著者
片岡 祥啓 宮本 貴朗 青木 茂樹 泉 正夫 福永 邦雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.139, pp.23-30, 2007-07-12

これまでに提案されているキーストロークを利用した個人認証の研究では,キーが押されていた時間を比較したり,パスワードを打つリズムを意図的に作り出すことによってユーザ認証を行っていた.しかし,これらの手法はパスワードなどの定型文には有効であるが,自由な文章(非定型文)を用いた場合は,定型文に比べ大幅に減少するため識別率が大きく低下するという問題があった.本稿では,非定型文を用いた場合にもユーザの特徴を的確に捉え,個人認証を行うことができる手法を提案する.まず,キーストロークの特徴として,連続する二文字(二連字)を押した時の時刻と離した時の時刻から計算できる各種の時間を特徴として抽出する.次に,二連字の種類ごとにその特徴の平均値で昇順に並べる.そして,その並び方と予め作成しておいたプロファイルの並び方をKendallの順位相関係数で比較する.さらに,二連字が押されていた時間をプロファイルデータに登録されている時間と比較することにより個人を識別する.
著者
津崎 実
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.247, pp.19-24, 2002-07-18

このチュートリアルではBregmanの研究とその発想を軸として聴覚による情景分析について概説をします。聴覚情景分析には音源定位以外の側面があること,さらにBregmanの研究の中では音源定位の話題が中心的な位置を占めないことの背景について説明し,いわゆる音源分離と音脈分凝の間の相違点について述べます。次に音環境に備わる4つの規則性と,それぞれに基づいた聴覚的情景分析の特徴について概説し,音声信号を扱う上で重要な要因となるトップダウンな情報処理が音脈分凝の研究の枠組みの中でどのように扱われているかについて説明します。
著者
三浦 康秀 増市 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.158, pp.139-144, 2007-07-17
被引用文献数
1

本稿では,専門分野コーパス内に出現頻度の低い専門用語の候補文字列があるときに,その文字列を構成する部分文字列および専門分野コーパス内での周辺文字列のパープレキシティ用いて,専門用語としてのスコア付けを行う手法を提案する.文字列が与えられたときに,文字列を構成するn-gramの部分文字列を抽出しレそれらの専門分野コーパスでのパープレキシティを計算する.また同時に,専門分野コーパス内で文字列の周囲に現れるn-gramの周辺文字列のパープレキシティを計算し,これらの比を文字列のスコアとして設定する.本手法の評価実験として,インターネット上で公開されている病名辞書および解剖学用語辞書の見出し語を構成する文字列で,約6,7000件の医療テキスト内での出現回数が5回以下の文字列についてスコア付けを行い,上位200文字列の用語としての成立の可否を医師が確認した.また,比較のため名詞の出現頻度および連接頻度を用いるTerm Extractでも同様の実験を行った.結果として平均で,1-gramでは正解率70.4%,2-gramでは正解率83.5%が得られ,Term Extractによる正解率,70.6%と比較して良好な結果が得られた.
著者
宮田 高道 岩下 英史 酒井 善則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.380, pp.39-43, 2010-01-14

携帯電話に代表される低解像度のディスプレイで,高解像度の動画像を視聴する際には解像度変換が必要となる.一方,低解像度ディスプレイでの閲覧時にユーザが各自の所望の箇所を拡大して閲覧可能なvirtual cameraworkと呼ばれるユーザインタフェースも提案されている.そこで本研究では,ある動画像について複数の視聴者がvirual cameraworkを用いて提示範囲を指定したときの操作履歴から,視聴者の人気集中度等の情報を得た.これに基づいて多くの視聴者が所望する箇所を可能な限り縮小せずに提示することを目的とし,動的輪郭モデルやSeam Carvingのアルゴリズムを応用した集合知による解像度変換法を提案した.これらの手法を単純なダウンサンプリングと客観評価尺度によって比較し,提案する解像度変換の有効性を検討した.
著者
松崎 博季 元木 邦俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.252, pp.7-12, 2005-08-18
被引用文献数
2

口腔と鼻腔が結合した日本語母音/a/発声のMRIデータから作成した鼻腔付き3次元声道形状モデルとこのモデルから鼻腔を取り去った鼻腔無しモデルの音響特性を有限要素法を用いて解析した.有限要素法のシミュレーション結果より伝達特性と複素音響インテンシティを計算した.実験結果より, 3kHz以下の周波数領域で鼻腔が結合することでピークや谷が生じることが示された.3kHzから5kHz間では両モデルの伝達特性はほぼ一致したが, 5kHz以上では異なっていた.第1, 2ピーク周波数において, 鼻腔付きモデルの複素音響インテンシティのベクトル分布は鼻腔無しモデルのものとは大きく異なる分布であった.鼻腔付きモデルの伝達特性に見られた近接した谷とピークの対の複素音響インテンシティのベクトル分布は僅かな周波数差にもかかわらず異なるものとなった.
著者
大西 仁 山崎 聡 望月 要 中村 直人 結城 皖曠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MoMuC, モバイルマルチメディア通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.291, pp.7-10, 2003-08-28

