著者
吉田 治人
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

スクールバンドの現場において、指導法に問題及び悩みを抱える指導者は少なくない。本研究では、申請者が現場に赴き、実際に生徒達に指導するプロセスを指導者に観察してもらい、懇談を繰り返すことで、指導力を向上させることを試みた。1年目は申請者が提唱する「fWO(フォー)」という息の出し方の説明に主眼を置き、音質の統一に向けた指導、2年目には音程を合わせることに主眼を置いた指導、3年目には総合的な合奏力を養うことを主眼に置いた指導を行った。成果としては、懇談及び指導中の指導者の発言から意識向上が見られ、吹奏楽コンクールの審査評価及び成績においても、ほとんどの団体が前年度と比較し、向上が見られた。
著者
山口 敦子 古満 啓介
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では近年の温暖化傾向がエイ類に与えている具体的な影響について検証することを目的として調査を行った。その結果,モデル海域である有明海でのエイ類の分布特性と種組成,東アジア河口域生態系におけるエイ類の分布状況について新たな知見を得ることができ,有明海および東アジア河口域との共通種についてリストアップすることができた。それらの生物情報に基づき,温暖化により西日本に卓越したと考えられたナルトビエイの分布,日周行動,行動と水温との関係について解析した。ナルトビエイは従来から少なくとも九州沿岸域には分布していたが,冬季の平均的な水温が上昇傾向にあることから繁殖・摂餌場に近い深場で越冬可能となり,徐々にその分布を本州西部にまで拡大した可能性があること等を明らかにした。
著者
小林 隆
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本語の方言形成にあたって中心的な役割を果たしたと考えられる「中央語の再生」現象について検討し、その特徴を明らかにするとともに、方言形成の一般原理としての理論的整備を行った。日本語の方言形成は、中央語の単純な伝播によって起こるのではなく、中央語を受容し、再生する地域独自の作用が大きい。特に、言語の運用面など、社会的背景が方言形成に関わる場合には、地域の社会構造の違いによって、東西差などの顕著な地域差が生じることになる。
著者
渡邉 顕彦 伊藤 博明 平岡 隆二 Tunberg Terence O. Schirg Bernhard
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

研究期間中に1)P.Palumbo (1573) Non Recedat Volumen Legis Huiusの背景および近世初期日本における受容について、2)ヴァティカン写本(MS. Reg. lat. 426)の最後部にあるラテン語寸詩および叙事詩断片計4点の内容および源泉について、3)B.Pereira (1640) Paciecidos Libriの背景や内容について、調査や発表を行った。特に2)の、近世初期日本人神学生によって筆写されたのではないかと推定される擬古典ラテン語詩4点が、1588年にリスボンで刊行された書籍から採られているとほぼ同定できたことが最大の成果である。
著者
戸倉 英美 葛 暁音
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は我が国の雅楽が、中国では失われた唐代音楽の原型をかなりの程度保存していることに着目し、これを資料に、中国文学史に於けるいくつかの重要課題の解明を試みたものである。主要な研究方法は、雅楽に関する戸籍・古楽譜・絵画・面・衣装などあらゆる資料を精査し、中国側の文献の記述と対照することである。平成9年度および10年度、葛暁音・北京大学中文系教授(平成9年4月より11年3月まで東京大学大学院客員教授)を共同研究者に迎えて研究を進めた結果、葛教授が離任するまでに中国語で30万字に及ぶ草稿『日本雅楽和隋唐楽舞-隋唐五代楽府文学背景研究-』を完成させたほか、昨年度は2篇、本年度はさらに2篇の論文が中国の学術雑誌に掲載された。本年度は、11年5月より6月に戸倉が北京を訪問、12年2月から3月は葛教授が来日し、各自の研究成果をもとに草稿の完成・出版を目指して徹底した議論を行った。しかし新たに大きな課題が発見されたため、12年度内の共著出版はやや困難な情勢となった。平成10年秋、筆者は研究の過程で、ケンブリッジ大学教授L.ピッケン博士とそのグループが日本雅楽と唐楽に関する極めて専門的な研究を行っているという情報を得た。平成11年7月、筆者はケンブリッジを訪問し、初歩的な調査を行った結果、欧米ではすでに1950年代より、音楽専門化による日本雅楽の研究が始まっている事実を知った。彼らの研究成果は、これまで日中の専門化によってその当否を十分検討されたことがなく、しかもその主張には日中の学者の見解と大きく異なる点が少なくない。そこで欧米の研究成果を検討し、我々の研究を全面的に見直すことが不可欠であると痛感した。同大学図書館において資料を収集し、帰国後は鋭意読解を進め、研究の早期完成を目指している。
