著者
SAVELIEV Igor 櫻井 龍彦 浅川 晃広 劉京 宰
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究代表者と研究分担者は、中華人民共和国(上海、広州、深セン、香港、延辺地方)、ロシア(ウラジオストク、ハバロフスク、ウスリイスク、モスクワ、サンクト・ペテルブルグ)、大韓民国(ソウル、釜山、安山、インチョン)、ウズベキスタンにおいて、現地調査を実施、収集したデータをもとで、中国朝鮮族とロシア・コリアンの移動要因とパターン分類、移動先国家や域と朝鮮族社会との諸関係など及び中国朝鮮族やロシア・コリアンのネットワーク形成過程などを解明し、その研究成果を、韓国、ロシア、日本の国際シンポジウムにおいて発表し、さらに学術論文・図書においても発表した。
著者
加藤 内蔵進 松本 淳 武田 喬男
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

1.梅雨前線帯付近の広域水収支過程の解析の一環として、人工衛星のマイクロ波放射計データ(SSM/Iの19.35GHzと85.5GHz)に基づき、Liu and Curry(1992)のアルゴリズムを用いて、海上も含めた前線帯付近の降水量分布を評価した。日本列島で冷夏・大雨だった1993年と猛暑・渇水に見舞われた1994年暖候期等を例に解析を行ない、次の点が明らかになった。(1)梅雨前線が日本付近で特に活発であった93年7月初めには、東シナ海〜日本列島で5日雨量140ミリを越える大雨域が南北約300kmと広域に広がり、その南北の少雨域との間のきわだったコントラストが明らかになった。気象庁のレーダーアメダス合成データのある日本近傍で比較すると、それと良く一致していた。(2)このような特徴を持つ降雨分布が、93年には8月も含めて出現しやすかったのに加え、台風に伴う降水量も多かったが、94年は梅雨前線帯の位置が93年に比べ北偏したのみでなく、そこでの降水量自体も少ない傾向にあったことが分かった。(3)93年は、平年に比べて梅雨前線帯付近での下層の頃圧性は大変強く、前線帯での降水の強化と集中に関しては、南からの多量の水蒸気輸送に加えて、なんらかの傾圧性の役割も大きかったものと考えられる。2.前線帯スケール水収支過程におけるメソα降水系の役割評価の前段階として、1996年6〜7月における種子島周辺域での別途経費による集中豪雨特別観測データも利用して、期間中の前線帯とメソα降水系の振舞いの概要を調べた。その結果、(1)梅雨期にしては希なぐらい発達した低気圧に伴う寒冷前線付近の現象、(2)九州南部で発生・発達した積乱雲群の集団から、メソα低気圧の種が形成され中部日本の前線帯の水循環にも大きな影響を与えた例、等、今後の相互比較解析のための特に興味深い事例を抽出できた。
著者
山口 茂弘
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(S)
巻号頁・発行日
2007

