著者
辻 裕丈 近藤 直英 西田 卓 鈴木 淳一郎 安田 武司 伊藤 泰広
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.643-650, 2008 (Released:2008-10-30)
参考文献数
22
被引用文献数
4 2

超急性期の経静脈的t-PA療法を中心とした脳卒中急性期診療を迅速かつ効率的に可能にするため,脳卒中プレホスピタルスケール(TOPSPIN:TOYOTA prehospital stroke scale for t-PA intravenous therapy-経静脈的t-PA療法のためのトヨタ脳卒中プレホスピタルスケール-)を豊田市救急隊との前方連携に導入した.TOPSPINは1.意識 2.心房細動 3.言語障害 4.上肢および5.下肢の片麻痺を評価する. 2006年12月12日から2007年11月6日までに155例がTOPSPINを用いて搬送され,脳卒中適中率は72%,脳梗塞56例(36%),TIA3例(2%),脳出血46例(30%)であった.うち14例(9%)でt-PA療法が施行された. また,当院に救急搬送された脳卒中患者218例のうち約半数がTOPSPINでトリアージされていた.約半数の,TOPSPINでトリアージされずに救急搬送された脳卒中症例は,(1)他の診療所や病院からの転送,(2)半日以上経過してからの救急隊要請による搬送,(3)TOPSPINを導入していない豊田市以外の救急隊からの搬送,(4)めまい・ふらつき・嘔吐や半盲といった症候を主とした症例であった. TOPSPINは, t-PA療法を念頭にした脳卒中患者のトリアージに有効であると考えられた.
著者
名古屋 春満 武田 英孝 傳法 倫久 加藤 裕司 出口 一郎 福岡 卓也 丸山 元 堀内 陽介 棚橋 紀夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.59-66, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
23
被引用文献数
7 5

2002年8月から2009年10月までの間に埼玉医科大学国際医療センター・埼玉医科大学病院を受診した特発性頸部内頸動脈解離症例10例(年齢は36~70歳,男性8例,女性2例)について臨床的検討を行った.診断にはSASSY-Japan脳動脈解離ワーキンググループの「脳動脈解離の診断基準」をもとに,頭部MRI・MRA,3D-CTA,脳血管撮影,頸動脈超音波検査などの検査を用いて行った.脳虚血発症例は8例,頸部痛のみの症例が1例,無症候性が1例であった.発症時に頭痛または頸部痛を伴った症例は4例(40%)であった.10例中4例で発症後3カ月以内に画像上解離血管の改善が認められた.発症3カ月後のmodified Rankin Scale(mRS)は7例がmRS 1であり,3例がmRS 2と全例で転帰が良好であった.平均観察期間17.2カ月において,全例で脳卒中の再発を認めなかった.本邦においても特発性頸部内頸動脈解離症例は決して稀ではなく,内頸動脈の閉塞または狭窄を来した症例に遭遇した際には,常に本疾患を念頭においた複数の検査を可及的速やかに行う必要がある.
著者
冨本 秀和
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.128-132, 2013-03-20 (Released:2013-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

要旨:脳小血管病は小血管の病理変化,またはその結果生じる微小病変を意味し,それらに起因する比較的均質な病理・臨床像を包摂する病態である.その大部分は,1型の高血圧性小血管病と2型のアミロイド血管症に分類される.前者はラクナ梗塞,白質病変,脳出血が主体で,認知症を来す場合は皮質下血管性認知症と呼称される.後者は皮質下出血や白質病変の原因となり,ほとんどのアルツハイマー病患者で合併がみられる.本稿ではそれぞれの病態や臨床症候について概説し,さらに両型の相互の関連についても述べる.
著者
池田 将樹
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.40-44, 2019 (Released:2019-01-25)
参考文献数
30

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)はアミロイドβ蛋白(Aβ)とリン酸化タウ(ptau)が脳内に蓄積し,認知機能低下を来す進行性の神経変性疾患である.AD患者や高齢者では,髄膜および大脳皮質の小型から中型の動脈壁に Aβが脳血管に蓄積する脳アミロイドアンギオパチー(cerebral amyloid angiopathy: CAA)が頻繁にみられる.CAAはADの認知症を増悪させる因子として知られていたが,脳画像技術の進歩に伴い,多様な病態が明らかになりつつある.一方,CAA関連炎症[CAA-related inflammation(RI)]は近年注目されている病態であり,診断や治療についても進歩がみられるものの,これらの原因については不明な点が多い.CAAの病態解明が進み,ADと CAA関連疾患の治療法の開発が今後さらに重要になると思われる.
著者
金中 直輔 佐藤 博明 阿部 肇 根城 尭英 福井 敦 寺西 裕 鳥橋 考一 宮腰 明典 楚良 繁雄 河野 道宏
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.203-208, 2013-05-20 (Released:2013-05-24)
参考文献数
5

