著者
倉本 到
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,インタラクションエージェントに個性を付与することにより,その対話経験を豊かにすることを目指した.その結果(1)人間の性格を付与したエージェントとの意思決定対話の満足度や推薦への影響が見られた,(2)外見的性質に基づきユーザの内面的性格を表出する手法として,アニメ―ションや漫画などで用いられるステレオタイプ性の強い性格表現法および「母親らしい」テキスト表現を用いることで,擬人化エージェントが提供するインタラクティブシステムの機能性や性質を明らかにしたり,ユーザへより親密な,かつより強く印象付けられるような表現を作り出すことができた.
著者
田中 ゆかり
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

首都圏方言を中心に「気づき」の程度と言語変化というテーマから研究を進めてきた。「気づき」と「言語変化」の関係には、次の4パターンを想定し、それぞれのパターンによる特性を検討したいと考えた。(A)「気づきやすく変化しやすい」/(B)「気づきやすく変化しにくい」(C)「気づきにくく変化しやすい」/(D)「気づきにくく変化しにくい」(A)のケース・スタディとして、東京首都圏生育者の「関西弁」受容や、ケータイ・メイルなどに特徴的に現れる「母方言」「ジモ方言」「ニセ方言」などをとりあげた。また、(C)のケース・スタディとしては、従来(D)と考えられてきたアクセント事象を取り上げた。とりわけ、意識しにくいアクセント事象として形容詞活用形アクセント型を取り上げた。イントネーション事象として、形容詞活用形アクセント型変化とも一部連動する「とびはねイントネーション」をとりあげた。これは、「気づきやすく変化しやすい」側面をもつ事象である。一連の研究により、語彙は「気づきやすく変わりやすい」、流行的あるいは文末イントネーションも「気づきやすく変わりやすい」ということが確認された。アクセントについても予想したように「気づきにくく変わりやすい」という側面を持つことは確認された。これは従来アクセントが「気づきにくく変わりにくい」とされていたこととは異なる。ただし、その「変わりやすさ」はある同一の体系内において、という条件がつくようである。この点は今後の課題としたい。
著者
坂井 素思 馬場 康彦 色川 卓男 影山 摩子弥 永井 暁子 濱本 知寿香
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

この研究の目的は、「生活政策学」という研究分野の可能性について、基礎的かつ応用的な模索を行うことにある。現代社会の変動は、少子高齢化やサービス経済化などを通じて、政府・市場・家計などの経済領域に対して、かなり強い影響を及ぼしてきている。たとえば、労働や社会組織のフレキシビリティ問題は、典型例である。あるいは、少子高齢社会の中での柔軟な「仕事と家庭」との社会的な調整の問題などが起こってきている。このため、今日の生活領域では、政府が行う公共政策、企業や家庭が行う経営・運営なとが「ミックスした状況」のもとで政策が立てられてきている。このような状況のなかで、これらの社会変動のもたらす弊害に対して、総合的な視点が求められている。このような変動する社会の不確実な状況に対して、一方では市場経済のなかで個人がそれぞれ能力を高めて、これに対処することが求められ、他方で個人では対処が困難なときには、公共政策が企てられてきている。実際には、このような二つの領域が接するところで、はじめてこれらの行動原理が調整される必要があり、ここに生活政策学が求められる可能性がある。基礎的な研究作業では、「生活政策」とは何かについての理論的な研究の展望が行われた。従来、「政策」とは政府が中心として私的分野へ介入を行うような公式的な施策が基本的なものであった。けれども、今日では政府以外の組織によって行われるインフォーマルな施策にも、「政策」と同等の位置づけが行われるようになってきている。このような状況のなかで、これらの複合的な政策に関する整合的な理論が求められている。「生活政策学」に関する応用的な研究を行う段階では、それまで行ってきた基礎的な研究、その性質についておおよその見通しが得られたので、これらの成果を基にして、公共領域と市場領域、市場領域と家計領域、さらに家計領域と公共領域などに見られる中間的な組織や経済制度を対象に選んで、「事例研究」を進めてきている。このなかで、国や地方公共団体のIT政策の生活政策的意味についての検討を試みた研究、または、成果主義や裁量労働制などが導入されている現代における労働生活過程のシステム転換について考察を行った研究、あるいは、生活領域における「ケア」のあり方のなかに、社会の中間的な組織化の原理があると考え、このようなケア組織化の特性についての研究、さらには、平成不況の特質について、現代日本の家計構造を調べることで明らかにしている研究などの成果が上がってきている。
著者
土屋 俊
出版者
独立行政法人大学改革支援・学位授与機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

