著者
秦野 康生 関根 泰樹 金子 敏信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.71, pp.5-12, 2002-05-15

Camelliaは2000年にNTTと三菱電機によって開発された128ビットブロック暗号である。256ビット鍵のCamelliaに対しては、FL関数の無い場合であれば高階差分攻撃を用いることによって10段の攻撃が可能であり、FL関数の有る場合でもSquare攻撃を用いることによって9段の攻撃が可能であることが示されている。本稿では、16階差分によるCamelliaの高階差分攻撃について述べ、256ビット鍵のCamelliaに対して、FL関数の無い場合には11段の攻撃が可能であることを示す。また、本攻撃を選択暗号文攻撃の立場で使用した場合、FL関数の有る場合でも11段の攻撃が可能であることを示す。
著者
川端 健 大垣 康博 金子 敏信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.47, pp.55-62, 2001-05-10
被引用文献数
1

暗号アルゴリズムCamelliaは、NTTと三菱電機が共同開発したブロック暗号である。高階差分攻撃法は選択平文攻撃一つであり、GF(2)^n上の非線形関数に関する高階差分法を利用した攻撃法である。筆者らはE2に対し、平文を適切に選ぶことによる1階差分攻撃を示している。本研究ではその手法を8階差分に拡張しFL及びFL^<-1>を除いたCamelliaに適用した。6段Camelliaでは2^<12>組の平文,2^<22>のF関数計算量で解読が向可能である。計算機実験の結果、Pentium III 500MHzを用いて約10分程度の計算量である。また、この攻撃こ対し、n段消去型攻撃を適用するならば、鍵の全数探索2^<256>より少ないの暗号化計算量で10段まで攻撃可能であると推定できる。
著者
古屋 聡一 櫻井 幸一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ
巻号頁・発行日
vol.96, no.237, pp.55-65, 1996-09-06

本稿ではLOKI91に対して確率カウンタを用いた線形解読法の理論的効率評価を行なう. この攻撃の解析から確率カウンタを1.50×2^<21>個用いて, 4, 6, 7, 9, 10段LOKI91を攻撃した場合, [Tokita, Sorimachi, Matsui, -ASIACRYPT'94, LNCS 917, Springer-Verlag, 1994.] による2<13>個のカウンタを用いた線形解読法よりも最少6%程度の平文暗号文組数で攻撃できることを示し, 12段LOKI91については僅かであるが, 鍵の全数探索よりも計算量の少ない線形解読法による初めての結果である. また, 特に4段LOKI91については最新の結果である非線形表現を用いた多重線形解読による攻撃 [Knudsen, Robshaw, -EUROCRYPT'96, LNCS 1070, Springer-Verlag, 1996.] の場合よりも1/4の平文暗号文組数で攻撃が可能であることを示した.
著者
穴田 哲夫 久保 洋 黒木 太司 出口 博之 内田 浩光 西野 有 山中 宏治 姉川 修 川島 宗也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.522, pp.81-88, 2006-01-13

2005年の欧州マイクロ波会議の概要を報告する。本会議は35回目となり、10月3日から7日まで、フランス・パリのCNIT la Defenseにて開催された。論文数は招待論文及び一般論文の合計706件で、68オーラルセッションと5ポスターセッションで発表された。本報告では、欧州マイクロ波会議の発表を各分野のスペシャリストによって能動・受動デバイス、メタマテリアル、EMC、回路及びアンテナ・伝搬を含めたアクセスシステムまでを概説する。
著者
清川 清 神原 誠之 佐藤 清秀 伴 好弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.584, pp.49-56, 2004-01-15

第2回複合現実感国際会議(ISMAR03: IEEE/ACM International Symposium on Mixed and Augmented Reality)が2003年10月7日〜10日に東京の学術総合センターで開催された.本報告では,本会議の主要論文について紹介し,複合現実感研究の最新動向を探る.
著者
石井 方邦 谷田貝 健 笹瀬 巌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.114, pp.169-174, 2009-06-25

モバイルアドホックネットワークでは,インフラを想定することが難しいため,分散暗号鍵管理方式が用いられるが,従来では信頼できる第三者機関を用いて鍵生成機能を分散するという問題がある.そこで、本論文では,信頼できる第三者機関を無くすために,初期化時に一定数のノードが互いに部分的な初期化用パラメータを送り、鍵生成機能を幾つかのノードに付加する方法を提案する.また,提案方式は、鍵生成成功率を向上させるために,鍵生成機能を持つノードのネットワーク外への離脱を考慮しID廃棄リストを用いることで鍵生成機能の譲渡を可能とする.計算機シミュレーションにより,ネットワーク内の鍵生成機能を持つノードの数を一定に保つことで,提案方式が従来方式に比べ,鍵生成成功率を向上できることを示す.
著者
藤崎 貴章 川島 幸之助
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.5-8, 2003-04-11
被引用文献数
6