要旨:頭痛を主訴に来院した68歳男性.3年間にわたる硬膜動静脈瘻の治療経過において,頭部CTやMRIのFLAIRおよびT2画像にて両側視床に限局した異常信号域を認めた.深部静脈系のvenous congestionによるvenous hypertensionが疑われた.臨床症状として特徴的な視床性認知症を呈していたが,血管内治療により画像的にも臨床的にも改善を認めた.このような適確な診断と治療により可逆的な病態である一方で,時期を逸することで不可逆的な変化を来すこともありうるため,迅速かつ適確な対応が必要な疾患であると考えられた.
著者
古賀 政利 上原 敏志 長束 一行 安井 信之 長谷川 泰弘 岡田 靖 峰松 一夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.67-73, 2009
被引用文献数
3

背景および目的:脳卒中では緊密な連携の重要性が強調されている.脳卒中地域医療における急性期病院の実態を明らかにする.<br> 方法:急性期病院2,185施設に対しアンケート調査を行った.<br> 結果:有効回答46%で,うち52%が脳卒中患者を診療していた.多くが,地域医療圏は二次医療圏(45%)であるとし,その中心的役割は急性期病院(69%)と回答した.他の急性期病院,回復期リハ病棟,一般診療所,維持期施設事業所,周辺地域全体,自治体との連携が良好は75%,75%,74%,69%,73%,34%であった.医療(介護)情報を既に共有しているのは20%(14%)で,共有する予定51%(51%),共有する予定なし25%(30%)であった.医療保険と介護保険のシステムでは十分なリハビリを提供しにくいとの回答が67%に達した.<br> 結論:脳卒中連携において中心的役割を担う急性期病院でも,地域での情報共有は未だ十分ではなかった.<br>
著者
小田嶋 奈津 松永 高志 古川 哲雄 塚越 廣
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.231-236, 1990-06-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
14

発病1年7ヵ月後に一側上肢の粗大振戦様の激しい不随意運動の出現を認めた橋出血の1例について報告した.この不随意運動は運動時と姿勢時に認められ, 表面筋電図では上腕二頭筋と上腕三頭筋で2~3Hzの高振幅, 相反性の律動的群化放電を認め, 同時に躯幹筋や胸鎖乳突筋にも小さな群化放電を認めた.本例の不随意運動は活動時振戦に属するが, 運動時, 姿勢時とも振幅が極めて粗大で, あまりにも激しい動きであった.MRIでは一側橋被蓋部のみに病巣が確認され, 不随意運動の責任病巣を考える上で興味ある症例と考えた.
著者
石川 英一 矢坂 正弘 岡田 靖
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.425-431, 2013-11-25 (Released:2013-11-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 4

要旨:【背景および目的】観血的医療処置時の抗血栓薬の適切な管理に関する研究(MARK study)において,処置時の抗血栓薬管理についてアンケート調査を行った.【方法】全国の国立病院機構の病院やセンターの診療科科長 を対象に郵送法で行った.【結果】抗血小板薬と比べ経口抗凝固薬は高率に中止・減量され,それぞれ全体の58%と66%であった.中止・減量時のヘパリン代替療法施行率は抗凝固薬で抗血小板薬より高い.抗血栓薬管理マニュアルがある診療科は35%に過ぎず,中止時に同意書を取得する診療科は12%であった.過去5 年間で,抗血栓薬を継続し大出血を経験した診療科は抗血小板薬,抗凝固薬いずれも8%台,抗血栓薬を中止し血栓・塞栓症を経験した診療科はいずれも約10%であった.【結論】抗血栓薬管理マニュアルの整備は約3 分の1,中止時の同意書取得率も約1 割と低く,周術期抗血栓薬管理法の確立は大きな課題である.
著者
寺坂 晋作 竹原 康浩 高畠 靖志 宇野 英一 土屋 良武 林 浩嗣 山村 修 青竹 康雄
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.735-739, 2007-11-25 (Released:2009-02-06)
参考文献数
7
被引用文献数
8 7

