著者
川口 洋 上原 邦彦 日置 慎治
出版者
帝塚山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

寺院「過去帳」は、18・19世紀の人口現象を復原するうえで、「宗門改帳」と並ぶ基礎的史料である。本研究では、寺院「過去帳」から民衆の死亡構造をあらわす人口学的指標を計算するシステムを構築して、インターネットを通じて研究者間で共有できる研究環境を整備した。本研究で構築した「江戸時代における人口分析システム(DANJURO ver.3.0)」は、「過去帳」分析システムのほかに、既開発の「宗門改帳」分析システム、古文書文字の認識、関連サイトへのリンクなどから構成されている。「過去帳」分析システムは、「過去帳」データベース、「過去帳」分析プログラム、検索利用マニュアルから構成されている。本システムのURLは、http://kawaguchi.tezukavama-u.acjpである。現在のところ、「過去帳」データベースには、武蔵国多摩郡下の9ヵ寺と美作国真庭郡下の1ヵ寺の寺院「過去帳」に記録されている約27,000人の被葬者に関する情報が登録されている。本データベースのデータ項目は、寺院所在地、寺院名、宗教・宗派、史料名、死亡年(西暦)、死亡年月日(旧暦)、死亡年月日(新暦)、戒名、性別、小字名、俗名、死亡年齢、出生年(西暦)、生年月日(旧暦)、生年月日(新暦)、死因、死亡地、出身地である。「過去帳」分析プログラムを用いて、(1)被葬者数に関する指標…9項目、(2)年齢別死亡構造に関する指標…10項目、(3)死亡の季節性に関する指標…10項目、(4)死因などに関する指標…10項目、合計39項目の人口学的指標を利用者側コンピュータにグラフ表示することができる。
著者
山下 光
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

高次脳機能障害の神経心理学的アセスメントを実施する際の問題点とその対策について,主に大学生を対象とした実験的研究によって検討した。その主な成果は以下のようなものである。(1)神経心理検査における利き手の影響について新しい知見を得た。また日本人の基準データを呈示することが出来た。(2)左右弁別能力の測定方法と,個人差について新しい知見を得た。(3)学習におけるテスト効果(testing effect)が,高齢者においても生じることを実験的に証明した。(4)神経心理検査における虚偽反応について実験的な検討を行い,臨床にも有用な知見を得た。(5)くすぐりに関する基本的な実験手法を確立した。
著者
三輪 高喜 山本 純平 志賀 英明 能田 拓也 山田 健太郎 張田 雅之
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

感冒後嗅覚障害は中高年の女性に多く発症するが、その理由は明らかにされていない。嗅細胞は常に変性と新生を繰り返す特異な神経細胞であり、中高年の女性は嗅神経の再生能力に何らかの特徴があるのではないかと思い、嗅神経の再生と女性ホルモン、神経成長因子との関係を知るため本研究を立案した。その結果、卵巣を摘出した雌のマウスでは、同世代の無処置マウス、雄マウスと比べて、嗅神経障害後の再生が遅れることが判明した。一方、臨床研究として、感冒後嗅覚障害患者のエストロゲン値を測定したが、閉経後の患者が大部分を占めたため、嗅覚の回復とエストロゲン値との間に有意な関係は見いだせなかった。
著者
古永 真一
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本申請研究では、これまでの申請者の研究成果をふまえつつ、バンド・デシネがフランス語圏においてどのように研究されてきたのかという問題について、記号論やナラトロジー、映画学、精神分析、社会学、さらにはアダプテーションやホロコーストといった重要なテーマによるバンド・デシネ研究を調査してその要諦を明らかにし、バンド・デシネ理論の多様な変遷を再構成することによって、マンガ研究やフランス文学研究におけるバンド・デシネ研究の意義を明らかにすべく調査を行った。具体的には、「ホロコーストとマンガ表現」、「バンド・デシネとアダプテーション」と題した二本の論文を執筆して発表した。
著者
中山 哲 ニシャン ナイエル
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では不均一系触媒反応において、熱揺らぎや溶媒効果が触媒活性に及ぼす影響を第一原理計算によって検討した。特に、酸化セリウム触媒を対象とした第一原理分子動力学計算を行い、界面の酸・塩基点の役割や酸化還元特性について検討した。具体的には、酸化セリウムに2-シアノピリジンが吸着することで強塩基点が発現する機構に関しては、特異な吸着構造を見出し、アクリルニトリルのメタノール付加反応に対して、メタノール溶媒を露わに含んだ計算を行い、反応機構を解明した。また、二酸化炭素とメタノールからの炭酸ジメチル合成においても、分子動力学計算によって酸素欠陥を介する中間体の存在を明らかにした。
著者
松原 和夫 清水 恵子 田崎 嘉一
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

