- 著者
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高村 昇
- 出版者
- 長崎大学
- 雑誌
- 長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
- 巻号頁・発行日
- vol.87, pp.161-164, 2012-09-25
1986年4月26日未明,ウクライナの首都キエフから北へ130kmの地点にあるチェルノブイリ原子力発電所4号炉が爆発炎上し,人類史上最悪の放射線災害が発生した.当時の東西冷戦構造のもと,正確な情報は世界へ発信されず,目に見えない放射線に対する恐怖と相まって,世界レベルでのパニックが引き起こされた.事故に対して本格的な国際協力が開始されたのは,ゴルバチョフ大統領のペレストロイカ(経済改革)やグラスノスチ(情報公開)政策がソ連解体へと歩を進めていた1990年以降であった.チェルノブイリ周辺地区住民,ならびに発電所の作業者における健康影響についての科学的知見は,今後の福島県民の健康をどのようにして見守っていくかを考えた際,重要なものとなる.本稿ではチェルノブイリ事故による健康影響を概説しながら,チェルノブイリにおける住民検診とその問題点について考察する.