著者
風間 規男
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.1-20, 2008-12

論説(Article)本稿は、政策の定義に考察を加えつつ、定義に適合した政策分析のアプローチを模索するものである。政策を参照コード(プログラム)と考え、その形成・実施過程を研究するアプローチを「ミクロレベルの政策分析」と名づけ、その可能性と限界について検討を加えた。次に、環境政策・福祉政策といった政策領域やその下位領域を政策ととらえて分析する「メゾレベルの政策分析」の可能性を探った。この分析アプローチを、プログラムの集合(政策レジーム)の観点から研究する立場と、ある政策問題をめぐる行為・相互作用が集積する場(政策空間)の観点から研究する立場に分けて、それぞれの困難性を指摘した。その上で、政策レジームと政策空間を橋渡しする役割を果たすアプローチとして、政策を関係が概念でとらえる必要性を主張し、政策ネットワーク論の有効性を論じた。
著者
福田 茉莉
出版者
岡山大学大学院文化科学研究科
雑誌
岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-15, 2007-03

今や占い情報は、朝の情報番組やインターネットなどで容易に取得できる。多くの女性誌が占い情報を掲載し、インターネットでも占いサイトが充実している。占い師の出版する書籍がベストセラーになり、女性雑誌は占い特集号として刊行するとその売上が伸びる(種田、1998)。占いは産業として成り立ち、その市場規模は1兆円産業といわれる(「AERA 2003.11.3」)。1998年にNHK放送文化研究所が全国の16歳以上の男女を対象に実子した意識調査では、全対象者の23%が慣習的に占いをし、おみくじをひくと回答している。各年齢層の区分によれば、16~29歳の間で対象者の43%が占いを慣習的に実施しており、年齢を増すごとに減少傾向にある。石川(1989)では大学生の約77%が本や雑誌の占い記事を「よくみる」、「時々みる」と回答しており、田丸・今井(1989)でも、対象者となった高校生の約30%が占いを「よくする」、「時々する」と回答している。学生を対象にした両調査では、占いの必要性についても調査しており、大学生の約38%(石川、1989)、高校生の約46%(田丸・今井、1989)が占いは世の中や現代に必要であると回答していることが紹介されている。これらのことから、占い情報はなんらかの理由で人々に取得されており、さらに人々が占いを必要としていると考えられる。
著者
佐藤 勝彦
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.35-38, 2007-09

カイザーの「素粒子宇宙論の誕生」は,ブランス=ディッケ場とヒッグス場という理論的に提唱された2つのスカラ?場がぶつかり合うなかで素粒子的宇宙論が生まれたのだとする解説である。長年この分野で研究してきた一人の研究者として,カイザーの解説と相補うように,日本や世界の素粒子的宇宙論の歴史を振り返ってみたい。
著者
松本 洋俊 糸長 浩司 長坂 貞郎 大塚 肇
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.19(第19回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.331-334, 2005 (Released:2007-12-28)

本研究はエコロジカルな視点から、生物資源を効率的に活用したアクアポニックスシステムの開発を目的とし、まず養殖水中での栄養塩負荷の除去を図るため、各種濾材と植物を組合わせたシステムを構築し水質評価を行った。その結果、植物による一定の負荷除去効果を示した。また、コイ養殖とクウシンサイ水耕を組合わせたアクアポニックスモデルを構築し、養殖と水耕による栄養塩収支の評価を行った結果、栄養塩が若干増加傾向を示したが比較的養殖水質は栄養塩が低濃度で安定していた。バイオマス生産評価では、コイは飼育環境の季節による低温化に伴い良好な成長を図ることができなかったが、植物については濾材の違いによる成長特性について基礎的知見を得た。
著者
種田 博之
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.263-276, 2001-09-01

