著者
畝田 道雄 外園 博一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1120-1129, 2002-07-01
被引用文献数
10

飛しょう体発射試験において,飛しょう体や標的機等の経路計測及び解析を精確に行うための精密計測レーダとして,「標定用レーダ」を研究開発している.本レーダはX帯アクティブフェーズドアレーアンテナによって構成されており,基本的測角方式にはアンテナ開口を4分割するモノパルス方式を採用している.また,MUSIC等の高分解能測角処理も可能となるように,本レーダには同一アンテナ開口面上に等価8チャネル円形配列アレーアンテナが設けられている.一方,チャネル間に振幅・位相偏差がある場合,高分解能測角処理性能は低下するため,本レーダは受信器のチャネル間偏差を補償できるハードウェアキャリブレーション機能を有している.ところが,ハードウェアキャリブレーション機能を具備するためには複雑な回路構成が必要となることから,将来的に本機能を必要としないソフトウェアキャリブレーション法が確立できれば,ハードウェア面とともにコスト面からも有利であると考えられる.本論文では,初めに本レーダにおける等価円形配列アレーアンテナの概要を述べるとともに,ハードウェアキャリブレーション機能の使用,未使用の双方の状態で実際に取得したレーダ受信信号のMUSIC処理を行い,その際に得られた結果を報告する.加えて,チャネル間振幅・位相偏差のソフトウェアキャリブレーション法として,受信信号に対する振幅・位相偏差補償処理アルゴリズムを用いることで,その有効性を確認した結果を述べる.
著者
菊池 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.338, pp.51-53, 2006-11-03
参考文献数
1

高臨場感ディスプレイを本格的に応用したアーケードゲーム筐体P.O.D.(panoramic optical display)と、これを使用した「機動戦士ガンダム 戦場の絆」の例を通し我々が目指したことについて紹介する。
著者
美馬 覚 大谷 知行 古賀 健介 高橋 研太 古川 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.12, pp.15-20, 2013-04-12

我々は、超高感度の宇宙マイクロ波背景放射(CMB)観測を目的として、超伝導マイクロ波力学インダクタンス検出器(MKIDs)の開発を進めている。MKIDsは、ミリ波・THz波などの吸収でマイクロ波共振周波数が変化する検出部と、数GHzのマイクロ波信号を伝送させる信号読み出し伝送線路とで構成され、1系統のリードアウトで100-1000画素の信号を同時読み出しが可能である。このため、大規模アレイ化が容易であり、また、薄膜に特定のパターンを刻むだけで検出器として動作するため、作製が容易であり開発スピードが速いという利点を有する。本講演では、我々が進める検出器の研究開発の進捗について報告する。
著者
伊藤 涼 鈴木 隼人 千葉 諒太郎 佐野 健太郎 山本 悟
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RECONF, リコンフィギャラブルシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.418, pp.1-6, 2014-01-21

近年のFPGAの応用範囲の拡大に伴い,抽象度の高い言語によってハードウェア設計を行う高位合成技術の研究が重要性を増しつつある.本研究室では,FPGAを用いたストリーム計算専用計算機の開発を行ってきたが,回路規模の大規模化により,アルゴリズム設計からハードウェア実装までの時間短縮による生産性の向上が強く望まれている.そこで,本研究では,特定の数値計算問題に特化したストリーム計算回路を自動生成するコンパイラ(Stream Processor Generator,SPGen)を提案する.本論文では,SPGenの目的および要求仕様を説明した後に,その実装について述べる.
著者
小川 剛史 白井 博章 柳沢 豊 塚本 昌彦 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎
巻号頁・発行日
vol.96, no.390, pp.55-62, 1996-11-22
被引用文献数
5

近年, 計算機上に仮想空間を構築する技術を用いることで, リアリティの高いヒューマンコミュニケーションを実現しようとする研究が盛んに行なわれている. このような中で, 筆者らの研究グループにおいては, 計算機上に構築した仮想空間を現実空間と一対一に対応付け, 計算機のユーザが仮想空間内で行動することで, そのユーザがあたかも現実空間内で行動しているかのように感じさせることのできる, 「透明人間」と呼ぶ環境を提案している. 本稿では, この「透明人間」環境を実現するためのシステムの設計について述べる. この「透明人間」環境においては, 机上の計算機内に表示される仮想空間内で行動するユーザと, 移動可能な携帯型端末をもつユーザが, それらの端末を通して柔軟にコミュニケーションをとることが可能となる.
著者
藤田 英徳 西本 一志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.742, pp.1-6, 2004-03-18
被引用文献数
3

