著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、組織学習論の観点からみて望ましいと考えられるチーム・マネジメントを分析・考察した。具体的には組織アンラーニングやダイバーシティ、組織アイデンティティなどの他の概念とリンクさせて、効果的なチーム・マネジメントに必要と考えられる条件やメカニズムを探るとともに、それを実証するために、協力いただいた1社に対して、デプス・インタビューを行った。その結果、成果をあげているところは、チームのもつ多様性を活かすというよりは、統制しすぎることなく、共有する価値を基盤として柔軟に対応している様子が確認された。また、それにより組織内外の統合性を実現している可能性もうかびあがってきた。
著者
THAWONMAS Ruck
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ネット上の仮想三次元空間であるメタバースのセカンドライフ(Second Life,以下SL)での体験学習を支援するための,「移動・行動分析」,及び「体験集約」に関する研究成果が得られている.SL での体験学習は,実世界での体験学習と同じように,仮想の博物館などの見学を通じて問題の解決や探究活動に主体的,創造的,共同的に取り組む態度を育てると期待できる.これらの研究成果は,体験学習支援に止まらず,SL のようなメタバース内での効果的な教育サービスの創出につながると期待できる.
著者
安藤 満代 椎原 康史 伊藤 佐陽子
出版者
聖マリア学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

がん患者へのマインドフルネスは、患者の抑うつ感と不安感を低減させ、さらにマインドフルネスを体験した後は肯定的な心理変化がみられた。また、マインドフルネスプログラムは、気分のなかの緊張を低減し、活力を維持することに効果があること、さらに精神的健康度が低い人に対してより効果があることが明らかになった。
著者
百鬼 史訓
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、平成17年度から平成19年度にわたって、剣道難聴予防のための基礎的研究として『剣道難聴を予防するための剣道具(面)の開発研究』を行なった。研究の概要は、平成17年度には、剣道を専門的に実践している学生や警察官を対象として「剣道難聴」の実態調査を行い、高い出現率と2kHz,3kHzそして8kHzが存在することを明らかにした。その原因と考えられる「剣道騒音」について分析(音圧・周波数)を行ったところ、掛け声、踏み込み音、竹刀音、打撃音などに固有の周波数あることや、かなり高い音圧の騒音が発生していることが明らかになった。平成18年度には、剣道騒音と剣道難聴の関連性について検討したが、測定器具の精度や生理的な個人内変動などの問題が生じたため、その因果関係については明らかにならなかった。平成19年度には、現実的な対応として難聴予防のために遮音性の高い「面」布団の芯材やその構造などの改良を行うために、各種面の遮音性についての検討を行なったところ、各種面布団の遮音性は1kHzでは低いと考えられるが2kHz,4kHzと周波数が高くなるにしたがって高くなり、ミシン刺しより手刺し材料の方が遮音効果は高く、化学素材(ソルボセイン)を1枚加えると、あらゆる布団材料よりも遮音効果は高くなるなど、剣道具開発のための有益な礎的資料を得ることができた。
著者
稲垣 照美 穂積 訓
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本申請課題では, 要素技術として確立した知識を総合的に融合して, 住空間だけでなく福祉施設や病院などの医療施設・ホスピス等に, 自然や生物情報に基づいた(模した)サステイナブルかつ省エネルギーな快適(癒し)空間の設計指針を提供することを最終目標として研究を行ってきた. そのために, 昆虫類の活動特性や人の感性におよぼす影響を解析した. また, マイクロバブルの気泡発生に関わる物理特性を解明し, より細かくかつ大量の気泡発生について検討を行った. さらに, 風車を用いた発電におけるゆらぎ現象や, 風車の回転時に生じる不快音の調査を行って, より効率的かつ住環境に配慮した風車の配置・運転について提案した.
著者
稲垣 照美
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,福祉施設や病院などの医療施設・ホスピス等の福祉住環境の構築へ向けて,提唱した要素技術(マイクロバブルと多孔性媒体によるホタル水圏環境の改善技術,遮熱塗料を施工した通気層制御型外断熱技術,色香と人の感性に関する評価技術)を個別に検証するとともに,これら要素技術群を試験的に構築したネイチャー・テクノロジーに基づいたサステフィナブルな模擬環境空間へ取り込んでその効果を総合的に評価したものである.
著者
岡 真理 林佳 世子 藤元 優子 勝田 茂 石川 清子 山本 薫 浜崎 桂子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本における、中東の三大言語文化圏であるアラブ世界、イラン、トルコの現代文学研究者を結集し、中東現代文学のさまざまな時代、作品・作家における「ワタン(祖国)」表象の分析・考察をおこない、それを通して、歴史的には近代初頭から植民地時代を経て2011年の一連のアラブ革命に至る、西アジアから北アフリカに及ぶ中東諸諸社会における、「祖国」なるものをめぐる文化的ダイナミズムを明らかにするとともに、中東に生きる人々の生と精神性の諸相の一端を探究した。
著者
中田 充 葛 崎偉 吉村 誠
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