今日の日本社会において, 占いは日常生活のいたるところで見ることができるほど, ひとつの「社会的事実」となっている.このような状況ではあるが, 占いは社会学的にはいまだに未知の現象のままである.占いに関しての分析を行っていく上で, 占い師は占いの技法を管理する職能者であるということから, 重要な要素の一つをなしている.したがって, 占いについての十分な考察を進めていく上で, なによりもまず占い師の特徴を明確にする必要がある.この論文の目的は, 占いに正当性を付与する「根拠」と占い師を占いへと方向づけた「契機」を明確にすることで, 占い師の特徴を示すことにある.「根拠」としては, 「直感=インスピレーション」か, もしくは経験を通して形作られた「体系的知識」かのどちらかをとられる.「契機」は, 「自発」か, もしくは「強制」かのどちらかがとられる.こうした類型を用いて今日の占い師を捉えるならば, 「知識」と「自発」の両方の特徴をもつ占い師が顕著であることがわかる.では, なぜ, この類型の占い師が、今日, 顕著なのであろうか.この問題を, 本稿では社会構造の関係で分析する.
著者
増田 達志
出版者
公益財団法人 集団力学研究所
雑誌
集団力学 (ISSN:21872872)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.3-71, 2014-12-28 (Released:2014-01-24)
参考文献数
9

本論文では、中国内モンゴル自治区における沙漠化防止活動を取り上げ、20 年間の取り組みの中で、活動内容や参加者のネットワークがどのように変化していったかについて、グループ・ダイナミックスの視点による分析と考察を行った。これを通じて、当該活動の発展の可能性とその方向性について検討をおこなう。また、当該活動のみならず、環境保全活動や地域活性化の取り組みに対して、活動団体、現地コミュニティ、外部からの参加者などによるインターローカルなネットワーク構築の視点を提供することを試みる。 内モンゴル沙漠化防止活動は、20 年間の取り組みを通じて、その形を大きく変化させている。沙漠化防止活動を農業開発による環境ビジネスとして進めていった初期の段階から、農業開発の失敗を経て、流動沙丘の緑化と循環型集落運営システムの構築という地域づくり活動へと基本方針が変更された。また、最初は活動団体単独でなされていた取り組みが、多くの人が交流するネットワークへと発展している。こうした変化は、活動を通じて深められた交流の中から生まれてきたと考えられる。 20 年間にわたって形を変えながら発展してきた沙漠化防止活動は、現在、停滞状態に陥って いる。直接的には活動資金の不足と地元集落を取り巻く社会情勢の悪化が原因となっているが、問題の本質は地元住民の主体的な参加の欠如にある。 この活動が停滞から抜け出し、さらに発展していくためには、活動団体と地元住民の間に、地元住民の内発性に依拠したパートナーシップを構築することが必要になる。また、当該活動と都市住民や日本社会との間で、それぞれの問題をそれぞれの立場から共有するインターローカルなパートナーシップを築いていくことも、重要な課題としてあげられる。
著者
石川 俊男 松田 弘 大川 昭宏
雑誌
産業ストレス研究 = Job stress research (ISSN:13407724)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.101-107, 2006-05-30
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
北川 裕久 田島 秀浩 中川原 寿俊 牧野 勇 藤田 秀人 林 泰寛 高村 博之 谷 卓 太田 哲生 萱原 正都 望月 健太郎 蒲田 敏文 松井 修
出版者
医学図書出版
雑誌
胆と膵 (ISSN:03889408)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.609-614, 2011

膵癌では, borderline resectableと言えども局所癌遺残のないR0が得られなければ切除の意義は低い. 膵頭部癌切除標本の検討では病理組織学的にborderline resectableとなる主要因子は"mesopancreas"への進展である. Mesopancreasへの進展範囲はMDCTによって正確に診断可能で, 主腫瘍から連続する粗大網状影, 索状影として捉えられる. R0を得るためには, MDCTで詳細に術前進展範囲診断を行った上で術式立案をすべきである. 特にmesopancreasに関連した, 膵頭神経叢~上腸間膜動脈神経叢への浸潤, 門脈系への浸潤, 上腸間膜動脈への浸潤には注意を払う必要があり, R0のためには, 上腸間膜動脈神経叢全周郭清, 門脈合併切除, 上腸間膜動脈合併切除も考慮する必要がある. 「はじめに」膵頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術は高難易度, 高侵襲であるが, 依然予後は不良で, 近年の抗癌剤治療の進歩に伴い, "切除"の意義が問われている.
著者
広瀬 悟 柳島 孝幸 花井 利通 南部 起可 ブラウワー リノ
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.199-204, 2009