近年のIT技術の発達に伴い,携帯電話やコンピュータを利用したコミュニケーションツールが発達し,遠隔地間でも気軽にコミュニケーションを取る事ができるようになってきた.しかし,既存コミュニケーションツールでは思いやりのような繊細な気持ちを十分に伝え合うことは依然として難しい.その困難の理由として,互いの状況に関する常時的認識と適時性の欠如,また非言語情報の不足が考えられる.本研究では,状況に関する常時的認識と適時性に注目し,気温情報を状況アウェアネス情報として常時伝達しあい,気温変化が生じた際に「あたためる行為」を伝えることにより,遠く離れた親しい人への思いやり感を醸成するシステムを"Lovelet"を提案する.Loveletを用い,二組の遠距離恋愛を行うカップルに約2週間の実験を行い,アンケート調査とログデータに基づき評価を行った.この結果,実際に気温変化に応じた「あたため行為」の伝達が生じ,それによって親しみ感やつながり感が増すことがわかった.また,既存コミュニケーションツールと併用して使用するセカンドコミュニケーションツールとしての有効性も確認され,さまざまな気持ちのやりとりにも使用されていたことも明らかになった.
著者
中村 亨
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.34, pp.1-8, 2000-05-04
被引用文献数
9

自然なおかしさの笑いと作り笑いの表出の差を解明するため, 目と口, 腹部における笑い表出の開始の時間差を分析する実験を行った.ビデオ記録に加え, 眼輪筋及び大頬骨筋の筋電図, 呼吸曲線を記録した.被験者は男性15名, 女性17名で, YG性格検査の得点で社交群と非社交群に分類した.コメディビデオを見せた時の自然な笑い, 面白くないコメディビデオを見せた時の作り笑い, 教示のみによる単純な作り笑いを比較した.その結果, 3種類の笑い間で, 目と呼吸の時間差に有意差がみられた.また, 女性非社交群と男性社交群で, 眼と口の時間差に有意義がみられた.
著者
上原 哲太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.392, pp.1-6, 2004-10-22

近年,電子政府・電子自治体の構築の名の下に,地方自治体は政府によってその住民サービスの電子化とネットワーク化を奨励され,一部は半ば強制されてきた.現在,多くの地方自治体のシステムが住民基本台帳ネットワークやLG-WAN,インターネットなどの広域ネットワークに接続されている.この結果,個人情報の機密性を守るためにこれらのシステムの情報セキュリティマネジメントは極めて重要になった.しかし多くの市民が,自治体に個人情報保護の能力が十分あるのかどうか疑問を投げかけている.本論文では,自治体が抱えている情報セキュリティ上の課題を分析し,その対策について提案する.
著者
西本 将也 依田 浩和 八名 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.524, pp.17-22, 2007-01-25
被引用文献数
2

本稿では,日本のバックボーンを代表するインターネットエクスチェンジにおけるネットワークトラヒックの長期変動を対象にし,状態空間モデルによるネットワークトラヒックの成分分解について述べる.ネットワークトラヒックの長期変動に対しては周期的な変動あるいは祝日における変動などが見られ,これらに対しいくつかの状態空間モデルを提案し,カルマンフィルタの適用によってそれら各変動成分への分解を行う.また,これらの状態空間モデルは尤度によりモデルのパラメータの推定を行った.また応用例として,最も適合するモデルに対しそのトラヒックの予測についても行った.
著者
駒澤 寛士 松本 敏明 縄手 雅彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.432, pp.25-29, 2008-01-17
被引用文献数
2

視知覚能力において重要な視覚と運動の協応の能力を鍛えるために、物体の動きを予測してスイッチを押すというゲーム形式の訓練ツールを開発した.協力者は松江清心養護学校に通う小学2年生の脳性麻痺児2名で,マウスを使う事ができない.そこでインターフェイスにワンボタンスイッチを用いた.訓練を行った結果,目標とするところとは明らかに異なっているタイミングでスイッチを押すことがあった.これは,"失敗"の時のアクションが楽しい,ゲームに飽きが生じて集中力が切れた,訓練に疲れたことによって起こると考えられる.このため,押すべき時だけ押してもらう工夫が必要であることがわかった.
著者
近藤 和弘 チャールズ ヘンプヒル
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.257-267, 1998-02-25
参考文献数
16
被引用文献数
13