著者
畑田 彩 平山 大輔 村上 正行 梶川 裕司 谷垣 岳人 中田 兼介 野崎 健太郎
出版者
京都外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度は研究目的の(2)環境学系科目担当教員が持っている教材、人材情報、授業デザインなどを収集・共有する に関する活動を行った。研究代表者、研究分担者が行った教材開発は以下のとおりである。(畑田)小麦アレルギー者のためのグルテンフリー代替メニューの開発・エコバッグ一体型学生鞄の開発・カフェインレスのコーヒーがコーヒーの代替品となりうるかの実験・アクアポニックスを利用した小学校の総合的な学習の授業デザイン・キャンパスラリーを利用した環境学系授業の授業デザイン (平山)学校の校庭の樹木等を教材とした自然観察授業・森林機能に関する教材(授業プログラム)の実践・三重県内の学校教員を対象とした環境教育の研修講座の実施 (谷垣)京丹後市での保全型農業の実施とゲンゴロウ米の販売 (中田)ぬまがさワタリ著「図解 なんかへんな生き物」の監修 (野崎)大学生を対象にした河川生態系の多様性を理解するための宿泊型自然体験学習の実践・愛知県現任保育士研修会での講演 (村上)没入型授業映像視聴環境のためのハンドジェスチャインタフェース今年度は、研究代表者・研究分担者各自の教材開発にとどまり、共有化のシステムを構築することができなかった。共有できる教材が集まってきたため、早急にHP上で共有できるシステムを構築したい。研究目的の(3)座学の授業で利用可能なハンズオン型教材の開発を行う については、以下の活動を行った。(畑田)ミネラルウォーターと水道水の利き水・紙は何回二つ折りにできるか(ワークショップ)・視覚と臭覚なしでかき氷の味が見分けられるか(ワークショップ)・よく飛ぶ紙飛行機を作ろう(ワークショップ)3Dプリンタを用いた昆虫模型の制作は、ゼロ工房提供の15種類の昆虫のフリーデータを用いて、試作を行った。
著者
勝部 眞人 頼 祺一 相良 英輔 濱田 敏彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、これまでほとんど明らかにされてこなかった幕末・維新期における島根県大社地域の歴史的特質を、同地域の藤間家文書を中心にしながら、同家の海運業のあり方、町支配の状況、産業・経済基盤、名望家間のネットワークの観点から解明していこうとするものである。基礎作業としてまず文書目録の作成を行ったが、数千点におよぶ文書一点々々に番号の付箋を挟み込み、収納場所と目録とが対応できるようにしていった。ただし、別場所に保管されていて後から出てきた文書や一枚物の文書を中心に、作業を完遂させられなかったものも少なからずあり、今後の課題として残ってしまった。藤間家は慶長期には廻船業を開始していたという伝承を持つ出雲地方の名家であるが、幕末期にも7艘の船を操って東北日本海側各地から九州・瀬戸内各地域におよぶ広い範囲を交易圏として活発な活動を行っていた。また大社地域は、出雲大社の年2回の祭礼時に行う富くじ目当てに遠く江戸・畿内や四国・九州から数十万人が集まってきたことから、それらの人々を相手に諸商売・宿屋を営むことで生計を成り立たせていたという。しかし維新政府の富くじ禁止策によって、地域経済は大きな打撃を受けることになる。「養米」と称された救恤米の払底を機に明治2年に起こった騒動など、地域秩序の維持・再構築が模索されていた。こうしたなかで縁戚筋にあたる宍道町木幡家との書簡をとおして、「文明の魁」として断髪に踏み切る姿が明らかになった。地域のリーダーとして、維新政府・県令の指導と地域秩序維持とのはざまで自らを律していく名望家の姿の一端を解明することができた。
著者
大谷 渡
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦時下における台湾民衆の戦争の記憶と体験を、聞き取り調査によってその生の声を記録化し、当時の新聞、雑誌、公文書、手紙、手記などとの照合検討をとおして、これを社会史的観点から多角的かつ具体的に解明した。その成果は、「国際交流研究集会65年目の証言」(2010年)を関西大学で開催して広く社会に発信し、2011年には『看護婦たちの南方戦線帝国の落日を背負って』(大谷渡、東方出版、1-241頁)として出版した。
著者
松永 達雄 藤波 義明 務台 英樹 神谷 和作