高難易度の運転シーンのある実路運転で、高齢ドライバーは若年ドライバーより周辺視野内の光点に対する反応成績が低く、ワークロードが高いことを確認した。さらに、高齢ドライバーの反応成績の低さの原因を明らかにするため、難易度の異なる運転シーンをシミュレータで再現し、その時の反応時間と運転行動の解析を行った。
著者
岩井 信彦 山下 和樹 長尾 賢治 大川 あや
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100164-48100164, 2013

【はじめに】ADLの回復過程において潜在的な活動能力と実際の生活の中で行っている活動レベルに差が生じることを経験する。前者は「できるADL」後者は「しているADL」と称され、この二面性は「リハ総合実施計画書」にも評価項目として組み込まれている。今回、脳卒中と大腿骨頚部骨折患者のいわゆる「しているADL」と「できるADL」を機能的自立度評価法(FIM)にて評価し、双方の得点の比較からADLの二面性、格差発生の特性を調査し考察を加えたので報告する。【対象と方法】2005 年4 月から2012 年3 月までに回復期リハ病棟に入院した脳卒中患者391 例、大腿骨頚部骨折患者229 例を対象とした。実行状況ADL(実行ADL)をFIMで評価した。療法士の監視下のもと理学療法室など特定の環境で遂行可能なADLを潜在的活動能力(潜在的ADL)とし同様にFIMで評価した。得点の差の検定はWilcoxonの符号順位和検定を用い、有意水準を5%未満とした。ADL難易度はRasch分析にて求めた。Rasch分析は数値で表された順序尺度を間隔尺度に変換し、課題の難易度を数値化する解析手法である。また、FIM運動13 項目に関し得点に差のあった症例数の全症例に対する割合(格差率)を求めた。【結果】脳卒中は男性189 名、女性202 名、平均年齢74.8 ± 11.5 歳、脳梗塞258 例、脳出血110 例、くも膜下出血23 例、発症から入棟まで44.0 ± 16.8 日、入院時FIM運動13 項目合計点は潜在的ADL 43.4 ± 26.0 点、実行ADL 41.7 ± 25.6 点であった。大腿骨頚部骨折は男性44 名、女性185 名、平均年齢80.9 ± 10.7 歳、内側骨折132 例、外側骨折97 例、発症から入棟まで35.3 ± 14.2 日、潜在的ADL 51.1 ± 22.0 点、実行ADL 49.5 ± 22.2 点であった。脳卒中FIM得点は運動13 項目何れも潜在的ADLの方が高く、統計的にも有意差があった。難易度は実行ADLでは低い順に食事、ベッド移乗、整容、排便コントロール、排尿コントロール、上半身更衣、トイレ移乗、トイレ動作、下半身更衣、歩行/車椅子、清拭、浴槽移乗、階段で、潜在的ADLではベッド移乗と整容、排尿コントロールと上半身更衣の順位が入れ替わっていた。大腿骨頚部骨折の得点も同様に何れも潜在的ADLの方が高く、統計的にも有意であった。難易度は実行ADLでは食事、整容、上半身更衣、排便コントロール、ベッド移乗、排尿コントロール、トイレ移乗、トイレ動作、下半身更衣、歩行/車椅子、清拭、浴槽移乗、階段の順に高かった。潜在的ADLの順位も同様であった。脳卒中ADL格差率は食事6.4%、整容10.0%、清拭7.4%、上半身更衣14.6%、下半身更衣9.2%、トイレ動作10.0%、排尿コントロール3.3%、排便コントロール2.0%、ベッド移乗7.9%、トイレ移乗9.5%、浴槽移乗3.8%、歩行/車椅子9.7%、階段9.5%であった。格差率が高かった上半身更衣、整容、トイレ動作、歩行/車椅子ではFIM評価7 段階のうち3 で格差が発生している症例が多かった。