著者
田川 まさみ 村永 文学 網谷 真理恵 元日田 和規 貴島 沙織
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

医学部教育における医学生の成長を、卒業前の学生の意識と臨床実習前の振り返りの記載より明らかにし、関連する学生の経験を検討した。1から4年次の振り返りの解析では、医療面接のロールプレイ、医療現場でのロールモデル、患者との経験がプロフェッショナル・アイデンティティ獲得のきっかけとなっていた。卒業前の学生の多くは不安や両価的感情を持っていた。臨床実習での診療への貢献、患者からの感謝の言葉が学生のポジティブな感情に関連しており、ロールモデルとの経験が学習成果を学生が実感することに関連していた。十分な経験をできる教育プログラムと経験から学び取る振り返りの重要性が明らかとなった。
著者
岡 孝 朴 仁煥 諸 哲雄 尹 泰永 申 政武 張 学軍 馬 新彦 李 国強 黄 詩淳 蘇 恵卿 TAUPITZ Jochen KUNZ Jurgen BIDERBOST Yvo
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

①日韓台湾ともに(中国梁慧星第二草案も)、法定後見の中の特に成年後見類型では被後見人の能力を制限しているが、2008年の国連障害者権利条約との関係では検討しなおす必要がある。改革の方向性はいくつか考えられるが(「相対的意思能力」概念に依拠して、「意思無能力者の行為は無効である」というルールを活用することなど)、なお十分には立論が詰められていない。②医療行為の同意については、韓国新民法(家庭法院の許可)が日本の立法論としても参考になろう。③任意後見については、2013年から施行されているスイス成年者保護法の「事前支援委託」が参考になる(法定後見と任意後見を併存させている)。
著者
田中 秀逸
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本課題の目的は、我々が開発した非相同末端結合能欠損株を用いた植物細胞における高効率遺伝子ターゲッティング法に関して、遺伝子機能解析や育種への応用への有効性を示すことであった。特定の蛋白質へのタグ付けを行うための遺伝子導入用コンストラクトを作製したが、耐性を獲得したカルスは得られていない。RNAiによりKU70量を抑制した野生型細胞の作製を試みたが、形質転換カルスが得られないでいる。得られ次第ターゲッティング実験を行う。T-DNAによる高効率な細胞内への遺伝子導入法との共用の検討はできなかった。本研究で使用したカルスは、培地の植物ホルモン組成を変えることでシュート形成することを確認した。
著者
平林 あゆ子
出版者
名古屋女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1.障がいを理解するための絵本(以後「絵本」)を幼児教育・保育を志望する学生、現役の保育者、障がい児の保護者らと共に制作した。それらの「絵本」は、(1)「たいせつなあなたへ(14頁)2007」:ダウン症をもつ保護者の気持ちの理解、(2)「かみさまのおくりもの(18頁)2007」:ダウン症児の理解(3)「じゅんじゅん(24頁)2007、改訂版(20頁)2008.自閉症の理解とその支援」、(4)「たっくん(20頁)2008:自閉症の理解と友情」、(5)「ともだち(24頁)2008:自閉症の理解」、(6)「こえのおんど(24頁)2008:学生の障がい理解の過程」である。2.上記の(1)から(5)の「絵本」をインクルーシブ保育・教育に効果的に役立てるために、9ヵ所の保育園の年中・年長クラスで読みきかせの後、園児による描画とインタヴュー(録画)、保育士へのインタヴューと質問紙により効果測定を試みた。いずれも自分とは異なっている子どもに関心をもたせる事に役立つ事が期待できる結果であった。「絵本」の読みきかせの効果的な方法も園児や保育士の反応を検討し、読みきかせの実践に役立つようにまとめた。3.「絵本」の制作をとおして、幼児教育・保育課程における障がいと障がい児理解を援助する教育プログラムを試作した。違いを認識し障がいを理解していくには段階がある。障がいの理解とは、障がいを適切に受けとめていけるようにすることはもちろん、まず自分と他の人々との「違い」というものを理解することが必要である。この違いの理解が人間理解の深化につながるものと思われる。
著者
成松 美枝 菅野 文彦 梅澤 収 山崎 準二
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は「高い適格性を持つ教師(Highly Quality Teachers)」を確保するためにアメリカの大学は教師教育においてどのような改革を進めているのか、その実態と評価を明らかにすることを目的とした。ウィスコンシン州立大学を事例にして以下の事項を分析・評価した。(1)教員養成のカリキュラムと「修了認定の学生評価」の実態と効果 (2)「教員免許の更新」に際して各教員が大学で行う「単位取得(6単位)」と「職能成長計画」に対する大学の支援体制 (3)他州の大学との比較の上で、ウィスコンシン州立大学の教員養成と研修への支援体制を総合評価した。
著者
中村 和恵
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