20世紀末から近年にかけて学術、高等教育の分野において生じている「知識のオープン化」の動向について、その進展の現状を調査し、認識論・知識論における理論の観点および学術・高等教育にかかわる社会的体制の変容という観点とから考察し、その動向とその帰趨を明らかにした。とくに、哲学的観点から重要であると思われる「知識」に関する概念の変化を予想し、同時に、学術的活動の局面(ソフトウェア、学術論文、研究データ、研究活動)ごとにおけるオープン化の意義づけの相違を明らかにした。
著者
長坂 一郎
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ブルバキの数学的構造主義とヒルベルトの形式主義からの影響を軸としてパタン・ランゲージに至るアレグザンダーの初期理論の全体像を明らかにした.具体的には『システムを生成するシステム』(1967)に挙げられている「システム」に関する二つの概念,「全体としてのシステム」と「生成システム」が,それぞれブルバキの数学的構造主義における「構造」とヒルベルトの形式主義における「形式システム」に対応し,特に後者に関しては,「生成プロセス」が形式システムにおける証明プロセスをモデルにして構築されていることを示した.さらに,アレグザンダーの初期理論の全体構成は,統語論と意味論の分離をその特徴として持つヒルベルトの形式主義の中に位置づけることが可能であり,「構造」はその枠組みの中で意味論を与える役割を担っていることを明らかにした.
著者
横須賀 誠
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

キンカチョウの鼻腔と嗅上皮の形態学的特性を解析した。また、行動観察でこのトリの餌好選性の有無、ニオイによる嫌悪学習試験の可能性を解析した。その結果、(a)他のスズメ目と同様に左右独立した1対の嗅神経束が存在し嗅球は左右区別のない単一嗅球であることが確認された。さらに (b)鼻腔の構造は単純である、(c)鼻腔の最後部に嗅上皮が存在する、(d)嗅上皮は嗅細胞、支持細胞、基底細胞で構成されている、(e)線毛と微絨毛を共存する嗅細胞が存在する、などを確認した。(f) ニオイ情報による嫌悪学習試験の成立は確認出来なかった。本研究によって、キンカチョウの嗅覚系の形態学的基盤を明らかにすることが出来た。
著者
中村 ふくみ 赤尾 信明
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