標準的なパーキンソン病治療は、ドパミン受容体刺激薬あるいはドパミン前駆体であるL-DOPAの投薬である。特に、L-DOPAは極めて優れた抗パーキンソン効果を示すが、長期間の使用によって効果が減弱する上に、様々な副作用を引き起こす。そのため、L-DOPAによる長期治療のために、幾つかの薬剤が開発されているが、全てL-DOPAの効果を持続させドパミン神経を興奮させるものである。従って、非ドパミン系神経に作用する従来とは全く作用機序の異なる抗パーキンソン病薬の開発が望まれる。パーキンソン病における運動機能の異常は、いわゆる大脳基底核を介した「直接路」あるいは「間接路」の神経伝達経路の不均衡として発現する。直接路は入力部である線条体と出力部である淡蒼球内節や黒質網様部の間を直接つなぎ、抑制性アミノ酸作動性の神経である。一方、間接路は介在部である淡蒼球外節と視床下核を経由して両者を間接的につなぎ、抑制性アミノ酸作動性と興奮性アミノ酸作動性神経が組み合わされている。従って、これらの経路の非ドパミン神経の不均衡を改善すれば、パーキンソン病治療の有効な補助薬となると考えられる。セロトニン1A(5-HT1A)受容体は、抗うつ薬や抗不安薬が作用する重要な部位であると考えられている。5-HT作動性神経は、縫線核を起始部として基底核にも投射している。また、5-HT1A受容体は、縫線核および海馬と同様に皮質、視床下核および淡蒼球内節に高密度に発現している。本研究は、5-HT1A受容体刺激薬の抗パーキンソン病効果を行動薬理学的に評価し、その効果が基底核における運動神経回路の不均衡改善であることを神経化学的に証明した。これらの5-HT1A受容体が発現している基底核は、興奮性アミノ酸作動神経であり、5-HT1A受容体の刺激はこれら神経を抑制することが知られている。従って、パーキンソン病では興奮状態であるこれら基底核の5-HT1A受容体を刺激することによって、運動能の改善に寄与するものと考えられた。この知見は、新たな作用機序を有する抗パーキンソン病治療薬の開発に有用であると考えられる。
著者
下林 典正
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヒスイ輝石に共生する鉱物の合成実験から、ヒスイの生成条件をさらに絞り込もうというのが当初の目的であったが、試行錯誤を繰り返したあげくに合成実験が成功せず、結局は天然のヒスイの産状から生成環境を考察することに切り替えた。天然試料の観察においては、特に脈状ヒスイに着目して研究を行った。国内外各地からヒスイやその関連岩を切るヒスイ脈が報告されており、ヒスイの熱水起源説の根拠の一つとされている。これらのヒスイ脈では、ヒスイ輝石は脈の壁に対して垂直に伸長していることが共通の特徴であったが、兵庫県大屋地域から、脈に平行に伸長したヒスイ輝石結晶からなる脈状ヒスイを新たに見出し、その詳細な観察を行った。
著者
鎌尾 浩行
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

日本の主要な失明原因の一つである脈絡膜萎縮に対する治療法はない。これに対して、網膜色素上皮細胞(RPE)と血管内皮細胞(HUVEC)を移植することで脈絡膜の再生が得られるか研究を行った。RPEとHUVECを同時に移植するため、iPS細胞から作製したRPE細胞シートとHUVECを共培養することで、HUVECが接着したiPS-RPE細胞シートを作製することに成功した。しかし、脈絡膜萎縮したウサギ網膜にHUVECが接着したiPS-RPE細胞シートを移植したが、脈絡膜の再生は得られなかった。
著者
小西 潤子
出版者
沖縄県立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、文献調査、沖縄県内および現地の関係者への聞き取り調査、録音・録画を含む情報収集によって、沖縄音楽芸能史において看過されてきた戦前南洋群島の沖縄移民社会での音楽芸能と交流の実態を明らかにした。戦前南洋群島の沖縄移民社会では、古典音楽・舞踊と民俗芸能の接合やそれらの要素を融合した作品が成立し、豊かな音楽文化が展開された。また、沖縄県内各地にミクロネシア発祥の行進踊りが伝播し、現在でも余興として演じられている地域もあることがわかった。
著者
山肩 葉子
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

