著者
石間 英雄
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1_134-1_158, 2017 (Released:2020-07-01)
参考文献数
52

本論文は, オーストラリア労働党の事例を調査することによって, 政党の一体性に関する理論に対する貢献を行なうことを目的とする。オーストラリア労働党は, 凝集性が低く, かつ規律の執行が難しいにも関わらず, 極めて一体性が高く, 既存の理論によっては説明することが難しい事例である。本論文は, 政党内部組織に注目し, 党内における調整メカニズムがオーストラリア労働党の一体性を導くメカニズムであると主張する。 オーストラリア労働党の内部にはコーカスと呼ばれる組織が存在し, 下位組織としてコーカス政策委員会が存在している。コーカスは, 政策決定過程に埋め込まれており, 事前調整のメカニズムとして機能していた。意思決定過程を観察したところ, コーカス内の議論において, 一般議員が大臣提出法案に対し影響力を発揮していたことが明らかとなった。この党内の調整メカニズムによって, 議会提出前に, 執行部と一般議員の間で合意が成立していたため, 議会内での一体性が観察されたと考えられる。
著者
朴 志善
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.58-71, 2018 (Released:2021-07-16)
参考文献数
22

現代民主体制の下,与党は,政府の議会提出予定法案の作成過程に一定の役割を果たしている。しかし,大統領制の場合,立法府・行政府の関係の観点からアプローチすることが多く,政府案の作成過程における与党の参加(事前審査)の過程については十分な研究は行われてこなかった。その点から,本稿は,韓国の事例を通じて,大統領制の下での与党の事前審査の現状と,与党に対する大統領の資源が事前審査に及ぼす影響を明らかにする試みである。韓国の最高位レベルの事前審査である「高位党政協議」のデータを用いた分析の結果,大統領制の韓国においても多様な議題に関して事前審査が行われ,大統領の権限,大統領の支持率,発足後の月数など,大統領と所属議員の関係に影響する要因が事前審査の開催と性格に影響してきたことが確認された。本研究は,立法における事前審査,また,与党のリーダーとしての大統領の役割の重要性を指摘し,与党の立法活動の比較および理論化への貢献を試みる。
著者
澤田 聖也
出版者
日本オーラル・ヒストリー学会
雑誌
日本オーラル・ヒストリー研究 (ISSN:18823033)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.149-167, 2020 (Released:2021-12-20)
参考文献数
23

This paper describes how the relationship between female Okinawan folk singers and Okinawan folk songs changed from the 1940’s to the 1970’s through their local performance spaces. The musical activities of today’s female folk singers cover a wide range, from participation in events and media to live performances at folk song bars. Today, the activities of these female folk singers are naturally accepted, but looking back on their history, the relationship between female folk singers and Okinawan folk songs has changed greatly. The author interviews Okinawan folk singers born in the 1930s, 1940s, and 1950s and examines how the relationship between female folk singers and Okinawan folk songs has changed.
著者
村田 典子 市石 慶子 江崎 順子 坂田 貴彦 中島 一郎 赤坂 守人
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.505-509, 1997-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
15

本研究の目的は,夜間睡眠時における筋活動の評価に機能的に異なった複数の筋の筋電図記録を行う意義を明らかにすることである.そこで我々は,夜間睡眠時における側頭筋と咬筋の筋活動発現時間および筋活動比において検討を行った.被験者は健康成人5名とした.夜間睡眠時の筋電図記録は,簡易型筋電計を用い側頭筋および咬筋から記録を行った.そして,夜間睡眠時における筋活動発現時間および咬筋・側頭筋比を検討した.その結果,夜間睡眠時における筋活動発現時間において,側頭筋活動が長い時間を示す者は3名,咬筋活動が長い時間を示す者は2名であった.咬筋・側頭筋比は側頭筋優位な者が3名,咬筋優位な者が2名であった.このことから,夜間睡眠中の筋活動は,側頭筋を主体とした筋活動を示す場合と咬筋を主体とした筋活動を示す場合があることがわかった.以上のことから,夜間睡眠時の咀嚼筋活動を記録し検討するには,複数の筋から筋電図記録を行う必要があり,その結果,筋活動の相違が認められることが示唆された.
著者
岡崎 武二郎 高畠 浩 角 ゆかり 梅内 正勝 町田 豊平 小野寺 昭一 清田 浩
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-6, 1993-01-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
8

都立台東病院産婦人科でクラミジア陽性と診断された妊婦の男性配偶者で, 1989年8月から1992年5月までに同泌尿器科を受診した149症例を対象として, クラミジア血清抗体検査 (イパザイム®) と抗原検査 (クラミジアザイム®あるいはIDEIAクラミジア®) の2方法でクラミジア検査を行った.149例中90例 (60.4%) は, 抗体検査でクラミジア陽性であった. 抗原検査では, 149例中11例 (7.4%) が陽性を示し, この11例はすべて抗体も陽性であった.抗原陽性11例の患者は, 全例尿道炎の自覚症状はなかったが, 8例は他覚的には尿道炎の所見が認められた. しかし, 3例は自覚的にも他覚的にも正常で, 典型的な不顕性クラミジア感染症であった.今回の検討で, クラミジア抗原陽性症例は少なかったが, 抗体検査では半数以上が陽性であり, クラミジアは不顕性感染で家庭内に侵入していくものと思われた.
著者
菅原 浩
出版者
長岡造形大学
雑誌
長岡造形大学研究紀要 = Nagaoka Institute of Design Bulletin (ISSN:13499033)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.20-25, 2021-03

Following the previous paper, we made a further research with Izutsu Toshihiko’s philosophical framework of the Non-Articulation and the Articulation into the phenomena that some mature martial artists can control their opponents without any physical force. We discussed the idea of “subtle corporeity” in relation to the concept of “natural body,” how to merge one’s corporeity with that of someone else to achieve the “energetic fusion,” and the spiritual meaning of “central axis” in our corporeity.
雑誌
第一経大論集 = The Economic Review of Daiichi Keizai Daigaku
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.11-26, 1989-06-30
著者
水野 貴之 土井 翔平 土屋 貴裕 栗崎 周平
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.4H2GS11c05, 2021 (Released:2021-06-14)

約6600万ノード(企業とその株主)で構成されるグローバルな株所有ネットワークに,約80万種の投資ファンドを結合する.投資運用会社は,投資家の投資ファンドを運用することにより多くの企業の直接的または間接的な株主になり,収益を得る.そして,株主として企業を支配する.我々は,複雑でグローバルな株所有ネットワークを紐解き,社会的責任を伴うESGの投資ファンドとヴァイス企業(たばこ,軍需産業など)とを繋げる経路が存在することを指摘する.投資をやめれば,ヴァイス企業からの収益はなくなるが,支配することができず野放しになる.一方で,投資をおこなえば,ヴァイス企業からの収益を受け取ることになる.このジレンマは,グローバル株所有ネットワークで線形におこなわれる収益の配分と,多数決を通じて非線形におこなわれる支配力の配分を定量化し,収益と支配力とのバランスで投資の可否を決断することにより解決できる.