脳卒中リハにおいて予後予測は重要なテーマである. 今回, 急性期脳卒中患者の予後についてFIMを用いて検討した. 2005年4月から1年間の脳卒中患者208例 (くも膜下出血は除外) のうち, 入院から2週経過時の運動FIMが80点未満の123例を対象とした. 2週時運動FIMより70~79点, 50~69点, 50点未満の3群に分類し, 運動FIM50点未満の83例は, 運動FIM利得15点以上の高回復群 (30例) と14点以下の低回復群 (53例) に細分類した上で, 運動FIMと認知FIM, 自宅復帰率, 歩行獲得率, 在院日数を比較した. 2週時運動FIM50点以上のセルフケア自立群と半介助群では, 退院時運動FIMがそれぞれ80.9, 72.7, 歩行獲得率は100%, 90.9%であり退院までに高いADL獲得が可能であった. 50点未満の全介助群では退院時運動FIMは38.8, 歩行獲得率36.1%と前2群に比べ低値であった. 全介助群のうち高回復群の2週時認知FIMは24.2であり, 低回復群の12.5に比べ有意に高かった. 2週時運動FIMが50以上であれば高いADL獲得が可能である. 2週時運動FIMが50未満であっても認知FIMが高ければ, その後高いADL獲得の可能性が示唆された.
著者
菊井 祥二 澤 信宏 西脇 知永
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.119-122, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

症例は80歳,男性.糖尿病のコントロールが突然不良になったことが契機になり,膵体部腫瘍が発見され,切除可能と判断され,手術を予定された.術前に構音障害と右不全片麻痺をきたし,頭部MRIで左橋梗塞と診断し,悪性腫瘍に合併したTrousseau症候群の可能性を念頭に置き,第1選択薬であるヘパリンを持続投与することで症状が改善し,脳梗塞が再発することなく,手術を施行することができた.担癌患者では積極的にTrousseau症候群を考えて,ヘパリンによる抗凝固療法を行い,手術日まで管理することが重要であると考えられた.
著者
中島 一夫 樋口 陽 後藤 暁子 後藤 昌三
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.111-116, 2015 (Released:2015-03-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

要旨:心原性脳塞栓症発症急性期の経食道心エコー検査にて左房内血栓を認め,dabigatran etexilate(DE)投与後に血栓消失を確認した非弁膜症性心房細動5 例を呈示する.発症時年齢は平均83 歳,女性が3 例,左房内血栓の最大径は平均13 mm であった.未分画ヘパリン投与後のDE への切り換え例が3 例,発症前よりのワルファリン投与からDE への切り換え例が1 例,発症前よりワルファリンが投与され発症後に未分画ヘパリンへの変更を経てのDE への切り換え例が1 例であった.発症各3 日,5 日,5 日,7 日,18 日後からの平均18 日(6~39 日)間のDE(4 例で110 mg×2/日,1 例で150 mg×2/日)投与により全例で症候性再発を認めることなく左房内血栓消失が確認された.心原性脳塞栓症急性期に心内血栓が検出された非弁膜症性心房細動患者におけるDE 投与が,再発予防を目的とした急性期抗凝固療法の一方法になりうることが期待される.
著者
渡邉 誠 奥山 夕子 登立 奈美 川原 由紀奈 木下 恵子 佐々木 祥 辻 有佳子 園田 茂
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.383-390, 2012 (Released:2012-11-23)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

【目的】診療報酬改定により可能となった訓練量増加がADL改善に及ぼす影響を年齢別に検証した.【方法】当院回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,一日の訓練単位上限が6単位(2時間)の時期に5~6単位の訓練を行った106名(6単位群)と訓練単位上限が9単位の時期に7~9単位の訓練を行った130名(9単位群)を対象とし,入退棟時のFIM運動項目(FIM-M),FIM-M利得,FIM-M効率を比較した.年齢別に3群,入院時FIM-M得点層別に2群に層別化し分析も行った.【結果】FIM-M利得,FIM-M効率は9単位群で有意に高かった.FIM-M低得点層で70歳以上と60~69歳のFIM-M利得,FIM-M効率,高得点層で70歳以上のFIM-M利得が9単位群で有意に高かった.【結論】訓練量の増加はADLをより改善させ,その程度は60歳代のFIM-M低得点層と70歳以上の高齢者で顕著であった.
著者
登立 奈美 園田 茂 奥山 夕子 川原 由紀奈 渡邉 誠 寺西 利生 坂本 利恵
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.340-345, 2010-07-25 (Released:2010-09-14)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