P2P(Peer-to-Peer)ストリーミングは、 P2Pネットワークを利用し、ストリームデータの発信および中継処理を各ピアに分散させることによって、個人でのストリーム配信を可能とした技術である。しかし、P2Pネットワークはダイナミックに変化するため、ストリーム配信を各ピアに対して維持することが難しい。本稿では、Gnutellaプロトコルを基本としたPureP2Pストリーム配信ネットワークの構成法を提案し、その有効性について示す。
著者
芳川 美代子 北沢 俊二 島田 享久 朝倉 国勝 大角 昌和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響
巻号頁・発行日
vol.99, no.395, pp.17-23, 1999-10-29

家庭用精米器は、精米時の発生音が大きいため、その低減が強く望まれている。本研究は、精米器発生音の低減を目的とし、音と振動の測定を行い発生音の特徴とその発生機構を解明し、減音対策を実施した。その内容は次のとおりである。(1)振動発生源である搗精部を固定する支持台と、底板,ホッパー,ケーシングを振動絶縁する(2)ケーシングの開口部を減らし内部からの放射音を低下させる。これらの対策により、精米器を構成する部品の振動音と、内部からの放射音が抑制された。従来品と対策を施した精米器の発生音レベルを比較すると、音圧レベルが72dBCから62dBCに低下した。
著者
近藤 智嗣 田中 健二 大西 仁 近藤 喜美夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.1, 1996-03-11

放送教育開発センターでは,これまでにも衛星を用いた教育交流実験を実施してきている.これらの実験を通じて経験した問題点には,衛星回線のトラブルに関するものとスタジオ機器等教室システムに起因するものがあった.衛星回線に関する問題点は,HUB局制御のVSATシステムを構築することで利用者には負担がかからないよう改善がなされた.しかし,教室システムに起因する問題点は,利用者自身が教室内のAV機器等を操作しなければならないため,より容易な操作が可能な教室システムを実現しなければ改善はなされない.文部省が平成7年度から開始したスペースコラボレーションシステム(SCS)計画では,操作が容易な教室システムの実現も重要な課題の一つである.
著者
馬場 聡史 浅沼 健一 前田 忠彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.201, pp.85-90, 2004-07-14
被引用文献数
2

タブレットコンピュータなど手に持って利用される端末を想定した場合,手部がアンテナ素子に与える影響は大きく人体に吸収される電力も大きい.そこで本報告では液晶ディスプレイの金属フレームに複数のアンテナ素子を設置するモデルにおいて,適応的に人体で吸収される電力を低減することを目的とした給電方法について検討を行なった.給電の構成は複数のアンテナ素子間を伝送線路で並列に接続する方法を用いた.解析手法はFDTD法を用い,相対放射電力を評価の指標として単独給電モデル,同時給電モデル,並列給電モデルの3つのモデルについて比較を行い,並列給電の有用性の検討を行なった.その結果,手部の保持位置が変化する場合でも並列給電を行なうことにより,人体の影響を受けにくいアンテナ素子に励振される電力が適応的に多く分配されることを確認した.また,最も人体の影響が表われる場合において約25%,平均では約20%の相対放射電力の向上を確認することができた.さらに,並列給電を行なった場合の指向性に関して検討を行なった.
著者
梅原 大祐 平野 智也 田野 哲 守倉 正博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.60, pp.19-24, 2008-05-22
被引用文献数
7

無線システムのシステム容量の拡大を目的として,マルチホップによる無線中継ネットワークが検討されている.一方,システム容量の拡大の一つの技術として,ネットワークコーディングが注目されている.本稿では,不均一なトラヒック環境下における,2ホップ無線中継Slotted ALOHAシステムに対して,ネットワークコーディングを適用した場合のスループット,パケット送信回数,伝送遅延を解析的に導出する.解析結果は中継ノードのバッファの状態に関する待ち行列システムを解くことによって導かれる.
著者
新 博行 安部田 貞行 佐和橋 衛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.435, pp.57-62, 2000-11-10
被引用文献数
7