マルチメディア通信における映像・音声の伝送遅延が与える心理的影響を客観的定量的に測定する方法を提案する。提案する手法では、潜在学習の一種である人工文法の学習を課題とし、学習時のフィードバック遅延を独立変数、被験者の学習パフォーマンスを指標として、遅延の与える心理的影響を測定する。実験では、人工文法学習において、フィードバックに300msの遅延がある条件の被験者のパフォーマンスを遅延がない条件の被験者のパフォーマンスと比較した。実験結果は、フィードバックに300msの遅延が入ると、被験者の学習パフォーマンスを低下することを示した。この結果は、被験者が気づかない程度の微小な伝送遅延がユーザに情動的影響だけでなく、認知的な影響を与えていることを示唆している。
著者
藤平 光壮 岩沼 宏治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理
巻号頁・発行日
vol.96, no.77, pp.17-24, 1996-05-24

逐次型探索において, 探索の順序は極めて重要である. PTTP型定理証明においては, ゴールの順序が探索の順序を決定する. ゴールの順序により探索空間の大きさが変わってしまう. 本研究では, 証明を開始する前に各リテラルの探索空間コストをある程度予測し, 探索空間が小さくなるようにリテラルの並び換えを行なう. 並び換えの方法をいくつか提案し, 実装, 性能評価実験, 他の証明器との比較実験を行なった.
著者
中谷 多哉子 近藤 城史 位野木 万里 津田 道夫 堀 昭三 片峯 恵一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.150, pp.25-30, 2009-07-16
被引用文献数
2

多くの要求がプロジェクトの遂行中に変更され,それによる手戻りで納期が遅れることがある.この問題を解決するために,我々はPRINCEモデルと名付けた要求獲得のプロセスモデルを提唱している.このモデルは,要求獲得のプロセスを3+1の型に分類することによって,プロジェクトの全期間にわたって要求を獲得する計画を立案するためのモデルである.要求獲得を立案するためには,過去のプロジェクトで行われた要求獲得の実態を明らかにし,要求獲得プロセスを計画するための指針を導出しなければならない.本稿では,PRINCEモデルの概要を述べた後に,要求を観測する方法をガイドラインとしてまとめた結果を紹介し,ガイドラインを適用した結果を示すことによって,ガイドラインの今後の課題を検討する.
著者
棟方 哲弥 鈴木 陽一 魚住 超 託間 晋平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響
巻号頁・発行日
vol.98, no.247, pp.63-68, 1998-08-27

本論文は, 頭部伝達関数の模擬による3次元音像定位装置を用いて音源定位能力の向上を目的とした教材を開発し, その有用性の確認を試みたものである.適用実験には3名の先天盲児が参加した.学習セッションとして、1回につき5分間から26分間の学習が8日間にわたって行われた。一人当たりの学習回数は8回から9回であった。学習セッション前に比べて3名全員が目標値までの誤差を有意に減少させていたことなどから作成された学習システムが盲児の音源定位能力の向上に有効であることが示唆された。
著者
木實 新一 上林 弥彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.96, no.440, pp.33-40, 1996-12-21

コンピュータ上の仮想世界を示す言葉「サイバースペース」はSF小説で用いられたのがはじめであるが, 現在この言葉は我々にとって身近な存在となっている. ふだん電子メールやWWW, ネットニューズ, チャットを利用しているとき, 我々はサイバースペースにいる. 現在のサイバースペースはさまざまな問題を抱えており, それらが顕在化しつつある. しかしながら, 仮想世界と現実世界の結び付きは多種多様であるため, それらの問題を一般的に解決することは困難である. このことが顕著に表れるのが, サイバースペースにおけるレイプの問題である. 最近のネットワーク社会の問題についても触れ, 解決法についても議論する.
著者
川本 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.537, pp.19-28, 2004-12-13

カルフォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学はITシステムの可用性向上を主眼として,共同研究プロジェクトRecovery Oriented Computing(ROC)を推進している。著者は一年間スタンフォード大学に滞在しROCの中核技術の一つであるMicrorebootの研究に携わった。本稿ではROCの概要とMicrorebootの実現と評価について紹介する。ITシステムにソフトウェア障害が発生したとき,その多くはシフトウェアを再起動することによって復旧することが多い。Microrebootは,ソフトウェアのうち障害の発生したコンポーネントのみを再起動することによらて,ソフトウェア全体を再起動する場合に比べ早期にサービスを復旧し,システムの可用性を向上する技術である。評価実験より,Microrebootはソフトウェア全体の再起動に比べ可用性を一桁向上できるごとが分かった。
著者
佐藤 哲也 杉本 雅則 橋爪 宏達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.953-963, 2009-12-01
被引用文献数
2

