著者
太田 裕道
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本公募研究の目的は、(1)誘電体人工超格子やヘテロ酸化物界面近傍に誘起される二次元電子ガスの電子状態と量子サイズ効果の相関を明らかにすること、(2)誘電体中の二次元電子ガスを積極的に活用した機能材料設計指針を提案することである。二次元電子ガス近傍の原子・電子状態を高いエネルギー分解能で捉えることにより、巨大Seebeck係数のオリジンを解き明かし、誘電体中の二次元電子ガスを積極的に活用した材料設計指針を提案することが可能と考えている。SrTiO_3/SrTi_<0.8>Nb_<0.2>O_3人工超格子やTiO_2/SrTiO_3などの誘電体ヘテロ界面のSrTiO_31単位格子層(0.3905nm)に局在化した高濃度の電子ガスは、バルクの5倍に相当する巨大熱起電力(Seebeck係数)を示すことから、未だ実現していない酸化物熱電変換材料のひとつの開発指針として注目されている。Seebeck係数の大きさは、フェルミエネルギーにおける伝導帯状態密度(DOS(E))のエネルギー微分(∂DOS(E)/∂E)に依存するため、量子サイズ効果によるDOS(E)の増大が巨大熱起電力の起源と考えられている。また、Seebeck係数は伝導電子濃度の関数であるため、伝導電子濃度を連続的に変化させながらSeebeck係数を計測することでDOS(E)の情報を得ることができる。平成21年度は、誘電体ヘテロ界面の電子濃度を連続的に変化させるため誘電体をチャネルとした電界効果トランジスタを作製し、絶縁体/SrTiO_3および絶縁体/KTaO_3ヘテロ界面のSeebeck係数の電界変調に成功した。
著者
李 正連
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

通俗教育は、従来の研究において日本の社会教育の前身としてしかいわれてこなかったが、韓国における日本の間接統治(統監政治)が行われた時期(1906~1910)に、日本から導入されており、その内実も日本のそれに類似している。1907年12月13日の学部(中央教育行政機関)組織の改編により、初めて学部学務局の事務事項に通俗教育が登場するが、それは主として公立普通学校への入学督励のための教育として機能していたとみられる。
著者
掘江 未来 芦沢 真五 芦沢 真五 太田 浩 黒田 千晴 舘 昭 米澤 彰純 吉川 裕美子 堀江 未来
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.国内調査日本の高等教育機関における外国成績・資格評価の実態を明らかにするため、留学生受け入れ大規模校30校を対象に、質問紙調査及び訪問調査を行った。留学生入試に携わる教職員から得られたデータを分析した結果、日本では、留学生選抜において、外国成績評価のシステムは確立しておらず、個々の教職員の経験と知識によって書類が評価されていること、特に重視されているのは証明書の真偽検証であること、留学生選抜に教員が深く関与していることが明らかになった。2.アメリカ及びヨーロッパ諸国における調査及び関係機関におけるトレーニング受講NAFSA年次総会やEAIE年次総会に参加し、米国・欧州における外国成績・資格評価システムの基礎情報及び最新動向について情報を収集した。また、外国成績・資格評価を専門的に行う団体であるWES、AACRAO、NUFFICを訪問し、これらの機関における評価手法、成績・資格評価の専門家育成のプロセス、ならびにオンラインデータベースの開発のプロセス、運用状況について調査した。3.実務ワークショップ/研究シンポジウムの開催2006年3月、米国・イギリス・オランダから外国成績・資格評価の専門家を招き、日本の大学の入試担当職員に対し外国成績・資格評価の理論的な枠組みについての講義を実施し、議論を深めた。2006年7月、アメリカとヨーロッパから外国成績評価の専門家を招聘し、日本の高等教育機関で留学生選抜業務に携わる教職員を対象とした、外国成績・資格評価の実務ワークショップを開催した。2006年11月、本研究で得られた知見をもとに、米国・オランダから高等教育専門家を招き、日本における外国成績・資格評価のシステム化の可能性について議論した。
著者
塩村 耕 高橋 亨 阿部 泰郎 榊原 千鶴
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

