著者
山根 裕司 山本 泰雄 菅 靖司 当麻 靖子 鈴木 由紀子 川越 寿織 澤口 悠紀 高橋 聡子 手倉森 勇夫 山村 俊昭 谷 雅彦 中野 和彦
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0010-C0010, 2005

【目的】北海道サッカー協会では、優秀選手の発掘と育成、全道の選手・指導者の交流、選手・指導者のレベルアップ、トレーニングセンター制度の充実・発展を目的に、サッカー北海道選抜U-18合宿を行っている。我々は2001年から合宿に帯同し、メディカルサポートを行っている。今後の合宿におけるサポートの充実のため、4年間の活動内容について発生部位、疾患、処置内容の分析を行った。<BR><BR>【方法】対象は2001~04年に行われたサッカー北海道選抜U-18合宿。参加登録者は4年間で延べ900名(15~18才)であった。毎年7月上旬に4日間にわたって行われた。内容はトレーニング及び1日1~2回の試合を行った。メディカルスタッフは医師2名、理学療法士2名、看護師4名である。合宿初日に医師、理学療法士が講義を行い、傷害予防の啓蒙活動を行った。スタッフは練習中ピッチサイドに待機し、発生した傷害に対して診断や治療、希望者に対するコンディショニング指導を行った。<BR><BR>【結果】4年間で延べ293名(33%)の選手に367件の傷害が発生し、784回の治療を行った。部位は足関節・足部35%、膝関節22%、大腿11%、下腿7%、股関節5%と下肢が8割を占めた。内訳は外傷65%、障害29%、その他6%であった。外傷では打撲38%、捻挫38%、筋腱損傷10%であった。障害では、筋腱炎が57%と最も多く、次いで腰痛13%であった。処置はRICE処置が37%、テーピング24%、ストレッチ指導16%、投薬11%であった。救急車搬送3例(下顎骨骨折1例、熱中症2例)で、1ヶ月以上試合出場不可能な重症例は4例(下顎骨骨折、撓骨遠位端骨折、肘関節脱臼、前十字靭帯損傷各1例)発生した。4日間の期間中、処置件数は3日目が42%と最も多く、2日目30%、1日目と4日目が各14%であった。また各年度別の傷害発生件数は、2001年は外傷51件、傷害24件、2002年は外傷59件、傷害28件、2003年は外傷79件、傷害35件、2004年は外傷47件、傷害22件であった。<BR><BR>【考察】4年間の合宿において、重症例は少なく、傷害悪化例はなかった。これは現場で受傷直後から治療が出来たこと、一日数回の診察と治療を行えたこと、的確な練習復帰の指示が行えたこと、合宿初日に行った傷害予防の講義による啓蒙活動などの効果であると思われた。実際、初期症状のうちに治療に訪れる選手が多く、選手のコンディショニングの意識は高いと感じた。傷害の重症度によっては理学療法士によるテーピングやストレッチ指導などの処置を行ってプレーを続行させた。しかし傷害を悪化させた選手はいなかった。どこまでの時間や負荷の練習が出来るかの傷害レベルについて指導者とうまく連携できたことと、ピッチサイドにてプレーを観察できたことが要因であると考える。
著者
今井 一郎 原 久美子 赤岡 麻里 八森 敦史 石川 秀太 右田 正澄 宮島 奈々 菅谷 睦 田中 博
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI2406-EbPI2406, 2011

【目的】臨床現場において,脳卒中患者から標準型2輪自転車(以下自転車)に乗りたいという希望をよく聞く.第43回学術大会では症例数3名で自転車動作を検討した.今回は症例を増やし,脳卒中患者の自転車動作の観察とStroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)を実施し,自転車動作に必要な身体機能を検討した.<BR>【方法】対象は,脳卒中の既往があり,発症前に自転車に乗ることができ,移乗動作自立の患者AからHの8名(男女4名ずつ,平均67.75歳,発症病月平均45.5ヶ月)と,週1回以上自転車に乗っている50歳以上の健常者9名(男性4名女性5名,平均65.56歳)とした. 方法は,脳卒中患者のSIASと自転車動作の観察を行なった.自転車前提動作(以下前提動作)は,1)スタンドをしてペダルを回す.2)ペダルに足を載せた状態から片足での床面支持,3)外乱に対してブレーキ維持とした.1)から3)すべて可能であれば,走る(10m自由な速度で走行し,タイム計測と,40cm以上のふらつきを観察)・止まる(10m走行後,目標物手前で停止の可否,笛の合図からの停止距離)・曲がる(外側に膨らまないように走行.1カーブ5箇所の床に40cm幅に貼ってある印で軌跡を確認.印を内側から1点2点とし,カーブ5箇所の合計点を算出)の自転車動作を行なった.健常者は自転車動作のみ実施した.<BR>【説明と同意】ヘルシンキ宣言に沿い,対象者には事前に書面で研究内容を説明し同意を得た.<BR>【結果】脳卒中患者のSIASは,上肢の項目では,患者Aは22点(運動9点,筋緊張5点,感覚5点,非麻痺側握力3点),以下同様に,B22(10,4,6,2),C19(8,4,5,2),D19(8,3,6,2),E23(10,5,6,2),F21(10,4,4,3),G17(6,4,5,2),H14(3,2,6,3)となった.下肢は,患者Aは26点(運動15点,筋緊張5点,感覚6点),同様に,B25(15,4,6),C26(15,6,5),D26(15,5,6),E22(12,4,6),F23(15,4,4),G17(8,4,5),H15(7,3,5)となった.前提動作は,ABCDは1)から3)すべて可能,EFGは1)3)は可能,2)は不可,Hは1)から3)すべて不可となった.自転車動作は健常者と前提動作すべて可能であったABCDで実施した.走るのタイム計測では,健常者平均5.75±0.96秒,脳卒中患者平均8.37±1.54秒で有意差(P<0.01)がみられ,ふらつきは健常者1名以外は40cm以上のふらつきがみられた.目標物手前で止まるでは,A以外は停止可能であった.笛の合図で止まるでは,停止距離が健常者平均143.78±34.83cm,脳卒中患者平均124.0±70.03cmで有意差はなかった.曲がるでは健常者平均25.56±3.28点,脳卒中患者平均35.25±5.25点で有意差(P<0.01)がみられた.<BR>【考察】前提動作では,2)が可能の患者は不可能の患者と比べて,SIAS下肢の得点が高い傾向にあった.また,SIAS上下肢とも最も得点の低いHは前提動作すべて不可能であった.僅かでも運動機能障害,感覚障害,筋緊張異常があると,前提動作の2)が困難となり安全な自転車動作ができなくなると考えられる.自転車動作では,走行時のふらつきにおいて40cm幅でも健常者のほとんどが不可能であった為,脳卒中患者も評価できなかった.目標物手前で止まるでは,Aはできる限り目標物の近くで止まるように意識したため接触した.自転車は速度が速いほど停止距離は長くなる.走るのタイム計測では健常者が脳卒中患者と比較しタイムが速かった.また笛の合図からの停止距離は差がなかった.これは,脳卒中患者の前提動作では問題がなかった僅かな上下肢の機能障害と,発症後自転車に乗車していない為,自転車乗車の感覚が健常者と比較して十分ではなかったことが,走行スピード低下やブレーキの遅れに繋がったと考えられる.それにより,脳卒中患者のスピード低下の為の停止距離の短縮と,ブレーキの遅れによる停止距離の延長が,健常者の停止距離と同等になったと考えられる.自転車は曲がるとき遠心力と重力を均衡させる為,曲がる方向に車体を傾ける必要がある.脳卒中患者は下肢の機能障害やスピード低下の為,車体を傾けることができずカーブで外側に膨らむと考えられる.以上により脳卒中患者の自転車動作には,非常に高い分離運動機能や協調機能,巧緻運動機能が重要である.また自転車乗車の感覚については,練習の有無による自転車動作の検討が今後必要と考えられる.<BR>【理学療法学研究としての意義】この研究は,自転車動作での基礎的運動機能と応用動作における差異や連携を明らかにし,理学療法学としての運動機能面の評価が深まると考える.
著者
松村 将司 宇佐 英幸 小川 大輔 市川 和奈 畠 昌史 見供 翔 竹井 仁
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100760-48100760, 2013

