著者
佐條 研 三好 匠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.524, pp.365-368, 2008-02-28

アドホックネットワークにおける脅威として,ブラックホール攻撃が問題となっている.ブラックホール攻撃とは,攻撃ノードが経路応答パケット(RREP)を偽装することにより目的地ノードになりすまし,送信されるデータを不正に受信する攻撃方法である.従来のルーティングプロトコルでは,シーケンス番号の値が大きなRREPほど新しい経路として選択されるため,攻撃にはシーケンス番号が利用される.攻撃が成功すると,データは攻撃ノードに送信され,正常な通信が行われない.従来手法として,通信頻度を考慮した中継ノードによるブラックホール攻撃の防御法の提案がされているが,誤認に対する影響が大きいという問題がある.本稿では,ブラックホール攻撃に対する新たな防御手法として,指数バックオフに従ったブラックリストを用いた防御法を提案する.指数バックオフを用いることで,ノードに応じて適応的にブラックリストを機能させる.シミュレーションにより,従来手法よりも提案手法が有効であることを示す.
著者
劉 紹明 田中 栄一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.1358-1371, 1995-10-25
被引用文献数
4

本論文は根があり順序がない木(R木と言う)および根がなく順序がない木(単に木と言う)について,それぞれ,強構造保存写像に基づく距離(SSPD),C写像に基づく距離(CD)および極大C写像に基づく距離(MCD),の3種類の距離の計算法を提案している.R木の場合,いずれも,時間計算量はO_T(m_aN_aN_b),空間計算量はO_s(N_aN_b)である.木の場合,3種類の距離の計算法の時間計算量はO_T(max(m_a,m_b)^2N_aN_b),空間計算量はO_s(N_aN_b)である.ここで,二つのR木,あるいは二つの木をT_a,T_bとするとき,m_a(m_b),N_a(N_b)よそれぞれT_a(T_b)の頂点の最大次数,T_a(T_b)の頂点数である.SSPD,CDの計算法は,R木および木の場合とも,従来の計算法より効率が良く,MCDは本論文で提案した距離である.R木および木の距離は,化学で研究されている構造・活性問題をはじめとして,多くの構造比較問題に応用できる.
著者
大墳 聡 佐々木 信之 長谷川 貞夫 原川 哲美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.100-108, 2010-02-01

小型の振動モータ6個1組を体の任意の部位に装着し,振動によって点字情報を読み取る体表点字の研究を行っている.本論文では,はじめに背中と上肢での振動モータの弁別距離を測定した.その結果,2点で弁別できた距離でも3点では弁別できないことが分かった.そして振動による点字の読取りを考慮したときに背中では12cm,上肢では20cmの間隔が必要であることが分かった.体表点字におけるモータの駆動パラメータは振動継続時間T_m,点字1マス内振動間の休止時間T_s,マス間振動休止時間T_nの3種類がある.本論文では,これらパラメータと点字読取りの関係を明らかにするために,3人の被験者にて背中と上肢でそれぞれのパラメータを変えて単語の読取りの測定を行った.測定から現在の読取りは,1マス0.7〜1.6秒であった.また各振動パラメータの特徴を解析した.そして誤った振動パターンを解析することで,点字マスの真ん中の点に関する振動が誤りやすいことを確認した.
著者
竹内 孔一 高橋 秀幸 小林 大介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.245, pp.13-18, 2010-10-16

本研究ではクラスタリングを利用して動詞の類義語を獲得する方法について検討している.先行研究において,同時に2つの要素のクラスタを考慮しながらクラスタリングする同時共起クラスタリングを適用して,ベクトルベースのクラスタリングより精度が高いことを示した.しかし,近年ベクトルベースのクラスタリングでKernel K-meansという非線形境界でクラスタリングするより高度な手法が提案された.そこで,本報告ではKernel K-means法を我々の動詞類語獲得に適用し,先行研究における同じデータで同時共起クラスタリングとの比較を行う.この結果からKernel K-meansでのグラフ-ベクトルの等価性には限界があり,本研究が利用する2部グラフの構造は直接反映できないこと,先行研究の同時共起クラスタリングの方が高い精度で類語を獲得できることを報告する.
著者
藤川 賢治 太田 昌孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットアーキテクチャ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.260, pp.29-34, 2010-10-21

