著者
安本 護 本郷 仁志 渡辺 博己 山本 和彦 輿水 大和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1772-1780, 2001-08-01
被引用文献数
27

本論文では,複数方向の顔画像から抽出した4方向面特徴を用いて,顔向きによらない人物識別と人物によらない顔向き推定を実行する手法について述べる.また,複数のカメラで異なる方向から画像を取得し,各カメラの識別器出力を統合するマルチカメラ協調手法も提案する,人物識別実,験では,1台のカメラで296°の顔向き範囲に対して平均92.9%の認識率が得られた.顔向き推定実験からは,推定誤差の平均が4.5°以下,分散が11.0という結果を得た.また,8台のカメラから得た情報を統合する処理が,人物識別のオクルージョン耐性や顔向き推定の精度向上に効果的であることを示した.
著者
呉 美京 齋藤 洋典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.450, pp.41-46, 2004-11-12

近年,第二言語(L2)としての日本語の習得では,L2が利用される社会的文脈を理解し,L2を適切に使用するための社会言語的能力の養成に力が注がれている.本稿では,アニメーション伝達課題を用いて,発話言語(L1 韓国語,L2 日本語)と,それらの発話環境(韓国,日本)との組合せからなる発話負荷が,自発的ジェスチャーの生起頻度に及ぼす影響を検討した.実験の結果,L1韓国語による発話に伴う自発的ジェスチャーの生起頻度は,発話環境の影響を受け,韓国よりも日本で低下するが,L2日本語の発話に伴う自発的ジェスチャーの生起頻度は,発話環境の影響を受けないことが確認された.
著者
桃井 昭好 佐藤 茂雄 中島 康治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.472, pp.37-42, 2004-11-20

ストカスティックロジックを用いた1000ニューロンハードウェアシステムの構築を行った。ストカスティックロジックは確率密度変調された1bitのデジタルパルス列を用いて演算を行う。そのため、バイナリロジックに比べて回路面積を小さく実現でき、さらにアナログ回路に比べて外部ノイズ耐性が高い回路を実現できる。また、確率的な動作に起因するノイズを利用することでネットワークの性能を向上させることができる。今回、我々は1000ニューロンシステムの詳細、及びシステムの測定結果についての報告を行う。
著者
川崎 洋 清水 雅夫 高松 淳 田中 正行 中澤 篤志 延原 章平 古川 亮 労 世紅 八木 康史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.328, pp.145-152, 2008-11-20

IEEE Computer Society主催,Computer Vision and Pattern Recognition会議が,6月22日〜28日,米国アラスカ州アンカレッジにおいて開催された.その概要を参加者9名が分担して報告する.
著者
内田 伸哉 菅野 真音 長井 隆行 池原 雅章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WBS, ワイドバンドシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.176, pp.19-24, 2005-07-07

本論文は混合音声の音源分離について逆行列を使用した方法を提案する.まず, この手法を満たすための仮定であるW-disjoint orthogonalityについて述べ, ステレオ録音された各音声データは, それ特有の位相と振幅の比の値を持ち, それがオリジナルの音声ソースが不明な状態からの元信号探索に有効であることを示す.次に, 従来法であるDUETについて述べ, 振幅遅延表現のヒストグラムを作成することにより, 個々の音声ソースがピークを持ちそれぞれ独立の位相振幅成分を有することを確認する.最後に逆行列を使用して音源分離を行う方法についてシミュレーションを行い従来法と比較をし, その有用性を示す.
著者
兼吉 昭雄 村上 志緒 西田 時次 岩崎 博信 萱嶋 信介 荒井 恒憲 菊地 眞
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPM, 電子部品・材料
巻号頁・発行日
vol.95, no.138, pp.49-54, 1995-07-07

皮膚表面を減圧吸引することにより採取される吸引浸出液の糖濃度は血糖値と良好な相関を示す。この浸出液の糖濃度を測定する小型装置の開発を行い、採血せずに血糖値を連続モニタすることを可能とした。本装置は本体と吸引装着部で構成され、糖濃度の測定には微小なISFETグルコースセンサを使用した。このセンサは微量検体中の糖濃度の測定ができ、しかも繰り返し使用が可能である。自動・小型装置を実現するために、微量の検体を採取する秤量バルブ、ISFETグルコースセンサを内蔵したセンサ装置、低消費電力の小型ポンプ等を独自に開発した。本装置による動物での評価はすでに良好な測定精度を得ている。今回これをヒトに適用し、吸引浸出液中の糖濃度を連続測定した。同じ被検者の別の部位から用手的に採取した吸引浸出液の糖濃度を測定し、両者を比較した結果、良好な相関を示した。
著者
中谷 一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.392-396, 2005-06-01
被引用文献数
1