【目的】診療報酬改定による訓練量の増加と運動麻痺改善との関係を検証した.【方法】当院回復期リハビリ病棟に入退院した脳卒中患者で,1日の訓練単位数上限が6単位(2時間)であった時期に5~6単位の訓練を行った122名(6単位群)と,訓練単位数上限が9単位であった時期に7~9単位の訓練を行った41名(9単位群)を対象に入退院時のStroke Impairment Assessment Set(SIAS)の麻痺側運動機能5項目を比較した.入院時運動麻痺の重症度別に3群に層別化した分析も行った.【結果】入退院時のSIAS得点は9単位群で有意に高かったが,SIAS利得には有意差を認めなかった.入院時下肢中等度麻痺群と上肢軽度麻痺群において退院時SIASとSIAS利得が9単位群で有意に高かった.【結論】麻痺程度を層別化して検討することで1日6単位から9単位への訓練量増加により運動麻痺改善が認められた.
著者
青木 信平 五十嵐 久佳 坂井 文彦 神田 直 田崎 義昭
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.175-179, 1988-04-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
11
被引用文献数
1

脳卒中急性期の患者を対象に血清K値の変動を観察した.対象は発症後24時間以内に来院した脳卒中患者161例 (脳出血96例, 脳梗塞65例) である.脳出血患者の平均血清K値3.63±0.05mEq/l (SE) は脳梗塞の平均値4.02±0.05mEq/lよりも有意に低値を示した (p<0.01).脳出血患者を意識レベルによりunresponsive群とresponsive群とに分け検討すると, 血清K値はそれぞれ3.43±0.76mEq/lと3.79mEq/lであり, unresponsive群が有意に低かった (p<0.01).また, 死亡群の平均血清K値3.51±0.06mEq/lは生存群の平均値3.72±0.06mEq/lよりも低く (p<0.05), 重症例では血清K値が低下することが示された.血漿エピネフリン濃度および血糖値と血清K値の間には有意な負の相関がみられ, 低K血症の発現は, ストレスに起因したKの細胞内への流入の可能性が考えられた.
著者
大久保 孝義
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.829-833, 2008 (Released:2009-01-13)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1

Out-of-office blood pressure (BP) monitoring, i.e., ambulatory and home blood BP monitoring, has better predict power of stroke than dose conventional BP. A large part of such evidence has been derived from a population-based prospective study in Japan (the Ohasama study). The Ohasama study has also revealed unique predictive power of theses monitoring. The predictive value of home BP increased progressively with the number of measurements. Even the initial-first home BP values (1 measurement) showed a significantly greater relation with stroke risk than conventional BP values (mean of 2 measurements). Home BP increased the predictive power of categorizations of guidelines compared to conventional BP. A disturbed nocturnal decline in BP determined by ambulatory BP is associated with cerebral infarction, whereas a large morning surge is associated with cerebral hemorrhage. Morning home hypertension, which is characterized specifically high home BP only in the morning might be a good predictor of stroke, particularly among individuals using anti-hypertensive medication. Since the Japan Home versus Office BP Measurement Evaluation (J-HOME) study demonstrated a poorly controlled condition of morning home BP in treated hypertensive patients, more aggressive treatment targeting morning home BP would be necessary to better prevent future stroke.
著者
北惠 詩穂里 辻野 精一 土岐 明子 山中 緑 野口 和子 渡邉 学
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.266-270, 2014 (Released:2014-07-25)
参考文献数
10

要旨:症例は51 歳男性.左橋背部の出血により,左末梢性顔面神経麻痺,眼球運動障害,右片麻痺および顔面を含む右半身の重度の感覚障害を呈していた.第8 病日より中枢性疼痛を伴う余剰幻肢の自覚症状が出現し,ガバペンチンの投与を行ったが,発症後1 年を経過した時点でも症状の残存がみられた.脳血管障害における余剰幻肢は,右半球障害での報告が多く,機序として深部感覚障害や病態失認および半側空間無視の関与が考えられている.余剰幻肢を呈する橋出血では,画像上橋背部の障害が報告されており,深部感覚障害との強い関連が考えられた.余剰幻肢に中枢性疼痛を伴った点からも,感覚野への求心路であるspino-thalamo-cortical tracts の関与が考えられた.一方,病態失認や半側空間無視を伴っていることは少なく,また幻肢の随意性や人格を有することも少ない点が,大脳半球障害に基づく余剰幻肢との相違点であると考えられた.
著者
川原 信隆
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.216-219, 2014 (Released:2014-05-23)
参考文献数
30

