著者
苧阪 満里子
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ユーモア理解は,ポジティブな情動を高め,人間の高次な認知処理を促進すると考えられる。本研究では主に機能的磁気共鳴画像法を用い,4 コマ漫画の文脈を理解する認知過程において,ユーモアがどの時点でどのように生起するのかを検討した。また行動実験による検討も加え,ユーモアが記憶に及ぼす影響を,ワーキングメモリの側面から検討した。その結果,面白さが認知過程に及ぼす効果が検証され,ユーモア理解には側頭葉と側頭・頭頂結合部,内側前頭部の活動がかかわる知見を得た。また,面白さの強度は,左右両側の小脳に反映されることも分かった。
著者
野間 晴雄 朝治 啓三 北川 勝彦 小椋 純一 川島 昭夫 橘 セツ グルン ロシャン
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

イギリスのプラントハンター(プラントコレクター)といわれる人々は,植物学,園芸学の知識と実践を背景に,世界各地に拡大した植民地で稀少な植物・有用植物を収集し,それをイギリス本国や別の植民地に普及するのに重要な貢献をした。その中核となったのがキュー植物園で,J.バンクス卿やW.フッカーの努力によって収集・研究がすすめられるとともに,風景式庭園に対して栽植植物の多様化からの寄与も大きかった。南アフリカ,インド,中国,オセアニア等での植物採集に関わったプラントハンターたちは18世紀以降の大英帝国拡大の一翼を担い,本国・植民地の経済植物や温帯植物の普及によって大きな経済的利益をもたらした。
著者
内藤 周子
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、六次産業化における事業の評価指標を開発し、財務面での自立を促進する評価指標の応用可能性を探ることである。生産物の高付加価値化をはかる第一次産業従事者(主に農業従事者)に関する資料調査と聞取調査を行うことで、つぎの二点を明らかにした。第一に、会計情報をさらに活用する余地が残されていることである。第二に、自然栽培は結果として高付加価値化をはかる栽培方法となりうることである。さらに、事業化に関する発展的な研究を行うための調査対象を合理的に選出する予備的な調査も行った。
著者
河野 健一
出版者
長崎県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

論文2点を発表。第1 論文『ボスニアで結実した「人間の安全保障」の復興支援-- 現地密着の手法が難民と住民の心を開いた』は長崎県立大学発行の国際情報学部研究紀要第13 号(2013 年 1 月発行)に掲載。第2 論文『ボスニアの戦後復興支援で民族協同を実現--JICA プロジェクトの成功要因を検証する』 では、ボスニアの経験を同じく民族紛争で荒廃したスリランカの戦後復興と民族和解支援に応用する新事業に力点を置き、アジア調査会発行の学術雑誌『アジア時報』(2013 年 1・2 月合併号)に発表した。英文概要は、第1 論文に付した英文要約を簡略化したものを付す。
著者
綿貫 茂喜
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は暑い・寒いという印象による視覚刺激が、実際の体温調節反応に影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。その結果、常温環境下では暑い映像、寒い映像を呈示した時に、心拍変動や総末梢血管抵抗が有意に変化した。すなわち暑い映像条件では実際の暑熱曝露時の血管が拡張する傾向があり、寒い映像条件では血管が収縮、心拍数が低下する等の反応が見られた。さらに環境条件を寒くし、かつ暑い映像を呈示した場合、深部体温が寒い映像を提示した場合よりも有意に低下した。一方で、映像の効果が体温に見られない被験者もおり、印象の寄与には個人差があると考えられた。
著者
神山 裕美
出版者
山梨県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

チルドレンセンターは、地域における子どもと家族支援のサービスハブであり、多機関連携の拠点ともなっていた。チルドレンセンターは直接支援としてマイクロ・メゾシステムに働きかけるとともに、エクソシステムとして地方自治体の支援システムに組み込まれていた。これらは実践結果に基づき地方・中央政府による継続的な評価により法律や制度の改善につながるマクロレベルへの循環が見られた。多機関連携によるコミュニティソーシャルワークが機能するには、地域基盤のジェネリックソーシャルワークが向上し、地方自治体レベルでの支援システムとが、車の両輪のようにうまくかみ合って機能することで、より効果的な支援につながると考える。
著者
池田 浩也 早川 泰弘 下村 勝
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,量子効果デバイスを高温動作できるようにするために,熱電変換現象を利用した冷却基板(ナノフリーザ基板)の開発を目指して行われた.冷却機能の高効率化が期待できるシリコン・ゲルマニウム混合材料について,熱電変換の重要な物性値であるゼーベック係数(温度差を1℃与えたときに発生する熱起電力)を調べた.ゼーベック係数は,電子が寄与する成分と格子振動が寄与する成分があるが,格子振動による成分を決定する物性的要因を明らかにした.また,実際のデバイスを作製するためのプロセス技術を提案し,その基礎データを収集した.
著者
神谷 智子 福田 由紀子 竹内 貴子 奥村 潤子 杉浦 美佐子
出版者
日本赤十字豊田看護大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