曲がり角にきた, 世界の宇宙開発とその中心的な課題となってきた月・惑星探査(深宇宙探査)の現状を中心に概観する.米ソの冷戦を背景にした国家威信をかけた宇宙開発競争の時代が終わり, ポストスペースステーション時代の宇宙開発の柱として, 米国が発表した有人の月・火星探査計画につき紹介する.宇宙開発では独走状態の米国が圧倒的な力で惑星探査を進めているが, 一方で国際協力も重要度を増している.米ソに4半世紀遅れて立ち上がったものの健闘している日本の深宇宙探査ミッションの現状についても述べる.
著者
市川 隆一 関戸 衛 竹内 央 小山 泰弘 近藤 哲朗 望月 奈々子 村田 泰宏 吉川 真 市川 勉 加藤 隆二 大西 隆史 藤咲 淳一 高島 和宏 飛翔体VLBIグループ
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.254, pp.19-24, 2005-08-19

情報通信研究機構では、宇宙飛翔体の準リアルタイム軌道決定技術の獲得を目指して、相対VLBI実証実験を行っている。火星探査機「のぞみ」や小惑星探査機「はやぶさ」のVLBI実験において、ISAS/JAXAによるR&RR結果に対する群遅延残差は、最大数10ナノ秒にも及ぶものの双方の結果は調和的であった。また、広帯域のレンジ信号送出の時間帯に限定すれば、双方の残差は10ナノ秒程度のばらつきにおさまる。「のぞみ」位相遅延データによる暫定的な解析では、「のぞみ」の赤道座標系推定位置が約40ミリ秒角以下の誤差で決定できた。その他、測地GPSデータにより相対VLBI法での中性大気による伝搬遅延誤差の軽減効果についても評価した。
著者
広瀬 幹規 渡部 広一 河岡 司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.710, pp.109-116, 2002-03-07
被引用文献数
11

コンピュータに人間のような知的な判断を行わせるためには,概念ベースおよび概念間の関連性評価の質の向上が必要不可欠である.本論文では概念ベースの属性の重みを,概念間ルールを用いた属性の信頼性判断と属性としての出現頻度を利用して決定する手法を提案している.また,重みの再付与により概念ベース内の不適切な属性の削除も行う.最後に,概念間の関連の深さを定量化する関連度を用いた実験の結果によって,提案方式で構築した概念ベースの有効性を示した.
著者
平田 愛 繁桝 博昭 松嵜 直幸 北崎 充晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.234, pp.67-71, 2006-09-05

聴覚性ダブルフラッシュ錯視とは,1回の視覚フラッシュと同時に複数回の破裂音を提示すると,視覚フラッシュが複数回に知覚される現象である(Shams,et al,2000).この視覚刺激を左右に2つ同時提示し,音源位置を変化させたところ,視・聴覚刺激の定位が同じ場合にダブルフラッシュ効果が増大した.また,聴覚刺激の代わりに触覚刺激(指への振動)を与えたところ,同様の効果が得られた.したがって,共通した空間に視覚,聴覚,触覚を複合的に提示することで,時空間知覚を操作することが可能であることが示された.
著者
高坂 拓司 川上 博 上田 哲史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題
巻号頁・発行日
vol.96, no.72, pp.27-32, 1996-05-24
被引用文献数
2

リズムを持つ生物の協調・協同動作は広く同期現象と呼ばれ, 身の回りに見られる興味ある非線形現象の1つである. たとえば, 合唱するコオロギやホタルの集団発光などの同期現象は良く知られている. われわれは, 2つの方形波発振器を用い, フォトダイオードとフォトトランジスタを組み合わせたフォトカップラーで相互結合した電子回路を構成し, ホタルの同期現象を模擬した. 2個の回路を接続した場合, 発光のリズムで同相で同期するホタル及び逆相で同期するホタルができる. そこで, 位相平面図を用いたPoincare写像を利用し, 発光のリズムが同相や逆相で同期することを導いた.
著者
大西 仁 田中 健二 近藤 智嗣 近藤 喜美夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.1, 1996-03-11