【はじめに】アライメントは理学療法を行っていくうえで必ず評価するものだが、その基礎となるデータを包括的に示した研究は少なく、特に日本人を対象として年代別に調べたものはない。そこで今回、骨盤と下肢アライメントの年代比較と性差を分析した。【方法】被験者は20-79歳の健常成人141名(男68名、女73名)とし、A群:20-30歳代(男25名、女25名)、B群:40-50歳代(男21名、女25名)、C群:60-70歳代(男22名、女23名)の3群に分けた。平均年齢はA群:男26.6歳、女27.8歳、B群:男49.1歳、女50.3歳、C群:男69.9歳、女69.6歳であった。立位アライメントの測定は、一眼レフカメラ(Canon EOS Kiss X4)を用い正面像、側面像を撮影した。画像解析にはシルエット計測(Medic Engineering社)を用い、矢状面:骨盤前傾角度・膝伸展角度、前額面:骨盤傾斜角度・大腿脛骨角度(以下、FTA)・大腿四頭筋角度(以下、Q-angle)の解析を行った。navicular drop test(以下、NDT)は計測器を作成し測定した。立位での踵骨角度、腹臥位での大腿骨前捻角の測定はゴニオメーターで行った。分析には、各年代の男女それぞれにおいて左右の測定値に有意差がないことを確認し左右の平均値を用いた。結果は、二元配置分散分析と多重比較検定(Bonferroni法)で処理し、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は研究安全倫理委員会の承認を得た上で、被験者には事前に研究趣旨と方法について説明した後、書面での同意を得て実験を行った。【結果】括弧内に平均値を、性差は男:女の順に示す。骨盤前傾角度とFTAは交互作用を認め、年代と性別に主効果を認めた。骨盤前傾角度は男性には年代差はなく、女性においてA群(17.5°)とB群(17.7°)がC群(13.7°)より有意に大きく、性差はA群(14.2°:17.5°)とB群(13.6°:17.7°)で女性が有意に大きかった。FTAは、男性には年代差はなく、女性においてC群(176.5°)がA群(174.5°)とB群(173.4°)より有意に大きく、性差はA群(178.1°:174.5°)とB群(176.7°:173.4°)において男性が有意に大きかった。以下の項目は交互作用を認めなかった。前捻角、Q-angle、膝伸展角度については、年代と性別に主効果を認めた。それぞれ、A群(10.6°、17.8°、180.8°)とB群(11.0°、19.0°、179.8°)がC群(8.3°、14.8°、176.5°)より有意に大きく、性差は女性が有意に大きかった(7.5°:12.3°、15.2°:19.1°、177.4°:180.7°)。NDTは性別に主効果を認め、男性が有意に大きかった(9.2mm:8.2mm)。骨盤傾斜角度、踵骨角度は有意差を認めなかった。【考察】年代比較の結果から、男性には年代による差がみられず、女性では60-70歳代に骨盤前傾角度が小さくなり、FTAが大きくなった。また、前捻角、Q-angle、膝伸展角度については男女含めた全体の平均として60-70歳代に小さくなっている。前捻角が小さいと股関節が外旋し、運動連鎖としてQ-angleは小さくなるため、以上の結果から、健常成人は60-70歳代に膝内反・屈曲傾向が強まり、特に女性では骨盤後傾と膝内反が強まることが示された。次に性差をみると、A群とB群において骨盤前傾角度は女性が、FTAは男性が大きく、C群では有意差を認めなかった。また、前捻角、Q-angle、膝伸展角度については、従来から言われている通り女性のほうが大きい結果を示した。そして、足部の回内程度を表すNDTは、男性のほうが大きい値であった。これらから、性差を比較すると男性は股関節外旋、膝内反・屈曲、足部回内位、女性は股関節内旋、膝外反・伸展位となっており、年代比較と同様、60-70歳代に女性の骨盤後傾、膝内反が強まることで、それ以前に存在した男女差がなくなったと考える。以上から、健常成人の場合、男性のみでは年代によって変化は現れないが、女性では60-70歳代に変化が現れることがわかった。特に骨盤前傾角度とFTAについては、女性特有の変化として注目する必要があると考える。また、男女含めた健常成人では股・膝関節に関連する項目が60-70歳代に変化しており、この年代がアライメントに変化が生じ始める重要な年代であると考える。【理学療法学研究としての意義】日本人における年代別間の骨盤と下肢アライメントを網羅して比較したデータはなく、健常成人における基礎データとなると考える。
著者
青木 啓成 児玉 雄二 小池 聰 長崎 寿夫 山岸 茂則 奥田 真央 谷内 耕平
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0312-C0312, 2006

【目的】長野県理学療法士会社会局スポーツサポート部では長野県高校野球連盟の依頼により、1999年より硬式野球大会のメディカルサポート(以下サポート)を開始し、2000年より全国高等学校野球選手権長野大会(以下長野大会)一回戦よりサポート体制を整備した。また、硬式・軟式の他公式戦のサポートも開始し、長野県の高校野球選手の傷害予防とコンディショニングに取り組んできた。今回は第87回硬式長野大会のサポート結果を分析し、1回戦からのサポート体制の必要性を明確にすることを目的とした。<BR>【長野県高校野球サポート体制】硬式は長野県下の6球場に、軟式は2球場に原則1日2名の理学療法士(以下PT)を配置し、硬式・軟式の長野大会・県大会サポートを行った。内容は選手への個別対応を原則とし、試合後のチームごとのクーリングダウンなどは行わなかった。参加PTはスポーツサポート部高校野球部門に登録した63名であり、大会事前研修は年2回実施した。研修は障害特性を考慮し、補助診断として肩関節の理学所見を中心に研修を行い、専門医の受診を推奨できるようにした。また、ストレッチ・テーピング等の実技研修も行った。<BR>【対象・方法】調査大会は、第87回硬式長野大会に参加した98校を対象とした。同大会のサポート結果を集計し、大会ベスト16前・後(以下B16前・後)の選手の利用状況と障害の特徴とサポート内容について調査し、大会期間中のサポート体制について検討した。<BR>【結果】球場のサポート室を利用した選手は延べ78名、同大会参加PTは延べ74名であった。全体のサポート実施時期は試合前22件、試合中16件、試合後39件で試合後の利用が多かった。症状は急性期41件、亜急性期20件、慢性期19件であり、主訴は安静時痛16件、運動時痛54件、疲労21件で急性期・運動時痛への対応が最も多い傾向にあった。利用・治療回数は1回が65件、2回10件、3回3件であった。障害部位は肩関節23件、腰背部12件、次いで肘関節、足関節、大腿・下腿の順に多い傾向であった。治療内容はストレッチ33件、テーピング29件、アイシング26件であり、コンディショニング指導が40件であった。B16前後で比較すると試合後利用は圧倒的にB16前に多く59%、主訴に関しては安静時・運動時痛に差はないものの疲労がB16前26%、B16後14%であった。<BR>【考察】選手の利用時期はB16前の利用者が圧倒的に多いことから、一回戦からのサポート体制の妥当性と重要性が示唆された。障害部位は過去の実績同様、肩関節、腰背部障害が多く、障害特性となっている。B16前の急性期症状・疲労が多いことは慢性・陳旧性障害が大会前に悪化、または再発している可能性も考えられる。以上により、的確なサポートを実施するために、補助診断としての理学所見が必要であり、さらには、大会期間中のみでないサポートやメディカルチェックの検討が必要であると考えられた。<BR>
著者
青木 一治 木村 新吾 友田 淳雄 上原 徹 鈴木 信治
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.197-197, 2003

【はじめに】腰椎椎間板ヘルニア(以下,HNP)患者の下肢の筋力低下は日常よく経験する。しかし,術後それらの筋力の回復過程に関する報告は少なく,そもそも筋力低下が回復するかどうか,どの程度の筋力低下なら実用段階まで回復の望みがあるのかなど,患者への説明に苦慮するのが現状であろう。今回,HNP患者の術後筋力回復経過を調査し,若干の知見を得たので報告する。【対象】手術目的で入院し,下肢筋力が徒手筋力テスト(以下,MMT)で4レベル以下であったHNP患者で,術後経過を観察できた35名(男30名,女5名)37肢,平均年齢40.7歳を対象とした。障害HNP高位はL4/5:25名,L5/S1:10名であった。HNPのタイプは,subligamentous extrusion(以下,SLE)10名,transligamentous extrusion(以下,TLE)17名,sequestered(以下,SEQ)8名であった。手術は全て顕微鏡下椎間板摘出術を行った。【方法】筋力測定は全てMMTで,各被験者につき同一検者が行い,前脛骨筋(以下,TA),長母指伸筋(以下,EHL),腓腹筋(以下,GC)および長母指屈筋(以下,FHL)の何れかに低下があるもので,術後筋力の推移をみた。追跡期間は最長6年で,平均11.1ヵ月であった。【結果】それぞれの筋で経過をみると,TAでは,3,4レベルのものは1ヵ月から6ヵ月の間に多くが回復していた。1,2レベルでは6ヵ月頃までには3,4レベルまで回復するが,その後5まで回復するものは少なかった。また,0の症例では1年経っても1レベルであったが,その後回復を始め,6年後には3レベルまで回復していた。EHLでも同様の傾向があり,1,2レベルのものは1年ほど経過を見ても3,4レベルの回復であった。GCでは,2レベルが境になっているようで,5まで回復するものと,大きな回復を見ないものがいた。FHLもGC同様の傾向であった。このように筋力の回復は,3,4レベルでは術後3ヵ月以内に回復するものが多いが,1,2レベルのものでは6ヵ月から1年の経過を要し,ある程度実用段階まで回復するが,長期間を要する。筋力の回復をHNPのタイプで比較すると,TA,EHLではSEQのもので著明な筋力低下を来しているものが多く,TLEでは0,1のものは予後が悪かった。一方GC,FHLはSEQでも術後の回復は良い傾向にあったが,GCの1,2レベルのものは筋力の回復をみないものもあった。【結語】術前の筋力と比較すると,何らかの回復をみたものが多かった。筋力の回復経過では,術前3レベル以上のものは数ヵ月で回復が期待できることが分かった。1,2レベルのものは,中には4,5レベルに回復するものもいるが,多くは4レベル未満の傾向が強く,完全な実用段階の回復ではなかった。
著者
真塩 紀人 平林 弦大 梅津 聡 小山 裕司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G1148-G1148, 2005