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年、難聴をきたすミトコンドリア遺伝子変異が多数報告されているが、現在のところ日本人の難聴者において本遺伝子変異が全体としてどの程度関与するかは不明である。そこで本研究では、日本人の原因不明の非症候群性難聴者(先天性/小児の難聴者53人、後天性の難聴者76人)および健聴者144人のDNA検体を用いて、ミトコンドリアDNAの難聴遺伝子を解析した。多コピーのミトコンドリアDNAには、変異が生じた場合にミトコンドリア遺伝子が均一な状態であるhomoplasmyと異なった配列が混在するheteroplasmyの2種類の状態がある。まずhomoplasmy変異に関しての解析の結果、難聴遺伝子として報告されている5遺伝子において先天性/小児の難聴53人中のべ8人、後天性の難聴76人中のべ4人で国際的データベースに難聴遺伝子変異と報告されている変異が検出された。heteroplasmy変異に関しては、先天性/小児の難聴53人中のべ7人、後天性の難聴76人中のべ7人で変異が検出された。一方、健聴者においての検討では、難聴遺伝子の一つである12SrRNA遺伝子において144人中11人で難聴遺伝子変異と報告されている変異が検出され、これらは日本人において難聴の発症に環境因子が関与する可能性と難聴の発症に関与していない可能性が考えられた。それ以外の4遺伝子には健聴者では変異を認めなかった。これまでの結果から、日本人の難聴の原因に関与するミトコンドリアDNAの難聴遺伝子変異は、国際的データベースに報告されているものとは異なると考えられ、本研究で明らかになった日本人特異的なミトコンドリア遺伝子変異の特徴が、今後日本人の難聴の遺伝的原因の解明と診断に活用できると考えられる。
著者
渚 勝 伊藤 隆 小高 一則 松井 宏樹 杉山 健一 吉田 英信 久我 健一 石村 隆一 宮本 育子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

多様体の非可換化として作用素環論の研究をすすめるという目標で、(1)無理数回転環をモデルとする帰納極限の環の構造解析、(2)幾何学的データとしてKー理論、次元の果たす役割、(3)より非可換な対象として作用素空間の構造を調べる、という3つの視点からのアプローチを試みた。まだまだ多くの問題を抱え、今後の研究課題として残ることは多いが、それぞれの視点から一応の成果を得ることができた。帰納極限の環の構造解析として、松井によるカントール集合上の力学系からできる環の解析が進展し、既にK-理論を用いて力学系の状態を把握する結果が得られていたが、その結果の不備と、更なるK-群の情報が必要であることなど緻密な関係がわかってきている。直接的に帰納極限の環ではないが、それに関連して核型でない環の中でも対象を絞ることによりK-群が環の同型を与えるクラスを方波見ー渚によって構成ができた。次元については、渚ー大坂ーPhillipsによって一応の結果を得ているが、K-群、次元の期待した直接的な成果は今後になる。より非可換な量子化としてハーゲラップテンソル積、環の自由積への実現などの作用素空間の話題がある。この方面は最近、成書の発行が多く、形が出来上がりつつ理論に見えるが、伊藤ー渚の研究によるハーゲラップテンソル積の拡張、シュアー写像との関連によって新しい視点が与えられたと自負している。今後の展開として自由群環のノルムの話題もこれに関係してくるが、これらの計算(自由確率論を用いる)の中で可逆元での近似が大きな意味を持つ事実があり、安定次元1などの次元概念との関係が見える。
著者
中川 秀敏 足立 高徳 高田 英行 山中 卓 監物 輝夫
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

従来ファイナンス研究では用いられなかった「圏論」という抽象数学のフレームワークに沿って、金融リスク尺度を見直して、確率的ジャンプを含む信用リスク事象等のモデル化、さらには一般的でリスク尺度以外にも多くの応用可能性を含んだ、一般性が極めて高い「圏Prob」という全ての確率空間を対象にもつ圏の導入に成功した。また、信用リスク、特に企業の倒産集中リスクの評価への応用を視野に、倒産等の発生強度の自己励起性・相互励起性を推定する新たな手法、および事業利益の確率変動モデルに基づく倒産確率の計算手法について、倒産履歴データベース等に基づく実証分析も通じて応用可能性を確認した。
著者
伊東 裕司
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