国立大学等教育・研究施設に地球局を整備し、衛星通信を教育・研究交流に活用するスペースコラボレーションシステム(以下SCS)事業が1996年に開始する。SCSでは、放送教育開発センターにHUB局を設置し、回線制御を行うために、他の地球局に無線従事者の資格を持つ者を配置する必要がなくなり、容易に衛星通信を利用することができるようになる。また、各施設で通信費を負担する必要がない。これらにより大学間等での教育・研究交流がより活発に行われるようになることが期待される。しかし、回線数に制限があるために、任意の局間で同時に通信を行うことはできない。そこで、効果的に回線を割り当てるようにスケジューリングを工夫する必要がある。本稿の目的は、SCSの予約管理において考慮すべき問題を洗い出し、予約管理システムと運営法構築のための議論を行うことである。
著者
島田 義弘 橋本 周司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.1, 1995-03-27

情報的にもエネルギー的にも自律したロボットの基礎実験とについて報告する。ここでは、エネルギー源として太陽光を用いるが、ここまで太陽電池を用いたロボットは、様々な分野で提案されてきた。月面調査ロボットなどは、これを使った自律型ロボットの代表的な例であるといえる。しかし、これは太陽エネルギーが十分に確保出来る月面だからこそ可能であるように見える。そこで、太陽電池とセンサを用いたロボットが、陰日向そして障害物が多く、自律移動出来るほどのエネルギーが容易には得られない地球上で、いかなる戦略をロボットに与えたら自律動作出来るのか、ということを、実際にロボットを製作し、フィールド実験を試みることにした。
著者
佐藤 正典 藤井 壽崇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波
巻号頁・発行日
vol.97, no.30, pp.35-42, 1997-04-25
被引用文献数
4

水中における超音波の非線形現象を解析するために、フォノンの概念を用いた。周波数ν波長λの超音波を、エネルギーhν、運動量h/λを持つフォノンの集まりと考え、量子力学的なエネルギーおよび運動量保存則を適用した。超音波の運動量の考え方により音の放射圧および音響流の理解が容易になる。さらにフォノンのエネルギーに関するパラメトリック崩壊のメカニズムは、サブハーモニック、キャビテーション、キャピラリー彼の発生メカニズムをうまく説明できる。これらの非線形現象に関する流体力学的解析とフォノンによる取り扱いはよく一致し、工学的応用に限れば、フォノンを用いる方法は見通しよく有効である。
著者
宮地 信晴 牛頭 靖幸 稲積 泰宏 木下 宏揚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.96, pp.13-18, 2004-05-21

インターネットの利用者が,他人のコンピュータに不正にアクセスする行為や著作権者に無断でコンテンツを転載する行為等を行うと法的な責任が発生する.そこで,本稿では神奈川大学のネットワークを利用して,法的責任が発生するような行為が起こった場合の責任の所在をインターネット関連の法律を参考にして考察を行う.
著者
太田 健一 中田 昌 宮脇 冨士夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1196-1204, 1995-08-25
被引用文献数
1

最近, 日本の夜空が明るすぎ,「光害」と呼ばれる公害が存在することが知られてきた.夜空の光量の絶対値を測定することは, この新たな公害のレベルを知る上で重要であり,特に簡単で高精度の計測手法の開発に対する要求が大きい.本論文では,冷却CCDにカメラレンズを結合して夜空の光学画像を得て,夜空の明るさを計測する手法を提案する. この方法では,観測画像に映る個々の星の除去が必要であるが,基本星表との照合は行わない.一般的に「周囲より明るい微小像が星である」と視覚が認識することを星像モデルに置き換え,この星像モデルと合致する部分を探す. これは,星像中心となる画素を検出し,星像の裾野を検索して,星像成分の存在する画素を決定して除去するものである. この手法を実際に撮影した夜空の画像に適用し,都市夜光の量の測定について,その有効性の確認を行った. また,フィールド調査で得た画像を処理して,等光度線図作成や離れた地点の絶対値比較ができた.従来の写真濃度を測微光度計で測光する方法と比べて,本法では背景光の平均値と標準偏差などが,短時間で正確に得られた.
著者
小笠原 崇 高橋 友和 井手 一郎 村瀬 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.606, pp.55-60, 2007-03-09