インターネットの大域経路表の増加を抑えるには、徹底した階層化アドレスと、経路制御に依らないマルチホームが必要である。経路制御に依らないマルチホームは、末端サイトだけで無く、中間レベルのISPやローカルISPが複数の上流からアドレス空間を取得し、それらを活用することで可能である。このようなマルチホームを我々はEnd-to-endマルチホームと呼んでいる。本稿ではEnd-to-endマルチホームを考慮しルータの手動設定を削減した階層的なアドレス割当プロトコルとしてHierarchical Automatic Number Allocation(HANA)プロトコルを設計し実装する。またDNSとの連携についても議論する。
著者
木又 洸佑 小林 孝史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.245, pp.49-52, 2011-10-13

キーストロークダイナミクスは,キーを押してから離すまでの時間等,キー入力に要する時間を,個人を特定する特徴として用いている.しかし,キーストロークダイナミクスは行動的特徴であり,試行毎の入力される値は一定ではない.この問題がある為,個人認証システムにこの手法を用いる場合,個人の特定に適切な特徴抽出を行い,より高い認証精度を実現することが重要になる.そこで,本研究では,キーストロークダイナミクスの中でもキー入力が未熟な人でもばらつきが生じにくいとされる,一つのキーを押してから離すまでの時間に注目し,この特徴をニューラルネットワークに学習させ,特徴抽出を行う認証手法を提案し,実験による評価結果を示す.
著者
劉 軼 榎本 圭孝 加藤 伸隆 馬目 知徳 伊丹 誠 伊藤 紘二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.985-994, 1997-04-25
被引用文献数
8

本論文では, 学習者に状況と機能に応じた日本語表現を広く体系的に学習させるために, 編集者の用意する状況・機能手掛りが学習者と誤り診断パーザの双方に制約として用いられるシステムを提案し, 試作結果を報告している. このシステムは, 対話例のデータベースをもち, その各々について, 状況・機能的に重要な部分を空白部として, その部分の状況と機能を手掛りインデックスとして編集しておき, 学習者にはそれ (一般にはその一部) を伝えた上で, 作文を行わせる. 学習者は, 自立語については与えられた語いを用い, 活用と機能的語いを考えて補い, 入力文を作成する. システムは, 作成された入力文を, 誤り診断機能をつけた汎用のパーザによって解析し, 構文・意味的に誤りがあったり, そのときの状況にそぐわなかったりした場合には, 誤答部分の表層表現をもつ例文あるいは正解に対応する手掛りインデックスをもつ例文を対話例データベースから検索して学習者に提示しその手掛りを空白部の手掛りと比較させ,学習者の答と対話例の表現とを比較させた上で, 学習者に改めて作文させる. これらのガイダンスにもかかわらず正解に至らない場合は, 誤答に最も近い正解とのずれについてバグ仮説に基づいたコメントを提示する.
著者
田谷 修一郎 前原 吾朗 小島 治幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.328, pp.49-52, 2006-10-19
被引用文献数
1

視覚刺激呈示中の後頭部の血流変化を近赤外分光分析(NIRS)によって計測した.刺激は7.5Hzで明暗が反転する直径12度の放射状チェッカーパターンであり,視野全体,もしくは上下左右に4分割した視野に呈示された.1計測セッションでは15秒の刺激呈時と30秒の休息を5回繰り返し,この間の後頭部の血流変化を3cm間隔で正方形状に配置した4×4のプローブによって計測した.呈示視野条件別にそれぞれ2セッションの計測を行った結果,下半視野に刺激が呈示される場合にのみ,刺激呈時視野に対応した領野で酸化ヘモグロビン濃度の上昇と脱酸化ヘモグロビン濃度の減少が認められた.
著者
笠原 正雄 平澤 茂一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.444, pp.419-426, 2010-02-25

一般化された(u,u+v)構成法,g(u,u+v)構成法,に基づいて少数の情報記号数に対する最適2元線形符号の大きなクラスを構成している.そしてこの構成法に基づいて(3(2^m-1,m+1,3・2^m-1)符号,(3(2^m-1),m+1,3・2^m-1)符号,(3(2^m-1),m+1,3・2^m)符号を構成し,これらの符号がBrouwer-Verhoeffのテーブル(BVテーブル)に記載の最小距離にn≦125の範囲で一致し,それ故に最適2元線形符号であること且つn≧126の範囲においても最適2元線形符号であることが予測されることを述べる.さらに情報記号数k=2,符号長n,最小距離dの(n,2,d)線形符号および情報記号数3の(n,3,d)線形符号を与えている.そして(n,2,d)符号がn≦125の任意の符号長に対しBVテーブル記載の最小距離限界に一致すること,即ち理論的限界式を完全に満たすことを示している.同様に(n,3,d)符号もn=8+7μ(μ=1,2,…)を除く任意の符号長において(BVテーブル)理論的限界式を満たすことを示している.これらの符号nη≧126の範囲においても最適性を満たすことが強く予想される.さらに情報記号数k=4,5,6および7に対する最適符号を構成し,具体例を示している.
著者
ISHII Hiroshi
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
IEICE transactions on information and systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.1299-1311, 2004-06-01
被引用文献数
2