目撃者が,容疑者を含む複数の人物の顔を見て,目撃した犯人がいるか,いるとしたらどの人物かを判断するような揚合に,事前にその顔を思い出し言語記述することは,判断の正確さにどのように影響するだろうか。言語記述が顔の再認を妨害すること(言語隠蔽効果)を報告する研究がある一方,促進することを報告する研究,効果がないことを報告する研究もある。本研究では,顔の再認記憶に言語記述が及ぼす効果について,妨害,促進効果の生起条件,生起メカニズムを明らかにすることを目的とする。再認時に記憶の全体的,非分析的な側面が優位であれば妨害効果,部分的,分析的な側面が優位であれば促進効果が生じる,保持期間が長くなるなど記憶が衰えると部分的,分析的な側面が優位になるとするBEASモデル(Itoh,2005)の仮定を軸に3つの研究が行われた。第1の研究では,保持期間が長くなると顔の記憶の部分的,分析的な側面が優位になることが,コンピュータで合成した顔刺激を用いた再認実験から明らかになった。またこの優位性は,課題状況によって引き起こされる構えが原因である可能性が示唆された。前半部分はBEASモデルを支持し,後半部分は支持しないが,更なるデータの収集が必要であると思われる。第2の研究では,言語記述を要求されない場合でも自発的な言語記述が顔の記憶を妨害する可能性が示された。この現象に実際に言語がかかわっているかどうかについての検討を現在計画中である。第3の研究では,顔以外の記憶材料(雲,指紋)を用いて,符号化時に全体的,非分析的な側面と部分的,分析的な側面のいずれかに対する処理を,Navon図形を用いた課題によって促し,言語記述の効果を検討することで,モデルの仮定を検討した。モデルの仮定を支持するデータが得られたが,データ数が十分とはいえず,さらにデータを収集し,より確かな結論を得るべく,継続の研究を行っている。
著者
徳永 弘子 秋谷 直矩 武川 直樹
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は,高齢の親と離れて暮らす子供が定期的に遠隔共食を行うことにより,高齢の親の主観的幸福感が向上することを実証的に示し、その要因を明らかにする.離れて暮らす3組の家族に協力を依頼し,2ヶ月間の遠隔共食会話実験に参加してもらった.定期的に遠隔共食を行い,映像を収録するとともに、高齢の親から得た毎日の主観的幸福感の評価,3回のインタビュー会話から、遠隔共食会話が「気分」「体調」「明日への意欲」の向上に寄与することを示した.その結果から,遠隔共食コミュニケーションが高齢の親にとって自己達成感,自己肯定感,子供との関係維持の場として機能し、主観的幸福感に影響を及ぼす認知構造モデルを提案した.
著者
土居 文人
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本で最初に出版された和語の語源辞書、松永貞徳『和句解』(1662年刊)の研究及び近世に執筆・出版された語源研究書・語源辞書の研究を行った。『和句解』は、見出し語が近世初期に出版された易林本系の節用集(横本『二躰節用集』のグループに属する節用集)から和語を抄出して立項したものであることを証明した。また、『和句解』の語源説に吉田神道の語源説が影響していることを、清原宣賢〈後抄本〉『日本書紀抄』所載の語源説との比較から証明した。また、『和句解』の「日常用語を含めた和語を網羅的に収集して見出し語として立項し、和文の語釈(語源説)を記す」記述形式が、中世の辞書と歌学書の記述形式の総合であると指摘した。
著者
舘鼻 誠
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

安芸国の中世武士団小早川氏の領域(安芸東南部)には、中世の石塔(宝篋印塔・五輪塔)が無数に残る。本研究はこうした石塔を歴史資料として活用するため、残欠に至るまで一つひとつ調査を行い、所在位置や原位置の確認、個体数の把握、各部寸法や特徴など、今後の研究に必要な基本データを収集したものである。調査地点は6 市町・279 箇所にわたり、確認した石塔は、宝篋印塔339 基、五輪塔1042 基、一石五輪塔487 基に及ぶ。旧三原市域を除けば、初めて実施された石塔の悉皆調査であり、その意義は極めて大きい。
著者
大西 広 田上 孝一 瀬戸 宏 松井 暁
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の多くの部分は研究代表者・分担者が所属する社会主義理論学会の協力を得た。特に中国の研究者との交流を重視し、2013年12月に12名の中国人研究者を招き、「中国特色社会主義の行方と理論問題」の主題で第四回日中社会主義フォーラムを開催した。2015年4月には中国人研究者1名を招き講演会「『さあ「資本論」を読んでみよう』について」を開催した。2016年3月には四名の中国人研究者を招き、「中国社会主義の多様性」を主題に第五回日中社会主義フォーラムを開催した。いずれも社会主義理論学会と当科研費プロジェクトの共催である。参加者・集会報告などはいずれも社会主義理論学会HPに掲載されている。
著者
今井 喜胤
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

一般的手法により、左回転の光を出す円偏光発光(CPL)発光体、右回転の光を出すCPL発光体を得るには、有機合成的手法を用い、分子構造のどこかに、それぞれ右手と左手の関係にある不斉炭素([R]および[S])などの導入が必要である。本研究では、有機合成的手法をできるだけ回避し、光学活性な発光性分子を、各種物性を有する有機あるいは無機マトリックス中にドーピングすることにより、光の回転方向の制御に成功した。
