著者
岡本 浩一 杉森 伸吉
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

東京都と神奈川県に在住する成人を対象に、1500通の調査冊子を発送し、551人から回答を得た。リスク認知については、「恐れ」因子と「未知性」因子の2因子による相関構造が見出され、slovicらによる従来からの知見が認識された。また、社会的信頼感は、一般因子の存在が示唆された。リスク認知の2因子と、社会的価値観の種々のスコアとの相関を調べたところつぎのような結果が得られた。(1)政治的効力感の高い人ほどリスクの恐れが強く、リスクの未知性を高く感じている。(2)平等主義的価値観の強い人ほど、リスクの恐れが強く、逆に、権威主義的価値観の強い人ほどリスクの恐れが低い傾向があった。(3)リスクの統制感スコアの高い人ほど、リスクの未知性を低く感じる傾向があった。(4)社会に対する信頼感の高い人ほど、リスクの恐れぬ傾向があった。(5)社会的価値観のうち、個人主義尺度と政治的態度(進歩的か保守的か)はリスク認知と有意な相関をもっていなかった。(6)従来、リスク認知と相関すると報告されることの多い、神秘的世界観や宗教性はリスク認知と有意に相関していなかった。(7)情報への感受性の尺度のうち、情報認知の高い人がリスクの未知性を低く感じている傾向が有意であったが、情報探索傾向はリスク認知の変数と有意な相関をしていなかった。リスク認知が社会的価値観や社会的信頼感を心理的に投映している可能性を予測した研究であったが、その予測はおおむねデータによって裏付けられたといえよう。
著者
山本 英弘
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題では、日本において政治参加が低調である背景に、一般市民の社会運動や政治参加に対する態度があるものと想定し、質問紙調査による国際比較分析を通して検討した。分析の結果、日本では、政治的有効性感覚の低さや公的領域における自己実現的価値の弱さともあいまって、社会運動の代表性や有効性に対する評価が低く、秩序不安感を抱く傾向にある。そして、こうした態度が社会運動への参加に対する許容度とも関連しており、社会運動が受容されない政治文化を形成している。一方で、反グローバリゼーションや脱原発など個別の運動に対しては、政治に対して市民の意思を表出するプロセスとして評価されている側面もみられる。
著者
石井 晴之 中田 光 田澤 立之 似鳥 俊明 後藤 元 横山 健一 平岡 祥幸
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は高分解能CTのdensitometryを用いて、肺胞蛋白症(PAP)病変のCT値を分析することである。5症例のPAPを対象とし、重症度別に肺全体のCT値や肺volumeを客観的に評価することができた。また継時的変化も含めてPAP病巣を反映するCT値は-850HU~-750HU領域のすりガラス影であること、そしてこの領域でのvolumeは血清KL-6およびCEA値と有意に強い正の相関(0.867, 0.616)をみとめていた。稀少疾患であるPAPの早期診断は困難な場合が多いが、本研究成果はPAP診断アプローチに役立つ情報になると思われる。
著者
瀬田 範行 桑名 正隆
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

関節リウマチ(RA)の末梢血中では既にCD146^+単球が活性化されていたが、関節修復に関わる可能性のあるCD14^+CXCR4^<high>単球は健常人より少なく、疾患活動性が高いRA患者ほど更に少なかった。一方、RAの腸骨骨髄中と末梢血中には関節破壊に関わる可能性のあるCD14^+CD15^+単球が多数存在したが、CD14^+CD15^+単球は健常人の末梢血中にも存在したため、CD14^+CXCR4^<high>単球とCD14^+CD15^+単球のバランスがRAの病態において重要である可能性が示唆された。
著者
岩下 剛
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本スポーツ振興センターの事故データと、事故発生時の気象データをマッチングさせ研究を行った。冷房普及率の高い東京都区部および冷房普及率の低い東京都市部の学校を調査したところ、夏期、中間期において区部小中学校教室における事故率の経年減少が市部小中学校教室に比べ著しかった。学校における熱中症発生と環境温度との関係を考察したところ、外気温熱指標の上昇に対応する熱中症発生リスクの増大が顕著であった。高温下の体育館における環境温度の熱中症発生への影響は校庭と同等であることを確認した。東京都のある区の学校空気検査結果行政データを入手し考察したところ、中学校教室で平均CO2濃度が基準を超過していた。
著者
河中 正彦
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

