著者
野平 慎二
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
no.18, pp.63-72, 2009-09-12

森岡氏の報告は、障害/健常といった二項図式的なカテゴリーの恣意性を指摘し、「他者への欲望」を教育的な倫理と捉えることで、その図式の克服を試みた意欲的な報告である。同時にそこには、構築主義が批判してきた意識哲学的な思考がなお混在している。本稿では、フォーラムでの質疑応答を踏まえながら、森岡氏の報告における「当事者」理解、および「他者への欲望」概念の理解を中心に検討する。そして、森岡氏の議論の前進にとっては、意識哲学から抜けきらないまま二項図式的なカテゴリーの放棄を試みることではなく、構築主義的視点を徹底させることが必要となることを提起したい。
著者
清水 克時 粟屋 梧老 松田 文秀 脇田 重明 前川 正毅
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.722-725, 1985-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

There are an increasing number of reports of traumatic dislocation of peroneal tendones, formerly believed to be rare, as a result of sports accidents. Most of them are diagnosed late and treated surgically. Although conservative treatment for acute cases is described in standard orthopedic textbooks, few successful cases have actually been reported. There is no established theory as for how old injuries could be managed conservatively, as for the method and duration of immobilization and as for the necessity of non-weight-bearing. A case of traumatic dislocation of the peroneal tendons is presented in which immobilization was started on the twelfth day following injury and continued for 31/2 moths permitting weight-bearing. The patient, a 24 year-old dental student, who sustained a dorsiflexioninversion injury from skiing, returned to sports activities such as water skiing at 5 1/2 months and regained full ROM at 8 months. He was assymptomatic in the 16th month of follow-up. Several problems about conservative tratment of this condition are discussed.
著者
倉澤 幸久
出版者
桜美林大学
雑誌
桜美林論考. 人文研究 (ISSN:21850690)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-16, 2011-03
著者
杉原 真晃
出版者
山形大学
雑誌
山形大学高等教育研究年報 : 山形大学高等教育研究企画センター紀要
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-17, 2009-03-31

はじめに このたび,私は平成20年度「山形大学教養教育ベストティーチャ一新人賞」をいただいた。山形大学に着任して2年の私がこのような名誉ある賞をいただき,喜びと恐縮とが合わさった気持ちになると同時に,私の授業を一緒に作ってきた受講学生 そして私を推薦してくださった山形大学の先生方に心より感謝申し上げたい気持ちでいっぱいである。山形大学教養教育ベストティーチャー賞および新人賞は,大変優れたシステムである。それは,ファカルテイ・ディベロップメント(FD)の一環として授賞制度を設けており,受賞者にはその教員の持つ優れた実践のノウハウを「公開」して学内に「還元」することがセットとなっていることである。もちろん,学内に限らず,学外の人たちが公開されたものにふれることも可能となっている。そして,この賞は非常勤講師も含めたすべての教養教育授業担当教員に開かれている。つまり,このシステムは自由,競争,機会の平等,そして知的格差(不平等)への再分配を実現しているのである。ロールズ(RawIs,J.)が見れば,これを何と評価したであろう。さて,以上のようなシステムのため,私は受賞に際し,自身の授業を公開した。公開した授業は春学期の「春からのキョウヨウ教育必勝法A」(学際・総合領域)と秋学期の「秋からのキョウヨウ教育必勝法A」(教養セミナー)である。本稿では,主として「春からのキョウヨウ教育必勝法A」(以下,「春キョウ」)について紹介する。
著者
伊藤 敦
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.15-27, 2014-09-30 (Released:2016-11-30)

As a result of a case survey of Ashiya hospital to verify effectiveness of municipal hospital reform by the in-hospital practice method, two facts are revealed. First, this reform is recognized effective for all of Ashiya hospital, a clinic unit, and patients. Ashiya hospital improved the sickbed occupancy rate, and also remarkably reduced degree of deficit because it was enabled to add up commissions and rent followed by the hospital and clinic cooperation. The clinic unit lowered the initial cost and has many introduced patients, which results in good financial status. The patients reduce the access burden and medical expenses. Secondly, in order to succeed the in-hospital practice, it is recognized that it is indispensable to construct an integrated management structure. However, the current medical system works as an obstructive factor to prevent sharing the entrance, the reception, the waiting room, and so on by a hospital and a clinic unit. The in-hospital practice method is effective, and a flexible system operation needs to be approved in order to develop to other hospitals hereafter.
著者
鈴木 貢
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.68-68, 2016-12-15
著者
関野 康治
出版者
新島学園短期大学
雑誌
新島学園短期大学紀要 (ISSN:18802141)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.59-75, 0000