不特定話者連続音性認識を用いて, 音声でWorld Wide Web(WWW)ブラウザが制御可能なシステムを試作した.このシステムでは現在ブラウズしているページ中のアンカー名を読むことにより, そのリンク先のページに進むことができる.また, 音声を用いて, ブラウザを制御することも可能である.新しいWWWページに移行するたびにブラウズ中のページからアンカー名を抽出し, これを音素列に変換し, 文法を作成し, 音声認識システムに与えて語いをダイナミックに切り換える.このとき, 日付, 年齢などの例外的な読み方に対応する必要がある.簡単な音素列変換テストの結果, 最も正答に近い候補中に97%の正しい音素列が含まれていることが確認された.更に, 日本語ページには英文アンカー名も多く含まれるため, 限定語いの英語も認識できるようにした.簡単なユーザテストの結果, 91.5%のタスク達成率を得た.エラーの原因は音声認識精度によるものよりむしろユーザの誤読, 音声検出ミスなどの方が多いことがわかった.不慣れなために起こるユーザ誤操作を除いたタスク達成率は94.1%である.
著者
安田 明生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2082-2091, 2001-12-01
参考文献数
44
被引用文献数
52

GPSは1970年代に米軍により開発が開始され, 1993年に完成した衛星測位システムである.世界中どこでもいつでも実時間の高精度測位が可能となり, それ以来10年足らずの間に, 各種の航法のみならず, 膨大な分野での応用開発が進行中で, 今やこのシステムなしでは, 日常生活もままならぬほどの展開を見せている.一見, オールマイティで今更研究の余地が残されているのかと思われがちであるが, まだ解決すべき多くの課題を抱えている.GPS受信機自体の改良, 広域・狭域補強システムの開発, 屋内から, 上空が制限された市街地に至るシームレスな測位を可能とする擬似衛星技術の開発研究, RTK-GPSの広域化をめざす仮想基準点方式(VRS)の研究と枚挙にいとまがない.本論文ではGPSシステムの概要を示すとともに, GPSにかかわる諸般の技術の展望を述べる.
著者
大谷 大和 戸田 智基 猿渡 洋 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.1082-1091, 2008-04-01
被引用文献数
3

声質変換において,スペクトル特徴量系列の統計的モデル化技術の発展により,その変換性能は大幅に改善された.しかし,声質変換で用いられる音源モデルでは実際の音源を正確に表現できていないため,その変換音声の自然性は十分なものとはいいがたい.これを改善するために,スペクトル特徴量系列と同様に音源特徴量系列に対しても統計的なモデリングを行う必要がある.本論文では混合正規分布モデル(Gaussian Mixture Model: GMM)に基づく声質変換法の枠組みに対してSTRAIGHT混合励振源を導入する.提案法では,スペクトル特徴量系列及び音源特徴量系列に対して最ゆう推定(Maximum likelihood estimation: MLE)に基づく特徴量変換が行われる.客観評価実験並びに主観評価実験の結果より,提案法により音質,話者性変換精度が大きく改善されることを示す.
著者
吉村 貴克 徳田 恵一 益子 貴史 小林 隆夫 北村 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.8, pp.1565-1571, 2004-08-01
被引用文献数
4

本論文は,HMMに基づいた音声合成システムに混合励振源モデルを導入することにより,合成音声の品質向上を図ることを目的とする.我々はこれまでに,メルケプストラム,基本周波数,継続長をHMMの枠組みでモデル化し,HMMからこれらの音声パラメータを出力することによって音声を合成するテキスト音声合成システムを提案した.このシステムでは,合成フィルタ(MLSAフィルタ)を励振する際の励振源モデルとして,有声区間,無声区間でそれぞれパルス列と白色雑音を切り換える単純なモデルを用いている.このような励振源を用いる場合,有声摩擦音のように周期成分と非周期成分をともにもつ音声を合成することができず,合成音声の品質を劣化させる原因となる.そこで本論文では,パルス列と白色雑音を混合する混合励振源モデルを用いることにより高品質な音声を実現している狭帯域音声符号化手法MELPの混合励振源モデルを導入する.この混合励振源モデルは,狭帯域音声符号化だけでなく,広帯域音声符号化へも応用されていることから,音声合成においても有効性が期待される.更に,多くの音声符号化手法で用いられているポストフィルタを導入し,合成音声の品質を向上を図る.また主観評価実験により,本システムにおける混合励振源モデルとポストフィルタの有効性を示す.
著者
村瀬 洋 Vinod V.V.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.81, no.9, pp.2035-2042, 1998-09
被引用文献数
116