【目的】近年、在宅での吸引に関してヘルパーや家族が医療行為を行う事に対する可否が問われる中、病院の臨床でも我々リハビリスタッフ(以下、スタッフ)は、吸引に限らず日々患者の体調急変などの問題に直面する。そこで今回、医療安全管理の観点から、現場の声として如何にスタッフがこれらの不安要素を感じながら仕事をしているのかに着目し、また他職種への要望を含めアンケート調査を行ったので以下に報告する。<BR>【対象・方法】当院スタッフ50名を対象とし、経験年数も考慮した。無記名選択記述方式にて以下のアンケート調査を実施。1.呼吸リハビリなどをリハ室でも行いたいが、吸引の頻度が多い為病棟で実施している。2.糖尿病患者のリハ中、低血糖症状に遭遇したことがあるか。対応して不安はあるか。3.リハ室でバイタルサインの変化に苦慮したことがあるか。DrやNrsに助けて欲しいと思ったことはあるか。4.講習会など開いて欲しい事。Nrsなど他職種に教えて貰いたい事はあるか。<BR>【結果】有効回答率は96.0%。「はい」と回答した人数は、1.病棟で実施せざるを得ない7名(14.0%)であった。2.低血糖症状に遭遇し、不安はある14名(28.0%)であった。3.バイタルサインへの苦慮は、28名(56.0%)。また、職種別に見てもPT、OTに関しては25名(50.0%)で全体の半数であった。経験別に見ると1年目のスタッフに関して「はい」と回答したものが、1・2の項目で13.3%(2/15)と少数であった。経験2,3年目でも同様に1~2の項目に関して25%以下の結果となった。それに比し、4年目では項目3.で57%。5年目以上では1・2の項目で25%、3.で75%であった。<BR>【考察】日頃のリハビリ業務の中で、スタッフが苦慮している事が前述のアンケート結果から推察される。着目すべき点は、1.に関してはリスクを背負うより、病棟のDrやNrsの元でリハビリを行いたいという意見もあり、現状としてNrsに吸引などの医療処置に関して依頼せざるを得ないことが伺える。また、3.に関してはバイタルサイン(特に血圧)の変化に苦慮した経験があり、DrやNrsの指示を必要としている。また職種・経験年数に関係なく、一応に経験している。結果、全体の半数以上28名(56.0%)であった。一方、項目1・2に関しては経験年数が上がるごとに「はい」の回答が多い。当然、患者に接している期間・人数の差によると考えられる。他職種への要望としては、点滴関連・痰の吸引・人工呼吸器・急変時のリスク管理が主たる要望であった。今回の結果を通して、日常我々は職種・経験を問わず共通する意見や不安を抱えている事が分かる。しかしながら、業務として必要に迫られても施行可能な範囲に限定があるのも事実である。今後、リスク管理も含め知識の習得が必要と思われる。
著者
真塩 紀人 平林 弦大 吉田 真一 梅津 聡 沼澤 律子 高橋 佳子 篠塚 也寸
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.G0951-G0951, 2006

【目的】近年、医療事故や医療過誤が増える中、院内はもとより科内でもリスクマネージメントに日々取り組んでいる。我々理学療法業務に携わるスタッフの日常業務において、安全管理に配慮しながらも様々なインシデント・アクシデントは避け難い現状にある。当科ではインシデント・アクシデント発生後にレポートの記載を行っているが、その中で件数を占めた「確認ミス」「体調急変」「転倒・転落」「チューブ関連」項目に焦点を当て、その背景に関しスタッフの意識調査を実施し、傾向と関連性を把握して再発防止につながる対策案を検討したので、以下に報告する。<BR>【対象・方法】平成16年10月から平成17年10月までのスタッフからのインシデント・アクシデント報告書をまとめ、項目別分析(確認ミス、体調急変、転倒・転落、チューブ関連)、職種、経験年数のデータから関連性を検討した。また、スタッフに対して各項目ごとに今までの関与の有無、原因に加え、意識調査を無記名選択記述方式及び自由記載にて実施した。<BR>【結果】有効数は121件。PT関連は58%(70件)を占め、全体の経験年数では1年目が最も多く(38件;31%)、次いで2年目(24件;20%)、3年目(22件;18%)、4・5年目(各14件;各12%)、実習生(4件;3%)、以下6年目以上となり1年目から3年目で70%近く、経験の浅いスタッフの報告の比率が高い。項目別で最多数は、体調急変 26件(21%)、次いで確認ミス20件(17%)、転倒・転落19件(16%)。転倒に至らなかった9件を含め28件(23%)、チューブ関連16件(13%)。以上の項目で、スタッフが居ながら生じた事例によるものは、「確認ミス」19件、「チューブ関連」11件、「転倒・転落」21件であり、「体調急変」では待ち時間やリハ中に突如生じたケースが殆どである。<BR>【考察】当リハ科スタッフのインシデント・アクシデントの背景に共通した要素として、「危険回避および予見能力の不足によるもの」と、「突発な体調不良といった予見不可能なもの」とに分類された。特に注目すべきは各項目ごとに1から3年目のスタッフの占める比率が高く70%を超えており、実習生からの報告もある。「確認ミス」においては、スタッフ自身が事前に防げた事例が半数以上で、患者自身に拠る事は少ない。「チューブ関連」では、移乗動作時に管を抜去する事例が殆どである。「転倒・転落」に関しては、側を離れた、階段練習時、移乗時で発生頻度が高い。背景に、経験不足により患者の身体特性・能力の把握や観察不足が関わっていると考える。更には、経験如何に関わらず不可抗力的なものもあると考える。危うい状況を察知し、患者の日々の状態変化を見て事故を未然に防ぐ能力を身に付けることは、経験により養われることが多いと考えられる。そこでスタッフへリスクを重視した十分な教育を行ない、個々のリスク管理に対する意識・対応能力を高める事が望ましいと考える。<BR>
著者
高村 元章
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Eb0609-Eb0609, 2012

【目的】 入院期間中を寝たきりの状態で経過し、施設や在宅などの環境に移ってから回復の方向へ転じる高齢患者に、ときとして遭遇することがある。その長い回復までの道のりにおいて、本人やその家族がどのような気持ちを抱きながら過ごしてきたかを調査した研究報告は少ない。そこで、本研究ではかつて寝たきりの状態を経験し、その状態からさらなる回復へと変化した事例を対象に、回復につながった背景要因の模索を目的として、半構造的インタビューによる聞き取り調査を実施した。それらのデータの分析において、寝たきり状態となった肉親を支える過程で生じた家族が直面した心理的不安要因の抽出と、それに対する医療専門職としての配慮すべき点について考察したので以下に報告する。【方法】 対象者の選定にあたっては、これまでに寝たきりの状態を6ヶ月以上経過し、調査時点においてその状態が改善されたか、または改善過程にあり、本研究の趣旨に同意が得られた2組の高齢者とその家族を対象とした。事例1および事例2ともに、70歳代の男性で、現在、妻と共に在宅で生活している。事例1は、アルコール依存による精神障害や重度の肝機能障害など11種類の病名を有し、病院から特別養護老人ホームを経て、退所後3年6ヶ月が経過していた。障害高齢者の日常生活自立度判定基準(以下、寝たきり度)では、ランクB2からJ1へ、要介護度は4から 要支援1へと変化し、現在はシルバー人材センターからの依頼業務等もこなせる状況にまで回復している。事例2は、結核で入院中に脳出血を発症し、回復期の病院を退院後5年5か月が経過していた。寝たきり度はランクC2からB2へ、要介護 5から4へと軽快し、現在移動の中心は車椅子であるが、週2回のデイサービスでは歩行練習に励み、他の利用者と共にカラオケを楽しんでいる。聞き取り調査の分析は、ICレコーダーに録音した音声データより逐語録を作成し、それらのデータをもとにコード化、カテゴリー分類等の質的研究の手順に準じて、その要因を分析した。今回、分析の基本として、グランデッド・セオリー(Grounded Theory Approach)の考え方を受けたロング・インタビュー法(The Long Interview)を採用した。【説明と同意】 倫理上の手続きとして個人情報の保護に関する法律(法律第57号)と「疫学研究に関する倫理指針」(文部科学省・厚生労働省)に基づく同意書を作成し、本人ならびにその家族に対して十分な趣旨の理解と同意を得たのちに実施した。また、インタビュー中の会話の録音についても、事前に確認をとり録音の了解を得た上でインタビュー調査を実施した。【結果】 一連の分析手順を踏み、最終的に事例1では7つのカテゴリーと27個の註釈が得られ、事例2では7つのカテゴリーと25個の註釈が得られた。それらのうち2つの事例に共通するカテゴリーとしては、「楽しみ」、「人との交流」、「役割」、「医療や福祉環境への懐疑と不満」の4つのカテゴリーに集約されたが、家族からの声が強く反映されていたのは「医療や福祉環境への懐疑と不満」と「人との交流」の2項目であった。【考察】 家族が抱える心理的不安要因としては、「医療や福祉環境への懐疑と不満」のカテゴリーに反映されている。これは病院入院中に日常的に行われている医療者側からの無配慮な予後の告知に起因しており、2つの事例ともに今後、永続的に寝たきり状態になるとの宣告を受け、酷く落胆したという。その後も様々な専門職から「寝たきり患者」としての偏った扱いを受け続け、家族の心の傷は深まり、心理的不安は益々拡がっていたものと考えられる。しかし、その後のさらなる経過の中で、寝たきり状態から回復へと転じたという事実を振り返り、家族の気持ちはいつしか医療環境や専門職に対する懐疑や不満という形に転化されていったものと考える。その一方で、施設や在宅に移ってからの回復を後押ししたのは「人との交流」というカテゴリーに反映されており、施設職員や訪問にかかわる専門職との交流とその対応の良好さが回復につながったと感じていた。つまり、専門職は対象者や家族が抱えている心の傷という点についても、もっと敏感になるべきであり、そのかかわりを通じて心のケアにも十分配慮した対応が必要であると考える。【理学療法学研究としての意義】 寝たきり状態となった対象者およびその家族は、長い経過において多くの専門職の対応や環境変化を通じて、様々な心理的不安要因を抱えている。本研究では、理学療法士が日常の煩雑な業務環境を乗り越えて、対象者や家族への心のケアにも配慮した専門職としてのかかわり姿勢をもつことの重要性を喚起した質的研究として意義があるものと考える。
著者
岡本 恵子 井上 美智子 大政 里美 新井 志津子 山口 美穂 錦織 絵理 川崎 光記
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1171-E1171, 2007