人間とは動物の中で唯一死の概念を有する「死を知る人(homo memor mori)」であり、そうであるがゆえに未来へ本を遺し、過去の本を読む「本の人(homo librarius)」でもある。したがって、書物は人類の遺した文化遺産の中で最重要のもので、我々は遺されたそれらの全体像を出来るだけ明らかにすべき責務がある。この研究計画の目的は、古典籍の宝庫として知られる西尾市岩瀬文庫の古典籍全1万8千点について、各書籍の書誌、成立、内容を詳細に書き込んだ、いまだかつて見られないような「記述的(descriptive)」な書誌DB(データベース)を完成・公開し、そのことを通して新たな時代の書誌目録のあり方を全国の所蔵機関や文庫に提案することにある。本研究計画に先立つ事前調査を含めて6年間の集中的調査を経て、現在1万1千点について調査入力が終了した。また、DB公開運用の先行モデルとして、並行して調査を進めてきた名古屋大学附属図書館神宮皇学館文庫について平成17年4月より書誌DBを公開し、新たに判明した問題点を改善した。まだまだ前途は遼遠ながら、岩瀬文庫という豊富にして多彩な内容を含む一大文庫について、DBを完成公開する夢の実現が具体化しつつある。正直に言えば、古典籍にかかわる一研究者として、珠玉の知見に満ちたDBを公開することに躊躇する気持ちは、調査開始以後しばらくの間は強くあった。しかしながら、大量の古典籍-その全ては死者の遺したものである-に触れる中で、書物と人間との関わりについて体感開悟するところがあり、今ではDBの公開が書物の活用に大きく資するものであり、そのことが書物を遺してくれた先人たちに対する報恩となることを確信している。そして、このようなDBが方々の文庫に備わることによって、日本の人文学が新たな局面に一歩を踏み出すに違いない。
著者
松本 真理子 森田 美弥子 栗本 英和 青木 紀久代 松本 英夫 灰田 宗孝 坪井 裕子 鈴木 伸子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

子どものロールシャッハ法に関する多角的視点からの研究を包括することによって、現代に生きる日本人一般児童のパーソナリティの特徴が解明され、また日本における被虐待児の心理的特徴も明らかにされた。さらに脳画像と眼球運動という生理学的視点からも子どものロールシャッハ反応の意味するものについてアプローチした結果、国内外において初の知見が得られ、さらに発達障害児との比較などについて、現在、研究を継続中である(平成21年度~25年度科学研究費基盤研究(B)(課題番号21330159)にて継続)。これまでに得た知見は国内外の学会および論文として既に発表している。平成21年度中には図書として成果の一部を刊行する予定である(2009年9月刊行予定)。
著者
林 良嗣 XIANMIN Mai MAI Xianmin
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

高度経済成長と急激な都市化が進む中国・北京市の都市計画においては、公共交通の重要性が高まっているにも関わらず、その整備を推進する政策が不十分である。このため高度な公共交通システムを実現している日本・名古屋市の公共交通政策と北京市を比較することにより、将来、北京市が持続可能な公共交通政策を制定することに資する提案を行うことを目的として研究を行ってきた。今年度の成果は主に以下の3点にまとめられる。1.総合政策の比較分析初年度より行ってきた公共交通総合政策の比較分析の枠組みを基礎として、名古屋市と北京市の技術推進政策、インフォメーション総合政策及び経済のコントロール政策などを整理し、比較研究を行った。また、各種の政策が公共交通に与える影響の評価方法を整備し、両都市の公共交通の総合政策を評価分析した。2.総合政策の枠組み構築両都市の公共交通の総合政策を比較し、有効な公共交通政策を選択する総合政策の枠組みを構築した。その際、都市公共交通政策の問題点と重点課題について重点的に検討した。これによって、どのような政策が有効な都市公共交通システムの構築の促進に資するか、その際の費用対効果は適切かについて検討した。また、都市発展の過程における政策の実施時期の及ぼす影響についても検討を行った。3.具体的な政策の提案初年度に整理した両都市の発展過程と現状の整理および比較分析の結果を組み合わせ、都市公共交通政策の枠組みを基本として、両都市の公共交通の発展に適切な施策を提案した。その際、それぞれの都市の公共交通の問題点および両政府の運営管理の特徴を踏まえた上で、公共交通の発展を促進するように努めた。
著者
長田 和雄 持田 陸宏
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