Ca^<2+>/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)は、中枢神経系に豊富に存在し、様々な蛋白質をリン酸化することにより、その蛋白質の機能を修飾するプロテインキナーゼとして、神経活動の制御やシナプス可塑性に深く関わり、学習・記憶を始めとする高次脳機能にも重要な働きをすると考えられている。本申請者は、CaMKIIα(前脳におけるCaMKIIの主要なサブユニット)の持つ3つの機能、(1)他の蛋白質をリン酸化するプロテインキナーゼとしての機能、(2)Ca2+結合蛋白であるカルモジュリンを結合する機能、(3)CaMKIIサブユニット同士が結合して、あるいは他の蛋白質と結合して構造蛋白として働く機能、のうち(1)のプロテインキナーゼ活性のみを欠損させた特異性の高い「機能的ノックアウトマウス」をノックインの手法を用いて作成した。このマウス脳では、CaMKIIαのプロテインキナーゼ活性のみが選択的に消失するが、蛋白としての発現は維持されており、シナプス可塑性との関連が示唆されるmRNAの樹状突起への局在も保たれていた。電気生理学的、形態学的解析によって、海馬におけるシナプス可塑性の異常が観察され、また、それに対応するように、海馬依存性の学習行動にも異常が生じていた。これらのことから、CaMKIIαのプロテインキナーゼとしての活性自体が、正常な海馬機能の維持に不可欠であることが明らかとなった。今後このマウスは、これらの機能維持に関わるリン酸化蛋白基質の検索・特定に大変有用であると考えられる。
著者
志磨 裕彦 中内 伸光 吉村 浩 牧野 哲 北本 卓也 小宮 克弘 内藤 博夫 菊政 勲 幡谷 泰史
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

多様体M上に平坦接続DとRiemann計量gが与えられて,gがDに関するHesse形式で表せるとき,その組(D,g)をHesse構造といい,Hesse構造が与えられた多様体MをHesse多様体というHesse幾何学とはHesse多様体に関する幾何学のことである.Hesse幾何学は情報幾何学,アファイン微分幾何学,Kahler幾何学等と密接に関連する.甘利と長岡は確率分布族に双対接続という微分幾何学的構造が本来的に備わっていることを発見し,数理情報をこの双対接続の見地から研究するべく情報幾何学を提唱した.双対接続が平坦な場合がHesse構造で,正規分布族や多項分布族など多くの重要な確率分布族が双対平坦接続,すなわちHesse構造を有していることが知られている.また双対接続の概念はアファイン微分幾何学においても非退化アファイン超曲面はめ込みとその余法線はめ込みの組を考えることにより得られていた.更にはHesse多様体の接ベクトル束がKahler多様体になることから,Hesse幾何学はKahler幾何学とも親戚関係にある.本研究ではHesse幾何学をこれら3つの幾何学との関連を踏まえながら総合的に研究した.1.情報幾何学の方法を用いて,新しいHesse計量を構成し,逆に微分幾何学的手法を用いて,新しい確率分布族を構成した.2.Hesse構造のポテンシャルの等位曲面のアファイン微分幾何学を展開し,勾配写像のラプラシアンを考察することにより,アファインBernstein問題の類似が解決した.3.Kahler幾何学との関連でいえば,Kahler幾何学における消滅定理や双対定理に類似する結果が,Hesse幾何学でも成り立つことが示された.4.Hesse構造の自然な拡張であるCodazzi構造が定義できるが,これが定曲率で等質ならばそれは1次元高い等質Hesse構造から導かれることが分った.これらの諸結果は"Geometry of Hessian structures"として,World Scientific社より出版予定である.
著者
明神 勲
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.本研究は、教職追放政策の変化が教育改革の実施過程に及ぼした影響の分析及び「逆コース論」の理論的検討を通じて、通説とされてきた「逆コース」論の再検証を目的としたものである。2.「逆コース」論の理論的検討をつうじて、この論が教育政策の転換を論ずる際に、その転換が「何から何への変化・転換なのか」、「その変化・転換の性格はどのようなものか」について説得的な論拠を示し得ていないと問題点を明らかにした。3.教育改革の実施過程に及ぼした影響を明らかにするために、ケース・スタディとして東京を対象に分析をおこなった。1948年から1950年の間の東京軍政部及び関東民事部月例活動報告書をもとに教育改革の実施過程の分析を行い、この間の改革に変化・転換があったかどうかを検討した。その結果、変化は一部(教員組合や共産主義に対する政策)に見られたが、基本的には「教育民主化」という政策で一貫していたことを明らかにした。4.以上の検討により、(1)通説である教育「逆コース」論とそれに基づき構築された戦後教育史像には大きな問題点があり、批判的な再検討が必要なこと、(2)そのために、理論的検討と同時に、GHQレベルはWeekly Reportの分析、地方レベルではさらに多数の府県の軍政部民事部が作成した月例活動報告書の分析による実証的研究が必要であること、を提起した。
著者
阿久津 智子 櫻田 宏一 横田 勲
出版者
科学警察研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