大腿骨頚部骨折の格差率は食事2.6%、整容11.4%、清拭8.3%、上半身更衣11.4%、下半身更衣8.3%、トイレ動作8.3%、排尿コントロール4.4%、排便コントロール3.5%.ベッド移乗8.7%、トイレ移乗8.7%、浴槽移乗4.4%,歩行/車椅子11.8%、階段6.1%であった。格差率が高かった歩行/車椅子では評価段階2 及び3、整容では2、上半身更衣では4 及び5 で格差が多く発生していた。【考察】脳卒中ADLに関しGrangerらはRasch分析にて難易度を求め、階段、浴槽移乗、歩行/車椅子が最も高く、食事、整容が最も低かったと報告している。本調査でも類似した結果であった。脳卒中と大腿骨頚部骨折の難易度序列の差はベッド移乗、整容、排便コントロール、排尿コントロール、上半身更衣で見られたが、これは脳卒中では片側上下肢、大腿骨頚部骨折では一側下肢の障害という障害構造の違いによって生じたものと思われる。岩井らは脳卒中ADLに関し下半身更衣、上半身更衣、トイレ動作、トイレ移乗、ベッド移乗、整容の難易度は接近していたが、大腿骨頚部骨折ではこの傾向はなかったと報告している。脳卒中では格差率の高かったADLを中心に実行ADLと潜在的ADLで難易度序列が入れ替わったもの、大腿骨頚部骨折では序列に変化がなかったがこのことが要因と考える。高難易度のADLが必ずしも格差率の高かったADLではなかった。例えば整容や上半身更衣など難易度が低くても格差率は高かった。格差率の高低は本人の意欲や介助技術の問題、物的な環境の問題など様々な要因で生じているものと思われた。【倫理的配慮】当該病棟では主治医、担当療法士が患者・家族に対し「リハ総合実施計画書」を提示し、内容や個人情報提供に関する同意を得ている。また、本調査は当該医療機関倫理委員会より承認を得ている。【理学療法学研究としての意義】ADL構造、難易度序列、格差発生の特性を知ることで、習得が遅れているADLの確認や治療プログラムの立案を的確に行うことが期待できる。
著者
栗田 浩樹 大井川 秀聡 竹田 理々子 中島 弘之 吉川 信一郎 大塚 宗廣 岡田 大輔 鈴木 海馬 佐藤 大樹 柳川 太郎
出版者
The Japanese Congress of Neurological Surgeons
雑誌
脳神経外科ジャーナル = Japanese journal of neurosurgery (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.842-847, 2012-11-20
参考文献数
15
被引用文献数
1

Orbitozygomatic approachはpterional approachの応用で, より外側下方から頭蓋内高位を見上げる手法である. 本稿では, われわれが施行している基本手技 (1-piece method) について解説し, 脳血管外科領域における本法の臨床応用について検討したので報告する. 過去2年間に施行された脳血管外科手術290例 (脳動脈瘤直達術251, 脳動静脈奇形 [AVM] 摘出術39) のうち, 本法が適応されたのは7例 (2.4%) であった. 内訳はcoil塞栓術が困難と判断されたBA-tip AN 4例, 高位BA-SCA AN 2例と, 大型の左medial temporal AVM症例であり, 術後は全例で病変の消失が確認され, morbidityは1例にとどまった. Intravascular treatmentが普及した現在, 脳血管領域では使用頻度こそ少ないが, 広いsurgical corridorが得られる本法は, 高難易度病変に対して必要不可欠なapproachである.