著者
小川 渉 宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.301-306, 2015 (Released:2015-05-01)
参考文献数
20
被引用文献数
10 17

肥満は2型糖尿病や脂質代謝異常症、高血圧に代表されるような動脈硬化性疾患のリスク因子に加え、蛋白尿や非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)、高尿酸血症など様々な疾患・病態の発症基盤となることから、肥満をどのように診断し、どのような対象に介入を行うかは重要である。わが国では欧米のような高度の肥満者は少ないにも関わらず、2型糖尿病や脂質異常症、高血圧などの肥満に関連する疾患の有病率は比較的高いことから、欧米より厳しい基準で肥満を診断することは妥当と考えられる。日本肥満学会では、肥満に関連する健康障害の有病率に関する疫学調査などから、BMI18.5以上25未満を普通体重とし、これを超えるものを肥満、下回る者を低体重と定義している。また、肥満の中でも、医学的に減量を必要とする病態を肥満症と呼び一つの疾患単位として捉えることを提唱してきた。肥満症の考え方として、現在健康障害を持つものだけではなく、将来健康障害を発症する可能性が高いものを含む点が重要である。内臓脂肪型肥満が健康障害を伴いやすいハイリスク肥満であることは知られている。内臓脂肪型肥満の診断手順は、ウェスト周囲長によるスクリーニングの後、腹部CT検査により内臓脂肪面積を測定する。一方、日本人間ドック学会・健康保険組合連合会により公表された「新たな検診の基本検査の基準範囲」は、特定の疾患を持たず、特定の疾患の薬物治療を受けていない集団の平均的なBMIの分布範囲を示したものにすぎない。この基準範囲にはハイリスク肥満である内臓脂肪型肥満が含まれており、これらは減量介入が必要な肥満症患者であることを強調したい。健診や人間ドックに従事される方は、これらの診断基準や基準範囲の設定の手法、目的の差異を十分に理解の上、業務にあたられたい。
著者
五味 玲
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.505-506, 2014-06-10

手術は弓を引くことに似る. 弓道の基本動作が「八節」である.「足踏み」「胴造り」「弓構え(ゆがまえ)」「打起し」「引分け」「会(かい)」「離れ」「残心」である. これを破裂脳動脈瘤の頚部クリッピング術にたとえてみたい.
著者
李 炯喆 李 烔喆
出版者
長崎県立大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:18838111)
巻号頁・発行日
no.12, pp.137-148, 2011

大平正芳は自民党派閥戦国時代の悲運の首相であって,40日抗争と1980年の衆参同日選挙という重圧の中で急逝した。弔い選挙のため自民党が大勝したものの,大平の在任中の国際政治の環境も良くなかった。構造化した日米経済摩擦,イラン革命と第2次石油危機,第3次インドシナ戦争,韓国の朴大統領暗殺と不安な朝鮮半島情勢,新冷戦に発展するソ連軍のアフガン侵攻とモスクワ・オリンピックのボイコットなど混沌たる状況であった。しかしながら,混濁した内外の情勢にも拘らず,経済大国日本の新しい位相を模索し続けて,政治外交では「戦後の総決算」,「総合安全保障」,「環太平洋連帯」のビジョンを提示した。さらに,西側国家としては初めて中国に円借款を提供して中国の近代化に協力した。脱吉田政治である戦後の総決算は実現できず,対米関係をかけがえのない友邦と評価し,なお戦後首相としては初めて同盟国と表現した。戦後日本外交の限界であるが,対米自主はより現実的かつ柔軟に再考すべきである。
著者
那須 義次 宮野 昭彦
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.58-61, 2015

Two Japanese species of Wockia are treated. Wockia koreana is newly recorded from Japan, with illustrations of adult and genitalia. A color photograph of adult W. magna is also provided. The phylogeny of the family Urodidae and the morphology and biology of the genus Wockia are summarized.
著者
長田 潤一
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.65-75, 1952-07-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
12
著者
中村 友香 藤澤 憲 中西 裕子 西林 佳人 守谷 安津蓉 小河 理恵子 髙橋 真一郎 亀井 有美 高橋 眞琴 Yuka NAKAMURA Ken FUJISAWA Yuko NAKANISHI Yoshito NISHIBAYASHI Atsuyo MORIYA Rieko OGAWA Shinichiro TAKAHASHI Yumi KAMEI Makoto TAKAHASHI
出版者
鳴門教育大学地域連携センター
雑誌
鳴門教育大学学校教育研究紀要 = Bulletin of Center for Collaboration in Community Naruto University of Education (ISSN:18806864)
巻号頁・発行日
no.35, pp.29-38, 2021-02