先住民族とは誰かと問うことは、文明、民族、進化といった概念、さらに欧米中心主義と近代日本人の民族観の複雑な関係の再検討でもあった。方法としては現地調査と文学テキスト分析の両方を用いて具体的な個人の声を重視し、カリブ居留地とジーン・リースのカリブおよび日本人描写、オーストラリア先住民の「秘密の聖物」出版・展示に関する論争、アイヌ文化の現在ほか、インド、タヒチ、マルティニーク、エストニア等でも調査研究を行った。
著者
猪上 華子 加藤 輝之 中井 専人 津口 裕茂 猪上 華子 加藤 輝之 廣川 康隆
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日本付近の豪雨発生の大気状態を判断すべき高度として、客観解析データや雲解像数値モデルの統計結果から今まで用いられてきた850hPa気圧面(~1500m高度)でなく、500m高度が最適であり、適切な判断要素として同高度の相当温位・水蒸気フラックス量であることを明らかにした。各要素に対しては季節や地域別に客観的に指数化した。豪雪時のレーダー観測との統計的比較から、降雪系によって異なる大気状態が現れやすく、そのことと降雪分布との関係が示唆された。
著者
石濱 正男
出版者
神奈川工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

路面からの加振によるタイヤ構造振動と騒音の数理的モデル化をほぼ完成した.また,路面接触による空力的ポンピング音の発生数理モデルを構築した.これにより,タイヤの主要諸元,構造設計要素,路面凹凸の放射騒音への影響予測が従来よりも正確にできるようになった.素性の良い次世代タイヤの方向を定めることができるようになった.さらに,非ニュートン性減衰材をトレッド内に貼付して,転がり抵抗を増やさずにタイヤ振動を低減する新技術を開発した.これにより,環境と安全両性能に優れた次世代タイヤ像として,大径・細幅・高圧タイヤを提示することができた.また,その実力を評価し,その正当性を確認した.
著者
齋藤 伸子 佐々木 倫子 松下 達彦 藤田ラウンド 幸世 安藤 節子 堀口 純子 佐々木 倫子 松下 達彦 宮副ウォン 裕子 安藤 節子 藤田ラウンド 幸世 堀口 純子
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

私立中規模大学における「自律学習を基盤とした個別対応型日本語授業」の実践を分析・考察することをとおして、「意識する→計画する(学習目標を決める→学習計画を立てる→評価方法を決める)→実行する→振り返る」という実践の流れがモデル化された。また、研究期間に行われた実践者グループによる振り返りや議論の成果として、「柔軟な意識をもった教師」の存在という要素の重要性も今後の検討課題として浮かび上がってきた
著者
小田川 大典 太田 義器 安武 真隆 犬塚 元 石川 敬史 遠藤 泰弘
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究成果の概要(和文):オットー・フォン・ギールケ、ジョン・スチュアート・ミル、ジョン・アダムズ、デイヴィッド・ヒューム、フーゴー・グロティウスの著作の解読を中心に、近代政治思想史における制度論の諸相について思想史的、理論的な研究を行い、社会思想史学会(2012、2013、2014)、日本政治学会(2013、2014)で関連するセッションを開催した。また関連する研究報告を政治思想学会(2013)で行った。
著者
荒井 啓行 岩崎 鋼
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

(1)アセチルコリン合成酵素(ChAT)をmRNAレベルで賦活する作用のある加味温胆湯(かみうんたんとう)をアルツハイマー病治療薬の第1選択薬である塩酸ドネペジルと併用することにより認知機能の改善効果が一層高まることが明らかとなった。併用によるコリン系の有害事象(下痢、吐き気、腹痛など)は見られなかった。脳血流シンチ上、併用により前頭葉などで有意な血流改善効果が見られた。(2)広く腎虚の治療薬として使われる八味地黄丸は二重盲験ランダム化比較試験において平均年齢85歳、平均MMSE13.5ポイントの中等度から高度の血管障害を伴うアルツハイマー病患者の認知機能とADLを有意に改善させた。有害事象は見られなかった。10名中8名で脳血流シンチにて脳血流増加が見られた。(3)抑肝散は、肝の異常な陽気を抑え、易怒性や興奮に効果が知られ、従来小児の夜泣きなどに用いられてきた漢方方剤である。肝の異常な陽気が認知症に伴う問題行動や精神症状を引き起こすとの仮説のもと、抑肝散をアルツハイマー病等の認知症に使用した結果、痴呆症における問題行動や精神症状に対してADLを低下させることなく改善する効果があることが示された。認知症に伴う問題行動や精神症状は、米国で開発された、Neuropsychiatric inventoryを使用した。抑肝散使用中、誤嚥性肺炎や転倒などしばしば抗精神病薬投与中に遭遇する有害事象は1例も見られなかった。また、西洋医学では今以って有効な治療法のないレビー小体病の精神症状に対しても15例中14例に有効であった。Neuroleptic supersensitivityは見られなかった。
著者
本庄 雅則
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