多彩な臨床像を呈するトキソカラ症について、臨床的特徴の解析とその病態に関連する因子について検討の検討を試みた。しかし感染源となる牛レバーの生食が禁止された影響か、症例の登録はわずか1例に留まった。一方でトキソカラ症類似の慢性好酸球性肺炎の患者を診断し、新たな鑑別疾患の存在が明らかとなった。また従来使用していたToxocaraCHEKが製造中止となり、同等あるいはそれ以上の感度と特異性を持つ診断キットの開発が必要となった。新たにToxocaraICAを試作し、ToxocaraCHEKと同等の感度を有していることを確認した。
著者
小林 英城
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マリアナ海溝チャレンジャー海淵に生息するカイコウオオソコエビは新規セルラーゼを保持するが、生物多様性に関する条約の成立により、工学利用が困難となった。そこで伊豆小笠原海溝を調査した結果、底部に生息するヨコエビも同様のセルラーゼを保持することがわかった。伊豆小笠原海溝から採取したヨコエビより全RNAを抽出し、次世代シーケンサーにて塩基配列を決定した。その塩基配列よりセルラーゼの配列を検索した結果、7本の候補を見出した。しかし、同配列をcDNAからPCR増幅を試みたが成功に至らず、情報学的な交雑が予想された。
著者
林 淑美 大塚 博 内藤 由直 中川 成美 兵頭 かおり
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、中野重治の肉筆原稿、書簡、日記などの調査と研究である。加えて、最近困難な状況にある文学館との協力の社会的意義の追求も目的である。近代文学研究において肉筆原稿等第一次資料の調査はきわめて大切であるが、調査の対象となる原物は適切に整理・保存・収集されねばならず、そのための作業は研究者の重要な任務である。中野重治の第一次資料を所蔵しているのは石川近代文学館、神奈川近代文学館、中野重治文庫記念坂井市丸岡図書館、日本近代文学館である。これら文学館との協力によって、本研究の肉筆原稿・書簡の整理と調査、戦後日記の翻字とデータ化等が実現した。
著者
三宅 和子 岡本 能里子 村松 賢一 永瀬 治郎
出版者
東洋大学短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

アトランタ五輪の女子マラソンテレビ放送は視聴者の批判を浴びたが批判の的はアナウンサー(以下「アナ」)と解説者(以下「解説」)の言語行動に集中していた。本研究はこの批判が日本の言語社会構成員の規範や期待感を反映しているものと考え、どのような要因が視聴者の不快感を招いたかを究明する。女子テレビ放送の特徴を明確するため、比較として同マラソンのラジオ放送、男子マラソンのテレビ放送を使用し、数量的、質的研究の二つのアプローチで分析を行った。数量的研究ではこの放送のビデオを視聴した被験者(185名)にアンケート調査を行い、アナ・解説に対しての総合評価を目的変数、評価の要因と考えられる要素を説明変数とする重回帰分析を行った。その結果、評価の要因としてアナと解説に共通して「相手とのコンビネーション」と「声の特徴」、そのほかアナでは「説明内容の適切性」「緊張度」「説明の自然さ」「気になる表現の有無」など、解説では「解説としてのわきまえ」「態度」などが抽出された。質的研究では、女子マラソンをラジオ、テレビの放送の音声面で比較したところ、ラジオのアナ・トークがきわめて定型的なスポーツ放送独特のリズムパタンを実現し、解説がそれに合わせるいわゆる「餅つき」形であるのに対し、テレビはアナと解説のリズムが不定型で、あいづちの欠如やずれでリズムが作り上げられていない。また、女子のテレビ、ラジオ放送、男子テレビ放送の談話を比較すると、女子テレビ放送はアナ・解説に相づちがほとんどなく種類も少ない、発話が長く、話者交替時にインターアクションが3層構造をなさない、対話型話段から実況形話段の移行時に解説に対するアナのフォローがない、解説の発話権が自己主張的で、アナの使うべき談話標識を使う、などの現象が見られた。このように女子テレビではアナと解説の役割分担が欠如し、対話型インターアクションが放棄されているが、数量的研究の結果も支持するように、このことが視聴者の不快感と特に関連が深く、翻ればそこが日本の言語社会のスポーツ放送に望まれる談話を示唆しているといえよう。
著者
柴田 政彦 渡邉 嘉之 寒 重之 西上 智彦 植松 弘進 宮内 哲 壬生 彰 大迫 正一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