大気エアロゾル粒子の水溶性成分含有率(ε)は、雲粒・氷晶形成のプロセスに関わる重要なパラメーターである。本研究では、個別粗大粒子のεを知るために、共焦点レーザー顕微鏡と水透析法を組みあわせた計測手法を開発した。この手法により、各種テストダストや黄砂時の粗大粒子の粒径別εを明らかにした。また、連続流型熱拡散チャンバを用いて氷晶化能力を測定するために、数値流体力学解析による検討、実機の整備、大気エアロゾルを対象とした試験を行った。
著者
鈴木 紀明 三宅 正武 西尾 昌治 下村 勝孝 石毛 和弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では互いに関連する3つの課題を取り扱った.(1)熱方程式の平均値の性質,(2)放物型ベルグマン空間の構造,(3)熱方程式の多項式解,である.(1)熱方程式の平均値の性質については,有界な密度関数の存在,ディリクレ正則性との関連などについて考察した.それらの結果はN.A.Watsonとの共著でColloq.Math.98(2003),87-98に発表した.(2)上半空間上の放物型作用素に関するベルグマン空間を定義し,Huygens property,基本解の評価,双対空間の特徴付け,再生核の具体的表示などの基本的結果をまとめた(Osaka Mathematical Journal,42(2005),106-133).また,空間次元が2以上という技術的な条件を調和測度の回転普遍性に注目して取り除くことに成功し,帯状領域におけるベルグマン核の評価を行った.それらの結果は2004年8月に島根大学で開かれたIWPT in Matueで講演発表するとともに,2006年に発行予定のASPMに寄稿した.最終年度は放物型ベルグマン空間におけるGleason問題およびCarleson測度とToeplitz作用素の有界性などについての結果を整理した.(3)熱方程式の境界値問題では多項式の解が常に存在する領域についての考察を進めた.2次元で境界が多項式によって定められている場合に,その多項式の次数が3以下の場合を解決し,次数が4以上の場合に,エルミート多項式の零点の分布との関係を調べた.この結果は2005年8月の第2回International Conference of Applied Mathematics (Plovdiv, Bulgaria)で講演発表し,講義録として出版もした.
著者
増田 佳丈
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究ではMOS-FETのゲート酸化膜(誘電体膜)の代替材料として期待されるTiO_2薄膜を、金属アルコキシドの加水分解性と揮発性を利用した気相加水分解法により、常温・常圧下で作製し、その特性を評価することにより、新規合成プロセス開発を行った。原料のTitanium(IV) isopropoxideと蒸留水をキャリアガス(N_2)によって気体として輸送し、両者を気相中で混合し加水分解反応によって生成するTiO_2をSi基板上に薄膜として析出させた。また、原料ガスにTetraethoxysilaneを混合することで、TiO_2-SiO_2複合膜を析出させ、キャリアガスの流量によって組成比を変化させた。XRDによる結晶化温度の決定、XPSによる組成分析を行った。また電極をつないだMOS構造でのC-V曲線とAFMによる膜厚測定から誘電率を計算し、I-V測定からリーク電流密度を測定、評価した。常圧・室温条件でSi基板上にTiO_2薄膜が形成された。XRD測定から、アモルファス相であることが確認され、400℃・1時間の加熱処理によって結晶化し、アナターゼ相を示した。AFMでは目立った粒界は確認されず、XPSでは残留炭素の存在が示された。TiO_2-SiO_2薄膜も同様にSi基板上に析出し、XPS測定の結果からキャリアガスの流量比を変えることで組成比を制御できることが示された。TiO_2-SiO_2(52/48)薄膜はTiO_2薄膜が結晶化する400℃においても結晶化を抑制することに成功し、700℃で初めてアナターゼ相へ相転移した。MOS構造における電気測定から、TiO_2薄膜の誘電率は40程度、TiO_2-SiO_2(52/48)薄膜は20程度という値が得られた。また、本研究に関しての受賞、新聞発表、招待講演等を下記に記す。日韓セラミックス国際セミナー 奨励賞 (2002年11月、増田)新聞発表 日本工業新聞 2002年4月3日(水曜日) 2面招待講演 Yoshitake Masuda, and Kunihito Koumoto Third International Symposium on Biomimetic Materials Processing (BMMP-3), Nagoya, Japan, January 27-29, (2003)
著者
亀井 譲 鳥山 和宏 八木 俊路朗 佐藤 秀吉 鳥居 修平
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

