著者
清澤 真琴 木内 信
出版者
群馬県蚕業試験場
巻号頁・発行日
no.7, pp.45-49, 2001 (Released:2011-03-05)

養蚕の現場では、「ごろつき」「不結繭蚕」と呼ばれる、吐糸営繭せず正常に蛹化しない涸体が見られることがある。このような現象は、体内に残留する絹タンパクとの関係が従来から指摘されているが、詳細は明らかでないため、吐糸を阻害して蛹化に及ぼす影響を調べた。実験は、熟蚕を上蔟し、吐糸中の任意の時間に繭から幼虫を取り出して、吐糸管を鋭利なピンセットで除去し、吐糸を止めた。その後、幼虫を繭に戻して様子を観察した。また、体液中エクジステロイド濃度の測定と、その一部について分画を行った。その結果、吐糸が60%以上ならば多少遅延するが正常に蛹化した。しかし20%以下の場合は、ほとんどの個体が幼虫態のまま致死した。このような個体を解剖したところ、翅や気管、蛹クチクラの形成が起こり、排出されなかった絹タンパクが絹糸腺を破って体腔内に滲出していた。エクジステロイド濃度は、対照よりピークの濃度が低く、しかも遅れて現れた。
著者
西本 真司
出版者
International Society of Life Information Science
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.668-674, 2002 (Released:2019-05-01)
参考文献数
6

人体は60兆から100兆の細胞の集合体であるが、その一つ一つの細胞は、遺伝子の命じるままの働きを役割として果たしている。個々の細胞のクエン酸サイクルでのミトコンドリアが作り出すエネルギーの物質的な面での化学的な解明は、既になされている。人体は、それ以外のもっと微細で、未知のエネルギーの影響を受けている可能性が研究されてきている。東洋で、その存在は『気』という表現をしている。生物すべて、万物の根源という表現でも述べられている。1978年、生体に対してプラスに働くエネルギーを照射する装置が、野口総合研究所・野口氏により開発された。開発時、エネルギー照射水(銀河水^@、野口カタライザー21^@)や肥料によって作られた農作物は、素晴らしい品質を誇り、高い注目を得た。その後エネルギー照射水や、クリスタルを使用したピーリングが注目されてきた。特に、疼痛改善が体験例でみられることが判明した。今回、このヒーリングの生体に及ぼす影響が、脳波と気流においてどのような結果を出すかを調査したので報告する。
著者
石原 次郎 富岡 啓介 河? 眞琴
出版者
農林省四國農業試験場
雑誌
四国農業試験場報告 (ISSN:00373702)
巻号頁・発行日
no.64, pp.59-64, 1999-06

種子中の蛋白質含有率が20%前後に及ぶ高蛋白裸麦系統四R系911の種子貯蔵蛋白質を,二次元電気泳動法を利用して解析し,その質的および量的特徴を明らかにした。四R系911の種子貯蔵蛋白質は交配の片親である九州二条1号のものと一致し,九州二条1号から遺伝したものと考えられる。また,オオムギの貯蔵蛋白質の約4割を占めるホルデインのうち,主要な8種類のホルデインを吸光度値で比較したところ,これらすべてのホルデインについて四R系911の方が九州二条1号よりも含有量が多かった。ただ,増加率は一定ではなく,1.24倍から3.02倍の範囲で異なっていた。特に,BホルデインよりもCホルデインに属するもののほうが増加率が高かった。8種類のホルデインの増加の仕方は,穂の一部を切除して人為的に高蛋白化させた九州二条1号の値と酷似していた。以上のことから,四R系911の高蛋白化は,貯蔵器官である穂の占める割合が茎葉部に比べて減少したため,茎葉部から転流されてくるアミノ酸量が相対的に増加して生じたものと推察した。
著者
宮崎 徹 新井 郷子 新井 郷子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