本論文では, 画像中に興味ある物体が含まれているかどうか, その位置はどこかを高速に探索するアクティブ探索法について述べる.位置と大きさが不明な物体を画像中から精度良く検出するには, 従来は, 入力画像中の局所領域に着目し, その位置と大きさを変化させながら, 局所領域と参照画像との膨大な回数の照合を行う必要があり, 高速な物体検出は困難であった.本手法では, 物体の形状変形などに安定な色ヒストグラムを特徴として利用し, ヒストグラムの代数的な性質を利用することにより, 特徴照合の際に, 入力画像中のある位置の類似値からその近傍の類似値の上限値を計算する.上限値が探索値より小さければ, その領域での探索が省略できるため, 照合回数を極端に低減できる.本手法により, 総当り法に比較して, 近似を使うことなく, 計算時間を10倍から1000倍程度向上できることを実証した.物体の追跡, 検索, 計数などへの応用例についても述べる.
著者
一政 信行 渡辺 澄夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.1, 1996-03-11

近年、音声合成技術が実用に使われるようになり、多種多様な機能が求められている。本論では、ニューラルネットと動的計画法を用いて特定の個人の口調のものまねを自動的に行うシステムを提案する。
著者
凍田 和美 宇津宮 孝一 西野 浩明 善岡 賢二 倉岡 大輔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎
巻号頁・発行日
vol.96, no.390, pp.41-46, 1996-11-22
参考文献数
7
被引用文献数
5

我々は, 電子グローブに, 人が手を使って3次元空間に表現する, ジェスチャ, 位置指示, 大きさ表現の3つの動作に基づいた基本機能を用意した。この基本機能を用いて実現した仮想造形環境は, 簡略化した形状の物体を, 手で直接作成するより, 繁雑で, 多くの労力と時間を必要とする仮想空間の作成を容易にする。本稿では, 両手電子グローブの3つの基本機能とそれを用いた仮想造形システムの概要, 仮想打上げ花火システムへの適用, および, 本インタフェースの検討を述べる。
著者
坂井田 瑠衣 加藤 文俊 諏訪 正樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.455, pp.99-104, 2013-02-25

共食の場をデザインするにあたっては,料理形式や参与者同士の関係性を考慮した上で,相応しい座席配置を決めることが望ましいが,その具体的な配置に関する優劣は明らかでない.そこで,協同調理行為を伴う食卓において,座席配置がコミュニケーションに及ぼす影響を検討した.お好み焼きを協同で調理しながら会話するべく食卓を設定し,調理時と非調理時において生じるコミュニケーションの秩序の差異を,発話者遷移分析により明らかにした.身体が調理行為に拘束される食卓においては,親密度の低い参与者同士を隣同士ではなく向かい合わせに着席させることで,調理によって会話が滞ることなく進展することが示唆された.
著者
賀沢 秀人 平尾 努 前田 英作
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.317, pp.11-16, 2002-09-12

全順序を備えた未知の集合から取り出された順位つきサンプルを利用し,サンプル間の順序関係を推定する「順位づけ学習問題」について議論する.従来,ある順位を境にサンプルを正例と負例にわけ,SVMの学習を行ったのち,得られた識別関数の値で未知の事例に対する順位づけを行うという手法が提案されている.この手法は,実験的に高い精度を残すことが報告されているが,妥当性について理論的な説明を欠き,また,ある特定の順位の上下という粗い順序関係しか用いていないという点で,問題があった.そこで,本稿では,このSVMによる順序づけ手法の理論的な妥当性を検証するとともに,改善手法の一つとして,複数の順位を境として正例と負例にわけたサンプルから学習を行うRanking SVMの提案を行う.また,テキスト自動要約タスクにおける重要文抽出データと人工データを用いて,Ranking SVMと従来手法を比較した結果についても報告する.
著者
坂口 嘉之 美濃 導彦 池田 克夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.483-491, 1995-03-25
参考文献数
20
被引用文献数
14

衣服の数値計算において,動的に変形する衣服と人体との衝突を,摩擦と跳ね返りの影響をも含んだ制約条件とみなした制約充足型アプローチによる衝突の影響の計算方法とその応用について述べる.衣服の変形過程は,衣服の自己衝突と人体形状に影響されるため,衣服形状を計算するには,これらとの衝突を計算する必要がある.また,衣服を着た人間の動きを表現する場合には,衣服の動きと人体の動きの両方を考慮した衝突計算を行わなければならなず,複雑で時間のかかる処理となる.しかし,人体の動きと衣服の動きの相対速度が十分小さい場合には,衣服から人体への衝突だけに注目すればよく,計算速度を向上させることができる.計算実験として,実際の婦人用ワンピースの型紙と,実測の布特性を用いて,距離画像から作成した人体モデルに着せつけた.その結果,布が人体表面を滑らかにすべるような状況が計算でき,計算結果は実物の形状に近いものになった.