近年、大量に蓄積された映像データを効率的・効果的に利用するための技術が求められている。ニュース映像アーカイブにおいて、閲覧・検索のキーとなる重要な情報の一つとして映像中の登場人物がある。登場人物をキーとした映像の閲覧や検索を支援する技術は、従来から研究がなされているが、それらはもっぱら「名前」によってのみ人物を区別し、複数の呼称を持つ人物は、その呼称ごとに別々の人物として扱われてきた。本研究では、この問題に対処すべく、複数の呼称を持つ登場人物の同定(いわゆる"名寄せ")を行う手法の開発を行っている。名寄せは、言語処理や意味解析の高度化により、ある程度は実現できるが、「東国原知事」に対して「そのまんま東」のような通称を名寄せする場合など、言語処理での解決が困難な場面は多々ある。そこで、本手法では各呼称に対応付く人物の顔を利用することで、言語的な変化に影響されない枠組みでの名寄せを試みた。本報告では、5年半に渡り蓄積されたニュース映像アーカイブに対し本手法を適用した。結果から、本手法の名寄せ効果を確認した。
著者
平藤 雅之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIP, 信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.305, pp.59-64, 2004-09-09
被引用文献数
1

フィールドサーバは,無線LANモジュール,Webサーバ,センサ,ネットワークカメラ,LED照明太陽電池等を耐候性筐体に格納したセンサネットワーク・ノードである。気温,湿度,光合成有効光量子束密度,土壌水分,葉の濡れ,CO_2濃度等のセンサ及びカメラにより,環境,動植物,昆虫,微生物等の動態を計測する。無線LANによる中継回線とホットスポット機能によってユビキタス・ネットワーク環境を構築し,インターネット経由でアクセスできる.これまで,米国,タイ等数10カ所のサイトで長期観測実験を行っている。データ収集はエージェントによって自動的に行われ,蓄積されたデータはMetBroker(GRIDツール)によってAMeDAS等既存の気象データベースと統合して病害予測システム等のアプリケーションで利用できる。
著者
松坂 要佐 緒方 淳 麻生 英樹 浅野 太
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.219, pp.13-18, 2006-08-21
被引用文献数
6

多人数会話の工学的応用を行った研究についてのサーベイを行った.多人数会話とは3人以上の参加者によって行われる会話形態のことである.公共の場での大小の会議や各家庭でのテーブルトークなど,我々の日常の社会生活のうち,時間・重要性の両面において多くを占める部分がこの形態の会話によって行われている.本稿ではこの多人数会話を対象として作られた工学的なシステムについていくつか取り上げて議論するとともに,会話の構成員,利用メディアの種別によって分類することを試みた.既存の研究の分類・共通する問題についての議論を行うとともに,現在我々の開発している会議アーカイブシステムVTMOfficeについて紹介した.
著者
井上 武 朝倉 浩志 植松 幸生 佐藤 浩史 高橋 紀之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.411, pp.97-102, 2010-01-28

多くのWebサイトが,AjaxやマッシュアップのためにWeb APIを提供しているが,Webアプリケーションに適した再利用可能なデータべースコンポーネントがないために,そのようなコンポーネントはサービスごとに独立に開発されてきた.本稿ではWebアプリケーションの開発を迅速に行うためのデータべース管理システムWAPDBを提案する.WAPDBは,Web API標準技術のAtomをべースに設計され,Webアプリケーションに求められる機能を提供する.たとえば,効率的なデータ・アクセス制御や簡潔な拡張メカニズム,検索・統計の提供である.WAPDBの導入によって,開発者はこれらの機能を繰り返し開発することから解放される.さらに,RESTアーキテクチャスタイルに準拠しているため,アプ リケーションに統一性やスケーラビリティがもたらされる.我々はWAPDBを用いたサンプルアプリケーションを開発し,大きな性能低下なしに開発コストを削減できることを示す.我々の実験では,開発コストが半減した一方で,アクセス時間は数ミリ秒しか増加しなかった.