我々は,これまでに位相一致法と呼ばれる高精度測距手法に基づく超音波測位システムを実装した.このシステムでは,極座標上の3m,20°の静止状態での測位において,標準偏差0.18mm,0.1°と極めて高精度な計測が可能であることを確認した.しかし,移動体測位ではドップラー効果により計測誤差が発生し,静止状態ほどの正確な測位が行えないことが分かった.この問題に対し,我々は独自の信号周波数推定法を考案し,受信信号のドップラーシフト量の推定とドップラーシフト補償を行った.更に,推定されたドップラーシフトから,副次的に送信ノードの移動速度も検出可能となった.実機への実装により,超音波センサの周波数特性に起因すると推定される計測誤差が確認された.移動体測位実験では,提案する周波数推定手法と周波数特性の補正により,静止状態とほぼ同等な精度で測位できることを確認した.
著者
伊藤 俊夫 杉本 雅則 橋爪 宏達
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.559-570, 2009-08-01
被引用文献数
2

本研究では,超音波イメージングシステムを記述する新しい線形モデルを提案する.このモデルでは,イメージングシステムは周波数領域におけるフィルタ関数として記述される.このフィルタ関数は,超音波センサの配置といった,システムのデザインパラメータから容易に導かれるものである.また,フーリエ変換の性質に基づいてフィルタ関数を分析することで,そのシステムの特性を見積もることができる.このため,提案モデルを用いることで,システムデザインとそのシステムの特性との関係を直感的に把握することが可能となり,システム設計を効率的に進めることができる.本論文では,提案モデルを用いた分析の例として,システムの角度分解能とグレーティングローブに関する分析を紹介し,提案モデルの有効性を示す.また,イメージングのシミュレーションを行い,得られる画像に見られる性質が提案モデルによる予測と一致するかを検証した.その結果,平面波近似が成立する範囲において,提案モデルとシミュレーションの結果は符合することを確認した.これは,提案モデルの正当性を示すものである.
著者
池田 和司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.502, pp.7-12, 2004-12-03

皮質領野のニューロンを特徴づけあるいは分類するため,情報幾何学の手法を応用した.スパイク列のインタースパイクインタバル(ISI)が平均発火率が時変のガンマ分布に従うという仮定のもとでは,この問題は統計学におけるセミパラメトリック推定として定式化される.これまで,ISIの統計的性質に関してC_V,S_K,L_Vなどの統計量が提案されてきたが,これらはセミパラメトリック推定問題に適当な仮定を追加した場合の近似解として表されることを示した.また,同じ仮定のもとで,情報幾何学的見地からより良い統計量を提案する.
著者
森川 博之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. USN, ユビキタス・センサネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.43, pp.31-36, 2008-05-15
被引用文献数
2

ユビキタスネットワーク環境の実現に向けては,さまざまな実験的/前衛的なアプリケーションを実装評価しつつ,技術課題を抽出し,汎用性のある基盤技術の開発を進めていかなければならない.このような観点から,筆者らは,今までにSTONEルーム,秋葉原ユビキタス実証実験スペース,駒場リサーチキャンパス研究室などのスマートスペースを構築してきた.センサやアクチュエータを埋め込んだスマート空間を自由にかつ容易に構築することのできる空間である.本講演では,これらのスマートスペースの運用経験に基づき,ユビキタスネットワーク技術と空間構築との融合のこれからの展開シナリオやロードマップを示す.
著者
赤堀 肇 石川 智治 小林 幸夫 宮原 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.260, pp.1-8, 1999-08-27
被引用文献数
9

我々は高度感性情報を再現できるオーディオ・システムの開発を目的に、それに必要な未知の重要な物理要因を探求する研究を行なっている。これまでの我々の研究により、ディジタル・オーディオ・システムにおける音質劣化要因の一つとして「時間伸び縮み歪み」を発見した。ディジタル・オーディオ・システムにおける時間伸び縮み歪み発生の原因の一つとしてディジタル・オーディオ・インタフェースで生じるjitterが考えられる。そこで、本稿では、ディジタル・オーディオ・インタフェースのビット・ストリーム全体にjitterを強制的に付加し、高度感性情報の再現に注目した主観評価実験を行った。実験時間の関係で、88.6ps, 886psの2種の大きさのjitterを与えてみたが、付加したjitter振幅が88.6psと微少の場合であっても、高度感性情報の再現度が大きく損なわれることが明らかになった。
著者
上田 英樹 広川 二郎 安藤 真 鎌田 幸男 尼野 理
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.232, pp.25-29, 2006-08-31

導波路にハニカム構造を用いた衛星搭載用ラジアルラインスロットアンテナが提案されている。ハニカムの多層誘電体構造を考慮し、3層誘電体構造のラジアル導波路上でのスロット結合特性をモーメント法により解析した。8.4GHzにおいて直径900mmのアンテナを設計,試作し、8.8GHzにおいて最大利得33.9dBi、効率35.5%、反射-9.5dBを得た。
著者
川中 洋祐 若林 真一 永山 忍
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.413, pp.189-194, 2009-01-22

本稿では,ネットワーク侵入検知システム(NIDS)におけるパケット検査に対するパターンマッチングのための専用ハードウェアの構成を提案する.提案する専用マッチングマシンは,NIDSソフトウェアSnortで採用されている正規表現に基づくウィルスパターン記述を入力とし,高速にマッチングを実現する.提案専用マッチングマシンは,ウィルスパターンの更新に瞬時に対応するため,回路構成がパターンに依存する従来方式のマッチングマシンと,我々が提案しているパターンを実行時に設定できるマッチングマシンで構成されている.