古典文学作品に書かれた手書き文字を対象とした文字認識手法を提案し,それに基づいた認識プログラムを試作した.本手法では,特徴グラフを用いて文字の構造を表現する.認識対象文字と認識用辞書に含まれる既知文字(辞書文字)の類似性を計算し,認識対象文字を最も類似性の高い辞書文字として認識する.次に,源氏物語中に書かれた文字を対象として評価実験を行った.その結果,一文字毎に切り出された文字を対象とした場合の認識率は76.6%であり,続け字を含む縦一行を対象とした場合の認識率は54%であった
著者
宮崎 耕輔 谷本 圭志 伊藤 昌毅
出版者
香川高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は,地方部における交通系ビッグデータを活用した地域公共交通計画立案の開発である.昨年度の検討結果を踏まえ,基礎集計の基礎となる利用者個人単位のデータベースの作成ならびに利用実績に着目したデータベースの作成などを行った.具体的には,「5.交通系ビッグデータから地域公共交通計画立案に必要なデータ抽出法の開発」に着手した.提案したデータ抽出法が効果的かどうかについての検討をするに際し,トライアンドエラーの繰り返しをしながら,以下のような分析を行った.抽出したデータベースをもとに,個人単位ならびに利用された駅単位などによって,利用実績を整理した.そして,クラスター分析や非負値テンソル因子分解などを用いて,グループ化し,これらのグループごとの特徴整理をすることによって,利用者の交通行動分析を行った.また,個人単位ならびに利用された駅単位などによって,整理した結果を用いて,経年変化について整理し,時系列分析の手法を用いつつ,クラスター分析等の手法を用いて,グループ化し,これらのグループごとの特徴整理をすることによって,利用者の交通行動分析を行った.以上の交通行動分析結果が適切であるか否かについての検討を行い,提案したデータ抽出法が効果的であるか否かについての判定を行った.なお,効果的なデータ抽出法の模索に時間を要し,今年度のほとんどの時間をデータ抽出法の開発に要してしまった.そのため,次年度以降については,「6.具体的な地域公共交通計画立案へのデータ活用法の開発」「7.地域公共交通計画立案に資するビッグデータの整理ならびにその項目集の作成」を実施することを目指すとともに,さらなる分析を行うことを確認した.
著者
大隅 萬里子
出版者
帝京科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

酵母の自食作用というダイナミックな膜動態システムには多くのAPG遺伝子産物が関与している。本研究はまだクローニングされていないAPG2とAPG15遺伝子を酵母の染色体バンクから単離し、解析することを目的とした。しかしこの研究開始直後に研究協力を行っている細胞内エネルギー変換研究室(基生研)で、APG2遺伝子をクローニングし解析をすすめた。そこでAPG15遺伝子に焦点を絞り、この変異株の胞子形成能の回復を指標としてクローニングし、第十三番染色体のYMR159CというORFがAPG15であることを明らかにしたが、このORFはすでに水島等によってAPG12をベイトとしたTwo-Hybrid法により取られたAPG16として報告されていた。apg16遺伝子破壊株がapg15変異株を相補したという結果から16番目のAPG遺伝子と命名されたが、この矛盾した結果を再検討するために、apg15-1変異株のシークエンス、および相補性の再確認実験を行った。YMR159cを含む約1、500塩基のシークエンスによりapg15-1変異はAPG16に生じたオパール変異であることが明らかになった。しかしapg16遺伝子破壊株とapg15-1変異株の二倍体はPMSF存在下で液胞にオートファジックボデイを蓄積し、成熟型アミノペプチダーセIを生成し、自食作用の回復を示した。二倍体を胞子形成させ四分子解析を行ったところ、そのApg+:Apg-の分離比はメンデル遺伝で説明出来ないことが明らかとなった。その後の解析からapg16遺伝子破壊株/apg15変異株の二倍体が示すApg+の表現型はapg16遺伝子破壊株を作成した酵母株の細胞質性のサプレッサーによるものであることが明らかとなった。さらにapg15-1は既知のオムニポテントサプレッサーによっても抑制される特異な変異であった。現在このサプレッサーの性状、遺伝的挙動などを解析しており、apg15-1変異株が効率よく相補される現象を解析している。
著者
渡邉 美樹
出版者
足利工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