本稿では50-100MHz程度の無線帯域幅で, 多値変調(8PSK, 16QAM), ハイブリッドARQ, およびコード多重を用いて, マルチキャリア(MC)-CDMAに基づいたTD-OFCDM(Time Division-Orthogonal Frequency and Code Division Multiplexing, 512サブキャリア, サブキャリア間隔156.25kHz)により, 最大情報伝送速度100Mbps以上を実現する下りリングブロードバンド高速パケット伝送の提案を行う.シミュレーション結果より, コード多重数が拡散率に近い条件では, コードチャネル間の直交性が周波数選択性フェ-ジングにより崩れる影響で, 多値変調を用いる場合あるいは誤り訂正符号の符号化率を大きくした場合に, スループット特性が劣化することを明らかにした.16コード多重(拡散率16), 8PSKおよび符号化率R=2/3の畳み込み符号化を用いると, 3パスのレイリーフェージング環境下(遅延スプレッドσ=102.1nsec)で平均受信E_b/N_0が約24dB以上の場合に, 約105Mbpsの情報伝送速度を実現できることを示した.さらに, 24パスのレイリーフェージング環境下(σ=205.6nsec)においても, QPSKおよび符号化率R=4/5あるいは8PSKおよびR=1/2の畳み込み符号化を用いると, 平均受信E_b/N_0が約20dB以上の領域で約85Mbpsの情報伝送速度を実現できることを示した.
著者
松田 憲幸 柏原 昭博 平嶋 宗 豊田 順一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.326-335, 1997-01-25
被引用文献数
13

プログラミングを行うためには, プログラマは少なくとも, プログラムの動作について明確に理解しておく必要がある. しかしながら初心者の場合プログラムの個々の命令の振舞いを理解できても, プログラム全体の動作を正しく理解できなかったり, プログラム仕様から動作を想定できない場合がよく見られる. このような初心者を対象とする場合, 動作とプログラムコード動作とプログラム仕様の対応関係について説明することが重要となる. 本論文では動作の理解が特に難しい再帰プログラムを対象に, プログラムの動作を介したプログラミングを支援する知的教育システムについて述べる. 筆者らは再帰プログラミングのモデルを想定した上で, 学習者にとって理解が容易となるようにプログラムの動作を表現し, これをプログラムの振舞いと呼んでいる. 本論文ではこの振舞い表現を用いて, 再帰プログラムの設計過程および理解過程を支援する方法について論じる. 特に, 雛形を用いた解法による設計過程の支援ならびに, 振舞い表現の可視化による理解過程の支援について述べる. 更に振舞い表現の評価実験についても述べる.
著者
梅尾 寛之 水頭 一壽 武田 瑛 加藤 真平 山崎 信行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DC, ディペンダブルコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.464, pp.55-60, 2009-02-26

リアルタイム処理用プロセッサResponsive Multithreaded Processorは,スレッド数が8スレッド以内であればコンテキストスイッチを行わずに優先度順に同時実行可能なRMT実行機構を持つ.しかしながら,9スレッド以上を実行する場合,ソフトウェアスケジューラによってコンテキストスイッチを行わなければならない.また周期タスクのリリースの為にはソフトウェアスケジューラを定期的に呼び出し,リリース時間をチェックしなければならない.本論文では,RMT Processorを対象としたハードウェアによるスレッドスケジューリング機構の設計と実装について述べる.本スレッドスケジューリング機構では,RMT ProcessorのプロセッシングコアであるRMT PUが全スレッドの周期を保持し,周期スレッドをハードウェアで起床させる.更に,コンテキストキャッシュ内のスレッドと実行スレッドを比較し,ハードウェアでコンテキストスイッチを行う.本スレッドスケジューリング機構によってソフトウェアによるスケジューリングを不要とし,スケジューリングオーバヘッドを大幅に削減する.
著者
唐澤 信司 池田 千里 具 龍曾 〓 俊憲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語
巻号頁・発行日
vol.97, no.567, pp.9-16, 1998-02-23
被引用文献数
5

本文は言語を認識したり、あるいは言語を出力する機能のモデルを検討したものである。情報は記号であり、知能は解読器によって実現する。自律神経系の活動や随意運動あるいは言語機能も解読器を要素として実現できる。特に行動の制御や言語の知能は体験に依存し、その経験依存性が個性と共通性をもたらす。さまざまな解読器がオーバーラップして形成されるので、それらの概念の間には部分的に属性を共通したり、物理的な関係あるいは従属関係などを持つ。また、シリアルである言語表現機能と関係することが、解読器が次々と活動して信号が伝播すること(思考)を可能にする。
著者
大槻 恭士 大友 照彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.473, pp.25-30, 2002-11-15