形成外科領域では、筋弁や筋皮弁による感染創の治療が多く行われている。われわれの臨床経験と以前の基礎実験から、大網のほうが筋弁・筋皮弁よりも抗感染作用が強いと考えている。しかし、大網の抗感染効果を実験的に詳細に報告した例はない。そこで、まずマウスで感染創モデルを作成後に大網および筋弁の感染創に対する反応の差異を観察した。次いでマウス大網からリンパ球、血管内皮細胞や間葉系幹細胞が豊富な分画を抽出して、感染創に局所注射し抗感染作用を検討した。感染創モデルでは、液体培地に寒天を追加し半流動状にして黄色ブドウ球菌を混和することで、寒天が局所に残存して安定した感染創が得られた。感染創に大網と筋弁を移植する実験では、筋弁が局所で反応が乏しいのに対して、大網は周囲組織と癒着して大量の炎症性細胞を供給して明かな抗感染採用を示した。マウス大網由来の細胞の感染創への移植実験では、移植した細胞は血管新生を伴い生着しその周囲に炎症性細胞の豊富な層ができた。以上より、感染創に対して大網は筋弁により抗感染採用が強いことが示唆され、また大網由来の細胞による感染創の治療の可能性が示された。
著者
榎並 正樹 増田 俊明 平原 靖大
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

顕微ラマン分光装置に組み込むための,超小型点接触変形装置を設計・製作した.この装置は,結晶にかかる局所応力のその場(in-situ)観察をすることを目的とし,精密可動ステージ,超小型ロードセル,アンプとダイヤモンド圧子からなり,試料への荷重の調製は手動で行う.変形観察する試料は石英の単結晶薄板であり,その下面をダイヤモンド圧子で点接触変形させ,それにともなうラマン・シフトの様子を,上面より薄板を通過させたレーザー光で観察する.1. この装置を利用して点接触変形をおこした際のデータと比較するために,まず応力解放後点接触面の2次元マッピングを行い,接触痕と残留圧力分布の関係を解析し,その結果を論文投稿した(投稿中).2. 点接触面の点分析により,石英とは異なる複数のピークが観察された.これは,点接触により,石英とは異なるSiO2相が掲載されたことを強く指示する.現在このピークの同定および,加重のキャリブレーションを行っている.3. ラマン分光分析の鉱物学的研究への適用例として,Enami et al.(2007)によって提唱されたラマン残留圧力計を,三波川変成帯高温部に適用し,エクロジャイト相変成作用の痕跡を検出する試みを前年度に引き続き行った.その結果,(1) 従来はエクロジャイト相変成作用の痕跡が報告されていなかった変泥質岩も,エクロジャイト相の圧力に対応する残留圧力を保持している場合があること,(2) そのような岩石中には,エクロジャイト相を代表すると思われるオンファス輝石やアラゴナイトが,ざくろ石中の包有物として産する場合があることが明らかとなった.これらの成果に関する論文2編を投稿中である.
著者
多和田 眞 (2008-2009) 多和田 真 (2007) 孫 淑琴 (SUN Shuqin)
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