カフカ研究に欲動論と第二局所論を導入するという最初の意図は、完成稿として発表した3編の論文において実現できた。『判決』論での理論的成果は以下の3点に纏められる。(1)『判決』研究を自伝的、精神分析的、宗教的な解釈に分けると、自伝的方法は主人公ゲオルクを市民としてのカフカ、ロシアの友人を作家としてのカフカ、ゲオルクの父をヘルマン・カフカと解釈する。精神分析方法は、自我、エス、超自我と読み解く。宗教的解釈は西方ユダヤ人、東方ユダヤ人、神と解釈する。しかし市民としてのカフカと「自我」という規定は同じことだし、西方ユダヤ人というのも近代化された自我と解すれば、別物ではない。またフロイトによれば、超自我とは父をモデルにしているから、超自我という規定と矛盾しない。また超自我こそ神のモデルだというのがフロイト理論であってみれば、そこには矛盾はない。また作家としてのカフカとエス当規定は矛盾しない。なぜなら沈黙したエスは、語る声として超自我を通じて自らを語るからである。それはまた近代化されない自我、自我の「東方ユダヤ人」的な部分だからである。(2)『判決』において、ゲオルクの父がほとんど理由もなくゲオルクに残酷になりうるのは、メランコリーに特有の「欲動の解離」(フロイト「自我とエス」)によって、エスにおいて不可分に融合していたエロス(生への欲動)と死の欲動が分離し、死の欲動がエスから超自我(ゲオルクの父)に流入する結果、罪もない息子に死刑を宣告する。しかしゲオルクを自我、父を超自我と読み替えれば、これはそのまま、メランコリーに特有の「自虐」に他ならず、カフカおいてはそれはパラノイア(迫害妄想)からの自己防衛でもあった。ここまで深層におよぶ分析はかつてなかったし、カフカ研究に新しい次元を開拓できたと総括できる。(3)またその副産物として、1912年から14年にかけての作品群に登場する人物類型を、フロイトの第二局所論を援用して、整理することに成功した。それは『判決』、『火夫』、『変身』、『流刑地にて』の主要人物たちを、「エス、自我、保護者的(優しい)超自我、審判者的(厳しい)超自我」の4類型に分けて、共時的に構造化できたことである。その他論文として公刊するには至らなかったが、3回の独文学会の発表を通じて、『兄弟殺し』の分析で中期のカフカを、『巣穴』の分析で後期のカフカを考察した。
著者
平野 千枝子
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ゴードン・マッタ=クラークは都市のなかに放置された建物に入り込み、かつて住人をとり囲んでいた床や壁を切り取って新しい空間に変える行為を行った。こうした行為は、既存の建物から思いがけない新しい構造を生み出すとともに、人々がどのような空間に生きていたのか、それはなぜ廃墟となったのかを考えさせるものだった。マッタ=クラークはこのような活動を始める前に、樹木を用いた作品を制作し、合わせて植物を大量に描いていたが、これらの建築に関する作品との関係は不明だった。本研究では、マッタ=クラークが、環境によって変化し、環境を変化させる樹木を、我々を取り囲む建築を考え直すときのモデルとした可能性を提起した。
著者
高野 美千代 パリー グレアム サウスコム ジョージ ワイルドガスト パトリック
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、書物史の観点から17世紀英文学にアプローチする研究方法を取った。日本国内では今後さらに踏み込まれるべき領域であるため、先駆的な研究となることを意図して海外の研究者の協力を得ながら17世紀イギリス書物と社会の関係について考察を進めることができた。具体的には17世紀後半のイギリスにおける出版事情を研究するためにロンドン書籍商の出版物を分析し、さらには学術書・歴史書等の出版を促進することとなった予約出版制度を多角的に考察した。そのほか、パラテクストとしての挿絵の効果について、17世紀に出版された好古学書を中心に検証した。また、17世紀英国の書物の受容に関して調査を進めるため、ケンブリッジ大学ピープスライブラリーおよびダラム大学カズンライブラリーにおける現地調査を行ない、新たな研究の可能性を確信するに至った。
著者
大倉 和博 保田 俊行
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

近年,スワームロボティクス(SR)と呼ばれる群ロボットの行動制御に関する研究が大きな注目を浴びるようになってきている.しかし,SR の自己組織化原理に基づく行動制御方式では,「定点に集合する」「互いに離れる」などの非常に限定的な単純タスクしか達成できないのが現状である.本研究では,これを打破すべく,研究代表者が提案している構造進化型人工神経回路網 MBEANN にベースとして可塑的群知能システムを構築するための新理論を開発し,従来法では不可能であった高難易度タスクを達成することに挑戦して SR の新段階を切り開く.
著者
村上 悟 濱谷 義弘 長渕 裕 神谷 茂保 田中 敏
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