【はじめに】軽度運動機能障害児(以下、軽度児)は、運動制限や学習の遅れに加え、ソーシャルスキル獲得や自我発達の遅れの課題も抱えているが、運動機能以外の課題に対する支援や周囲の障害理解が不足している。この結果、集団の中で自分を認められる経験や達成感を積めず、小学校高学年頃から孤立することが多くなる。当センターでも、学校の中で自己実現できない学童児が多いことが個別治療を通じて見えてきた。<BR> よって今回、軽度児が集団の中で認められる経験を積み、学校の中で主体的な生活を送れるように、「わいわいクラブ」を立ち上げ、集団による生活支援に取り組んだので報告する。<BR>【目的】軽度児同士の仲間を作り、集団の中で自己実現ができるように支援する。集団の中で軽度児の課題を明確化し、主体的に生活する力を蓄えられるように支援する。<BR>【対象】小1~小6の応用歩行から杖歩行可能な軽度運動機能障害児11名。地域の小学校に通い、知的障害の程度も軽度。<BR>【支援内容】月に1回、放課後に1.5時間のクラブを開催。活動は、楽しくて達成感を積めるもの・集団や仲間を意識しやすいものとし、1年目はクッキング、2年目は太鼓の演奏を行った。1回の内容は、ウォーミングアップのゲーム→メインの活動→クールダウンのおやつタイム。支援スタッフは、保育士6名とPT1名。<BR>【支援経過】第1に、環境設定と精神的サポートを支援の土台とした。環境設定として、活動中の姿勢変換を減らし楽な姿勢で活動に集中できるようにした。説明や指示は単純明確にし絵や具体物も提示して、内容を十分に理解した上で活動を開始した。精神的サポートとして、自分なりにやってみることが大事だと伝え、その後に認められる嬉しさを実感できるようにした。これらの結果、苦手意識を持たず十分に達成感を積め、受身ではなく積極的に活動参加できる児が増えた。<BR> 第2に、発表や意見交換の場を設け集団意識が芽生える工夫をした。集団の中で自分について話すことから始め、徐々にクラブの仲間について発表するテーマに変えていった。すると、自分中心の言動が多かった児が、友達にも目を向け周囲の状況に沿った言動をとることが増えた。<BR> 第3に、チーム制の活動を通じ集団の中で主体性を引き出す工夫をした。チームで一人ずつに役割を作り、相談し工夫する場面も設けた。この積み重ねにより、大人の介入が減り児同士で活動を展開することが増えた。<BR>【まとめ】今回の支援を通じて、児が自分を出せる場・自信を持てる場を作ることが必要だと分かった。今後は、低学年児には精神発達のサポート・高学年児にはソーシャルスキル獲得という生活年齢課題別の支援を工夫することが課題である。<BR> また、生活支援をするには個別治療だけでは限界があり集団での取り組みが重要であると実感した。今後も、軽度児に関わることの多いPT自身が広い視点を持ち、集団による生活支援に取り組んでいきたい。
著者
浅川 康吉 遠藤 文雄 山口 晴保 岩本 光一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.E1129-E1129, 2006

【目的】デイサービス施設は通所リハビリテーション施設のひとつとして介護予防機能を担っている。本研究の目的はデイサービス利用者への簡易運動プログラム提供が利用者の要介護度の維持あるいは改善に与える効果を明らかにすることである。<BR>【対象】群馬県鬼石町デイサービスセンター利用者のうち、簡易運動プログラム参加のためのコミュニケーション能力などを勘案して34名に本研究への参加を呼びかけた。このうちデイサービス利用時にほぼ毎回簡易運動プログラムに参加した者22名を簡易運動プログラム参加群、中断あるいはほとんど参加しなかった者12名を対照群とした。中断や不参加の理由が明確な者は5名で認知症の悪化などであった。簡易運動プログラム参加群の構成は男3名、女19名で、研究開始時における年齢は84.4±8.0歳であった。対照群は男4名、女8名で、年齢は86.3±7.1歳であった。要介護となった主要な原因疾患は両群ともに運動器疾患がおよそ半数を占め、他に脳梗塞や認知症が多くみられた。<BR>【方法】平成14年7月から平成16年5月までの約2年間にわたりデイサービス利用時に簡易運動プログラムを提供した。簡易運動プログラムの内容は坐位での膝伸展と上肢挙上および立位での足底屈(背伸び)と股外転の4つの種目を15分程度かけて行うものであった。運動指導はデイサービススタッフが行い、運動が困難な参加者には適宜介助を行った。簡易運動プログラム提供の効果は提供開始時(平成14年7月)と提供終了時(平成16年5月)との2時点間における要介護度の変化により判定した。統計学的検定にはカイ二乗検定を用い、有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】簡易運動プログラム参加群における提供開始時の要介護度は要支援が8名、要介護度1が11名、要介護2が3名であり、提供終了時はそれぞれ5名、15名、2名であった。要介護度が維持あるいは改善できた者は18名で、悪化は4名であった。対照群における提供開始時の要介護度は要支援が4名、要介護度1が3名、要介護2が2名、要介護3と4が計3名であり、提供終了時には要支援はゼロ、要介護1が5名、要介護2が2名、要介護3と4が計5名であった。要介護度が維持あるいは改善できた者は4名で、悪化は8名であった。カイ二乗検定の結果、運動プログラム参加群は対照群に比べて維持あるいは改善された者が有意に多かった(P=0.01)。<BR>【まとめ】デイサービス利用者に簡易運動プログラムを提供することは、利用者の要介護度を維持あるいは改善する効果があると考えられる。
著者
今井 克敏 相田 祐樹 塩崎 浩之 巳亦 圭子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1110-E1110, 2007

【はじめに】<BR> 平成18年度の診療報酬改定により,地域連携クリティカルパス(以下連携パス)による医療機関の連携体制が評価されることとなった.当院では,平成18年4月より,大腿骨頚部骨折術後の連携パスを地域医療機関と協力して導入している.今回,連携パスの導入前と導入後のデータを使用して,その効果と今後の課題を検討したので報告する.<BR>【対象・方法】<BR> 対象は,連携パス導入前(平成17年1月~12月)に手術目的で当院に入院された大腿骨頚部骨折患者44名(平均年齢79.2歳,男性15名,女性29名,人工骨頭置換術19名,骨接合術25名)と連携パス導入後(平成18年4月~11月)に入院された患者36名(平均年齢79.7歳,男性8名,女性28名,人工骨頭置換術15名,骨接合術21名)とした.方法は,カルテ及び連携パス用紙の記録から,在院日数,連携パス使用数,退院時の生活状態を調査した.<BR>【結果】<BR> 大腿骨頚部骨折術後の平均在院日数は,導入前が35.1日,導入後は24.9日(連携パス使用は,18.2日)であった.連携パス使用数は36名中17名(46%)であった.パス非使用の理由としては,予後良好にて転院の必要がない(2名),既往疾患の加療が必要(4名),本人・家人の希望(6名),その他(1名)であり,当院での治療が選択された.また,連携パスを使用していない施設への転院が6名あった.連携パスが終了した患者は平成18年11月8日時点で7名おり,いずれも受傷前生活に近い状態で退院されている.<BR>【考察】<BR> 連携パスを使用することで平均在院日数の短縮が可能となっている.しかし,連携パスの使用は全体の半分以下であり,この原因として後方支援施設が2箇所だけであること,早期転院の意義について患者に十分な説明がされていないことが考えられる.現時点ではパスの使用期間が短く,連携パスの完結例はまだ少ない状態であるが,退院した患者のほとんどが受傷前生活獲得という目標を達成できている.この結果は,転院先施設での訓練継続の成果と考えられる.<BR>【まとめ】<BR> 連携パスの導入により,在院日数の短縮がみられた.また,転院した患者は受傷前生活獲得という目標を達成して退院することができている.今後の課題としては,連携パスに参加していただける医療機関を増やすこと,転院の意義について十分な説明を患者に行うことで,パスの使用数を増やしていきたいと考える.<BR>
著者
朝山 信司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0630-A0630, 2008

