著者
小池 彩乃 大嶋 玲子 田中 志子 内田 陽子
出版者
社会福祉法人 認知症介護研究・研修東京センター
雑誌
認知症ケア研究誌 (ISSN:24334995)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-72, 2019 (Released:2020-06-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究の目的は、老人看護専門看護師実習で受けもちをしたBPSDをもつ認知症高齢者1事例に対して、睡眠センサーを用いて睡眠リズムを可視化させ、BPSD軽減につながるケアを実践し、その評価を行うことである。 A氏は、毎日深夜2時に行われる夜間の排泄ケアにより中途覚醒し、BPSDが悪化していた。そのため、①睡眠センサー(TANITA Sleep Scan®)を使用し、7日間の睡眠状況を可視化させ睡眠パターンを把握した ②中途覚醒が多い時間帯を目安にし、排泄ケアを行った。その結果、BPSDの症状軽減につながった。 深睡眠時の中途覚醒はBPSD悪化の要因となるため、睡眠パターンに基づいたケア提供が必要となる。特に認知症高齢者は、不快感や苦痛を言葉で伝えることが難しくなるため、睡眠センサー等を用いて客観的に睡眠状況をとらえ、より良い睡眠につながる眠りの評価を行うことが、BPSD軽減に重要である。
著者
林 健太郎 柴田 英昭 江口 定夫 種田 あずさ 仁科 一哉 伊藤 昭彦 片桐 究 新藤 純子 谷 保静 Winiwarter Wilfried
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

20世紀はじめに大気中の窒素分子(N2)からアンモニア(NH3)を合成するハーバー・ボッシュ法を確立した人類は,反応性窒素(N2を除く窒素化合物)を望むだけ作り出せるようになった.化石燃料などの燃焼に伴い発生する窒素酸化物(NOx)を合わせると,人類が新たに作り出す反応性窒素の量は今や自然起源の生成量と同等である.しかし,人類の窒素利用効率(投入した窒素のうち最終産物に届く割合)は人間圏全体で約20%と低い.必然的に残りは大気・土壌・陸水・海洋に排出され,地球システムの窒素循環は加速された状態にある.反応性窒素には多様な化学種が含まれる(例:NH3,NOx,一酸化二窒素[N2O],硝酸態窒素[NO3–]など).環境に排出された反応性窒素は形態を変化させつつ環境媒体を巡り,最終的に安定なN2に戻るまでの間に,各化学種の性質に応じた環境影響をもたらす(例:地球温暖化,大気汚染,水質汚染,酸性化,富栄養化,これらによる人の健康や生態系の機能・生物多様性への影響).この複雑な窒素の流れと環境影響を窒素カスケードとも称する.現在の人為的な窒素循環の加速は,地球システムの限界(プラネタリー・バウンダリー)を既に超えていると評価されている.窒素は人間社会と自然の全てを繋いでめぐっていることから,人間活動セクター(エネルギー転換,産業,農林水産業,人の生活,廃棄物・下水処理,貿易)と環境媒体(大気,土壌,地表水,地下水,海洋)をどのようにどの程度の量の窒素が流れているかを把握することが,窒素カスケードの実態を把握する上で望まれる.これが窒素収支評価である.欧州の窒素収支評価ガイダンス文書によれば,窒素収支評価の必要性と有用性は以下のとおりである:窒素カスケードの潜在影響を可視化する,政策決定者の意思決定に必要な情報を提供する,環境影響や環境保全政策のモニタリングツールとなる,国際比較の機会を与える,および知識の不足(ギャップ)を明らかにして窒素カスケードの科学的理解の改善に貢献する.地球環境ファシリティの国際プロジェクトであるTowards INMS (International Nitrogen Management System) では国別窒素収支評価の手法開発を進めており,我々もその一環として日本の窒素収支評価に取り組んでいる.国別窒素収支評価の手法として,欧州反応性窒素タスクフォースのEPNB (Expert Panel on Nitrogen Budgets) ガイドラインや,中国で開発されたCHANS (Coupled Human and Natural Systems) モデルなどが先行しており,我々はCHANSモデルの日本向けの改良を進めている.CHANSモデルは主要セクター・媒体をそれぞれ一つのプールとし,プール間を結ぶ窒素フローを定量する.日本向けの改良では以下のプールを設けている:エネルギー・燃料,産業,作物生産,家畜生産,草地,水産,人の生活,廃棄物,下水,森林,都市緑地,大気,地表水,地下水,沿岸海洋.プールの中には必要に応じて複数のサブプールを定義し(例:産業の中に食品産業,飼料産業,その他製造業など),サブプール間の窒素フローを求めた上で,プールごとに集計する.このうち,特に生物地球化学の知見が求められることは,人間活動プールと環境媒体プール間のフロー,環境媒体プール間のフロー,および環境媒体プール内のストック変化である.具体的な課題として次のフローやプロセスが挙げられる:1) 人為による大気排出,2) 人為による陸域への投入,3) 人為による地表水の利用と地表水への排出,4) 人為による地下水の利用と地下水への直接・間接の排出,5) 人為による沿岸海洋への排出,6) 大気-陸面相互作用(多くの過程を含む),7) 陸域内プロセスと蓄積,8) 地表水-地下水-沿岸海洋のフロー,9) 沿岸海洋-外海間のフロー.本発表では,日本向けCHANSモデルの概要と,上記の課題の現状の算定方法を紹介し,生物地球化学の観点からの精緻化について参加者と議論したい.
著者
川島慶治 編
出版者
吐鳳堂
巻号頁・発行日
1902
著者
大川 浩子 宮本 有紀 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.46, pp.49-59, 2022-03-15

