその名前すらほとんど知られていない。しかしながら「ミーム論」の先駆である「ムネーメ理論」の先見性と革新性は, 是非とも解明され, 再評価される必要があると思われる。本研究はこの課題に取り組むものである。
著者
横田 晋大 三船 恒裕 杉浦 仁美
出版者
広島修道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2019年度では、場面想定法を用いた質問紙実験を2度実施した。まず、申請内容にもある、外集団攻撃を行う人物への魅力度評価を行った(2019年7月)。結果は、男性戦士仮説を支持するものではなく、協力的な人物への評価が高いことが示されるのみであった。この結果を受け、本研究の仮説と方法を修正した。男性戦士仮説で述べられている、集団間葛藤により男性の繁殖成功度の向上は、内集団成員からもたらされるというよりもむしろ、外集団から資源を奪うことにある。そのため、質問紙実験において、集団間状況で外集団攻撃の生起を測定するIPD-MDにおいて、各集団の性比の教示を操作し、外集団攻撃が生起するか否かを検討した(2020年1月)。その結果、男性は、男性のみの集団間関係において外集団攻撃の傾向が見られた。しかし、外集団に異性が一人含まれているという教示は外集団攻撃に影響は与えていなかった。以上の結果は、2020年度の日本社会心理学会および日本人間進化行動学会にて発表予定である。
著者
川本 佳代
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

これからの社会において論理的思考力は重要であり,その育成には数理的説明文を書く経験の蓄積が有効である.その際,数理的説明文を評価する必要があるが,適切に評価する方法が存在しない.本研究では,蓄積された数理的説明文の分析を元に,数学の専門家が高くあるいは低く評価する数理的説明文がどのような特徴を持つのかを明らかにした.これに基づいて作成した評価基準を導入し,学習支援者が学習者の数理的説明文を評価する上で役立つ,論理的思考力評価支援システムを開発した.
著者
廳 茂
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

「社会学」という学問の形成に歴史的にみて重大な意義を果たした19世紀後半から20世紀初頭の初期ドイツ社会学の包括的な思想的布置は、ウェーバー研究を除けば、今日に至るまで十分に解明されていないテーマである。本研究は、当時を代表するディルタイ、テンニース、ジンメルの3人の思想家の関係と相違に着目しつつ、そもそも社会学とはいかなる思想的課題を担ったものであったのかを明らかにしようとしたものである。とりわけ、ジンメルを中心におき、そこにディルタイとテンニースなどを絡ませる形で、研究を進めた。ドイツ社会学の思想的意味をめぐる研究の基礎を立ち上げるまでには、研究は確実に進捗したといえる。
著者
永田 靖
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

タグチメソッドは田口玄一博士が長年にわたり独力で開発してきたデータ解析手法の総称であり,世界中の技術者により用いられている.タグチメソッドは,①SN比に基づくロバストパラメータ設計,②MTシステムと呼ばれる独自の多変量解析手法,③損失関数を用いた評価技法の3つに分類できる.本研究では,①と②を取り上げ,既存手法の理論的性質を明らかにし,様々な改良手法を提案した.これらの研究成果のいくつかは,関連学協会からの賞の対象となり,この分野の研究者や技術者から高く評価されている.
著者
ヤーッコラ伊勢井 敏子 広瀬 啓吉 堀田 典生 板井 陽俊 越智 景子
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

言語差は発話時の呼吸の制御や腹筋・胸筋と切り離せないことや下腹部の筋肉は呼吸筋とは異なる動きをすることが明らかになった。発話時の呼吸回数に差はほぼないが,呼気量の制御に言語差が見られた。さらに,男女差は言語によるが腹筋・胸筋の使い方に出る。ポーズ制御に言語差が大きく出る。文法的単位や韻律単位になり,文・節・句以外に複合語や単語レベルにも及ぶ。また,母語と学習外国語の差は,母語で使う呼吸方法や腹筋・胸筋の使い方の影響が出る。加えて,喉頭制御は腹筋・胸筋の動きとは必ずしも連動しないことや,肺活量に基づく年齢(肺年齢)と実年齢では大きな不一致があり喫煙との相関はほぼないということも確認できた。
著者
長内 和弘 栂 博久 高橋 敬治
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

肺胞II型上皮細胞で産生される肺サーファクタントは肺の恒常性維持に不可欠な物質であり、複数の脂質・アポタンパク質から構成される。本研究により、肺サーファクタントのリン脂質主成分であるフォスファチジルコリンは小胞体で合成後、ゴルジ装置を介さない経路で層状封入体へ輸送され貯蔵される。一方、アポタンパク質成分であるサーファクタントプロテイン-Aは小胞体で合成後、ゴルジ装置へ輸送され糖修飾を受け、層状封入体へは輸送されずにそのまま連続的に細胞外へ分泌され、エンドサイトーシスにより細胞内へ再び取り込まれ、層状封入体へ輸送されることが判明した。また肺胞II型上皮細胞内にはゲル濾過カラム上分子量約110kDにピークを有する、サーファクタントのエキソサイトーシスを誘発するタンパク質が存在することを発見し、その性質分析を行った。さらにコレラトキシンによる肺胞II型上皮細胞のアデニレートサクレース連関3量体Gタンパク質の活性化は予想に反してサーファクタントの分泌を強力に抑制することが明らかになった。これらの結果はこれまで信じられてきたサーファクタントの輸送経路が誤ったものであることを示し、肺サーファクタントの分子生物学に新知見をもたらした。さらに肺胞内水分クリアランスにおよばす肺虚脱の影響、薬剤の効果を明らかにした。これらの知見は今後急性呼吸不全の病態解明、治療法の開発に役立つと思われる。これらの研究成果は医学雑誌、学会・研究会での口頭発表、医学誌への著作などを通じて随時公表した。とくに欧米の医学雑誌に掲載されたもののImpact Factor(1999 Jounal Citation Reports,ISI社)は合計11.295であった。
著者
佐藤 雪野
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「ロマ」を「ジプシー」の言い換えとすると、必ずしも共通の特徴やアイデンティティがある存在ではなく、「ジプシー」とは、しばしば他から貼られたレッテルであった。しかし、チェコやスロヴァキアでは、「ロマ」は、文化・言語・歴史などの共通性や共通のアイデンティティを持っているので、「ロマ」の集団への帰属は、自己規定と他からのレッテル貼りによるものとが共存し、近代的「民族」としての誕生も、他者との関係で創り出されるともいえる。