身体部位(手)のメンタルローテーション課題を用いた心理物理学的実験では,上肢CRPS患者8名と健康成人40名のデータを取得した。両群の正答率および反応時間を比較した結果,健常者に比べCRPS患者で有意な正答率の低下と反応時間の遅延を認めた。健康成人のデータについては,これまで検討されてこなかった回転角度の増加に対する反応時間の変化にばらつきがあることに着目して統計学的解析を行った結果,4つのグループに分類することができ,「手の左右判別課題時には自身の手を動かす運動イメージを行っている」とする先行研究の結論とは異なる回答方略をとるものが存在することを明らかにした。
著者
森田 章夫
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「無国籍船舶」に対する規定を置く条約の先例として、海賊問題を中心とする研究が成果となった。特に、普遍的管轄権の根拠が、「海上交通(往来)の一般的安全」の保護であることを精密に実証した。この過程で、この管轄権行使の根拠として、(1)「授権」(authority)不存在要件説、(2)海賊は、いずれの国家の規制にも服さない海の「無法者」ないし「法外者」(outlaw)であることを根拠とする学説があり、前者については、国連海洋法条約上、「私有の船舶」要件の問題であり、後者については、普遍的管轄「権」を規範的には肯定できないことが明かとなった。
著者
清水 一彦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、(1)アメリカの大学におけるオナーズ・プログラム(honors program)の導入過程及び歴史的発達過程を明らかにするとともに、(2)わが国の大学への導入・実践の可能性及びその諸条件を提言することを目的とした。本研究によって得られた知見は、次のようにまとめられる。1.選択制や単位制度を世界最初に開発したアメリカの大学では、量的システムの弱点を補強するためにオナーズコースを導入し、優秀な学生のための教授内容・方法の改善を図った。2.このオナーズコースは、当初から大学によって多種多様な形態で実践されていたが、その実践形態は大きく次の二つに分類できるものであった。一つは、2〜3の通常のコース(科目)が免除される「不完全タイプ」であり、二つは、大部分のコースが免除されオナーズ試験が課せられる「完全タイプ」である。3.今日多くの大学で実践されているオナーズ・プログラムは、初期の形態とはやや異なり、通常のコースとは別に固有のコースを設けたり、プロジェクト方式のコースを設けたりする大学もみられる。また、ハイスクールと大学のアーティキュレーション(接続)の改善に寄与し、1年次プログラムや下級年次プログラムといった移行の円滑を図るプログラムと結びつける場合もある。4.オナーズ・プログラムの実践は、大学間というより領域や専門分野において著しい差異があり、それぞれの特性に応じた多様な形態が可能である。わが国の場合、飛び入学という特別措置的なシステムの中に類似したものがみられる、入試制度の多様化への対応ではなく、教育プログラムやカリキュラムの編成あるいは教授法の改善の中で導入される必要がある。
著者
小島 道生
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

発達障害者を対象として、自尊感情と主観的幸福感(well-being)に関して、アンケート調査を実施した。その結果、自閉スペクトラム症者27名と同年代の対照群60名との比較を行ったが、自尊感情と主観的幸福感について違いはなかった。ただし、自閉スペクトラム症の学生の主観的幸福感は、社会人に比べて低いことが示唆された。そして、自閉スペクトラム症者と同年代の対照群に共通して自尊感情が高いと主観的幸福感も高くなることが明らかとなった。したがって,自尊感情を高めることが主観的幸福感をも高める可能性があり,自閉スペクトラム症の学生について,特に心理的支援を行っていく必要性があると考えられた。また、青年期ASD者を対象として、自尊感情と主観的幸福感にかかわる影響要因を明らかにするために、面接調査を実施した。その結果、主観的幸福感の測定とともに、幸せに感じている事柄について尋ねた。その結果、回答理由に関して家族関係や友人関係などの対人関係にかかわる言及は少なく、源泉においても定型発達者よりも偏っている可能性が示唆された。また、中学生や高校生においては、友人とのかかわっている時や良い成績をとった時などに主観的幸福感は高まることが示唆された。逆に、他者よりもうまくできないという経験や友達がいないといった孤独感が主観的幸福感を低下させている可能性も明らかとなった。したがって、青年期ASD者も成功・失敗経験と他者との比較、さらには孤独感が主観的幸福感の高低に影響をしていると考えられる。学校教育現場などでは、孤独感を抱かないように他者とつながる支援が求められると言えよう。これら研究成果の一部については、国内や国際学会において発表を行うとともに、学術雑誌に投稿中及び投稿準備中である。
著者
黄 福涛
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