障害者の雇用は年々増加している.一方,国において就労支援に従事する支援者の質について,議論がされている.我々は,就労支援機関の職員にとってワーク・エンゲイジメントを高める仕事の資源であり,医療職の離職意向に影響を及ぼす要因でもある管理職について注目した.今回,地域の就労支援機関の管理者を対象にインタビュー調査を行い,管理職の現状と課題についてテキストマイニングを用いて検討した.対象は地域の就労支援機関で勤務する管理者12 名である.2019 年11 月から2020年8 月にかけて,現在の所属機関での人材育成や組織に関する課題を含めたインタビューを60 分程度実施し,インタビューデータを逐語録にし,テキストマイニングを行った.テキストマイニングでは,対象の属性による傾向を見ることを目的に定量的に分析を行った.管理者の所属機関の事業形態,所属法人の役員兼務の有無,法人規模の属性を外部変数としてコードのクロス集計を行った結果,【職員教育】【管理業務】【職員採用】に関しては属性問わず取り組みや課題があると思われたが,【収支状況】【人事システム】【役割】に関しては属性による違いがあることが考えられた.
著者
小川 華代
出版者
日本会計史学会
雑誌
会計史学会年報 (ISSN:18844405)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.39, pp.1-15, 2020 (Released:2022-07-05)

イギリス産業革命期主要産業の1つである綿工業は,短期間で大工場制へと成長した。しかし,綿工業の原価管理の手法については,これまでの研究では不十分であった。そのような中で,本稿では,綿工場の最初の管理書として評価されているが,これまで詳細な研究が行われてこなかったJ. Montgomeryの経営管理書の検討を行った。経営管理書では,これまでの綿工場経営の問題点を整理し,有用な管理手法の提案が行われている。この経営管理書の1番の功績は,イギリス産業革命期当時の,秘密性の高かった内部管理の手法を公開することにより,綿工業全体の発展を促したことである。大工場となった綿工業において,利益の最大化を追求するためには,原材料,製造費用,人材などの管理を正確に行うことが重要である。正確な管理を行うためには,知識が必要であり,J. Montgomeryはその知識の提供を経営管理書によって行った。経営管理書では,特に原価計算の重要性について着目しており,綿工業の特徴を反映させた原価計算の萌芽形態を示している。
著者
近代社 編
出版者
近代社
巻号頁・発行日
vol.露西亜篇 下, 1925
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
vol.第1, 1967
著者
新山 喜嗣
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.82-92, 2007-09-20 (Released:2017-04-27)
参考文献数
22

カプグラ症候群では、身近な人物における属性とは無縁な「このもの性」としての<私>が、自分の眼前から消失するという、言わば「純粋の死」を体験することになる。われわれにとっての死も、その核心がこのような<私>の消失を意味するとすれば、そのような死は善きことか悪しきことか、それとも、そのどちらとも言えないことなのであろうか。20世紀の分析哲学は、不在の対象について善い悪いといった何らかの言及をすることが困難であることを教える。このことからすれば、この世にすでに不在となっている死した人物についても、その死が善きことか悪しきことかを語ることができないことになる。今や、自分の死についても、また、他者の死についても、その死の意味の収斂先を失うのである。それでもなお死の意味を求めようとすれば、死を<私>の完全な消滅としてではなく、カプグラ症候群のように<私>の変更として捉える道があるかもしれない。しかし、属性を伴わない<私>の変更は、<私>にとって気づきうることでもなければ、<私>にとって何らかの関係を持ちうることでもない。もはや残された死の意味は、隣の<私>の消失としての他者の死と、将来における自分の<私>の消失としての自分の死という、虚空だけとなる。
著者
金子 正彦
出版者
日本地熱学会
雑誌
日本地熱学会誌 (ISSN:03886735)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.85-100, 2016-07-25 (Released:2017-01-25)
参考文献数
28