口唇周りのオプティカルフローと単語HMMを用いた駅名発話画像認識システムについて述べる.本システムでは,オプティカルフローの抽出を専用ハードウェア「カラートラッキングビジョン」により行い,得られた特徴ベクトルをベクトル量子化によりシンボルに変換し,離散出力分布型HMMによる学習および認識を行う.特定話者における駅名50単語の認識実験より,平滑化したオプティカルフロー測定値を50画素間隔に間引いた80次元の特徴ベクトルが最も高い認識性能を与えること,状態数26の単語HMMが最も高い認識性能を与えること,また,摂動データを学習データとした場合,位置ずれなしで97%,25画素程度の位置ずれを許容して96.7%,50画素程度の位置ずれを許容しても92.4%と非常に高い認識性能が得られることなどがわかった.
著者
デルクロア マーク 中谷 智広 渡部 晋治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.405, pp.55-60, 2007-12-13

一般に、雑音や残響の影響により音声認識率は低下する。これに対し、音声強調を前処理として用いると、時間的に変化する音響的な歪みをある程度低減することができるが、必ずしも音声認識性能を改善できるとはかぎらなかった。また、モデル適応技術を用いることで、音声強調処理後の音声と音響モデルのミスマッチをある程度低減することができるが、動的なミスマッチについては扱うことはできなかった。音声強調とモデル適応のより最適な組み合わせ法の開発が重要であると考えられる。本稿では、動的なミスマッチについても適切に低減できるモデル適応法を提案する。分散を静的な分散と動的な分散で構成されるパラメトリックモデルで表現し、適応処理に基づき、モデルパラメータを最適化する。実験により、残響除去を前処理として用いた場合に、認識誤りを80%削減できること、およびクリーン音声に近い5.4ることを示す。クリーン音声の場合と近い性能が得られた。
著者
キャンベル ニック
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語
巻号頁・発行日
vol.99, no.487, pp.61-67, 1999-12-03

声によるコンピュータ情報へのアクセスは、平等なコミュニケーションの方法として有効であろう。情報化社会の進化が生み出したコンピュータのキーボードを自由に操り、自由に情報をアクセスできる人と、コンピュータを使えないがために情報化社会から取り残された人との差を縮めるだろう。社会の国際化や情報化によって、多言語コミュニケーションはより一般的かつ身近なものになったが、今だ言葉の壁は大きい。本報告で紹介する音声合成とそのデータベース作成技術により、親しみやすい、聞き取りやすい、個人性をもつ合成音声が可能になりました。しかし、この音声合成技術の高品質化に伴い、新たな問題が生まれた。つまり合成された音声があまりに人間の声に近いことによって生じた著作権(声の権利)と、翻訳された結果や声で伝えるニュアンスの相違など内容に対する責任の問題である。
著者
中井 孝芳 高尾 諭司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.73, pp.15-22, 2001-05-18
被引用文献数
1

この報告では発声者自身がどのように知覚しているかについて述べている。我々はプロープマイクロホンにより外耳道から1cmの位置での音 (空気伝導音声) と、口唇から正面30cmの距離での音 (正面音声) を測定した。また、超小型加速度計で側頭骨の骨振動 (骨振動) を測定した。被験者は6から8名である。結果より, 高周波で空気伝導音声は正面音声に比べ 5から10dB 低いことがわかった。空気伝導音声を発声者自身に聞かせたところ. 自分自身の声に近いが低音が足りないことがわかった。骨振動は300Hzと700Hz付近にピークがあり、1kHz以上はノイズレベルであった。空気伝導音声と骨振動を加えると発声者自身の声に近くなった。この時性からも空気伝導が主な経路といえる。
著者
田村 正統 益子 貴史 徳田 恵一 小林 隆夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.545-553, 2002-04-01
被引用文献数
19

本論文では,不特定話者の音声合成単位である"平均声"モデルから,任意話者の特徴をもつ音声を合成する手法を提案する.提案手法は,HMMに基づくテキスト音声合成システムに基づいている.HMMに基づく音声合成システムでは,多空間上の確率分布(MSD)に基づくHMMを用いてスペクトル及びピッチパラメータを同時にモデル化しており,HMMのパラメータを適切に変換することにより合成音声の声質や韻律特徴を変換できる.本論文では,MLLRアルゴリズムをMSD-HMMに拡張し,ピッチ及びスペクトルモデルの話者適応を行うことにより,目標話者の少量の文章を用いて,声質のみでなく韻律情報も適応できることを示す.主観評価試験により,ピッチ及びスペクトルを同時に話者適応することにより,平均声モデルを数文章で適応したモデルから,特定話者モデルからの合成音声に近い音声を合成できることを示した.