健康に良い影響があると示唆されている「笑い」について、自律神経活動やストレス指標の観点から認知症高齢者への効果を検証する研究を行った。老人保健施設に入所している認知症高齢者14名(平均年齢85.5歳)を対象に、6種類のDVD鑑賞をしてもらい、唾液コルチゾール活性値、表情の変化、脈拍値を測定した。DVDの内容は、海外コメディー、ものまね、落語、動物映像、漫談、コントの6種類である。他に、HDS-RとDBDスケールによって認知機能を評価した。結果、DVDの種類の違いによる差はみられなかった。今回の研究によって、笑いの表出および笑いによるストレス解消の明らかな効果は得られなかった。
著者
松田 真希子 林 良子 渡部 倫子 金田 純平
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では日本語教育のためのデータマイニング技術開発を目的に、[1]既存データマイニング技術の日本語教育研究への応用可能性の検討、[2]既存ツールのカスタマイズ、[3]ツール開発、[4]マニュアル開発を行った。その結果、[1]ではKh-Coder,SVtoolsなどを用いた日本語教育研究への応用研究を行い、有効性を示した。[2]では日本語学習者誤用換言対データを約3000対開発した。[3]では日本語学習者アクセントの自動評定技術開発を行った。[4]ではマニュアルを一部Web公開した。学術的成果としては、6件の学術論文の発表、11件の学会発表等を行った。
著者
三浦 麻子 森尾 博昭 折田 明子 田代 光輝
出版者
関西学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

オンラインコミュニティでの社会知醸成過程を解明するため,1990年代に多数の利用者を集めた著名なコミュニティ(ニフティサーブ)のアーカイバルデータを分析した.特に心理学フォーラムを分析対象とし,6つの会議室のログをほぼ完全に発掘することに成功した.質量両側面からの分析の結果,利用者の質的差異がコミュニティで醸成される社会知の質に影響していた可能性が示唆された.また,書き込みと応答のコミュニケーションをネットワーク分析によって視覚化したところ,ネットワーク指標に応じてコミュニケーション構造が質的に異なることが示された.フォーラム参加者の名乗りについても探索的に分析した.
著者
福場 良之 辻 敏夫 林 直亨 三浦 朗 山岡 雅子
出版者
県立広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

昼食後の眠気による作業効率低下対策として知られている短時間仮眠が,その後の運動パフォーマンスやそれを支える基礎的な生理機能に与える効果について,包括的かつ実践的な検討を行った。結果として,1)昼食後に睡眠ステージ2までの浅い短時間仮眠(napと呼ばれ,10-20分程度)をとると,覚醒したまま安静で過ごすよりも,スポーツ競技時に必要と想定される脳の情報処理能力や視力に正の効果がありそうであること,2)昼食後に睡眠ステージ4まで含む1時間程度のより深い仮眠をとると,安静やnapをとる過ごし方よりも,無酸素性最大発揮パワーに正の効果がありそうであること,の2点が示唆された。
著者
平田 修造
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では液体π共役分子と高分子材料からなる伸縮性のゲル状材料を開発し、この材料を活性層とし、伸縮性陽極と液体陰極からなる太陽電池を作成した。ゲル状材料は通常の固体高分子半導体の1/100以下の弾性率と100倍以上の歪みを示した。このゲル状材料を活性層に用いたデバイスの光電変換効率は非伸縮時には0.01%であった。通常のπ共役高分子とフラーレンからなる固体材料を活性層として用いた太陽電池では20%以上の歪みに対して変換効率が大きく低下した。一方で、本ゲル状材料を用いたデバイスでは、100%の歪みに対して特性の劣化は観測されなかった。
著者
渡辺 美樹
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

王権神話における王と道化の関係を軸にして作り上げられたファンタジー『指輪物語』はファンタジー文学の嚆矢であるばかりかジャンルの支配的なテクストとして存在している。架空の世界を構築するファンタジーのジャンルの特徴として、対立する概念をすり抜ける存在を主人公に持つ必要がある。また特に王権神話にまつわる物語の場合には王権の起源への回帰を果たすことで読者に慰めや郷愁を与えたりするという特徴を持つ。
著者
本城 秀次 金子 一史
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1812名の中学生に対してネット利用状況の質問・日本語版インターネット中毒テスト・Strength and Difficulties Questionnaire(SDQ)を行った。その結果,中学生の半分以上が1週間に1回以上ネットを利用していることが分かり,中学生においてもネット文化が浸透していることが示唆された。また,女子中学生にネット依存傾向が強いことも示された。
著者
跡見 順子 清水 美穂 秋光 信佳 廣瀬 昇 跡見 友章 長谷川 克也 藤田 恵理 菊池 吉晃 渡邊 敏行 竹森 重 中村 仁彦 井尻 憲一 吉村 浩太郎 高野 渉 神永 拓 江頭 正人
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