【はじめに】Timed Up & Go(以下TUG)テストは、総合的なバランスを評価するパフォーマンステストとして用いられている。椅子から立ち上がり、前方の目標物まで歩いて回転して戻り、椅子に座るという複合的な動作に要する経過時間で評価されている。多様な要素を簡便に評価できるメリットは大きいが、一連の動作をまとめて評価しているために、それぞれの要因につての検討ができていない。そこで本研究では、このテストにおいて要素の違いにより動作を分け、それぞれにおいて健常者と脳卒中片麻痺者の違いについて検討した。<BR>【対象】脳血管障害による片麻痺者で、独歩にて室内歩行が可能な6名と50歳以上の健常者6名を対象とした。測定に関する指示理解に問題のある者は除外された。<BR>【方法】対象者には本研究の参加において、趣旨および内容について予め説明し同意を得た。TUG テストでは、椅子に座位をとり、「スタート」の合図にて立ち上がり、前方に歩き出し3メートル先に置かれた目標物を回って引き返し、椅子に戻って座るという一連の動作の経過時間を測定した。測定中の様子は側方にDVDカメラを設置して撮影し、測定後、動作を1) 立ち上がり期2) 往路歩行期 3) 回転期 4) 復路歩行期 5) 着座期 の5つの相に細分化し、それぞれの動作にかかった時間について映像をコマ送りして正確に導き出した。<BR>【結果】TUGテストにおける健常者の所要時間は 12.33±1.01秒、一方片麻痺者の所要時間は 15.51±2.52 秒で健常者よりも有意に長くかかっていた(p<0.05)。各相における比較をしたところ、回転期と着座期において片麻痺群が、健常者群より有意に長くかかっていた(p<0.05) 。立ち上がり期、往路歩行期、復路歩行期については片麻痺群が健常者群より時間が長くかかっていたものの有意差はみられなかった。<BR>【考察】本研究に参加した対象者は脳血管障害による片麻痺者であったものの、独歩による室内移動が可能な機能障害は軽い者であった。しかしTUGテストにおける所要時間において健常者よりも有意に長い時間がかかっていたことから総合的なバランス能力は低下していたと考えられる。動作の違いについて検討すると健常者と片麻痺者間で回転期と着座期に結果の有意な違いがみられた。この2つの動作はTUGの一連の流れの中でスピードを減速させて動きをコントロールする要素を含んでいる。一方それ以外の動作においては運動を開始して動きを加速する起立期や安定した移動を続ける往路と復路の歩行期には有意差はみられなかった。これらのことから片麻痺者では、減速して動きをコントロールする要素の強い動作において、その遂行の難易度が増したためにパフォーマンスが低下したのではないかと考えられる。よって片麻痺者は日常動作の中でも歩行時の方向変換や椅子に座るなどの減速しながら動きをコントロールするような動作により注意することが重要と考えられた。<BR><BR><BR>
著者
鶴卷 俊江 前島 のりこ 丸山 剛 岸本 圭司 清水 朋枝 石川 公久 吉田 太郎 江口 清
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.B3P1298-B3P1298, 2009

【はじめに】現在、脳性麻痺失調型の診断でフォローしているが、幾多の臨床所見より進行性疾患が疑われる患者を担当している.今回、麻痺性側彎症の術後リハビリテーション(以下リハ)を経験する機会を得たので、若干の考察を加え以下に報告する.<BR>【症例】14歳 女児 特別支援学校寄宿舎生活中.身体機能は側彎症、鷲手様変形、Joint Laxityあり.GMFCSレベルIII.移動は施設内外車いす自走、自宅内では殿部いざり.両側感音性難聴のため、コミュニケーションは手話および読唇法にて実施.<BR>【現病歴】1歳3か月、発達遅滞指摘され来院.脳性麻痺失調型の診断にて理学療法開始.独歩3歳.小学4年生で凹足に対し手術施行.以後介助歩行レベルとなり車いす併用.中学2年まで歩行器見守りまたは一側腋窩介助での歩行レベルであったが、徐々に歩行能力低下および脊柱側彎増悪.本年2月側彎症の手術実施.<BR>【経過】FIMで術前94点、術後53点、現在91点とセルフケア・移乗・移動で変動がみられた.中でも最大の問題点は、退院後の学校・寄宿舎生活での介助量増大であった.そこで連絡ノートや訪問による環境調整などで教員と連携をとり動作および介助方法の変更を検討・指導した.今回、術後一時的に動作能力は低下したが、退院後週3回の外来リハの継続により動作の再獲得に至った.また、生活の中心である学校・寄宿舎生活を支援する教員・介助員等との連携によりスムースに日常生活に復帰することが出来た.しかし、その反面歩行能力の改善に時間を要し、術後8カ月現在においても介助歩行は困難.訓練レベルの歩行であるため、学校内での安全性を考慮し歩行器をメイウォークに変更した.なお、13年間の経過をカルテより後方視的にGMFMを用い比較すると、9歳時58.09点から現在44.79点、GMFCSレベルも_II?III_へ悪化していた.<BR>【考察】経過からFriedreich失調症が疑われる症例である.脊髄小脳変性症など失調症に対するリハは機能維持だけではなく改善効果もあることが報告されている.本症例も術前生活と同程度まで改善が認められた.しかし、症状は徐々に増悪し、安全に学校生活を送ることは困難となってきている.今回は学校との連携により、リハと同一方法で日常生活動作を行うことで動作再獲得の時間は短縮出来、さらには日常生活の汎化につながったと推察する.教育との連携により達成できたと思われる.さらに、本児が進行性疾患であれば、今後どのように本人家族を支援していくかが課題となる.学校という集団生活の中でどこまで活動させることが良いことなのか、学校での支援体制、本人家族の願い、客観的機能および環境評価を考慮した上で現在の連携をすすめていくことが肝要と推察する.
著者
山口 賢一郎 丸岡 弘
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.DbPI1372-DbPI1372, 2011

【目的】肺炎は本邦における死亡原因の第4位であり,高齢になるほど死亡率は上昇する.また肺炎が治癒しても,二次的な身体機能の低下は著しく,日常生活動作(以下,ADL)の低下を避けられない症例も多い.理学療法分野における肺炎症例を対象とした報告には,ADLの低下や入院期間,再入院率に関する因子の検討がなされており,早期介入の重要性が示されている.しかし,臨床データに基づく重症度別,合併症有無別の離床の特徴や遅延因子,標準的な理学療法介入プログラムの検討については明らかでない.そこで本研究の目的は,前方視的な臨床データの収集・分析により,市中肺炎診療ガイドラインで用いられる重症度分類を用いた離床の特徴・傾向性を明らかにする.そして離床に関わる遅延因子の抽出や肺炎症例における理学療法の介入時期に関わる検討を行うこととする.<BR>【方法】対象は,平成22年6月から10月までの間にA病院(以下,当院)内科病棟に市中肺炎の診断で入院加療を要し,安静臥床から離床を目的に理学療法介入があった17症例とした.入院前ADLがベッド上のみである症例は除外した. 臨床データは,診療録や検査データより前方視的に収集した.測定項目は,基本情報(年齢,性別,身長,体重,BMI),Functional Independence Measure(以下,FIM)による ADL評価,Pneumonia Severity Index(以下,PSI)による肺炎の重症度(合併症の有無を含む),臨床検査所見(腎機能:Cre・BUN,心機能:LVEF・BNP,造血機能:Hb・Hmt,栄養状態:Alb・TP,炎症値:CRP,WBC血液ガス:P/F ratio),画像所見,臨床所見(喀痰,人工呼吸器使用の有無),経過期間(安静臥床期間,端坐開始期間,車椅子乗車開始期間,抗生剤開始期間)とした.臨床検査所見,画像所見は医師の指示のもと検査技師,放射線技師により実施された.理学療法介入は,主治医が定める安静度に準じ,中止基準を統一した.プログラムは,呼吸理学療法(排痰介助,胸郭可動域練習),四肢・体幹のリラクセーション・ストレッチ,筋力維持・改善練習,基本動作練習(寝返り,起居移乗動作練習),座位耐久性練習を実施し、中止基準に準じて可及的速やかな車椅子乗車獲得を目指した. 離床を決定するアウトカムは,Mundyらによる先行研究より,「入院から連続して20分以上の車椅子乗車が可能となるまでの期間(以下,離床期間)」とし,重症度による離床の特徴や測定項目より遅延因子を統計学的に抽出した.統計には,統計ソフトSPSS15.0Jを用いて,離床期間と各測定項目との相関関係(Spearmanの順位相関係数)と,離床期間の中央値により早期離床群・遅延群とに分け,群間比較(Mann-WhitneyのU検定,χ<SUP>2</SUP>独立性の検定)を行った.いずれも有意水準は5%(p<0.05)とした.<BR>【説明と同意】対象者,もしくは代理人に研究の目的・方法を書面,口頭にて説明し,署名にて同意を得た.また倫理的配慮に関しては,ヘルシンキ宣言に則った当院倫理委員会の承認を得た.<BR>【結果】対象者のPSIは,class III:4例,class IV:3例,class V:10例であり,それぞれの離床期間は6.8±2.2日,9.0±5.0日,18.0±11.4日であった.離床期間と各測定項目との検定では,安静臥床期間(r=0.64,p<0.01),端坐開始時期(r=0.54,p<0.05),PSI(r=0.59,p<0.05),motor FIM低下率(r=0.66,p<0.01)において,有意な正の相関が示された.また早期離床群,遅延群との比較では,両側肺野の浸潤影(p<0.01),腫瘍性疾患の合併(p<0.05)が独立した遅延因子として示された.その他の基本情報,臨床検査所見に有意差は見られなかった.<BR>【考察】本研究では,上記測定項目において離床期間との相関を示した.前本らは,高齢肺炎症例のADL低下に影響を与える因子に,安静臥床期間,重症度,精神症状及び誤嚥を挙げ,早期からの理学療法介入による離床の重要性を示しているが,本研究においてもこれを支持する結果となった.また離床期間に関連していると思われた臨床検査所見に有意差が見られなかったことから,理学療法開始の判定指標としての各種臨床検査所見は,リスク管理下での早期介入の妥当性を示唆するものと考えらえた.当院での肺炎症例における理学療法介入時期は7.8±6.1日と個人差が大きく,瀧澤らよって示された早期介入(1.9±1.3日)と比較して差があることから,今後は本研究での遅延因子(両側肺障害,腫瘍性疾患の合併)を含めてハイリスク症例をスクリーニングし,中長期的な予後も含めた早期介入効果の検討を行うことが課題である.<BR>【理学療法学研究としての意義】臨床データの前方視的蓄積によって重症度別の離床の特徴や早期離床の遅延因子を示すことは,エビデンスに基づく離床基準,標準的理学療法プログラム作成の一助となりうる.
著者
井上 義文 居倉 裕子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI1400-EbPI1400, 2011