有機エレクトロニクス分野の発展を担う鍵材料の創出を目指し,優れた光・電子物性をもつ新奇π電子系分子の開発に取り組んだ.典型元素に特徴を生かした分子設計,新反応の開発,分子配向制御を機軸に取り組み,新奇な骨格をもつ一連のπ電子系分子の合成を達成した.高効率固体発光,白色発光,高電荷移動度などの標的物性を実現するとともに,安定ホウ素材料や反芳香族性π電子系の設計指針などの新たな分子設計指針を確立した.
著者
〓 斗燮 小井川 広志 村岡 輝三
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は昨今の東アジア経済の構造転換を「直接投資時代」への移行段階として規定し、その本質を企業連携、産業金融、地域協力という三つの局面において総合的な把握を試みた。この場合、直接投資の雁行型拡大により好調を続けてきたアジア経済が1997年タイの通貨危機以降、地域全体が構造的な危機を露呈している現状に鑑み、以下の三つの追求すべき課題を設定した。(1)「アジア型発展」モデルが90年代の後半に急激に機能不全に陥った理由は?。再び成長基調に乗せるための条件と問題点は何か。(2)経済成長の持続化ためには成長段階に合わせて人材の質を高める必要があるが、学校教育と企業内教育とどちらが有効であろうか。(3)「アジア型発展」モデルは、究極的には日本企業による企業内国際分業の展開及び高度化にその本質がある。今後の直接投資は、大企業よりは中堅中小企業による国境を越えた成長戦略がカギになるものと考えられるが、彼らの国際化を支える競争優位や企業文化とは何か。以上の三つの課題に対する我々の答えは以下の通りである。(1)「アジア経済」の成長は、アメリカ、日本、アジア諸国の3者(トライアングル)による技術、資本、地域協力の枠組みに内在する「協力」と「緊張」の好循環によるもの。しかし、昨今の通貨危機のなかで既存のトライアングルが持つ弱点がはっきりしてきた。特に、金融・通貨面での対応能力が脆弱である点が明らかになった。対応策としては、地域経済路力機構(ASEANやAPEC)の機能強化、共通通貨や通貨圏の設置などが不可欠であるが、問題は2大勢力の円(日本)と人民元(華人経済)が共通目的に向けて協力できるかである。(2)日本の高度成長は質の高い人材を長期安定的に供給できた点に負うところが大きいが、教育投資による経済的効果に関する定量分析によれば、いわゆる学校教育による労働生産性の増加効果はそれほど大きくない。企業内教育(OJTを含む)の重要性を示唆する結果である。(3)中堅企業の国際化がアジア経済を再び成長軌道に乗せるには非常に重要なファクターである。高い競争力を持つ中部圏の製造企業11社に対するヒヤリング調査から以下の点が確認された。第一は、全体として国際化にはまだ消極的であること。第二は、ある特定技術分野に特化した専業企業が多いこと。第三は、カリスマ的な創業者による独特の組織文化を共有していること。第四は、上位文化として製造業や熟練の継承に好都合の地域文化(中部圏)が存在していること。アジア経済の再生には、こうした中堅企業の対アジア進出と組織文化の地域的な拡散が大きく寄与するものと考えられる。
著者
飯島 信司 西島 謙一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

遣伝子治療に用いられるパントロピックレトロウイルスは、外被タンパク質として水痘性口内炎ウイルスVSVのGタンパク(VSV-G)を用いており、VSV-Gのリセプターがリン脂質であるため、基本的に全ての細胞種に感染可能である。これは優れた特性である反面、バイオハザードという観点からは危険である。そこで天然状態では感染能がなく、リポフェクション試薬など特殊な遺伝子導入試薬存在下でのみ、感染性のあるウイルスをつくることを考えた。VSV-Gタンパクは28アミノ酸からなる細胞内ドメイン15アミノ酸からなる膜貫通ドメインさらに298アミノ酸からなる細胞外ドメインを有する.細胞外ドメインには2つの糖鎖結合部位があり、この部分が安定性などに重要と考えられる.そこで細胞内、膜貫通、糖鎖結合部位以外の部位を欠失させたところ、細胞外の先端から143アミノ酸を欠失させ2箇所の糖鎖結合部位を残したもの、及び末端から298アミノ酸を欠失させ糖鎖結合部位を1箇所残したものについてはリポフェクチン依存的に感染性を有していた。しかしVSV-G全長に較べ感染力は1/1000程度であった。またウイルスの細胞からの出芽状態をRT-PCRで調べたところ、変異株では1/10程度であった。一方、レトロウイルスのDNA挿入活性に対するINI-1タンパクの効果を調べるため、INI-1タンパク及びモロニー白血病ウイルスのインテグラーゼ遣伝子をクローン化した.これを用いて結合集験を行ったが、現在までのところ報告されているようなINI-1タンパクとインテグラーゼの相互作用は検出されていない。
著者
佐藤 彰一
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究の課題は、約20年前に「発見」されたメロヴィング末期の7世紀末にフランスのトゥールのサン=マルタン修道院で作成された所謂「会計文書」を可能な限り多角的に解析し、史料的にきわめて限られているこの時期の西欧における社会構造を明らかにし、また農業生産の具体的な水準などを確定することであった。作業の手続きとして、まず第一にこの文書の書冊学的、古書体学的分析を行い、これがおそらくはローマ後期の租税関係文書の系譜を引く、トゥールの市政文書に由来するものであろうという仮説を提示した。第二に、「文書」に記載されている地名の比定を行った。これはフランス国土地理院から発行されている地誌図ならびに18世紀に作成された「カッシ-ニの地図」を用いた。続いて農民一人ひとりが納付している穀物貢租の種類と量から、その生産量を割り出し、更に貢租と翌年の種播き用の種籾などを控除した消費可能な穀物の扶養力を、カロリー計算とパンによる摂取形態とで総合的に判断すると1世帯当たりの家族成員が約4人で平均値であったことが知られる。農民の家族形態は、明らかに核家族形態が中心であった。第四に、穀物の栽培形式と生産量から、三圃農法の実践如何の点を検討し、トゥール地方では夏穀の大麦が播種期を徐々に繰り下げる形で春穀に転化し、三年輪作システムが中規模経営の農民層から始められたらしいことが窺われる。
著者
森 英樹 右崎 正博 大久保 史郎 森 正 大川 睦夫 小林 武
出版者
名古屋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

