著者
犀川 陽子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

非アレルギー性くしゃみ反射を誘発する天然有機化合物に注目し、くしゃみ誘発活性の定量法を確立して新たな化合物の探索および既知のくしゃみ誘発物質の構造活性相関を調べる研究を行った。くしゃみ誘発活性試験法として、定期的にオブアルブミンを投与することで鼻アレルギーマウスモデルを作成し、その鼻孔に試料を塗布してくしゃみの数を数える方法を採用した。アレルギー状態の減衰やマウスの個体差の補正のためにポジティブコントロールを並行して用いることで、くしゃみ誘発活性の定量法を確立した。アカクラゲ由来のくしゃみ誘発物質の探索:ハクションクラゲの別名を持つアカクラゲから、くしゃみ誘発物質を単離、構造決定する目的で研究を行った。これまでにアカクラゲからくしゃみを誘発する化合物として3種の不飽和脂肪酸を同定したが、今回改めて抽出方法の検討から行った。その結果、アカクラゲの触手の乾燥粉を水にて抽出した溶液には、時間経過と共に活性の減衰するくしゃみ誘発物質が存在することがわかり、これを短時間で精製を試みた結果、活性本体はタンパク性の刺胞毒である可能性を示唆する実験結果が得られた。グラヤノトキシン類の構造とくしゃみ誘発活性との相関に関する研究:くしゃみを誘発することが知られているグラヤノトキシン類をハナヒリノキやアセビから抽出、化学誘導し、14種類の類縁体を得た。これらのくしゃみ誘発活性の定量を行った結果、グラヤノトキシンIが最も強いくしゃみ誘発活性を示し、その異性体では全く活性を示さないことが明らかとなり、分子構造のわずかな違いを正確に見分けるくしゃみ受容体の存在が示唆された。試験したグラヤノトキシン類のくしゃみ誘発活性と構造の相関は毒性やナトリウムイオンチャネル開口活性と構造の相関に近いことがわかり、ナトリウムイオンチャネルへの作用がくしゃみ誘発に関わると予想している。
著者
渡辺 賢治 長崎 正朗
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

われわれはこれまでの研究により、漢方薬十全大補湯が1型インターフェロンであるインターフェロンαの遺伝子発現経路に作用してインターフェロン産生を制御していることを見出した。本研究ではさらなる機序解明のため、大腸の固有粘膜層に存在するインターフェロン(IFN)産生細胞について明らかにするとともに、Toll Like Receptor(TLR) 4およびMyD88ノックアウトマウスを使用してそのメカニズムを解明する事を試みた。その結果、十全大補湯はTLR4依存かつMyD88非依存のシグナル経路に働きかける事が明らかとなった。また、MyD88ノックアウトマウスではI型インターフェロン関連遺伝子の定常状態における発現レベルが高くなっており、十全大補湯により発現レベルが減少する事が認められ、同様の現象が無菌(GF)マウスでも認められた。さらに、それらの作用細胞は全て同じ単球系細胞であったが、既報のインターフェロン産生細胞とは異なることが示された。次に十全大補湯の感染防御能を確かめる目的でインフルエンザ感染実験を行ったが、対照群の補中益気湯と比べ、十分な抗インフルエンザ効果が認められなかった。マウスの系統やウイルスの特性によって十全大補湯の実験系に影響を及ぼす事が考えられた。また補中益気湯について、その感染防御メカニズムの一端を明らかにした。
著者
安藤 寿康 戸田 達史 河合 泰代 藤澤 啓子 大野 裕 平石 界
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009

本研究は児童期と青年・成人期の2つの双生児コホートによる縦断調査により、社会性とメンタルヘルスの形成・変化の過程におよぼす遺伝と環境の影響の解明を目指した。認知能力の発達や問題行動の発現、メンタルヘルスの変化に遺伝要因のそのものの発現の変化、ならびに遺伝と成育環境や文化環境との間のさまざまな交互作用が関わっていることが見いだされた。また認知機能の個人差に関わる遺伝子とその発現、さらには脳の構造と機能との関係を明らかにするための研究基盤が確立された
著者
堀 進悟 佐野 元昭 鈴木 昌 太田 成男 林田 敬
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、水素吸入療法の院外心停止蘇生後患者に臨床応用を目指したトランスレーショナルリサーチである。まず、ラット心停止蘇生後モデルを用い水素吸入の有用性の検証した。水素吸入群では、脳機能スコアおよび生存率が対照群と比較して改善した。水素吸入と低体温療法を併用することにより最も改善効果を認めた。さらに、蘇生後患者に対し水素吸入の安全性と有効性の評価を行った。事前に設定した予測しうる心停止発症後7日間以内の臨床的異常変動を観察し、副作用および臨床上の不利益をみとめなかった。対象全5例中4例が独歩退院した。今後、多施設無作為化試験により心停止後症候群患者に対する水素吸入の効果を検証する予定である。
著者
伊藤 清司
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.73-106, 1969-08

第二節 風水の神第三節 早魃の神第四節 蝗螽の神
著者
稲葉 隆政
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.107-134, 1987-05

資料紹介
著者
奥田 知明 梶野 瑞王 深潟 康二 岩田 歩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