AIM に結合するタンパク質の候補が複数得られた。ヒト血中AIM 濃度測定系(ELISA 法)を確立した。これにより、動脈硬化あるいは大動脈瘤や脳心臓血管障害など動脈硬化を基盤とする疾患や、他のメタボリックシンドロームと血中AIM 濃度の関連性、もしくは疾患の進行度と血中AIM 濃度の関連性を解析することが可能となった。適時不活性化が可能なAIM コンディショナルノックアウトマウスのターゲティングベクターの構築を行った。
著者
新井 郷子 宮崎 徹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マクロファージが産生する分泌タンパク質AIM (apoptosis inhibitor of macrophage) は肥満やそれに伴うインスリン抵抗性惹起等の生活習慣病に深く関る分子であり、体内AIMの機能や量の制御は、AIMが関る疾患の予防や病態進行の制御に有効である可能性がある。本研究では、AIMの機能および量的制御方法の探索を行い、また肥満由来の自己抗体産生および脂肪肝由来肝がんについてAIMと疾患の関連性を明らかにした。さらにヒトにおいて健常者および肝疾患患者における血中AIM値測定を大規模に行うことで、AIMによる疾患の制御の可能性および疾患マーカーとしての有用性を見出した。
著者
浅野 淳博 Atsuhiro Asano
雑誌
チャペル週報
巻号頁・発行日
no.2(2010.4.12-4.16), 2010-04
著者
戸部 秀之
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.158-167, 1993-07-30 (Released:2011-10-21)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

The monthly body weight data of school children in different regions, the school A in urban area of Tokyo, the school B and C in rural areas of Gunma and Tochigi prefectures, were investigated in order to compare the regional patterns of seasonal variation in weight growth. The seasonal factors of each region and those of each children were calculated by a time-series analysis. The results obtained were as follows. 1) In all regional groups, the highly significant seasonality (p<0.0001) were observed. The seasonal patterns of low in summer, especially in July, were the same in all regional groups. However, the months in which the high values appeared were different among the groups. The amplitudes of seasonal variation were smaller in the children of school A than in the children of school B or C. 2) From the analysis of the seasonal patterns of each child, the minimum values in seasonal factor appeared in July in many children, and it was remarkable in the children of school B and C. 3) The effects of months on variation in weight growth were different between sexes, from the fact that the F-values in the stable seasonality test were much higher in boys than in girls.
著者
三上 喜孝
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.169-180, 2004-03-01

律令国家により銭貨が発行されると、平城京や平安京などの都城を中心に銭貨が流通すると同時に、銭貨による出挙(利息付き貸付)が広範に行われるようになった。この銭貨出挙については、これまでも古代史の分野で膨大な研究蓄積がある。なかでも正倉院文書に残るいわゆる「月借銭解」」を素材とした研究により、古代の写経生の生活の実態や、各官司・下級官人による出挙運営の実態を明らかになってきた。だが古代の都市生活の中で銭貨出挙が果たした役割についてはなお検討の余地がありそうである。そこで本稿では、正倉院文書、木簡、六国史の記事を再検討し、銭貨出挙が都市民に果たした役割を総体的に検討した。正倉院文書の「月借銭解」(借銭文書)といえば宝亀年間の奉写一切経所のものが有名だが、宝亀年間より前の借銭文書からは、短期貸付の場合の無利息借貸、銭の運用のために貸し付けられた「商銭」、天皇の即位等にともなう「恩免」など、出挙銭のさまざまな存在形態をうかがうことができる。出土木簡からも銭貨出挙が平城京や平安京で広範に行われていたことが推定でき、借用状の書式の変遷を知る手がかりを与えてくれる。銭貨出挙の際に作成される借用状は、奈良・平安時代を通じて「手実」「券」などと呼ばれ、不整形な紙が用いられていた。平安時代の借銭文書の実物は残っていないが、書式は奈良時代の借銭文書のそれを踏襲していたとみてよいだろう。康保年間(九六四〜九六七)の「清胤王書状」の記載から、銭貨出挙のような銭貨融通行為が、銭貨発行が途絶える一〇世紀後半に至ってもなお頻繁に行われていたものとみられることは興味深い。銭貨出挙は律令国家による銭貨発行以降、都を中心に恒常的かつ広範に行われており、これを禁ずることは平安京における都市生活にとって支障をきたすことになったのであろう。それはとりもなおさず、平安京の都市生活における大規模な消費と深く関わっていたと考えられる。
著者
五島 清隆
出版者
Japanese Association of Indian and Buddhist Studies
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1203-1211, 2010-03-25 (Released:2017-09-01)