江戸期の寺地と寺院墓地の領域の変遷について、古地図や地籍図をもとに分析した結果、i)江戸期に、周辺の御朱印寺院の年貢地や借地である寺院が数多い。ii)上知後、「拝領地」の約半分が「境内」となり、「年貢地」はほぼ同面積が「民有地」となった。iii)明治以後に寺地の下戻しや払下げがなされた。iv)寺院墓地は江戸の墓地と明治の「境外官有地」を基準とし、むしろ拡張している。v)西浅草や駒込では街区の中央に寺地が残存し、谷中地区では住宅地と寺地・墓地が共存している。
著者
鈴木 雅恵 与那覇 晶子
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は日本の近代化と、沖縄の大和への同化の歴史と共にはじまった、沖縄芝居の特異性、および現在の位相について、大和(特に京都)と沖縄双方の視点から考察し、世界演劇の中に位置づけよう、という研究の一部である。今回は特に、広義の意味での「沖縄」演劇(ウチナーヤマトグチによる現代劇や、映画化された沖縄発のアメリカン・ミュージカルも含む)における、広義の意味での「女優」(舞踊家や、花街や辻の芸能者を含む)の表象について考察し、さらに他のアジア圏や西欧の例と比較することを目的とした。当プロジェクトの主たる成果は、代表者・分担者が主となって、沖縄県男女参画センターにおいて2007年11月23日から25日まで開いた日本演劇学会の秋の研究集会であるといえる。特に、11月24日に、当プロジェクトの成果発表の場として「演劇(芸能)における女優の表象」というタイトルでおこなったシンポジウムは、メンバーの他、沖縄を代表する女優の北島角子氏をはじめ、現役の女性歌劇団員、大阪の歌舞伎研究者、戦後50年間存在した沖縄の女だけの「乙姫劇団」出身の古代宗教研究家等を研究協力者にむかえ、貴重な証言を記録することができた。また、それに先立っておこなわれた「対談」では、芥賞作家の大城立裕氏から、彼の創作した新作組踊における女性像について、貴重な話を聞きだすことに成功した。こうした内容は、地域の人々にもオープンにし、広く研究の成果とその課題を提示することができた。さらに、代表者と分担者は、京都の花扇太夫や女性能楽者、フィンランド・デンマーク・英国・香港の研究者・演出家・女優などに取材して、沖縄演劇における「女優の表象」を相対化することに努めた。特に代表者が宮古島の舞台で、男性の能楽研究者に混じって地謡を勤めた経験は、「芸能する女性」のグローバルかつローカルな表象を、新たな観点から再検討するきっかけとなった。
著者
鈴木 雅恵
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、東アジアのシェイクスピア受容について英文で発信するためのプロジェクトの一環であり、「日本」のシェイクスピアの受容を、伝統演劇の典型としての能と、「日本」とほかのアジアの国々をつなぐ接点としての沖縄の芸能に広げているところに特徴がある。本プロジェクトの期間中には、シェイクスピアを本説とした泉紀子氏の「新作能・マクベス」の英訳や「新作能・オセロ」の研究、「琉球歌劇・真夏の夜の夢」の解読、新作組踊の調査や沖縄演劇の歴史に関する英文論文の執筆などを行った。
著者
北村 卓
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

明治期、大正期から昭和にいたるフランス近代詩受容の一つのパースペクティブが、上田敏、永井荷風、谷崎潤一郎、岩野泡鳴、福永武彦らを中心とする具体的な研究を通して明らかになった。またフランス文学・文化の受容に関する研究を、日仏文化交渉の観点から、詩・小説・演劇・映画などを視野に収めた上で行うことによって、立体的な傭職図を獲得できた。こうした受容研究と並行して、日本においてフランス近代詩がどのような過程を経て翻訳・発表されたのか、すなわち原典の確定、翻訳者、発表の媒体、社会的状況を明らかにしようと試みた(これは成果報告書巻末に付した年表形式のデータベースに反映されている)。それらがどのような読者層に受容され、さらには日本の作家や芸術家さらには日本の社会にどのような影響を与えたのかについては、受容研究において具体的に考察を加えている。以上の成果をもとに、100ページにわたる研究成果報告書を平成19年3月に刊行した。その報告書は、5章からなるフランス近代詩の受容研究(序章:日本におけるフランス近代詩受容のパースペクティブ、第1章:永井荷風『珊瑚集』における戦略、第2章:谷崎潤一郎とボードレール、第3章:岩野泡鳴とフランス象徴詩、第4章:福永武彦における「幼年期」と「島」の主題)および年表としてまとめた翻訳文献(ボードレールを中心とする)のデータベースとから構成されている。
著者
澤田 典子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、フィリポス2世のもとでのマケドニアの急速な台頭とギリシア制覇の過程を、彼が精力的に進めた軍制改革・都市建設・人口移動・農地開拓などによるマケドニアの社会の変容と関連づけて分析し、こうした社会変容がフィリポス2世のギリシア制覇の重要な背景になっていたことを明らかにした。さらに、そうしたフィリポス2世の治世のマケドニアの発展において、前5世紀初頭以降のマケドニア王たち、とりわけペルディッカス3世の治世からの「連続性」が従来考えられているよりも顕著であったことを検証した。
著者
筒井 英一郎 中野 美知子 大和田 和治 阿野 幸一 近藤 悠介 上田 倫史
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本プロジェクトの目的は、日本人英語学習者の学習方法の好み、学習不安、意欲の方向性、学習スタイルなどに焦点を当て、自動診断のフィードバックシステムを開発することである。ウェプアプリケーションを用いて、51の調査項目に答えることにより、診断結果が個別出力される仕様となった。この診断システムを受けることで、(1)自分がどういったスタイルで学習に臨んでいるか、(2)英語学習におけるどのような学習方法に頼っている/忘れがちであるか、(3)英語学習においてどのような不安感を持っているか(4)どういったものに英語学習に対する意欲を掻き立てられるのかなどの認識することが可能である。
著者
三根 慎二
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の主な成果として,オープンアクセス運動は,1)学術雑誌の価格高騰,2)学術情報の電子化,3)研究者のイニシアティブという3つの異なる文脈が同時代的に組み合わさった結果生じたものだったが,約20年を経て,研究者や図書館から政府や出版社にその主導権が移りつつあり,機関リポジトリの役割は相対的に小さくなりつつあること,当初掲げられていた商業出版社への対抗戦略としての意味合いは弱まっていることなどがわかった
著者
佐藤 アヤ子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