要旨:近年の再生研究の進歩により,骨髄幹細胞やiPS 細胞などの移植治療が注目を集めている.一方で,内在性神経幹細胞からの再生療法も大きな可能性を秘めている.いずれにおいても神経損傷の形態によって局所環境は大きく異なり,細胞の生着・生存率は大きく変化すると考えられる.我々は,その点で利点があると思われる一過性前脳虚血モデルを用いて,内在性神経再生誘導の検討を加えてきた.その結果,海馬CA1 領域や線条体背外側域などの虚血に脆弱な部位での選択的神経細胞死に対しては,EGF,FGF-2 を用いた内在性神経幹細胞の賦活療法にて行動学上の改善につながる有意な再生を誘導することを示した.また,これらの経路に若干の修飾を加えることも,さらに効率的神経系分化を誘導可能であることがわかった.本療法がどの疾患に応用可能か,特に脳梗塞モデルでの検討などについて,今後のさらなる研究が望まれる.
著者
青島 千洋 小倉 浩一郎 立花 栄二 告野 正典 中根 幸実 住友 正樹
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.363-369, 2011-05-25 (Released:2011-05-27)
参考文献数
19

Motor cortex stimulation(MCS)が脳卒中後慢性期の上肢麻痺を改善する可能性があり,われわれはこれまで25例のMCS治療を行ってきたが,今回MCSが即時改善効果を呈した2例を報告する.症例は56歳女性(脳梗塞後6カ月,左片麻痺)と49歳男性(視床出血後3年,右片麻痺)で,ともに中等度以上の上肢麻痺が見られた.Functional MRIで同定した運動野の硬膜外に刺激電極を設置し,その手術の翌日に電気刺激をONにすると麻痺側の肩挙上が改善し,OFFにすると元のレベルへ戻るという所見を両症例で観察した.7–10日後にはON-OFFの差がなくなり,改善は持続し,3カ月後のFugl-Meyer運動機能評価では,10点以上改善していた.MCSによる上肢麻痺改善の機序は不明であるが,今回の所見は,MCSがシナプス伝達への直接的な効果を有することを示唆するものと考えられた.
著者
青木 友浩 西村 真樹 片岡 大治 石橋 良太 森下 竜一 野崎 和彦 橋本 信夫 宮本 享
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.538-543, 2010-11-26 (Released:2010-12-03)
参考文献数
20

Cerebral aneurysm (CA) is a main cause of a lethal subarachnoid hemorrhage. Given the high incidence of CA in general population, the mechanisms of CA formation should be unlabelled and novel medical therapy for CA before rupture should be developed. The typical pathological feature of CA walls is the decrease of extracellular matrix (ECM). Decreased ECM results in the weakness of CA walls leading the enlargement and rupture of CA. In this article, we have reviewed the recent findings about the mechanisms of decreased ECM in CA walls mainly revealed by experiments using rodent CA models. ECM is the dynamic structure with the continuous synthesis and degeneration of matrix protein. In CA walls, the induced expressions of proteinases by chronic inflammation in arterial bifurcation are present and actively participated in the pathogenesis of CA. Further the synthesis of collagen is suppressed in CA wall through inflammatory stimulus in arterial walls. These results combined together indicate that both decreased synthesis and increased degeneration of ECM by chronic inflammation in CA walls contributes to CA formation. Further these results demonstrate the therapeutic potential of anti-inflammatory drugs for CA.
著者
亀田 知明 土井 宏 川本 裕子 城村 裕司 高橋 竜哉 児矢野 繁 鈴木 ゆめ 黒岩 義之
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.351-356, 2010-07-25 (Released:2010-09-14)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

脊髄梗塞の臨床像および予後について検討した.対象は1997年4月から2008年9月までに横浜市立大学附属2病院神経内科に入院した急性期脊髄梗塞患者14例である.発症年齢は中央値63歳,範囲は22から74歳,男7例,女7例であった.心血管疾患危険因子は高血圧6例,糖尿病5例,喫煙4例,心房細動0例,心血管疾患の既往2例で,6例ではいずれの危険因子も認めなかった.病変部位は,頸髄3例,頸胸髄3例,胸髄5例,胸腰髄が3例で,4椎体以上にわたる病変を7例で認めた.臨床像を分類すると前脊髄動脈症候群が11例,Brown-S quard症候群が1例,横断性梗塞が2例だった.初発症状は痛みが8例,脱力が4例,痺れが2例で,10例では24時間以内に症状がピークに達した.治療についてはステロイドが6例,抗血小板薬が5例,抗凝固薬が10例,7例ではこれらの治療を併用した.退院時に歩行が可能であったのは6例で,感覚障害は全例で残存した.排尿障害によって導尿あるいは膀胱バルーンカテーテルが留置されていた例は9例であった.女性,長軸方向に長い病変,横断性梗塞,脱力で発症した例では予後が悪い傾向がみられた.