平成4年度は、3年間にわたる本研究の最終年度であったため、2年間の成果をふまえ総括的な検討をおこなった。すなわち、日本を含む先進資本主義国の従来の憲法学における議会制民主主義と政党制の理論史的枠組みを検討し(1年目)、各国の集中的検討による普遍性と固有性を析出し、あわせて日本の現状分析をおこなう(2年目)という研究成果にもとづき、日本の政治文化状況のもとで政党への国庫補助の妥当性にかんして一定の結論をみちびき出した。具体的には、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、イタリア、ニュージランドの各国における政党国庫補助の現状分析と、それを支え、あるいは批判する理論状況を検討したが、その結果みえてきたのは、各国における大衆社会の進行による議会制民主主義の形骸化、それにともなう選挙戦の変容などの共通点とともに、その背景にある各国の議会制民主主義の歴史の偏差であった。これらの成果をふまえ、日本で進行中の「政治改革」による選挙制度改革と政党国庫補助導入の動きを批判的に分析した。かくして、日本の「政治改革」を、先進資本主義諸国で共通に進行する新たな統治戦略としての政治改革との連動性のなかに位置づけることができ、日本固有の政治風土のなかで、いかに国民主権と民主主義を実現することが可能かについての共通の認識をうることができた。
著者
和田 肇 唐津 博 矢野 昌浩 本久 洋一 根本 到 萬井 隆令 西谷 敏 脇田 滋 野田 進 藤内 和公 名古 道功 古川 陽二 中窪 裕也 米津 孝司 有田 謙司 川口 美貴 奥田 香子 中内 哲 緒方 桂子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1980年代以降、とりわけ1990年代以降を中心に労働市場や雇用、立法政策あるいは労働法の変化の足跡をフォローし、今後のあり方について新たな編成原理を探求することを目的として企画された。この4年間で、研究代表者、研究分担者および連携研究者による単著を4冊刊行している(和田肇『人権保障と労働法』2008年、唐津博『労働契約と就業規則の法理論』2010年、藤内和公『ドイツの従業員代表制と法』2010年、西谷敏・根本到編『労働契約と法』2011年)。その他、100本を超える雑誌論文を発表し、研究グループによる学会報告が5回、国際シンポが5回(日独が2回、日韓が3回)行われている。とりわけ最終年度には、それまでの成果のまとめを中心に研究を遂行した。(a)労働者派遣法の体系的な研究を行い、2112年秋の書物の出版に向けて研究を積み重ねた。個別テーマは、労働者派遣法の制定・改正過程の分析、労働者派遣に関する判例・裁判例の分析、労働者派遣の基本問題の検討、比較法分析である。現段階で作業は約8割が終了した。(b)不当労働行為法上の使用者概念に関する最高裁判例が相次いで出されたこともあり、その検討を行った。これは、企業の組織変動・変更に伴う労働法の課題というテーマの一環をなしている。(c)労使関係の変化と労働法の課題というテーマに関わって、現在国会で議論されている国家公務員労働関係システムの変化に関する研究を行った。その成果は、労働法律旬報や法律時報において公表されている。特に後者は、この問題を網羅的・総合的に検討した数少ない研究の1つである。以上を通じての理論的な成果としては、(1)労働法の規制緩和政策が労働市場や雇用にもたらした影響について検討し、新たなセーフティネットの構築の方向性を示し、(2)非典型雇用政策について、労働者派遣を中心としてではあるが、平等・社会的包摂という視点からの対策を検討し、(3) 2007年制定の労働契約法の解釈問題と理論課題を明らかにし、(4)雇用平等法の新たな展開の道筋を付けた。当初予定していた研究について、相当程度の成果を出すことができた。
著者
山本 裕二 工藤 和俊 山田 憲政 北原 俊一 平田 智秋 宮崎 真 平川 武仁 木島 章文 奥村 基生 郷原 一寿 門田 浩二 山際 伸一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,様々なスポーツ技能の生成機序を力学系の観点から統合的に理解することを目的とした.その結果,ブランコ漕ぎの協応パタンは振り子の等時性にほぼかなっていること,音に合わせたダンスでは,運動周波数が高い場合でも熟練者は逆相同期を維持できること,卓球では技能水準を切替ダイナミクスのフラクタル次元で評価できること,剣道では二者間距離によって詰め引き速度の相対位相が切り替わること,タグ鬼ごっこでは,学習に伴い両者の詰め引き速度の相対位相が逆相同期になること,サッカーの3対1ボール保持課題における三者の連携パタンは,技能レベルによって環状連結振動子における対称性のホップ分岐理論で予測されるパタンを示すこと,サッカーゲームのパス行動にはベキ則が見られることなどを明らかにした.
著者
小川 正廣
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、個人および共同体・社会階層・文明としての人間とその社会のあり方を、空間的・時間的にそれらの内外に存在する「他者」とのかかわりという観点からとらえ、その諸相を古代ギリシア・ローマの古典文学やその伝統を継承した西洋文学の中に探った。具体的には、主に次の点に研究成果を要約することができる。1.ギリシア・ローマ文明が他者との関係を軸として固有の人間観・社会観を発展させたプロセスを、他の古代文明の場合との比較にもとづいて概観した。2.他民族との関係を戦争と平和という両極の状況としてとらえた場合、ホメロスのギリシア叙事詩では戦争と平和の間に乗り越えがたい溝が存在し、他方ウェルギリウスのローマ叙事詩では、戦争の価値は平和の確立という明確な目的によって相対化されたことが明らかになった。3.奴隷と女性という社会の内側の他者に対する見方の変容過程を、ギリシア古典期の通念と両者の地位に顕著な変化をもたらしたヘレニズム・ローマの人間観との比較によって、および、そうした社会的・思想的変化を背景として創作されたローマの劇文学と恋愛詩の分析によって浮かびあがらせた。4.国家の君主がとるべき他者に対する寛容な態度や、人間が他者に恩恵を与えるときの精神的なあり方について、ローマのストア哲学者セネカの論説を中心に検討した。5.異教文化と古典文学の伝統を代表するローマ詩人ウェルギリウスが、キリスト教化した西洋中世を代表するダンテの叙事詩において他者としてどのように扱われ、またどのように評価されたかを検証し、西洋文化固有の他者概念にもとづくヨーロッパ文明の特質について考察した。
著者
下村 吉治 北浦 靖之
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