新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の対応に際して,緊急事態宣言発出後,筆者らが関与する教育関係,福祉関係,医療関係の最前線での実践現場においては,これまでの実践内容にない対応を求められた。本論文では,筆者らが関与している教育関係,福祉関係,医療関係の最前線での実践現場についての現状と課題を把握していくことを目的とした。現状として,実践現場での感染症予防対策以外にも教材作成や労務上の対応が求められており,課題として,児童・生徒,利用者の心のケアや実践者自身のバーンアウトへの対応必要性も示唆された。
著者
村上 亮 Ryo Murakami
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.133-159, 2020-02-28

第一次世界大戦の直接的な契機となったサライェヴォ事件の犯人,セルビア人青年ガヴリロ・プリンツィプの評価については「英雄」と「テロリスト」のあいだで一致をみていない。これは、長年にわたり続いている第一次大戦の開戦責任問題に深く関わる問題といえる。本稿は,このようなプリンツィプの捉え方の変遷をたどるとともに,近年,開戦責任論争において批判的に論じられるセルビアの動きを分析するものである。
著者
山本 祐
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.700, 2021-06-15

患者:66歳、女性。朝食後に休憩していたところ、突然右手の指に痛みが走った。手を見てみると右第3指全体が真紫に変色していたため、不安になり受診した。3週間前にも同様のエピソードがあったが、その際は第3指根部掌側のみが紫になり、1週間ほどで自然に軽快した。既往歴に特記すべきことはない。内服薬・喫煙歴はなし。寒い所で手指の色調が変化することはない。右第3指は全体に紫斑を認め、軽度腫脹している(図1)。手指冷感はなく、橈骨動脈拍動は良好に触知する。血液検査で血小板数は基準範囲内であり、凝固異常も認めない。
著者
講談社 [編]
出版者
講談社
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, 1980-05
著者
岩崎 桂三 綿島 朝次 萩本 宏
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.104-110, 1981-09-10 (Released:2009-12-17)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

ホタルイ, イヌホタルイおよびタイワンヤマイの越冬性を, 越冬場所の土壌水分や越冬株の耐乾性との関係で検討すると共に, 越冬株からの出芽深度や越冬株から生育した植物に対するピペロホス・ジメタメトリン粒剤 (CG102) およびピペロホス・ジメタメトリン・ベンタゾン粒剤 (TH63) の効果を検討した。1. ホタルイ, イヌホタルイおよびタイワンヤマイは土壌水分状態に関係なくすべて越冬した。また, 3草種とも1978年1月6日以降まで屋外にあった株基部からの生育がおう盛であった。2. ホタルイの越冬芽の上部を2cmの厚さに覆土するとほとんど出芽せず, 出芽したものの生育は著しく阻害された。イヌホタルイは覆土深3cmでもすべて萌芽したが, 67%しか出芽しなかった。タイワンヤマイは覆土深4cmでもすべて出芽, 生育した。3. 越冬株の重量が, ホタルイおよびイヌホタルイでは68%以上, タイワンヤマイでは72%以上減少するまで風乾すると, 越冬株は風乾時の温度には関係なく死滅した。4. 越冬株から生育したホタルイ, イヌホタルイおよびタイワンヤマイに対して, TH63は極めて高い効果を示したが, CG102の効果はいずれの草種に対しても低かった。しかし, 両薬剤の3草種に対する効果は共に, ホタルイ>イヌホタルイ>タイワンヤマイの順に高かった。
著者
佐藤 将 後藤 寛
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1570-1575, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
14
被引用文献数
2 3

本研究では共働き世帯比率の高い世帯の集積エリアにおいて居住形態と送迎および通勤行動がどのような特徴が見られるのかを検証してきた。以下では低い集積エリアとの差異や都区部および郊外部で明確に見られた特徴を中心に考察する。居住形態から共働き世帯比率の高い集積エリアの特徴として都区部では駅前マンション居住、郊外部では徒歩圏内における戸建居住がメインであった。両者の特徴として利便性重視の居住地選択選好は共働き世帯が担っているといえるが、都区部では利便性重視だけでなく、価格面も考慮した居住地選択を行っていること、郊外部では利便性以上に依然として良好な住宅環境を重視した居住地選択を行っていることが明らかとなった。送迎および通勤行動からは都区部および郊外部どちらも自転車利用がメインな保育所環境を有するエリアにおいて共働き世帯比率の高い集積エリアがあることがわかった。またフルタイム勤務が可能でかつ短時間で通勤可能な制約のもと勤務形態を行う世帯が多く、このことは限られた条件下で子育てと仕事を両立していることが伺える。