環境破壊、種の絶滅、遺伝子工学等に警鐘を鳴らすカナダの作家マーガレット・アトウッドは、環境の危機を人間に伝えるには、「理解の神経回路」を作る物語や文学を含む芸術が必要と強調した。この「理解の神経回路」こそ、出口のない従来のディストピア小説とは違う〈新ディストピア小説〉の構想と解釈し、〈マッドアダム〉の物語である三部作Oryx and Crake(2003)、The Year of the Flood(2009)、MaddAddam(2013)で分析し、アトウッドが希求する〈新小説作法〉を考えた。
著者
鈴木 智之 与那覇 恵子 塩月 亮子 加藤 宏 松島 浄 加藤 宏 武山 梅乗 松下 優一 ヴィクトリア ヤング
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、戦後沖縄における「文学表象」と「文化的実践の場」の構造に関する社会学的分析を行うことを課題としてきた。沖縄において「文学」は、政治的状況の強い規定力と、文化的・言語的な固有性に影響されながら、「弱い自律性」を特徴とする文化的実践の場を形成している。地域に固有の制度的布置の中で、文学は、この地域の歴史現実を表象する重要な媒体でありつづけている。本研究では、戦後沖縄を代表する何人かの作家たちについて、社会的状況と文学的実践を結ぶ、その多面的な媒介の論理を明らかにすることができた。
著者
林 琢磨
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

子宮平滑筋腫(子宮筋腫)は、50歳以上の成人女性に罹患率70~80%で発症する良性腫瘍で、女性に発生する腫瘍で最も頻度の高い腫瘍のうちの一つである。従来はその大きさを基準に手術が行われてきたが、女性の晩婚化・高齢初産婦の増加などライフスタイルの変化により、40 歳代女性の妊孕性温存希望が強くなっている。故に、今日の子宮筋腫の治療方針ではこの社会的背景を考慮して、子宮を温存する方法が要求される。しかし、子宮筋腫に類似した悪性疾患である子宮肉腫がまれながら存在するため、多くの子宮筋腫患者の中で子宮温存の是非を決定する際、その除外診断が重要となる。残念ながら、現行の鑑別法は、手術摘出組織の外科病理診断であり客観性に欠けている。さらに、これまでに各国において臨床試験が行われているが、既存の抗癌剤では、子宮肉腫に対する顕著な延命効果が認められていない。そこで、子宮肉腫に対する新規治療法・診断法の確立に向け、子宮肉腫の生物学的特性を理解することが重要である。林らの研究グループは、蛋白分解酵素複合体プロテアソームの構成因子であるLMP2の欠損マウスにおいて、子宮肉腫が自然発症することを見出した(利根川 進 教授:米国マサチューセッツ工科大学の研究協力)。そこで、私達は、病理ファイルより選別された各種子宮間葉系腫瘍の生検組織でのLMP2の発現状況について免疫組織化学染色により検討し、特異的に子宮肉腫でLMP2の発現が著しく減弱することを報告した。提携の医療機関との連携の基、私達は、LMP2に着目したDNA MicroArrayの遺伝子プロファイリングを行い、子宮間葉系腫瘍の診断マーカーの候補分子の探索を行っている。本研究より、林らの研究グループは、カベオリン、LMP2、Cyclin Eなどの候補因子に対する子宮間葉系腫瘍の診断マーカーとしての可能性を検討した。