健康の維持増進に栄養と運動による代謝調節の必要性は極めて高く、それらに関する正確な科学的情報とメカニズムの解明が求められている。本研究では、分岐鎖アミノ酸(BCAA)投与と運動が健康の維持増進に及ぼす効果のメカニズムを明らかにするために、(1)BCAA代謝調節機構の解明、(2)廃用性筋萎縮に対するBCAA投与効果の解明、および(3)グルコース代謝に対するBCAA機能の解明を目的とした。得られた研究成果として、BCAA代謝調節因子として分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素キナーゼの未知の調節因子がラット肝臓ミトコンドリアに存在する可能性が示唆された。廃用性筋萎縮に対するBCAA投与の効果として、5%BCAA食摂取は、廃用性筋萎縮による筋重量の低下およびユビキチン-プロテアソーム系成分量に対して影響しなかったが、それらに対抗する細胞内シグナル成分の減少を抑制することが示唆された。さらに、グルコース代謝に対するBCAAの機能として、耐糖能を正常に維持するためには血中のBCAA濃度が重要な役割を果たすことが示唆された。
著者
西田 保
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、体育における学習意欲を多面的・総合的に診断するシステムの開発であった。具体的には、(1)「体育における学習意欲」「学習意欲の支持要因」「学習行動の選好」を測定する尺度の信頼性および妥当性を、4府県下(愛知県、滋賀県、大阪府、熊本県)の公立小学校5年生および6年生の男女計1,562名を対象に検討すること、(2)体育における学習意欲の類型化をクラスター分析によって特定すること、(3)体育授業以外への興味・関心(他教科の興味、諸活動の興味と体育の楽しさ)も含めて診断システムとすること、(4)各尺度の評価基準、診断プロフィールを作成することを通して、体育における学習意欲診断システムを完成させることであった。種々検討の結果、本診断システムは、体育における学習意欲(短縮版AMPET)、学習意欲の類型(パターン)、学習意欲の支持要因、学習行動の選好、他教科や諸活動の興味、現在行われている体育授業の楽しさを測定できることが明らかとなった。また、各尺度は5段階評価によって診断プロフィールの形で示すことが可能となり、本診断システムを実際に利用した5人の体育担当教師に対して感想を求めたところ、いずれも肯定的な内容であった。以上のことから総合的に判断して、「体育における学習意欲診断システム」は、教育の実践場面において十分有効利用できるものであることが認められた。本診断システムによって提供された情報をどのようにして実際の指導に結びつけていくのかという具体的な学習指導への橋渡しが今後の課題である。
著者
鈴木 秀士
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