This paper first discusses the misinterpretation of the concept of "ubiquitous computing" that Mark Weiser originally proposed in 1991. Weiser's main message was not the ubiquity of computers, but the transparency of interface that determines users' perception of digital technologies embedded in our physical environment seamlessly. To explore Weiser's philosophy of transparency in interfaces, this paper presents the design of an interface that uses glass bottles as "containers" and "controls" for digital information. The metaphor is a perfume bottle: Instead of scent, the bottles have been filled with music - classical, jazz, and techno music. Opening each bottle releases the sound of a specific instrument accompanied by dynamic colored light. Physical manipulation of the bottles - opening and closing - is the primary mode of interaction for controlling their musical contents. The bottles illustrates Mark Weiser's vision of the transparent (or invisible) interface that weaves itself into the fabric of everyday life. The bottles also exploits the emotional aspects of glass bottles that are tangible and visual, and evoke the smell of perfume and the taste of exotic beverages. This paper describes the design goals of the bottle interface, the arrangement of musical content, the implementation of the wireless electromagnetic tag technology, and the feedback from users who have played with the system.
著者
萩原 洋一 池田 論 中森 眞理雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション
巻号頁・発行日
vol.98, no.442, pp.57-64, 1998-12-04
被引用文献数
1 1

マージソートは時間計算量が0(n log n)(nはソートされるレコードの個数)であり高速であるが, 内部ソートとして実行する場合, 作業場所として大きさnの配列を要するのが欠点であるとされている.本論文では, 作業場所として数語だけを要するマージソートを提案する.新しいマージソートの時間計算量は0(n log^2 n)であり, 従来のアルゴリズムより悪いが, これは作業場所とのトレードオフの結果である.
著者
豊田 規人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.106, pp.7-12, 2011-06-23

パロンドゲームにおいてパラドッキシカルな様相を露呈することが,[2],[3]によって示された.二つの確率的に負けるはずのゲームをランダムに繰り返すと勝ちゲームなるというものである.その後,この当初のナイーブな設定に対する様々な拡張された設定においても同様のパラドキシカルな様相を示すことが実証された.特に1次格子,或いは二次元格子上のパロンドゲームにおいてもパラドキシカルな様相を示すことが実証された.この論文では,それをスケールフリーネットワークにおけるゲームに拡張した場合を考察する.ナイーブな設定として,第二ゲームのパラメーターとして,プレーヤーとネットワーク上で隣接する勝ち組プレーやの人口のみを考慮した場合を考える.この場合パラドックスが生じないことを,シミュレーションを加味した理論的考察により示す.
著者
安藤 英由樹 飯塚 博幸 米村 朋子 前田 太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.34, pp.137-142, 2010-05-06

本稿では,パラサイト・ヒューマン・ネットワークを用いた五感情報通信によって安全安心応用を実現するために,光学共役な視覚共有システムを実現し,このシステムによって実時間支援,追体験学習の実現可能性を示す実験とその結果からパラメータの設計指針について報告する.
著者
中西 美木子 堀越 力
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.83, pp.33-38, 2009-06-08
被引用文献数
1

ARを実現寸る際に必要なデバイスの一つである光学式シースルーHMDに表示される映像について,壁やファイルなど手がかりとなる物体に投影するように映像を見た場合と,手がかりが何もない状態で映像を見た場合の知覚の差を評価した.その結果,映像を見る場合,映像とのインタラクションを行なう場合両方において,手がかりがあると有効であるという結果が得られた.これをもとに,手がかりを用いたHMDの新たな利用法によるシステムを構築し,提案手法の有効性を確認した.
著者
竹田 夏木 清川 清 竹村 治雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.215, pp.59-63, 2009-10-01