積分方程式の解に対する定性的性質を中心に研究を行った.実際、線形方程式に付随する解作用素の生成素に対してスペクトル解析を行い、本質的スペクトルの半径に関する評価を得た.さらに、非同次方程式に対して相空間における解の表現公式を確立した.これらの結果を融合して応用することにより、有界解や周期解などの存在に関するマッセラ型の定理を確立し、さらに、非線形方程式に対し線形化原理を導いて解の安定性解析への有効な手法を確立した.
著者
佐藤 哲司 福原 知宏 宝珍 輝尚 斉藤 和巳
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ブログやツイッターなどのUGC(User Generated Contents)は, 複数の著者によって断片的に書かれた記事の集合体である.本研究では, 大量な記事集合における、記事間の関連性や類似性を手がかりに, 記事間や著者間の経時的な変容の解明手法、文章の印象評価手法を確立するとともに, それらの知見に基づく新たな情報探索手法を考案した.質問回答サイトのアーカイブデータ等を用いた評価を行い, 考案手法の有効性を確認した.
著者
川名 敬
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

子宮頸癌前癌病変(CIN3)の初の治療薬として、HPV16型E7発現乳酸菌,GLBL101c, の有効性を臨床試験によって証明したが、その有効性を増強させることを目的とした。GLBL101cに粘膜アジュバントLTBを添加した状態で十全大補湯、補中益気湯を併用したところ、腸管粘膜リンパ球にGLBL101c単独よりも4-5倍高いE7-CMIが誘導された。1.2x10~8乳酸菌あたり E7分子量として0.1-0.3μgが菌体表面に表出する最高量であり、かつ0.3μgのE7分子量の量比が最もE7特異的IFNγ産生細胞の誘導能が高かった。新型E7発現乳酸菌を開発するための基礎情報となる。
著者
坂井 晃 片渕 淳 小川 一英 吉田 光明
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

100 mSv以下の低線量被ばくによる染色体への影響をGiemsa染色法とCentromer-FISH法の2種類を用いて解析し比較検討したところ、前者では2,000個以上、後者では1,000個以上の分裂細胞の解析が必要であることが判明した。さらに1回のCT検査による二動原体染色体 (DIC)と転座型染色体の形成数ついて解析を行い、1回のCT検査による被ばく線量 (100 mSv以下) でもDICが有意に増加することを見出した。一方で転座型染色体では有意な増加は認めなかった。これは、転座型染色体では年齢や喫煙、疾患に対する過去の治療などの交絡因子が影響していることが推測された。
著者
松田 浩則
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.1920年代後半から第二次世界大戦にいたるまで、ヨーロッパを代表する知性として、とくに国際速盟の知的協力委員会を舞台に、ヨーロッパ諸国間の対話と協力の政策を推し進めたボール・ヴァレリー(1871-1945)であるが、彼はその青年期の知的形成期において、かなり愛国主義的、さらには帝国主義的な思想傾向の持ち主であった。19世紀末に続発した労働運動にたいして冷淡な眼差しを投げ、ドレフュス事件において反ドレフュス的な立場を取るヴァレリーはまた、ヨーロッパ列強がアフリカ大陸で推し進める帝国主義的政策を非難するどころか、それにおおいに熱狂する。こうした態度がなにに由来するのかを考える上で、いちばんポイントになるのは、彼自身の精神的な不安である。いわゆる「ジェノヴァの危機」へといたる情動的、知的な危機が、彼に強力な精神を渇望させたと考えるべきである。つまり、彼は、ヨーロッパ列強のなかにあって、徐々にその優位的な立場を失いつつあるフランスの運命と、きわめて個人的な運命とを平行的に考えながら、当時の社会問題に関与しようとしていたのである。2.ヴァレリーがこうした情動的な危機をきっかけに書き出した日記帳『カイエ』が雄弁に示しているように、彼はまず、書く行為を通して、みずからの精神の立て直しを図る。「体系」をめぐる考察が頻繁に現れるのはそこに由来する。しかし、こうした中から、彼はみずからのエロチシズムを知的コントロールのもとで表現する独特の方法を編み出していく。実に、知性とエロスの混交から、彼は『若きパルク』のような傑作を生み出していくのだが、こうした方法は、最晩年の未公刊の作品『コロナ』や『コロニラ』にまで続いている。
著者
近藤 英司 安田 和則 近江谷 克裕 北村 信人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