絶縁体表面にも適用可能な非接触原子間力顕微鏡と放射光X線を組み合わせた新しいナノスケール元素分析・化学状態分析法、X線支援非接触原子間力顕微鏡(X-ray Aided Noncontact Atomic force microscopy, XANAM)の開発を行ってきた。これは探針-試料間の相互作用を試料原子の内殻電子励起が可能なX線で人為的に変化させることで、探針直下の元素種の同定や化学状態識別を可能とする手法であり、相互作用のX線による変化を詳細に調べ、また信号の高感度化、高空間分解能化に取り組み、探針によって元素種の識別が可能であることを示した。
著者
興戸 正純 市野 良一 黒田 健介
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

銅,ニッケルなどのコモンメタルのナノサイズ粒子を液相還元法により合成した.反応パラメータの最適化を図り,反応機構を明らかにした.アスコルビン酸,次亜リン酸,硫酸チタン(III),水素化ホウ素ナトリウムの4種類の還元剤において,還元力(ΔE)が大きいものは粒子サイズを小さくする駆動力があることを定量的に示した.水酸化銅を前駆体として硫酸銅と強い還元剤である水素化ホウ素ナトリウムを用いpH12, 30分の反応において30 nm径の銅微粒子を得ることができた.弱い還元剤のアスコルビン酸と硫酸銅を用いテンプレートになるCTBAの濃度を増加させると,析出する金属は粒状,針状,平板状と変化した.反応過程を混成電位図より電気化学的に議論した.
著者
田上 英一郎 原 成光 西田 民人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008-04-08

海洋有機物プール消長がもたらす地球表層炭素循環へのインパクトを明らかにするために海洋有機物動態の総合的理解を目指した。ハイスループット分析法を用いて溶存有機物の分布を求め、その特徴から溶存有機物動態を明らかにし、分子レベルで有機物プールの詳細に把握することが主題である。本研究課題では、LC-MS/MSを用いたハイスループット分析法を開発し、観測海域から大量の基礎データを採取した。2次元多核種NMR法およびFACE法を用いて溶存および懸濁態有機物の高分子レベル分析法を用いて、海洋有機物の高次構造を明らかにすることで、海洋有機物の化学像を洗い出しを行った。
著者
徳永 智春
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

材料の局所領域の構造をナノスケールで明らかにすることが可能な透過電子顕微鏡により有機材料を観察するための条件を調査した.その結果,加速電圧200kV,照射電流密度2pA/cm^2の条件を用いて短時間のうちに観察する必要があることが判明した.また,有機半導体からなるデバイスの薄膜加工には機械加工が適していることが明らかになった.
著者
秋山 真志 清水 宏 阿部 理一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、魚鱗癬の治療法の開発を目的とし、正常ヒトABCA12導入遺伝子の作成、培養魚鱗癬患者表皮細胞およびABCA12ノックアウトマウス(魚鱗癬モデルマウス)表皮細胞に対する遺伝子導入実験、遺伝子導入幹細胞株よりの皮膚再生系の確立、再構成魚鱗癬病変に対する遺伝子導入による治療実験、ABCA12ノックアウトマウスに対する胎児治療実験を施行し、それらの研究成果から臨床応用への可能性を評価した。
著者
岡崎 健一 鳥本 司
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