エーテルリン脂質プラスマローゲンの新たな生理機能の解明を目的とした。プラスマローゲンは、セルトリ細胞のギャップジャンクション構成タンパク質であるコネキシン43の発現や、上皮細胞様の形態を示すヒト乳腺癌由来培養細胞MCF7細胞のアドヘレンスジャンクションの構成タンパク質であるE-カドヘリンの細胞間接着構造への局在性に必要であることを明らかにした。さらに、プラスマローゲンはコレステロール生合成を調節すること、その制御機構はコレステロール合成の中間産物であるスクアレンのエポキシ化を触媒するスクアレンエポキシダーゼの分解速度を調節することを見出した。
著者
飛田 良文
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

明治・大正・昭和の文学作品101(初版本49冊)を熟読し、外来語25,899例を採集し、その用例文に所在を示し、作品別出現順用例集を作成した。その外来語見出しに、原語・固有名詞(人名・地名・作品名など)・語構成(単純外来語・複合外来語・和製外来語など)の情報を加え、「外来語語別年代順用例集」1~5を作成し印刷した。参考にした外来語辞典や国語辞典に判断の異なるものがあり、正確な移入時期と原語を判断するために、今後も用例採集の必要性を痛感した。
著者
高橋 秀樹
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、古代世界における政治文化について、古代キリシアと古代エジプトの事例をそれぞれ分析しつつ、比較しながら、それぞれの独自性と共通性を明らかにしようとするものである。具体的には、古代ギリシアの叙事詩と古代エジプトの教訓文学を比較し、弁論術(話術)がエリート層の政治的教養とされている点は共通しているが、過去の出来事をどのように利用して演説を行うかという点で異なっていることが明らかになった。
著者
岡山 正人 岡村 修司
出版者
広島商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、大崎上島の高齢者の外出時に役に立つ様々な情報を提供するためのシステム“しまナビ”を開発した。本システムは、島内で運行されているコミュニティバスにGPSおよび電子掲示板を設置し、停車するバス停付近の施設情報や島内のイベントや身近な情報を提示することで、バスそのものを高齢者のための移動サロンにするとともに、島内のスーパー、病院、役場、フェリー乗り場など主要なバス停にはタッチパネル端末を置くことで、バスに設置した電子掲示板と同様の情報を見ることができ、必要な情報をタッチパネルの操作により取り出すことができるようにするものである。
著者
吉本 忍 金谷 美和
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、現在アジア、アフリカにおいて民族衣装の素材として広く使用されているプリント更紗が、インドネシアやインドの伝統的染織技法とデザインをもとにして、ヨーロッパの植民地支配を背景にしたグローバルな交易と産業革命による技術革新によって創出され、広く展開してきた歴史的経緯を、サンプル帳を始めとする資料の検討によって実証的に明らかにしたものである。本研究を通して、私たちが経験する伝統工芸の変革と文化の創出の場面におけるグローバル化の功罪などの本質的意義について批判的視座を提示した。
著者
武田 尚子
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

「中間層」概念の形成・変容をめぐる国際比較を行い、イギリスにおけるベンジャミン・シーボーム・ロウントリーの社会調査と社会実践の関連について解明を試みた。また、日本の地域社会における「中間層」の形成・変容過程を調査し、都市空間、都市中間層の形成過程が密接に関連していることなどを明らかにした。
著者
松井 徳光 田畑 麻里子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ヤマブシタケは小さめの粒度、シイタケは大きめの粒度で、生理活性やイソフラボン濃度、核酸濃度が高くなることが判明した。また、マウスを用い発酵黒大豆が安全であることを明らかにした。発酵することで新たな機能性が付加され、また、スエヒロタケにおいて抗酸化活性が著しく高値を示す味噌を作成することができた。さらに、アレルゲンタンパク質の低下も観察され、機能性を有する黒大豆味噌の試作に成功した。スエヒロタケで発酵させた発酵黒大豆中に、エクオールを検出することができた。つまり、腸内の乳酸菌でなければ作ることができないと考えられてきたエクオールを、担子菌発酵で製造することの可能性を示唆した。
著者
原田 周作 山本 恭史
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,液体中に不均一に分散した固体微粒子の重力沈降挙動について,その集団性を理解するとともに,沈降速度や分散挙動を能動的に制御するための技術を確立した.純粋な液体との間に濃度界面を有するような微粒子分散系の沈降挙動に関して,濃度界面における流体との相対運動を微視的に観察することにより,集団性の形成メカニズムについて明らかにした.さらに分岐や断面積変化を有するような複雑流路中での集団的な粒子沈降挙動について調べ,流路の幾何学的特性量から沈降速度を予測・制御可能な物理モデルを構築した.
著者
橋本 順光
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1920 年代の日本ではアジア主義の高まりとともに仏跡巡礼が流行する。そしてその先駆者鹿子木員信は、インド独立運動扇動の咎で強制送還された。日英の外交文書の調査により、事件以降、日本人のインド旅行者への監視が常態化し、旅行記もその記述を多く含むことがわかった。一方、インドから来日し、神智学東京支部を設立したアイルランド出身のジェイムズ・カズンズに注目することで、柳宗悦の友人グルチャラン・シンなど、アジア主義者の人脈が従来以上に複雑な広報活動と密接であることを明らかにできた。