まず、前年度までの成果である血液・唾液・精液multiplex RT-PCR系に、膣液multiplex RT-PCR系を統合し、さらに鼻汁マーカー1種を加えた、5種の体液に対する16-plex RT-PCR系を構築した。標準的な体液試料を用いて16マーカーの増幅バランスを確認したところ、血液マーカー1種および膣液マーカー1種の増幅が著しく低下していた。両プライマーの配列から、プライマーダイマーが形成されることが判明したため、血液マーカーのプライマーを再設計したところ、増幅バランスが改善した。つづいて、新たに整備されたジェネティックアナライザーSeqStudioを用いたフラグメント解析による、16-plex RT-PCR法の増幅産物の検出を試みた。検出条件の最適化のため、PCR産物の希釈、プライマーの希釈、PCRサイクルの調整等を行ったところ、PCR増幅産物を適宜希釈することで、PCR条件を改変することなく、SeqStudioによるフラグメント解析にも対応可能であることが確認できた。併せて、フラグメント解析・ジェノタイピング用ソフトウェアGenemapperによる解析条件も決定した。決定した分析・解析条件により、標準的な各種体液試料における16-plex RT-PCR法の増幅産物をSeqStudioで解析し、各マーカーの特異性を確認した。その結果、各マーカーは、概ね想定される体液に対して特異的であったが、一部のマーカーで他の体液との交差性が認められた。
著者
新谷 浩一 今井 昭夫 石原 良晃
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題では,折りたたみコンテナの導入が港背後地でのコンテナトレーラ輸送において,コスト削減効果をもたらすか否かについて検討した.具体的には,折りたたみコンテナを導入することによって,トレーラの使用台数と走行距離,荷役回数を減らすかどうか数理計画的手法を用いて検証した.近年,大規模コンテナ港の背後地では,空コンテナの過不足問題が深刻化している.その問題の緩和に,空のときに輸送容量を縮小できる折りたたみコンテナの導入に期待される.しかし,折りたたみコンテナはいまだ本格的な実用化にいたっていない.なぜなら,折りたたみコンテナがコスト削減効果をもたらすかどうか明確になっていなかったからである.
著者
吉田 祥子 穂積 直裕
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

自閉症または神経変性誘発が疑われる化学物質である、バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA(TSA)、クロルピリホス(CPF)、リポポリサッカライド(LPS)、グリホサート (GLY)を胎生期ラットに曝露し、VPA、TSAで神経死の過剰抑制、CPF、LPS、GLYで過剰神経死を観察した。神経死は炎症性サイトカイン発現と相関があり、特にGLYでは発達依存的にサイトカインの上昇が見られた。同時に現れる小脳褶曲の変化は別の機序を持つことが示唆された。VPA曝露動物の行動はADHD様、GLY曝露動物はASD様を示した。VPA曝露へのオキシトシンの投与、GLY曝露への酪酸投与で神経発達異常が軽減した。
著者
江島 伸興 徳丸 治
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