【目的】<BR> 当施設では、理学療法士の個別の関わり方には限界があるため、より多くの利用者にリハビリテーションを提供するために、集団体操を行っている。集団体操は、画一的かつマンネリ化しやすいという側面があるため、これの活性化を図るために、平成21年8月より音楽を取り入れた集団体操を試みた。今回は、集団体操に音楽を介入させたことによる利用者の参加状況の変化について報告し、集団体操の特性および可能性について考える機会としたい。<BR><BR>【方法】<BR> 入所者に対し、運動機能の維持・向上および運動機会の確保を目的に行っている集団体操(2回/週、20~30分/回)に、音楽を介入させる。音楽の介入方法は、以下の通り。理学療法士1名は、インストラクターとする。季節感や記憶に作用するような話を交えながら、運動量を調節しつつ、集団体操の進行役を務める。もう1名の理学療法士は、運動の動きやテンポに合わせ、利用者の反応に応じたピアノ伴奏を行う。体操中の伴奏は、運動の動きやテンポに合わせた伴奏と、利用者の好みに合わせたものや季節感をとりいれた曲を演奏し、利用者が歌いながら体操をする場面もある。使用器具として、電子ピアノ(カシオ社製Privia PX-120)を用いた。集団体操への参加状況については、各階毎に、音楽導入前後の10回について、利用者の反応を「自発的に参加」「促しにより参加」「拒否」「無関心」の4つに分類し、比較した。また、集団体操に関わったことのある介護職員を対象に、音楽導入前後の利用者の集団体操時の様子について、アンケート調査を行い、「良くなった」「変わらない」「悪くなった」から答えを一つ選択し、また、気づいた点を自由記載してもらった。<BR><BR>【説明と同意】<BR> 利用者・家族には、リハビリテーション実施計画の説明とともに、本研究について十分な説明を行い、同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR> 2階入所者(平均要介護度;3.1)は、10回の延べ参加人数合計は、音楽導入前:218人、音楽導入後:248人。音楽導入前の反応は「自発的」:142人・65.1%、「促し」:41人・18.8%、「拒否」:13人・6.0%、「無関心」:22人・10.1%。音楽導入後の反応は「自発的」:179人・72.2%、「促し」:32人・12.9%、「拒否」:12人・4.8%、「無関心」:25人・10.1%。職員アンケートの結果は、「良くなった」:9名・81.8%、「変わらない」:2名・18.2%、「悪くなった」0名・0%であった。3階入所者(平均要介護度;3.6)は、10回の延べ参加人数合計は、音楽導入前:291人、音楽導入後:278人。音楽導入前の反応は「自発的」:151人・51.9%、「促し」:61人・21.0%、「拒否」:25人・8.6%、「無関心」:54人・18.5%。音楽導入後の反応は「自発的」:168人・60.4%、「促し」:50人・18.0%、「拒否」:21人・7.6%、「無関心」:39人・14.0%。職員アンケートの結果は、「良くなった」:12名・100%、「変わらない」:0名・0%、「悪くなった」0名・0%であった。以上の結果から、概ね、利用者の反応が良い方向へ変化したことが確認できた。<BR><BR>【考察】<BR> 昨今、高齢者が音楽で得られる効果には、様々な報告がある。それは、身体的、生理的、心理的、社会的(対人)なプラス効果である。今回、集団体操にピアノ伴奏を取り入れたことで利用者の反応が良好となり、参加状況が改善した。これは、ピアノ伴奏の意味合いは、バック・グラウンド・ミュージック的なことではなく、利用者の反応や体操の内容に合わせてピアノ伴奏することが、利用者の興味をひき、このような結果につながったと思われる。また、随時、テンポや音の強弱の調整が可能であるため、体操の内容にメリハリがつき、利用者が最後まで集中して参加したり、歌に合わせて体操したりすることで、あまり疲労感を感じることなく、運動量を確保できた。コミュニケーションの観点からも、音楽を介入させることにより、理学療法士側の非言語メッセージ(顔の表情、声の表情、身ぶり等)が強調され、利用者と良好な関係性を築き、活気ある集団体操となった。当施設の「集団体操」の主目的は「より多くの利用者を対象に、身体機能維持・向上のために、効率よく効果的に運動させること」であったが、音楽を取り入れたことにより、様々なプラス効果が得られ、体操の内容だけではなく、導入や進行方法も再考するいい機会となった。今後も、理学療法士の専門性、音楽のもつ特性、そして集団体操という環境条件を生かしながら、今後は当施設のオリジナルとなるよう、さらに工夫を重ねていきたいと思う。<BR> <BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 音楽を介入させることで、集団体操を活性化することが出来た。音楽の特性を生かしながら、理学療法士の専門性を発揮することの重要性が伺えた。
著者
荻原 啓文 荒木 海人 上村 麻子 金内 理江 江口 勝彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CdPF2042-CdPF2042, 2011