まず、調査対象の一部の国々では、英語による学位プログラムの実施は最初の時点では、主に研究型大学を中心に進められていた、今日は、一部の地方大学や非伝統大学セクターにおいても、それらの開設が急速に拡大されてきた。次に、国により、英語によるプログラムを提供するには、その背景や、目的、実施方法などについて相当な違いがみられる。最後に、多くの国々において、英語による学位プログラムや授業の実施は多くの問題を抱えている。
著者
石川 幹人 菊池 聡
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

疑似科学を判定するための科学性の10条件を選定し、実際の項目に適用することでその有効性を確立してきた。また、それを応用した科学コミュニケーションサイト(http://www.sciencecomlabo.jp/)を運営し、その有効性を広く公表している。このサイトは運用1年で、訪問者15万人、50万ページビュー、コメント数500件以上を達成して、定評を確立している。この業績により科学技術社会論学会の実践賞を受賞した。
著者
吉田 雅則 西澤 真樹子 見明 暢 和田 岳
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本申請研究においては当初の目的どおり、博物館や資料館に収蔵されている動物(主に哺乳類)の骨格標本から「手」を題材としてフォトグラメトリーにより3Dデータ化、3Dプリンタによる立体出力を行い、手作業による組み立てを経て正確な交連骨格標本のレプリカを作成する。さらにデザイン関係者やアートの実践者、博物館関係者に向けて広く公開し、様々な意見や活用方法に関するレスポンスを得るなどし、それぞれの専門分野への応用の糸口を探ることを目的としている。当該年度においては、昨年度に確立したクリーンなデータを得る手法や立体出力のノウハウを基盤とし、それを実践。撮影方法やデジタルツールの使用法を工夫しつつさらなる効率化を獲得することができた。また「大阪市立自然史フェスティバル」、「いきもにあ」などの展示イベントへの出展や日本哺乳類学会における自由集会での発表なども行うことができ、デザイン関係者や博物館関係者からの意見を収集するなど、当初の目的に適った発表を行うという点においても順調である。さらに、特定非営利活動法人静岡県自然史博物館ネットワークの協力により、ヘラジカの前肢の骨格を借り受けてスキャンを実現した。前年ながら欠損した部分が数点見つかったため、現在は今後は足りない部分を他の標本から流用したりゼロから仮の形状の制作を行うなどの展開を見込んでいる。また、現在は大阪市立自然史博物館より、カバ、シカ、ゾウの前肢を借り受けてスキャンを行っている。 新たな展開としては微細な動物の拡大模型についても検討中である。
著者
住谷 昌彦 井上 隆弥 松田 陽一 精山 明敏 宮内 哲 真下 節 宮内 哲 精山 明敏 井上 隆弥 松田 陽一 眞下 節
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

難治性疼痛疾患の幻肢痛やCRPS を対象に、視覚系と体性感覚系(疼痛系)のcross-modalityについての心理物理研究を行い、疼痛患者の視覚情報認知が障害されていることを明らかにし、さらにその視覚情報認知を修飾することによって疼痛が寛解することを明らかにした(Sumitani M et al. Neurology 2007 ; 68 : 128-33 ; Sumitani M et al. Neurology 2007 ; 68 : 152-4 ; Sumitani M et al. Rheumatology 2008 ; 47 : 1038-43 ; Sumitani M et al. Eur J Pain 2009 in press)。これらの知見はこれまで知られていた難治性疼痛疾患の発症メカニズムに、体性感覚系だけでなく運動系が密接に関連していることを示唆し全く新規の治療への応用展開が期待できるものである。光トポグラフィーに加えfMRI による運動系と体性感覚系(疼痛系)との相互作用についての脳機能画像研究も継続して行い、deep somatic allodynia と呼ばれる運動時痛の発症メカニズムについての知見を得た。