Geothermal energy laws in other countries may be great reference when Japan considers enhancing its own legal framework to promote geothermal energy development. This paper follows the previous paper of “Geothermal Energy Laws in the World” which was placed in the Journal of Geothermal Research Society of Japan, vol. 34, No.3 (2012). The previous paper surveyed geothermal energy laws of nine major geothermal countries including the U.S., the Philippines, New Zealand, Iceland and Japan. This paper is a supplemental paper to provide information of geothermal energy law of other countries such as Indonesia, Mexico, Italy, Turkey, Costa Rica, Peru and Ethiopia. The surveys show; (i) Each country has its own geothermal energy law to promote geothermal energy development. (ii) Hot Spring Law, that was enacted to regulate small wells for thermal baths, is also used to regulate large-scale wells for geothermal power plants in Japan. There are, however, many inconvenience arise from adapting Hot Spring Law to geothermal energy development. (iii) Japan needs to enact its own “Geothermal Energy Law,” of which objective is to control and to promote geothermal energy development, with reference of other countryʼs geothermal laws.
著者
高見 勝利
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.36-42,195, 2007-02-28 (Released:2009-01-27)

衆院において賛成多数で可決され,参院に送付された内閣提出法案が,参院で否決されたとき,内閣が,これを内閣不信任だとして,衆議院を解散することは,日本国憲法上,どう評価すべきかが,いわゆる小泉解散の最大の争点である。解散理由について,首相自身は,参院における法案否決を内閣に対する不信任だと受け止めたからだという以上のことは語っていない。が,「衆院が可決した法案を参院が否決した場合,衆院が出席議員の3分の2の特別多数で再可決すれば法案が成立するのだから,当該議席数確保のためにする解散は認められる」とする見解がある。しかし,解散理由として,再議決権を持ち出すことは,解散•総選挙の趣旨や議会政のあり方からして是認されないこと,小泉解散は不当な解散事例であり,「国民投票的」解散に途を拓いた事例として積極的に評価すべきではないこと等を指摘した。
著者
平田 徳恵 川原 晋
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.26, no.63, pp.719-724, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
10

This paper clarifies the followings. (1) What impact do the two destinations that have won the Blue Flag Award in Japan expect from the authentication ? (2) Which standards of the various Blue Flag standards are effective and why? From Internet surveys on the development of Blue Flag authentication, we clarified that Blue Flag is an authentication that emphasizes social issues. In addition, our interview survey on two regions in Japan revealed that there are differences in the motivation for acquiring the Blue Flag Award and in the activities and in the contents the systems of activities by local residents.
著者
山崎 志郎
出版者
土地制度史学会(現 政治経済学・経済史学会)
雑誌
土地制度史学 (ISSN:04933567)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.16-34, 1991-01-20 (Released:2017-12-30)

Japan put all of her energies into increasing aircraft output during the latter half of the Pacific War. The demand for aircraft was in exess of the productive capacity, so the government mobilized equipment, materials, labor to the aircraft industry as much as posible. In this sense the aircraft industry is an important focus for the analysis of the national mobilization in Japan. The military authorities planned an urgent aircraft production program for 1944 during the summer of 1943 with priority given to the High Command demands. In this plan they expected 3 times as much output as 1943 at the cost of reductions in many other weapons. The Musashino Plant of Nakajima Aircraft Company, Ltd., one of the biggest aircraft maker in Japan, expanded its facilities rapidly. But on the other hand, lack of coordination of equipments and dilution proceeded unduly. The Musashino Plant had priority for materials, machines, labor, electricity, etc.. Trading on this merits the plant tightened the combinations between subcontract, cooperative and allied factories. But the high productivity was not accomplished owing to a shortage of high efficiency machines and technical experts. For all that the extream mobilization of labor, the priority production of materials and machines for aircraft, the nationwide recovery and the distribution concentration yielded much increase in aircraft production. There was no consideration for the cooperation of the overall economy anymore. Therefore the selfgoverned distribution system by the Control Asociations which developed during the war time, began to collapse.

1 0 0 0 交通と電気

出版者
電通社
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, 1928-07