(目的)自家移植腱マトリクスを内在性線維芽細胞・基質複合体で被覆することにより腱マトリクス再構築に与える効果を明らかにすること。(方法)成羊40頭を2群に分けた。I群は前十字靱帯を切除し、自家半腱様筋腱を移植した。II群では内在性線維芽細胞・基質複合体で移植腱を被覆した。術後4および12週にて屠殺し、力学的・組織学的評価を行った。(結果と考察)膝安定性は、II群がI群に比べて有意に低値を示した。断面積はII群が有意に高値であった。固有知覚受容器および血管数は、II群がI群より有意に高値を示した。本研究は、内在性線維芽細胞・基質複合体による被覆が移植腱の再構築過程を促進させる可能性を示唆した。
著者
津留 美智代
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我国には、300を超える難病があります。その中の1つに後縦靭帯骨化症という原因不明の病気があります。この病気を克服するために、患者の血液中で現代の最高感度での全てのタンパク質を調べ、健常者と比較し、後縦靭帯骨化症発症機序に並行したタンパク質を発見しました。このタンパク質の遺伝子改変マウスを作製した結果、全てのマウスに後縦靭帯骨化を発症し、発症メカニズムを解明しました。
著者
数馬 広二 KAZUMA Koji
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

江戸時代上野国に存在した剣術流派の中で強い継承力(約600年)をもった馬庭念流(まにわねんりゅう)を中心に、上野国(新田郡・群馬郡・多胡郡・甘楽郡・緑埜郡の武蔵国国境地域、)武蔵国(比企郡・秩父郡)の調査を通し、苗字や刀を持った農民が、学んだ剣術流派継承の実態(門人階層、経営状況、修行内容)を明らかにすることを目的とした。(1)新田郡において1770年〜1781年まで、39村で門人が確認され、免許を受けた新田岩松家由緒・田部井源兵衛(たべいげんべえ)が道場を開き、妻沼聖天宮など3神社に額を奉納(1854年)していた。門人は利根川沿岸の河岸問屋、日光例幣使街道沿いの商人、名主などであった。(2)多胡郡において1685年〜1835年までの門人所在村(入門者数)は、36村で、通算入門者数は馬庭村(289名)、吉井町・宿(79名)多比良村(68名)などが多かった。また馬庭村・松本家は、江戸時代初期、門人を指導していたことがあった。(僧偽庵よりの書状)(3)上野国甘楽郡・緑埜郡の武蔵国との国境域で1685〜1864年までの門人所在村は12村で、入門者合計で多い村から挙げれば、鬼石村(28名)、神原村(19名)、三波川村(18名)保美村(16名)などが多かった。(4)門人は、名主家、中世武士の系譜をもつ名主家や河岸業で成功した商人などがあり、彼らは馬庭念流が行った奉納額活動などの事業をバックアップするだけの経済的力量を持っていた。(5)上野国には、天真甲源一刀流、真之真石川流、小野派一刀流なども存在した。これらの調査は今後の課題とする。
著者
田路 則子 新谷 優
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、スタートアップの成長要因を、経営資源、経営戦略の分類別に探ることである。調査は、地域性、業種の特性をコントロールするために、東京で展開するWEBとモバイル関連ビジネスに焦点を当てている。企業のウエブサイトをみることにより、2年後にどの程度成長しているかを確認した。戦略面では、市場規模、市場成長性、サービス新規性が成長性と関係あることが実証できた。さらに、他社と差別化するためには、製品の革新性と、一貫したビジネスアイデアを追求しながらも柔軟にビジネスモデルを変更することが有効であった。また、経営資源面では、立ち上げ時の創業チームと、シリーズAの資金調達が有効であった。
著者
藤井 亮輔 長岡 英司 呉 泰敏 李 宇寛
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では日本の植民地政策下で朝鮮半島と台湾で展開された盲人への理療教育(鍼灸・按摩教育)の以下の実態を明示できた。朝鮮の理療教育は朝鮮総督府済生院の盲唖部(1913年)において官主導で開かれたのに対し台湾の按摩教育はWilliam Cambelによる台南慈恵院盲人教育部(1900年)や木村勤吾による木村盲唖教育所(1915年)など民間主導で行われた点に特徴がある。両者とも日本で公布された按摩術等に関する法令(1911年)に則った教育が実践されたことで、盲人の経済自立を可能にさせた日本の職業文化がこれらの地域にも形成された。その今日的意義は大きい。