龍樹の思想を理解するには,その縁起観の解明が欠かせない.というのも,彼自身はブッダ(釈尊)が説いた縁起を空性と捉えており,一方で,現代の研究者の多くは龍樹の縁起を「相互依存(相依性)の縁起」と捉えているからである.私の研究によれば,『中論頌』における「縁起」の根底にあるのは仏説としての「十二支縁起」であり,邪見・顛倒の断滅による涅槃を目的とした十二支縁起(とくに還滅分)を,戯論の寂滅・分別の滅によって解脱に至る吉祥なる教え(つまり空性の縁起)として捉え直したものである.また,「相互依存の縁起」という捉え方は,まず『空七十論』において強調され,『無畏論』や『青目註』において発展的に継承されていき,一方では『ヴァイダルヤ論』において概念間の関係として展開していき,最終的には,月称によって確立されたものである.つまり,龍樹作とされる文献群やその註釈書においてその縁起観は変化・展開しているのである.その際,注目すべきは,各文献に見られる仏陀観である.龍樹作とされる文献群には「単数形のブッダ」と「複数形のブッダ」の対比が見られるが,『中論頌』では,前者が釈尊を指し,後者は龍樹の思想的支援者(あるいは「大乗のブッダ」)を指している.ところが『六十頌如理論』では逆に,「単数形のブッダ」が「不生不滅」の縁起を説くブッダであり,「複数形のブッダ」は伝統的教理の説者となっている.これが『宝行王正論』になると,「複数形のブッダ」は伝統的な教理も大乗の教理も説く,いわば普遍的な存在と捉えられている.この仏陀観の違いは,各文献の著者が異なることを示している.同様に,龍樹文献群における縁起観の変遷も単に龍樹個人の思想的な発展・深化ではなく,著者そのものの違いを示唆していると考えられる.
著者
中野 明正 上原 洋一 山内 章
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.737-742, 2003
参考文献数
27
被引用文献数
5

トマトの隔離床栽培において,5種類の施肥区(CDU化成肥料を与えたCDU区,低硫酸根緩効性肥料を与えたLSR区,窒素の想定必要量の半量ずつをCDUと牛糞堆肥で与えた区をCM+CDU区,同様にCDUと鶏糞堆肥で与えた区をPM+CDU区,牛糞堆肥および鶏糞堆肥のみを与えた区をCM+PM区)を設け年2作,4連作を行った.収量の経年変化,トマト果実の糖度,無機成分組成,土壌と果実のδ^<15>N値を測定した.化学肥料と堆肥施用で収量における有意な差は認められなかった.糖度についてはLSR区で他の処理区に比べ低くなる傾向があったが,CDU区では堆肥を施用した処理区と同程度の糖度を示したので,糖度の低下は化学肥料に特有の現象ではないと考えられた.また,無機成分組成ではマグネシウムだけが,CM+CDU区で増加する結果を得たが,堆肥施用の普遍的な効果とは考えられなかった.以上の結果からは,堆肥施用がトマトの収量,糖度,無機成分含量を増加させるという結論を導くことは困難であると考えられた.一方で,化学肥料および堆肥のδ^<15>N値は,土壌と果実の双方のδ^<15>N値に反映され,土壌と果実のδ^<15>N値の間には高い相関が認められた(R^2=0.89).これらのことから,堆肥施用したものと化学肥料施用したものとを分ける閾値を設け,δ^<15>N値を用いた有機農産物判別の可能性が考えられた.
著者
深尾 篤嗣 村川 治彦
出版者
日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
雑誌
トランスパーソナル心理学/精神医学 (ISSN:13454501)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.34-41, 2010 (Released:2019-08-31)

ドッシーは医学・医療を歴史的に、第一段階の身体医学・医療、 第二段階の心身医学・医療、スピリチュアリティの介在を認める 第三段階の医学・医療に分類している。一方、池見はbio-psychosocio-eco-ethical medical modelを提唱し、心身医療のゴールは実 存的な目覚めであり、自我を超えたスピリットへの超越と東西心 身アプローチ融合の必要を説いた。 我々は、プロセス指向心理学による「身」に対する多次元的ア プローチ(レインボー・メディスン)を導入することで第三段階 医学・医療を試みている。「自我」主体の「因果性」に基づく西洋 的心身医療と、「気づき」主体の「共時性」に基づく東洋的身心ア プローチを融合することにより、「心(マインド)」と「身体(ボ ディ)」の相関を扱う「心身医学」から、「魂(スピリット)」と 「身」の相関を扱う“魂身医学”へのパラダイムシフトが実現され ることが示唆された。