【目的】<BR> 野球やサッカーなどでは,ガムを噛みながら競技を行っている選手を見ることがある.ガム咀嚼が脳血流量を増大させる,あるいはガム咀嚼により覚醒水準が上昇したなどの報告があるが,その結果として運動パフォーマンスにどのような変化をもたらすのであろうか.本研究の目的はガム咀嚼が単純反応時間に及ぼす影響を明らかにすることである.先行研究から,中枢神経への影響であるると推察される.我々は,「反応時間,なかでも中枢神経処理過程を反映しているといわれているpremortor time(以下PMT)を短縮させるのではないか」という仮説をもとに,ガム咀嚼時の,光刺激に対する単純反応時間を検討した.<BR>【方法】<BR> 対象は健常若年成人男性20例(平均年齢22.1歳±1.4)であった.条件1)何も口に含まない,条件2)ガム(エクササイズ・キシリトール ロッテ社)咀嚼,の二条件で光刺激に対する膝伸展を課題として単純反応時間の測定を行った.被験者を足底が床に着かない高さで背もたれつきの椅子に座らせ,右踵部と椅子脚前面に電極を付け右膝関節伸展運動の指標とした.さらにEMGシステムPTS137(Biometrics社)を用い右側大腿直筋より筋電図を導出した.被験者の右前方に配置した光刺激装置の発光部から予告合図なしで単色光を発光させ,刺激に対し素早く膝関節を伸展させた.光刺激,筋電図,関節伸展運動の信号を同期させA/D変換器PowerLab16/30(ADInstruments社)を経由しパーソナルコンピューターに取り込んだ.また,条件2では先行研究に従い,鼓膜温をガム咀嚼前と咀嚼10分後に測定し,脳血流量の指標とした.条件1,2の測定順序はランダム配置にて行った.光刺激から関節運動が起こるまでの時間を反応時間(reaction time,以下RT),光刺激から筋活動が生じるまでの時間をPMT,筋活動から関節運動が起こるまでの時間をmortor time(以下MT)とした.<BR> 得られたデータは,統計解析ソフト(JMP5.0.1,SAS Insti.)を用い,単純反応時間は条件1,2について,鼓膜温はガム咀嚼前後での測定値について,それぞれ対応のあるt-検定を用い分析した.有意水準は5%とした。<BR>【説明と同意】<BR> 対象は,本研究の目的・方法・参加による利益と不利益などの説明を十分に受け,全員自らの意思で参加した.また,本研究は本学研究倫理委員会の規定に基づき,卒業研究倫理審査により承認され実施した.<BR>【結果】<BR> RTは条件1(180±20msec),条件2(177±18msec)と,条件間による有意な差はなかった(p=0.68).PMTは条件1(117±17msec),条件2(112±18mesc),MTは条件1(63±16msec),条件2(65±15msec)と,それぞれ条件間による有意な差はなかった(p=0.84,p=0.27).鼓膜温は,条件1(摂氏35.6度±0.4),条件2(摂氏35.8度±0.4)と,条件間に有意な差を認めた(P=0.003).<BR>【考察】<BR> 一般に鼓膜温は脳循環の内頚動脈温を反映する深部体温であるとされている.塩田<SUP>1)</SUP>はガム咀嚼は脳血流量を増加させ,覚醒レベルを上げると報告している.本研究では,ガム咀嚼前に比べ咀嚼後の鼓膜温は有意に上昇したことから,脳血流量が上昇したと考える.<BR> 一方,条件1と条件2の単純反応時間に有意な差は認められなかった.佐橋<SUP>2)</SUP>は,「ガム咀嚼は認知的機能を亢進させ,反応時間の短縮をさせると考えられる」と報告している.また,佐藤<SUP>3)</SUP>は,光と音刺激による「ジャンプ動作」および「ボタン押し」課題による身体運動反応時間について報告しており,ガム咀嚼前後で差は無かったとしている.本研究でも脳血流量は増加したものの,RT,PMT,MT共に短縮しなかった.<BR> 本研究の結果より,ガム咀嚼は脳血流量は増加せしめるが,反応時間は短縮させないことが明らかになった.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> ガム咀嚼による運動パフォーマンスへの影響を明らかにすることにより,スポーツ競技のみならず,広く応用できる可能性がある.<BR>【文献】<BR>1) 塩田正俊・他:ガム咀嚼による脳覚醒が運動パフォーマンスに及ぼす影響,体力科学. 58(6) : 852, 2009.<BR>2) 佐橋喜志夫:ガム咀嚼が事象関連電位に及ぼす影響,歯科基礎医学会,46(2) : 116-124, 2004.<BR>3) 佐藤あゆみ:ガム咀嚼が身体運動反応時間へ及ぼす影響,東京歯科大学歯科衛生士専門学校卒業研究論文集,20, 2008.
著者
川崎 永大 富樫 結 小林 武司 佐藤 惇司 山本 優一 藤田 貴昭 蛯名 葉月 大河内 香奈 佐藤 達夫 大槻 剛智
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EbPI1421-EbPI1421, 2011

【目的】<BR> 日本人の死亡因子の上位である脳卒中は、心筋梗塞の発症率と比較し高い罹患率にある。また、脳卒中後の後遺症は健常者と比較し転倒リスクを高めるため、内・外的因子を踏まえた上で介入方法を随時検討する事は周知の通りである。<BR> 脳卒中後の後遺症により歩行障害を呈した対象者の足関節背屈機能の低下は特徴的で、歩行能力低下の一因子となる。麻痺側下肢の足関節背屈機能の低下は、麻痺側立脚期の前方推進力を非効率的なものとし、健側下肢は各動作において多彩なパフォーマンスが要求され努力的な歩行を強いられる。<BR> そこで、本研究では慢性期脳卒中患者を対象とし、足関節背屈機能の代償が期待される転倒予防靴下の有効性をこの場にて検証した。<BR>【方法】<BR> 慢性脳卒中患者7名(年齢62~86歳 男性4名 女性3名 発症期間3.0±1.2年 Stroke Impairment Assessment Set平均52±9点)を対象とした。明らかな高次脳機能障害や足関節拘縮が認められず杖を用いれば監視下にて歩行可能な対象者とし装具は装着していない。<BR> 検査者は対象者の10m最大歩行を自覚的な疲労に応じ1~3回実施し、裸足、市販靴下+ルームシューズ、転倒予防靴下+ルームシューズの3条件で異なった歩行様式から歩行時間と歩数を記録した。<BR> 統計処理として対象者の歩行時間と歩数をFriedman検定および多重比較試験(Bonferroniの不等式)にて統計処理を行い有意水準は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> すべての対象者には、慢性期脳卒中患者を対象とした研究と説明した上でヘルシンキ宣言に則り書面にて同意を得ることができている。<BR>【結果】<BR>10m最大歩行は平均値にて裸足22.8±10.4秒、市販靴下+ルームシューズ22.8±9.3秒、転倒予防靴下+ルームシューズ18.7±9.3秒となり、裸足と転倒予防靴下+ルームシューズの間に有意差が認められた(p<0.01)。平均歩数は裸足28±4歩、市販靴下+ルームシューズ28±5歩、転倒予防靴下+ルームシューズ27±5歩となり裸足と転倒予防靴下+ルームシューズの間で有意差が認められた(p<0.01)。<BR>【考察】<BR> 片麻痺患者の歩行特性の一つとして、歩行時の足関節背屈機能の低下が問題とされる。転倒予防靴下は健常成人を対象とした研究において、歩行または段差昇降における高いtoe clearanceを保ち足関節の背屈機能を代償するとされている。<BR> 本研究では3種類の条件が異なった歩行において転倒予防靴下+ルームシューズの組み合わせが最も高い歩行能力を発揮した。歩行時の足関節背屈機能の改善は、床反力の前後成分を変化させ、床反力の制動成分を減少し、立脚初期より後方に位置する身体重心を効率よく前方へ推進させ全体的に歩行時間及び歩数の減少に至ったと考える。しかし、その他の群間検定においては有意差がみられなかったが、持参していただいたルームシューズの素材や形態が異なり、靴着用時に足部より受ける床反力を定量化できなかった事が問題であり今後の検討課題としたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 転倒予防靴下は脳卒中患者の足関節の機能を代償し歩行能力を改善させるため、リハビリテーションのみならず屋外歩行での積極的な利用が進められると推察される。
著者
佐々木 祥 渡邉 誠 奥山 夕子 登立 奈美 木下 恵子 寺西 利生 園田 茂
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bb0533-Bb0533, 2012

【はじめに、目的】 2006年度診療報酬改定により、回復期リハビリテーション病棟における訓練単位数の1日上限が9単位に引き上げられた。我々は回復期リハビリテーション病棟の脳卒中患者において、診療報酬改定前の2005年度より、改定後の2008年度の方がADL改善効果が高いことを示してきた。これらの報告はFunctional Independence Measure運動項目(FIM-M)の総得点での比較であるが、FIM-Mは項目毎に難易度が異なることが報告されており、それによる訓練効果も一様でないことが予測される。そこで、今回我々は脳卒中片麻痺患者の訓練量増加がFIM-M各項目に与える影響について検討したので報告する。【方法】 対象は当院回復期リハビリ病棟に入・退棟した60歳以上の初発脳卒中片麻痺患者のうち保険診療上の訓練量が1日上限6単位であった2005年4月1日から2006年3月31日までの211例と、1日上限9単位であった2008年4月1日から2009年8月31日までの304例である。入棟期間中の1日平均訓練単位数を算出し、STを除くPTとOTの単位数が5から6単位であった1日上限6単位の症例を6単位群、7から9単位であった1日上限9単位の症例を9単位群とした。発症から当院入棟までの期間が60日以内、訓練に支障をきたす重篤な併存症がなく入棟中に急変増悪しなかった患者に限定し、最終的な対象者は6単位群73例、9単位群76例であった。性別は6単位群で男性46名、女性27名、9単位群で男性38名、9女性38名であった。原疾患は6単位群で脳梗塞39名、脳出血34名、9単位群で脳梗塞41名、脳出血27名であった。年齢、発症後期間、在棟日数、FIM-M項目毎の入・退棟時得点、FIM-M項目毎の退棟時得点から入棟時得点を引いた値(FIM-M利得)を2群間で比較した。統計は年齢、発症後期間、在棟日数にはt検定を、各項目の入・退棟時FIM-M得点とFIM-M利得にはマン・ホイットニーU検定を、性別、原疾患にはカイ2乗検定を使用した。有意水準はp<0.05とした。【倫理的配慮、説明と同意】 患者情報の学術的使用に関する同意は入院時に書面で確認した。【結果】 6単位群、9単位群の順に年齢71.7±6.3歳、70.6±6.5歳、発症後期間33.5±12.1日、31.9±13.0日、在棟日数60.9±26.8日、61.2±26.6日であり、2群間の差は認めなかった。各項目の入棟時得点は移乗(浴槽・シャワー)で9単位群の方が有意に高かったが、他の項目では差がみられなかった。退棟時得点は食事と階段で差がみられなかったが、他の項目では9単位群の方が有意に高かった。各項目のFIM-M利得は排尿・排便コントロールでは差はみられなかったが、その他の項目では9単位群の方が有意に高かった。【考察】 本研究では、脳卒中片麻痺患者の訓練量増加によるFIM-M項目別の改善効果を検討した。川原ら(2011)は訓練量を増加することでFIM-Mを改善させると報告している。今回のFIM-M項目別検討においても、訓練量を増加した方が全体的にFIM-Mは改善する傾向を示しており、特に4項目以外(食事、排尿・排便コントロール、階段)の項目で高い改善を示した。辻ら(1996)は脳卒中障害者のFIM-Mの自立度は排尿・排便コントロール、食事で高く、階段で低いと報告している。今回、食事の退棟時得点、排尿・排便コントロールのFIM-M利得で有意差がみられなかった理由として、FIM-M項目の中では比較的低難易度で自立しやすい項目であり天井効果が働いたことが挙げられる。階段の退棟時得点で有意差がみられなかった理由として、階段は入院時から平均得点が低く、FIM-M項目の中で高難易度であることから、床効果が働いたのであろう。以上より、訓練量増加はFIM-M各項目を全体的に改善させることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究により、理学・作業療法の訓練量増加がどのADL項目に影響を及ぼすか検証することができた。今後はどの訓練内容が効果的であったかなど、質的な検討が必要である。
著者
宮川 博文 稲見 崇孝 井上 雅之 小林 正和 西山 知佐 大須賀 友晃 本庄 宏司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O2127-C3O2127, 2010