著者
岡本 仁宏
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究においては、公益法人の政治活動規制の規範はどのようであるべきかについて探求している。このため、本年度に至るまで、持続的に、第一に、日本NPO学会において、諸外国での規範の状態に関して、積極的に学会報告やセッション形成を行い、関連の研究者と交流しつつ知見を深めてきた。第二に、公益認定制度の実態と、その問題点の把握を行ってきた。さらに、第三に、時事的に関連する問題、特に公益法人制度と比較対象として重要な特定非営利活動法人制度も含めて、生起する諸問題に対して積極的に実態把握に努め、適宜その成果を発表してきた。これらの過程での研究成果については、別途成果リストを参照されたい。主たる知見としては、政治活動の概念における、選挙活動とそれ以外の活動を類型化したうえで、それぞれの特に英米法諸国における非営利公益団体に対する規制内容を把握した。具体的には、一般的には選挙活動に対する厳しい規制がなされている。しかし、それ以外のアドボカシー、ロビーイングについては一定の規制をしつつも緩やかに執行されているということができる。日本では、法人類型によって、この規制に大きな差異が存在しているが、その正当性については、十分に検討されていないことが明らかになった。なお、当初の研究計画にあった全国の公益認定等委員会(都道府県の場合には正式には合議制機関)及び行政庁に対する調査は、2018年度に持ち越されることになった。この理由は2017年度にも関係するが、2017年9月から大阪府の同委員会の委員長に就任したことから、業務との関係で、知見が深まっていることと職務上の守秘義務との関係で調査についての慎重な取り扱いが必要になったことによる。2018年度は最終年度に当たることから、これらの条件を踏まえつつも、計画された調査を実施し、さらにこれまでの学会報告を含めて成果としてまとめて公表していく予定である。
著者
中野 隆 相沢 慎一 桃園 聡 平野 元久
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究では,べん毛モーターの構造について研究している協同研究者の一人(相沢)の協力により、彼が構造解析によって明らかにしたべん毛モーターの部品の構造を用い,具体的にべん毛モーターの実際の構造に近いモデルを作り上げ、流体古典的な潤滑理論の手法を用いてべん毛モータの軸受けが潤滑可能であるかを調べた.べん毛の運動を推進力に変換する機構を流体力学的に研究するべん毛のスケールを考えると通常の流体力学的計算のみでは不十分で分子の大きさの効果やブラウン運動の影響も考えた運動解析が必要である.今年度は流体力学的計算は研究分担者の二人が(中野,桃園)が担当し、まず古典的な数値解を得た.その結果古典的な理論からは潤滑が困難であるとい結果を得た.べん毛モータの場合にはマクロな系では問題にならなかった分子間力の効果も重要になるが、この効果はさらに潤滑状況を悪化させることもわかった.従ってなんらかの非古典的潤滑機構の存在が示唆された.このような潤滑機構として考察した機構には電荷の離散性の効果,拡散電気2重層の効果,超潤滑の効果などがある.来年度においてここに述べた効果の定量的評価をおこなう.またべん毛モーターの軸受け部分の摩擦に関する理論的な解析を目的としてべん毛モータの表面粗さを特徴づける量を由出するためウェーブレットを用いた.今年度はウェーブレットをべん毛の表面粗さ解析に用いるための数学的枠組みを構成した.流体古典的な潤滑理論の手法を用いてべん毛モータの軸受けが潤滑可能であるかを調べた去年の結果から、べん毛のスケールを考えると通常の流体力学的計算のみでは不十分で分子の大きさの効果やブラウン運動の影響も考えた運動解析が必要であることがわかったので,今年度は拡散電気二重層の効果を取り入れ、この効果によってどの程度の潤滑性能を達成することができるか似ついて研究分担者の二人が(中野,桃園)が担当し、まず古典的な数値解を得た.その結果拡散電気二重層によって分子間力を相殺するために十分な反発力を得ることができるという結果を得た.この他の非古典的潤滑機構の存在として考察した機構には電荷の離散性の効果がある.電荷の離散性の効果も定量的評価をおこなった.バクテリア内部で妥当と思われるイオン濃度において,この離散性の効果もまた、分子間力と拮抗する反発力を得ることができることが分かった.またべん毛モーターの軸受け部分の摩擦に関する理論的な解析を目的としてべん毛モータの表面粗さを特徴づける量を抽出するためウェーブレットを用いた昨年度構成したウェーブレットをべん毛の表面粗さ解析に用いるための数学的枠組みを用い分子の大きさと同じ程度の領域における粗さと形状の分離を試みた.