双曲面ハーフミラーを用いた頭部搭載型プロジェクタ(HHMPD,Hyperbolic Head Mounted Projective Display)は,理論的には180度を越える水平視野を供することが可能であり,一般的なHMD(Head Mounted Display)に比べ,没入感や状況認識において有利である.HHMPDは双曲面ハーフミラー・プロジェクタを搭載した装置を頭部に着用し,周辺環境に配した再帰反射スクリーンを介して映像を提示するディスプレイである.再帰反射スクリーンへの入射角や投影距離などの要素により,映像には輝度差が生まれ,またその差は着用者の動きに伴い動的に変化する.本研究では,HHMPDを用いる際の輝度差を表すモデルを作成し,これを補正する手法を検討する.
著者
田中 信吾 山浦 隆博 菅沢 延彦 谷澤 佳道 山口 健作 渋谷 尚久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.39, pp.53-58, 2010-05-13

昨今,映像のハイビジョン化などによる高画質化・高解像度化により,ネットワーク上を流れる映像・音声などのリッチコンテンツのデータ量が増加している.ネットワークにおける通信プロトコルには主にTCP/IPが使われているが,現在その処理はCPUによって行われているため,特に組み込み機器の分野ではCPUの動作周波数や消費電力の増大が問題となってきた.そこで我々は,専用ハードウェア(専用回路)を用いたTCP/IPオフロードエンジンNPEngine^<TM>を開発し,従来の組み込みCPUに比べて動作周波数あたりで80倍,消費電力あたりで22〜28倍の伝送レートを実現した.本稿では,NPEngine^<TM>で用いられている提案方式(ハイブリッド構成,ダイレクト転送,パイプライン処理)を中心にNPEngine^<TM>の構成と特長,及び,その性能評価結果について述べる.
著者
児玉 啓浩 森本 康彦 中村 勝一 横山 節雄 宮寺 庸造
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.453, pp.151-156, 2011-02-25

大学における研究活動では,発生する多様な情報を蓄積・活用することが重要である.しかし,研究初学者にとって,これらの蓄積された情報を効率的に活用することは容易ではない.そこで本研究では,ユーザの活動場面に適応的な情報抽出と視覚的提示手法を搭載した研究活動支援システムを開発する.これを達成するためにオペレータモデルを開発する.このオペレータは,活動場面と視覚提示制約によって,適応的な情報抽出と視覚的提示,促進メッセージ提示を行う.これにより,ユーザの活動場面に則した研究情報の抽出と,それらの効果的な活用を支援することが期待できる.本稿では,オペレータの定義と支援システムの開発について述べる.
著者
介弘 達哉 下畑 さより 松下 久明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.1, 1995-03-27
被引用文献数
2

現在、機械翻訳の実行化に関する様々な研究が行われている。その1つとして、我々は差分翻訳システムの開発に着手している。差分翻訳とは、文書の旧版の翻訳結果(対訳)を利用して、文書の新版の翻訳を効率良く行う方法である。旧版と新版の原文を比較し、同じところは旧版の訳文を利用し、違いがある文だけ翻訳を行うことによって、翻訳作業の軽減が可能となることから、改版が頻繁に行われるマニュアルなどの文書の翻訳業務などに適用される。このシステムを実現するためには、対訳文書の文の対応付けが不可欠である。原文と訳文の文の対応付けに関する研究は各所で行われているが、完全な対応付けを実現することは難しい。我々は、文書のフォーマットを利用して、対訳文の対応付けを行うシステムを試作した。本稿ではこのシステムと従来システムとの比較を行うことによって、対訳文の対応付けに文書フォーマットを利用することの有用性を示す。[figure]
著者
児玉 親亮 藤吉 邦洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.1-15, 2007-01-01

アナログIC設計等で見られる,モジュール上の配線を許さずにモジュール間にて配線を行う設計状況下においては,モジュール配置に対応する方形分割(フロアプラン)の分割線を配線資源領域と見立てることができる.しかし分割線数が多いと配線折れ曲がりが増え,配線長やタイミングの見積りに悪影響を及ぼすと考えられる.最近,与えられたモジュール配置に基づき,かつできるだけ分割線数の少ない方形分割を得る方法が提案された.この方法は分割線数をできるだけ減らすために,「分割線数が部屋数よりちようど3多い」という方形分割の性質に着目し,「相対位置関係を保つために生じてしまうが配置を表すのには不要な空部屋」を分割線を融合することでできるだけ少なくする.しかし,この方法は平面幾何的な図形操作からなるため,このままでは計算機実装が大変難しい.そこで本論文では,この空部屋消去操作の根底にある理論を明らかにし,モジュールの相対位置関係を表現するsequence-pairを用いることで,与えられたモジュール配置から図形操作を行うことなく,その配置に基づき,かつ空部屋数の少ない方形分割に対応するsequence-pairを得る方法を提案する.また,提案手法を計算機実装し,その有効性と高速性を確認する.