【目的】愛知県理学療法士会健康福祉部は平成17年より、地域住民の健康増進、スポーツ傷害の予防と改善を目的に県内行政機関と連携をとり、スポーツ傷害講座を年1回開催している。平成20年度はスポーツ傷害の発生機序からの予防対策に注目し、小・中学生バスケットボールチームを対象にバスケットボール女子日本リーグ機構(以下WJBL)外傷予防プログラムの紹介を中心に講座を開催した。今回の研究の目的は小・中学生に対するWJBL外傷予防プログラム(以下プログラム)の有効性、問題点をアンケート調査及びプログラム紹介後の実施状況より検討することである。<BR>【方法】対象はN町小学生(以下ミニ)・中学生(以下ジュニア)バスケットボールクラブチーム女子選手38名(ミニ17名:平均年齢10.7±1.1歳、ジュニア21名:平均年齢14.0±0.9歳)、保護者22名、指導者3名の計63名である。尚、競技レベルはミニがA県大会出場レベル、ジュニアは東海大会出場レベルである。プログラムは膝前十字靭帯(以下ACL)損傷、足関節捻挫など下肢の外傷予防を目的に2007年日本臨床スポーツ医学会、国立スポーツ科学センター、WJBL所属チームのトレーナーによって作製された。その内容は1.筋力(下肢・体幹筋)、2.バランス、3.ジャンプ、4.スキルの4項目で、それぞれベーシック(高校生、大学生)、スタンダード(大学生上位・実業団)、アドバンス(WJBLトップ選手)の3段階より構成されている。今回は体育館を会場とし、ベーシックを中心としたプログラムを6名のスタッフ(理学療法士3名、トレーナー1名、理学療法士養成校学生2名)による講義及び実技にて紹介した。<BR>アンケートはプログラムの紹介後に会場内で調査用紙を配布し、記入後その場で回収した。アンケート内容は以下の5項目である。1)下肢外傷の既往歴:医療機関で診断された外傷、2)プログラムがどの程度できたか:自覚的達成率、3)プログラムで最もケガの予防に役立つと思われる項目は何か、4)プログラムを通常の練習に取り入れたいか、5)プログラムを練習に取り入れる場合、何分が適当か、尚、プログラム紹介後に実施状況を調査した。<BR>【説明と同意】アンケート調査の説明はスポーツ傷害講座終了後、全対象に行い、同意の上で調査の協力を得た。<BR>【結果】回答数は63件で回収率は100%であった。1)下肢外傷の既往歴:ミニ期での発生は足関節捻挫3件、足関節骨折1件、ジュニア期は足関節捻挫8件、足関節骨折3件、ACL損傷2件であった。2)プログラムの自覚的達成率:筋力はミニ72.1、ジュニア79.8%、以下同様にバランスは69.1、78.6%、ジャンプは76.5、81.0%、スキルは67.6、82.1%であった。 3)プログラムで最もケガの予防に役立つと思われる項目:ミニは筋力とジャンプ、ジュニアはジャンプであった。4)プログラムを通常の練習に取り入れたいか:対象全員が取り入れたいと回答した。5)プログラムを練習に取り入れる場合の時間:最も回答の多かった時間はミニ15、ジュニア20、保護者20、指導者10分であった。プログラム紹介後の実施状況:紹介後4ヵ月での実施状況は、ミニはジャンプ、スキルの一部、ジュニアは筋力、ジャンプの一部が実施されるのみで、プログラムは通常練習に十分に取り入れられていなかった。<BR>【考察】ミニ・ジュニア選手に対するプログラムのスポーツ現場への導入は、ジュニアを中心に下肢外傷が多数発生していること、ベーシックを中心としたプログラムがミニ約70%、ジュニア約80%の自覚的達成率で実施可能であること、選手、保護者、指導者全てが通常練習への導入を希望していること等から早期に実現すべきと考える。しかし、スポーツ現場への導入は今回紹介したスポーツ傷害講座の開催による現場指導者や選手へのスポーツ外傷予防に対する理解を得るのみでは困難であった。スポーツ現場への導入にはそれに加えてプログラムの実施が現場のスポーツ活動の妨げにならず、さらに競技力向上につながるプログラムメニューの工夫が必要であり、我々理学療法士がスポーツ現場に足を運び指導者、選手と意見交換を重ねメニューを作成することが必要不可欠と考える。具体的には1)プログラムの実施時間は10~15分とする、2)プログラムの内容はウォームアップメニューとしてリズミカルでチームの士気を高め、さらにサーキット形式、ボールを使った形式など実践に近いメニューも取り入れる等の工夫が必要と考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】スポーツ現場は外傷予防に強い関心を持っているがその導入に至っていないのが現状である。外傷予防プログラムの内容、導入方法等の検討はスポーツ傷害の発生機序からの予防対策として重要であり、理学療法学研究としての意義は高いと考える。<BR>
著者
山口 雅子 徳永 結
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E0345-E0345, 2007

【はじめに】当院併設老健通所リハビリテーション(以下リハ)では、H15年度より定員100名という大規模事業所ながら、個別リハに特化した体制での運営を行っていた。利用者・家族からの希望に沿った個別リハを提供していた反面、人的・時間的制約により、全ての利用者に対して専門職としての十分な関わりを持つ事は困難な状況であった。H18年4月、通所リハにリハマネージメント加算が新設され、評価・利用者の状態に応じた個別的リハ計画の策定・実施というプロセスに重点が置かれることとなり、当事業所においても、リハマネージメントに重点を置いた体制に変更した。新体制から半年が経過したことから、体制変更に伴う職員の意識や課題を整理し、今後の通所リハにおけるリハスタッフの役割を検討することを目的に調査を行った。<BR>【方法】通所リハに勤務する職員25名に対し、調査趣旨を紙面にて説明し無記名アンケートを実施した。アンケート内容は、H18年度介護保険改定についての理解度、体制変更前後のサービス面での変化、体制変更による業務の変化、リハスタッフ・理学療法士についてなどである。<BR>【結果】職員22名より回答が得られた。介護保険改定については55%が理解していると回答し、65%が体制変更後通所リハサービスは向上したと回答した。自由記載では、サービス面に関して「個別性を重視したケアへの意識が高まった」「プログラムが多様化された」「情報交換が活発になった」「様々なレベルへの対応が困難」など、リハスタッフ・理学療法士に関しては「リハ職による評価が個別ケアに役立つ」「情報交換が活発になった」「介護技術など研修をして欲しい」「体操メニューの多様化を望む」などの意見があった。<BR>【考察】調査結果から、リハマネージメントの積極的導入により、個別的ケアへの意識が高まりサービスに反映されている事がうかがえた。当事業所は大規模事業所であるとともに、利用者のレベルは要支援1から要介護5まで、利用目的は心身機能の維持改善、社会的交流、生活全般の援助などと多岐にわたるため、リハスタッフは、数多くの利用者に対しそれぞれに、生活を見据えニーズに応じたリハ計画を立案し、様々な角度からアプローチを行い、それらをリハマネージメントとして通所リハ全体へ反映させる事が求められる。<BR>【課題とまとめ】H18年度医療保険制度、介護保険制度の同時改定により、高齢者を取り巻く、保健・医療・福祉の環境は著しく急激に変化することとなった。医療保険でのリハには疾患別区分や算定日数上限が設定され、今後、医療保険と介護保険が連携して高齢者を支える仕組みの整備や介護保険分野でのリハサービスのさらなる充実が急がれる。当事業所でも、医療保険でのリハとの連携と利用者全体へのリハサービス向上を目指し、リハマネージメントに加え、短期集中リハとしての個別リハ提供体制の充実・整備を模索している段階である。