インフルエンザ感染システムを長期(20年)に亘るのサーベイランスデータ分析と説明変数(原因と成りえる項目)が結果に与える影響評価のための統計的方法の開発の両面から研究を行った。1999年から本邦で観測されている週報データによる分析を行い、インフルエンザワクチン接種量の増加に対して、報告患者数が増加傾向にあることを統計的に結論付けた。また、RSウイルス感染症とインフルエンザの感染での干渉の研究成果も得た。これらの成果からインフルエンザ感染対策に向けた研究課題を示唆する結論が得られた。説明変数が応答変数に与える統計的方法の研究ではパス分析の基礎的方法を提唱した。
著者
松本 和健 坂口 直志
出版者
釧路工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,下層土の土壌インピーダンスの大きさと位相を三次元的なデータとして取得するために,四探針電気探査法とRMS法(無線磁気探査法)による計測システムを構築する。土壌の含水率を電気回路モデルから解析する方法について提案し検証している。本方法で,土壌粒子の粒径や密度,水分含有量の深さ方向のデータが非破壊で得られると期待でき,従来よりも簡便に災害時の土壌特性を明らかにできる。非破壊的な下層土の土壌インピーダンス計測が災害時の土壌評価として有用であることを検証する。
著者
北郷 実 板野 理 中塚 誠之 松田 祐子 大西 彰 淵本 大一郎
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

膵腫瘍疾患に対する最も治療効果の高い治療法は切除による外科手術であるが、膵臓の外科手術は高侵襲かつ術後合併症の頻度が高いことで知られる。そこで我々は治療効果が高くかつ低侵襲である局所療法として期待される凍結融解壊死療法を膵臓に応用するため、その安全性と有効性を検討し、臨床応用に向けた基礎的エビデンスの創出を目的として実験を行った。ブタを用いた実験により、本手法は開腹または腹腔鏡手技で安全に実施可能であり、有効な膵組織の壊死が得られること、少なくとも膵炎を含めた重篤な合併症を引き起こさないことが示され、実臨床における治療選択肢に応用しうる可能性が示唆された。
著者
吉野 裕顕 田村 真通 蛇口 達造 加藤 哲夫
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

[方法]正常羊胎仔群(N=6):胎令125〜140日の羊胎仔に対し、頸動静脈を介し、膜型肺を用いたV-A ECMOを施行、臍帯を遮断後、胎仔を人工羊水槽へ移し、6〜24時間保育した。横隔膜ヘルニアモデル群(N=3):胎令75〜80日に横隔膜ヘルニアを作成、胎令135日にV-A ECMO下に横隔膜ヘルニアを修復後、正常羊胎仔と同様に人工子宮にて6〜24時間保育した。上記2群について、ECMO前、臍帯遮断後人工子宮内保育時、肺呼吸開始さらにECMOからの離脱時と経時的に血液ガスの変化を測定するとともにドップラーエコーにて動脈管径と肺動脈の血流量を測定し、正常羊胎仔群ならびに横隔膜ヘルニアモデル群について胎児循環より新生児循環への適応状況について検討した。[結果]1、頸動静脈V-A ECMOを用いた人工子宮内保育では正常羊胎仔、横隔膜ヘルニアモデルとも動脈管の径は減少し両方向性のシャントを呈したが、胎仔の循環動態は良く保たれていた。2、肺呼吸により、正常羊胎仔では動脈管の右-左シャントは、左-右優位となり、肺動脈の血流量は増加したが、横隔膜ヘルニアモデルでは有意な肺動脈血流量の増加は認めなっかった。3、胎令135日以上の胎仔では肺呼吸後の循環動態の適応は良く、人工子宮からの離脱が可能であったが、135日未満の胎仔および横隔膜ヘルニアモデルではPaO_2の上昇は不良でECMOフローを低下させると容易に胎児循環遺残へと移行し、早期のECMOからの離脱は困難であった。4、人工子宮内保育羊胎仔の肺組織には出血、無気肺、肺硝子膜症などの所見はなく、人工子宮内保育による明らかな傷害は認めなかった。[まとめ]V-A ECMOによる人工子宮内保育は胎児期の動脈管の変化の影響が少なく、肺呼吸後は胎児ECMOから新生児ECMO管理へと速やかに移行でき胎児治療の上で有用と思われた。また横隔膜ヘルニアモデルでは今後、修復後の人工子宮内保育による肺の発育、成熟に関する検討が必要である。