発展途上国の二重経済について、環境政策と貿易政策がどのように協力して経済厚生を上昇させるかという課題に取り込んできた。特に発展途上国経済の特徴を代表するモデル(Harris-Todaro、1970)に環境問題を導入し、環境保護政策や貿易政策が労働移動や経済厚生にどのような影響を与えるかを分析した。また、循環資源貿易とリサイクル活動をH-Tモデルに取り込んで、貿易自由化がこの経済にどのような影響を及ぼすかも検討してきた。二重経済モデル(Harris-Todaro)についての拡張は多く見られるが、環境問題や循環資源貿易を導入した分析はそれほど多くない。本研究では生産要素は二要素として部門間移動が自由な労働と各部門に固定的な資本を考え、小国開放経済を想定する。そして、従来の研究を発展させて、労働移動のインセンティブが賃金の格差ではなく効用の格差であると考えて分析を行った。その下で工業部門の生産活動が環境汚染を引き起こし、消費者に悪影響を与えると考えて、工業部門の汚染発生率や工業部門の固定賃金水準の変化など、工業品の輸入に対する関税の賦課が労働移動や経済厚生水準にどのような影響を与えるかを考察した。結果は汚染削減技術の推進などの環境保護政策が都市失業の増加を招くが、経済厚生を上昇させるなどの結論を導出した。また、Harris-Todaroモデルに循環資源貿易とリサイクル活動を取り入れた新たな一般均衡モデルを構築し、循環資源の貿易パターンがどのような要因によるのか、循環資源の貿易自由化がこの経済にどのような影響を与えるかを検討してきた。そして、これまでの研究をまとめて、2編の論文を作成して、そのうち1本は国際誌に、もう1本は国内レフェリー誌に掲載となっている。
著者
竹内 義則
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

人間は動いているものを目で追い,耳で音の発生している方向を定位することができる.例えば,複数の人物から話者を特定し,その人物を見続けることができる.このような機能の実現はビジョンシステムにおいて有益な応用である.そこで,我々はカメラとマイクの2種類のセンサを利用して,複数の人物を追跡するシステムを構築する.人物の情報をよりたくさん得ようと考えた場合,顔を撮影することが望ましい.そこで,人物領域の特徴として頭部を検出する.また,複数の人物を洩れなく追跡するために,カメラに「追跡」と「監視」の2種類の役割を与える.これらの役割をカメラの連携を用いて動的に変化させることで,注目している人物の詳細な情報を獲得でき他の人物も見逃すことなく追跡を行なうシステムを構築する.システムは,カメラから頭部領域,マイクから音信号を検出する.検出結果から人物位置や音源位置の特定を行なう.これらの結果から,どのカメラがどの人物を追跡するかを決定する.あるシーンにおいて何か話している人物を撮影できれば,そのシーンを理解するのに役立つ.そこで,音源位置情報から音を発している人物を特定し,その人物を優先的に追跡する.追跡する人物が決定したら,その人物を追跡するカメラを決定する.それは,人物を高解像度で撮影するためできるだけ近いカメラで,かつ,正面から人物を撮影できるカメラを割り当てる.さらに,オクルージョンの発生により割り当てられたカメラでは人物を捉えられない場合があるので,新たに他のカメラに追跡を委託する.以上の処理を繰り返すことにより人物の追跡を行なう.3人の人物を追跡する実験を行ない,各人物の位置情報を獲得し,人物の顔を捉えて効果的に追跡することが確認できた。また,音情報を得た場合,音を発した人物を優先的に追跡し,追跡中の人物がオクルージョン領域に入った場合に他のカメラが追跡することを確認した.
著者
八田 一郎 高橋 浩 加藤 知 大木 和夫 松岡 審爾
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1990