有害性が懸念されるエアロゾル粒子の生体や地表面への沈着挙動を議論する上で、粒子の沈着現象に関わる重要なパラメータである粒子の帯電状態については、ほとんど研究が進んでいない。本研究では、生体や地表面へのエアロゾル粒子の沈着現象において、粒子のサイズや粒径分布および幾何学的形状等のパラメータ群と比較して、実環境大気エアロゾルの帯電状態がどの程度の影響を持つか、という問いに対して、観測と実験およびシミュレーションモデルの手法を駆使して明らかにすることを目指す。
著者
小野 修三
出版者
慶應義塾大学
雑誌
法學研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.203-224, 1994

内山秀夫教授退職記念号一 はじめに二 『刑法改正案ノニ眼目 : 死刑及刑ノ執行猶予』(明治三五年)三 『未成年者二対スル刑事制度ノ改良二就テ』(明治三六年)四 おわりに
著者
前嶋 信次
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.137-185, 1957-11

十 和林教化の説十一 コス・ゴル湖畔入寂の説十二 宣化文書の檢討十三 西夏文經典について十四 輔仁大學調査團の立化寺訪問十五 印籠その他の品々結論
著者
三井 宏隆
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.211-240, 1993-07

中絶論争 場外で加熱 共和党大会 '92米大統領選「中絶問題」とキリスト教各派 原理主義者 問題の経緯 米,中絶制限を撤廃 大統領命令 少女の中絶 国揺るがす アイルランドでレイプ妊娠論議紛糾 中絶法実施,一時停止 ドイツ連邦憲法裁 ポーランド 中絶規制法成立 中絶容認をバチカン紙非難中絶法の成立とその改正Roe vs. Wade 最高裁判決 中絶の自由,制限 米最高裁「規制措置の州法は合憲」 「中絶」に玉虫色判決 米連邦最高裁中絶問題と社会科学 「赤ちゃん殺すな」と医師射殺,中絶反対派の活動家This paper reviews the controversy over abortion in the United States. The Supreme Court's decision in Roe vs. Wade in 1973 changed the issue from a private one to a public one. Antiabortion groups were reorganized and a counterattack was launched. The activists involved (both prolife and prochoice groups) represent extreme and opposite ends of the issue and therefore offer little hope of compromise. The questions arise : Is abortion legal or not? When does life begin? Who can make a decision about life and death? It is not easy to resolve these questions or the issue as a whole, without looking at the underlying issues. These include the role of traditional values (including moral, sexual and familial values), which are in turn influenced by a male dominated society.
著者
橋本 貴美子 森本 繁雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

フランスとポーランドで起こったTricholoma equestreによる中毒事故は、致死的な横紋筋融解症を引き起こした。この原因物質を研究するために、材料となるキノコの入手が可能かどうかを調べた。日本ではT. equestreはキシメジ(T. flavovirens)と同一とされるが、キシメジと食菌シモコシ(T. auratum)の区別が曖昧であり、他にも類似した菌が分布しているため、同定は混乱を極めている。調査の結果、キシメジ、シモコシ、カラキシメジ(T. aestuans)の3種をきちんと同定することが重要であり、宿主植物、発生時期、味等で分別可能であることがわかった。
著者
本間 周子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
体育研究所紀要 (ISSN:02866951)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-10, 1979-12

1. はじめ2. メイ・デイについて3. メイ・デイのダンスについて4. メイ・デイのダンスの歴史的考察5. むすび
著者
佐藤 卓
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

着床前遺伝子診断の実際では, 稀少なDNA量の遺伝子増幅の際に, 例えば対立アリルの一方のみが増幅されないアレルドロップアウト現象の出現が知られ, 誤診断の原因となる. 現在までに利用可能な各種全ゲノム増幅技術 (WGA) を比較した. その結果, WGAの違いによって, 検出されやすい遺伝子変異が異なる事象が観察された. また, WGA毎に増幅されやすい遺伝子領域が異なり, それは, 同一の遺伝子領域においてさえも, 増幅のバイアスは観察された. いずれのWGAを採用しても, あらゆる遺伝子においてADOは観察される結果を得た. 現時点では, MDA法が最も汎用性が高い.
著者
明石 欽司
出版者
慶應義塾大学
雑誌
法學研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.49-80, 1998-07-28

論説序論第一章 ウェストファリア条約と「勢力均衡」第二章 一七世紀後半の諸条約におけるウェストファリア条約の影響と「勢力均衡」 第一節 ブレダ条約・アーヘン条約 第二節 ナイメーヘン条約 第三節 ライスヴァイク条約第三章 ユトレヒト条約におけるウェストファリア条約の影響と「勢力均衡」 第一節 ウェストファリア条約との関連性 第二節 ユトレヒト条約における「勢力均衡」 第三節 欧州国際社会観の転換第四章 ユトレヒト条約後の諸条約における「勢力均衡」結論
著者
井上 正純 竹内 裕也 松田 祐子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

食道扁平上皮癌切除例における癌組織中のIL-8とCXCR2の発現を検討したところ、IL-8/CXCR2共発現例で有意に術後無再発生存割合及び全生存割合が不良だったことからIL-8/CXCR2シグナルが食道扁平上皮癌細胞動態に関与していることが示唆された。食道扁平上皮癌細胞株を用いた実験ではin vitroにおいてIL-8/CXCR2シグナルを外因的・内因的に刺激すると細胞増殖は亢進し、外因的・内因的に抑制すると細胞増殖が抑制された。ヌードマウスを用いたin vivo実験でも同様の結果を得たことから、IL-8/CXCR2シグナル伝達が食道扁平上皮癌の細胞増殖に関与していることが示唆された。