金属ナノ粒子は、粒子サイズや形状・結晶構造に依存して物理化学特性が大きく変化する。そのため、これらを制御することは、高活性触媒、電極触媒など様々な応用を目指す上で極めて重要である。当研究グループではこれまでに、イオン液に対して金属をスパッタ蒸着することにより、安定化剤などを添加することなく、イオン液体中に均一に分散した金属ナノ粒子や合金ナノ粒子を作製することに成功してきた。今年度、本手法を用いて、インジウム、金-銅合金、金-パラジウム合金を作製し、コア-シェル構造・中空構造などの形状制御、加熱処理による結晶構造制御、および組成制御による高活性電極触媒への応用について、それぞれ検討を行った。120℃で減圧乾燥したイオン液体(BMIm-BF_4)に対して、2.0Paのアルゴン雰囲気下でインジウムをスパッタ蒸着したところ、金属インジウムをコアに、アモルファス酸化インジウムをシェルに持つ、In/In-2O_3コア-シェル構造ナノ粒子を作製することに成功した。この粒子はコアサイズ4.0nm、シェル厚2.0nmのナノ粒子であった。さらに空気中200℃以上で加熱処理することにより、インジウムと酸素の拡散速度の違いにより、粒子内部が中空化した中空In_2O_3ナノ粒子を作製することにも成功した。このように我々が開発したイオン液体へ金属をスパッタ蒸着するナノ粒子合成法は、金属ナノ粒子のみならず、半導体ナノ粒子や構造特異性を有するナノ粒子を作製可能であることを見出した。一方、例えばAuCu合金ナノ粒子を液相で合成した場合、原子が規則的に配列した規則合金化するためには450℃付近まで加熱する必要があったが、減圧アルゴン下で加熱したイオン液体ヘスパッタ蒸着することにより、AuCu規則合金ナノ粒子を150℃という低温で形成できることを見出した。
著者
浅井 秀太
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

感染できない病原菌が感染を試みると、その極初期に一酸化窒素(NO)や活性酸素種(ROS)が生産され、続いて動的な防御応答が誘導される。植物の特徴的な抵抗反応である過敏感細胞死誘導には、NOとROSの協調的なバランスが必要であると考えられている。NOとROS生成の制御機構を明らかにする目的で、ベンサミアナタバコにおいてウイルス誘導型ジーンサイレンシング法を用いた約5,000遺伝子のスクリーニングによりエリシターであるINFIによって誘導される過敏感細胞死に関与すると思われる候補遺伝子を10個得た。NbRibAは、フラビン(リボフラビン、FMN、FAD)生合成経路に含まれる2つの酵素(GTPCHII、DBPS)活性ドメインを持つタンパク質をコードしており、大腸菌組換えタンパク質はGTPCHII活性およびDBPS活性を示した。また、NbRibAをサイレンシングしたベンサミアナタバコ葉においてリボフラビン、FMN、FAD含量が顕著に低下していたことから、NbRibAがベンサミアナタバコにおいてフラビン合成に関与していることが明らかとなった。そして、NbRibAサイレンシング葉では、INF1によって誘導される過敏感細胞死に加えて、NOやROSの生成も顕著に抑制され、ジャガイモ疫病菌およびウリ類炭疽病菌に対する抵抗性が低下した。さらに、この抑制された過敏感細胞死とNOおよびROS生成は、リボフラビンやFMN、FAD処理によって相補された。FMNやFADは、NO生産に関与するNO合成酵素、硝酸還元酵素やROSを生産するNADPHオキシダーゼの補酵素として知られている。以上のことから、NbRibAのサイレンシングによるNO生成およびROS生成への影響は、FMNとFADの減少に起因するものと考えられた。これまでラジカル分子(ROS,NO)生成酵素の活性制御に関わる具体的な因子についての報告はなく、世界で初めての発見である。
著者
清水 裕彦 猪野 隆 武藤 豪 嶋 達志 佐藤 広海 大森 整 北口 雅暁 舟橋 春彦
出版者
名古屋大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2007

J-PARC スパレーション中性子源に、基礎物理学のための冷中性子ビームライン BL05 を建設・整備した。光学デバイスにより精密に制御された中性子ビームを用い、中性子寿命の高精度測定をはじめとする物理実験が行われている。超冷中性子の高密度輸送法などの開発は従来の限界を超える測定を可能にする。物質研究においても磁気集光光学系を用いた極冷中性子小角散乱や共鳴スピンエコーなど新たな測定法を開発した。