この研究は、リン脂質膜を中心として形成される分子集合体に対する詳細な構造解析を行うことによって、生体膜がとる基本構造を明らかにすることを目標に進められた。その1つとして、リン脂質で現われるリップル構造についての研究が進められた。これはリン脂質が自発的にとるメゾスコピックな構造で、リン脂質の形態形成機構を考察する上で重要な構造であると位置付けられる。ジパルミトイルホスファチジルコリン膜において、正常周期のリップル構造に対して2倍周期のリップル構造が出現することがあるが、それが準安定相の構造であることを示し、また、それが出現する条件を明らかにした。リン脂質・コレステロール系においては、変調されたリップル構造をとるが、その温度依存性をリン脂質膜の正常周期のリップル構造の温度変化と関連において理解できることを示した。不飽和炭化水素鎖をもつリン脂質とコレステロールの系において、その相図に着目して実験を行った結果、飽和炭化水素鎖の場合とよく似ており、この相図はリン脂質とコレステロールの間で普遍的に現われるものであることが判った。リン脂質・アルコール系で現われるインターディジテイテッド構造について、各種のリン脂質とアルコールの組合せに対して系統的にX線回折実験を行うことによって、膜中のアルコール分子の存在様式を明らかにした。ジラウロイルホスファチジルコリンにおいて、2つの液晶相があることを発見し、新しい相は従来報告されている液晶相の低温側にあり、より炭化水素鎖の乱れの少ない液晶相であることが判った。リン脂質とタンパク質の相互作用のモデルとして、酸性リン脂質とポリリジン重合体より成る系の構造解析を行い、それが静電相互作用によって理解できることを示した。ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンの主転移での2相共存状態の振舞から、これは単純な1次相転移における共存としては理解できなく、この系独持の逐次構造遷移機構によっていることを指摘した。その他、脂質系の表面X線回折実験、X線回折・熱量同時測定などを行った。
著者
加納 修
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は、平成17年度より行ってきたフランク時代の国王文書の分類作業から得られたデータを検証するために、フランク時代、とりわけメロヴィング朝期(481年〜751年)の国王文書の伝来状況を詳しく検討した。前年度に滅失文書(現在まで伝わっていないが、作成されたことが他の史料から証明される文書)を調査し、分類した結果、売買や贈与を王が確認した文書が実際には数多く作成されたことを明らかにしていたが、いかなる種類の文書が伝来しやすいか、あるいは言及されやすいかを検討した結果、とりわけ私人が受け取った文書の伝来可能性が極めて低い事実を証明することができた。私法行為を確認する文書は、私人が受け取った文書の代表なのである。こうした文書の多さは、公権力としてのメロヴィング王権の性格をよく表している。より具体的な研究成果としては、この種の私法行為確認文書の一カテゴリーをなす「仮装訴訟」(国王裁判で私法行為を確認するための特殊な手続き)の記録を、文書の機能の面から再検討したフランス語論文を、フランスの古文書学雑誌であるBibliotheque de l'Ecole des chartesに投稿した。この論文は平成17年度に投稿し、その後大幅な修正を経て掲載が決定した。「仮装訴訟」を記録する国王文書が、実際には土地所有を証明する権利証書ではなく、土地の所有をめぐって裁判になった場合に当該の土地の売主を召喚するための文書であったことを証明することによって、メロヴィング朝の国王証書が単に権利を保障する「証書」の機能にとどまらず、きわめて多様な機能を有していたこと、そしてこうした文書の機能がローマ法やローマ帝国の行政制度に大きな影響を受けていたことを示した。なお平成19年5月に予定していたフランス語での研究報告は、椎間板ヘルニアの罹患のために、断念せざるを得なかった。
著者
岩田 修二 上田 豊 大畑 哲夫
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.4, pp.27-35, 1993-03

タンデトロン加速器質量分析計業境報告 Summaries of Researches Using AMS
著者
朴 びよん渡
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

富士写真フィルム社製の通称「OPERAフィルム」、原子核乳剤を48ミクロンの厚さで厚さ200ミクロンのTACフィルムの両面に塗布した構造の原子核乾板を使って、高度1万メートルの上空での宇宙線飛跡の強度の測定を行った。原子核乳剤の表面は厚さ1ミクロンのゼラチン膜で保護されている。手荷物検査のX線をシールドする厚さ1mmの鉛板とOPERAフィルム(面積10cm*12cm)2枚を密着して、黒色の多層ラミネートフィルムで真空パックして、手荷物の状態で、国際線の旅客機で米国のシカゴに飛び、シカゴでフィルムの向きを変えて再度真空パックして日本に持ち帰った。それを現像し、飛跡読み取り装置S-UTSによって、乾板面に対する角度45度までの直線状飛跡で、最少電離粒子を含む全ての飛跡を読み出した。読み出した面積は100cm^2である。往路の飛跡、復路の飛跡、パックする以前からの飛跡の3つのタイプに分類する解析を行っている。OPERAフィルムに記録される直線状の飛跡は、1MeV程度の自然放射能由来の飛跡とは明快に識別できることが確認できた。2006年秋の日本物理学会で結果の一部を発表した。
著者
恒川 和久 松岡 利昌
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