1Gという重力への適応を通して地球上で進化してきた人間は、動くことで重力を活用して身体を賦活化し、健康な状態を維持することができる。新しい健康科学イノベーション"重力健康科学"研究では、生命科学、脳科学、理学療法学、機器開発者が連携し、これまで皆無だった"ホメオスタシス範囲の評価系構築"に向けた研究に取り組んだ。いかに自重支持を行いながら運動し転倒しないようにするか?細胞と身体をつなぐ緊張性収縮のダイナミック制御システムを研究することが鍵でありかつ可能であることを、この萌芽的研究が明らかにした。
著者
遠藤 徹
出版者
東京学芸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、江戸期の高野山鎮守天野社(現、丹生都比売神社)で約二十年毎の遷宮の際に行われていた舞楽曼荼羅供とそこで唱えられた南山進流声明を、当時の式次第に則して復元的に把握することを試みたものである。とくに注目したのは、雅楽曲と声明が共奏する箇所である。当該法要が最後に行われてから百七十年を経た今日、現行伝承で当該箇所を重ね合わせても音響は調和しない。そこで、当初の意図を読み取りつつ検討した結果、声明の音程の変化を想定することになった。
著者
坂元 章 桂 瑠以 木村 文香 田島 祥 松尾 由美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

シャイネスの高さと初対面での行動の関係を調査した結果、顕在的にシャイな人は初対面でのスキルが不足していたり、あがったり落ち着かなくなったりするなどの反応がみられ、それにより質問をしたり会話を広げたりするような能動的な行動がみられないというプロセスがあることが示された。これを踏まえ、初対面場面での円滑なコミュニケーションを促進するスキルとしてSNS上での事前情報収集に着目し、その効果を実験によって検討した。分析の結果、対面前に相手の作成したブログを閲覧し、対面時の会話をシミュレーションしてみることで、初対面場面における緊張や過敏さ、自信のなさといったシャイネスの側面が改善されることが示された。
著者
窪野 高徳 市原 優 阪上 宏樹
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

子のう菌類、Sydowia japonica 菌を用いて、都市圏の住民に問題となっているカバノキ科樹木及びマツ科樹木の花粉症を防止するため、本菌を用いた接種試験を実施した。米ぬか・ふすま培地に培養した活性の高い本菌の菌糸塊を用いた接種試験では、クロマツ及びアカマツの雄花では感染しなかった。一方、カバノキ科樹木においては「有傷接種」で開花しない雄花が発生し、シラカバ、ヤマハンノキ及びカワラハンノキから本菌が再分離されて、病原性が確認された。そこで、防止液の散布による実用化を目指して、カバノキ科の上記3種に対して胞子体懸濁液の散布試験を実施したが、雄花には異常は見られず、花粉は正常に飛散した。
著者
榎本 平
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

西日本各地のダム湖から野生の重油生産藻類ボトリオコッカス(Botryococcus braunii, Bb)を採取し、液体培養法と寒天培養法を組み合わせて育種法によって約1年5カ月間増殖力の優れたBb株の選別を行った。その結果、これまでには考えられなかった分裂速度(Doubling Time, DT)≒2. 5日を持つ新規のBb株を分離することに成功した。またこの株は、最適培養温度=29~30℃という比較的高温で生育する新規のBb株であることも明らかにした。
著者
友廣 岳則 細谷 健一 赤沼 伸乙
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

注意欠陥多動性障害の改善効果を有する機能性脂質の一つ、ドコサヘキサエン酸(DHA)の血液-組織関門を介した輸送については以前不明である。そこで、DHA輸送担体の実体を明らかにするため、神経組織の中でも特にDHA含有量が多い視細胞に着目し、視神経への栄養供給を主に担う外側血液網膜関門(oBRB)におけるDHA供給ルート解明を試みた。ヒトoBRBモデル細胞であるARPE-19細胞への[^<14>C]DHA取り込みを解析した結果、時間依存的に取り込まれ、その初期取り込み速度は17μL/(min・mg protein)であった。さらに、非標識体DHA共存下によってARPE-19細胞への[^<14>C]DHA取り込みは阻害され、そのIC_<50>値は約10-100μMと推定された。さらに、各種脂肪酸による[^<14>C]DHA取り込みに対する阻害効果を検討した結果、リノール酸、アラキドン酸及びエイコサペンタエン酸によって阻害され、オレイン酸によって阻害されなかった。従って、DHAはARPE-19細胞に何らかの脂肪酸選択的な輸送機構を介して取り込まれることが示唆された。また、前年度の研究から光反応性DHAプローブを用いてDHA結合タンパク質を精製可能である事が示唆された。oBRBの実体である網膜色素上皮細胞をサンプルとして、光反応性DHAプローブを用いて回収したタンパク質をMALDI-TOF/MS解析を行った結果、ビタミンA関連タンパク質が各種同定された。今後、同定したタンパク質がDHA輸送機能を有するか、検討を進める予定である。