過去の日経ニューオフィス賞応募資料によるコンセプトとオフィス空間の分析から、近年のオフィスでは「コミュニケーション」がより重視され、その活性化を促すことが、場の形成の大きな動機となっている。インフォーマルコミュニケーションから、打合せなどをさまざまな場で行えるような空間の増加・多様化に焦点が向けられていることがわかった。また、観察調査から、業務の指向性に基づくワークスタイルによって、ワーカーの行動は異なり、オフィス空間の違いと同様に行動に影響を及ぼしていることがわかった。ワーカーに高い自主性が求められるオフィスでは、行動の自由度がより高い場が求められている。
著者
内田 智秀
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

最終年度の研究作業を大別すると、モーリス・メーテルランク『青い鳥』の草稿類の具体的調査と同作品における幸福についての研究の2つに分かれる。前者は2008年夏、フランス、ベルギーにおいて実地調査を行った。フランス国立図書館では1911年の『青い鳥』改訂版初演の劇評類を収集し、同作品の受容傾向を把握に努めた。ベルギーでは、まず初年度大まかな調査しか行えなかったゲント資料館にて、メーテルランクが当初『青い鳥』の舞台背景を依頼していたC.ドゥードゥレに送った1905年から1909年頃の書簡37点を判読、そして転写した。その後ブリュッセルのベルギー王立図書館にて、ロシアの演出家C.スタニスラフスキーや、ドイツ人翻訳家F.フォン・オペルン=プロニコフスキーヘメーテルランクが送った書簡の中から、約80点を転写した。また初年度同様、『青い鳥』の構想、草稿の転写の確認も時間が許す限り行った。これちの資料は、これまで取り上げられる機会が少なく、正確さに欠けていた『青い鳥』の生成に関する資料として重要で、これらの分析によって、すでに新事実が発見されていることからも、この実地調査は必要不可欠だった。『青い鳥』の幸福についての研究は、メーテルランクが随筆で引用するプロティノスの言説と、『青い鳥』の草稿に書かれた「幸福の探求=知性の探求」の注目し、初年度、草稿研究で得られた成果をもとに、プロティノスを中心とする新プラトン主義の観点から考察した。以上の研究成果の一部を日本フランス語フランス文学会中部支部大会、目本児童文学学会研究大会にて発表した。
著者
吉田 健一 橋本 光靖 伊藤 由佳理 渡辺 敬一 坂内 健一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.ヒルベルト・クンツ重複度の下限について研究代表者と渡辺敬一(分担者)は本研究に先立ち、ヒルベルト・クンツ重複度が1の局所環が正則局所環であることを証明した。この結果は正標数において、永田による古典的な結果を拡張したものになっている。本研究では正則でない局所環に対するヒルベルト・クンツ重複度の下限を求める問題について考察した。結果として、平方和で定義される超平面の場合に下限を取るという予想を得て、4次元以下の場合にそれを証明した。本結果における最小値は(代数幾何学的にも)大変興味深いものであるが、現在の所それをサポートする理論は得られていない。このような理論を見出すことは今後の研究課題である。また、我々の予想は完全交叉の場合にエネスク・島本により証明された。2.極小ヒルベルト・クンツ重複度の理論極小ヒルベルト・クンツ重複度はF正則局所環の不変量として導入した概念である。この量は0と1の間の実数値を取りうるが、アーベルバッハらの研究により、F正則であることと、極小ヒルベルト・クンツ重複度が正の値を取ることが同値であることが知られている。本研究においては、F正則環の代表的なクラスである、アフィントーリック特異点と商特異点の場合にその値を求めた。3.極小重複度を持っブックスバウムスタンレー・リースナー環の特徴付け研究代表者は佐賀大学の寺井直樹氏の協力に基づき、ブックスバウムスタンレー・リースナー環の極小自由分解、重複度、h列などに関する研究を行った。特に、そのようなクラスにおける重複度の下限を決定し、下限を取るスタンレー・リースナー環の特徴付けを行った。