極東委員会が1946(昭和21)年7月2日に出した「日本新憲法の基本原則」という政策声明には,国務大臣は「civilian」でなければならないとする原則があった。しかし,当初の第9条が軍隊保持を一切禁じていることに疑いがなかったため,軍人の存在を前提とする文民条項が挿入されることはなかった。ところが,第9条に関して衆議院でいわゆる「芦田修正」が行われた結果〜第9条第2項に「前項の目的を達するため」という語句が追加〜それを知った極東委員会は,再度文民条項挿入問題を持ち出してきた。日本が「前項の目的」以外,たとえば「自衛目的」で,軍隊をもつ可能性があると考え,その意向は,9月24日,GHQを通じて吉田首相に伝えられた。しかし,日本側の理解は,芦田修正を受けたあとも,依然として将来も軍隊を保持することは出来ないという理解であり,連合国側の認識とは異なっていた。その上,そもそも憲法を「押し付けられた」という思いがあったため,貴族院小委員会においては,宮沢委員をはじめ3分の2の委員から憲法への不満がだされ,ようやく10月2日に憲法第66条第2項として文民条項の挿入が「多数を以って可決」された。日本国憲法の改正の議論が活発な時代背景の中で,この文民条項という地味な条文の制定過程を検討することで,日本国憲法の制定が,多様な模様を持つ複雑なものであったことを再認識することが,本稿の目的である。
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.801, pp.110-113, 2012-02-02

スマートフォンやタブレット端末といったスマートデバイスからBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを利用可能にする動きが広がっている。現在はiOS向けが中心だが、多くのツールが今後Androidにも対応する見込みだ。接続可能なデータソースも増えており、利便性が増している。
著者
田実 潔
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.109-118, 2001-03-31
被引用文献数
1

知的障害養護学校中学部に在籍している3名の自閉症児を対象に、他の知的障害養護学校の生徒と、テレビ会議システムを利用して1週間に2回、約2か月の間、計16セッションの交流を行った。交流相手は軽度の発達遅滞児であり、「テレビ会議」ルーティンにおいては、弁別刺激となる言葉の使用に問題のない生徒たちであった。対象となった自閉症児は、日常の生活の中で反響言語的な応答発話やパターン化した非応答的発話が目立つ生徒であり、質問に対して適切な応答的発話の獲得が望まれている生徒たちである。標的行動は5種類であり、応答的言語行動はReturn型、許可型、What型に分類され、1、2セッションをベースライン期、Return型応答的言語行動と、What型応答的言語行動のうちの自分の名前を聞かれる弁別刺激に対する標的行動がほぼ100%獲得された6セッションまでを第I期、すべての標的行動の正反応率が100%となった14セッションまでを第II期、15、16セッションを第III期(プローブ)とした。約2か月後に、標的行動について教師が「テレビ会議」ルーティンでの相手役になり般化を調べたが、標的行動(1)と(2)および(4)では100%の正反応率となり、標的行動(3)と(5)ではそれぞれ3名中2名が正の応答的発話を維持していた。自閉症児の応答的発話については、指導者との1対1の指導体制から応用行動分析の手法で指導がなされることが多かった。今回、知的障害養護学校の生徒同士の交流(テレビ会議ルーティン)から複数での応用行動分析手法による指導を行ったが、1対1の構造化された指導場面でなくても、標的行動を明確に分析し、強化していくことで自発的な応答的発話が形成されることが示された。特に、What型応答的言語行動では、標的行動を自閉症児がわかりやすい具体物に設定することで、応答的発話が獲得されやすいことが示された。また、テレビ会議では、社会的相互作用に困難を示す自閉症児の場合でも、通常のやりとり行動では視覚的に確認できない自分の姿を、交流相手の姿とともにリアルタイムで、しかも動画で視覚情報として提供されることになり、自閉症児の興味関心を持続して保つことができ、応答的発話獲得に有効な手段であることが示された。
著者
後藤 光康
出版者
明治大学文芸研究会
雑誌
文芸研究 (ISSN:03895882)
巻号頁・発行日
no.7, pp.5-23, 1960-04

十六世紀から十七世紀にかけて、英国におけることわざの流行にはめざましいものがあった。もともと英国人はことわざを愛好する国民ではあったが、1500年に出版されたErasmusのCollectanea Adagiorum Veterumが、この流行を促す一原動力となった。古典からの引用句を蒐めたこの書物は、当時の英国におびただしい愛読者を獲得し、その影i響はRichard TavernerのProverbs and Adages(1539)、The Flowers of Sciences(1547)やNicholas UdallのApophthegmes(1542)となってあらわれた。一方、新しい文芸、学問の輸入にともない、古典のことわざばかりでなく、イタリヤ、スペイン、フランスなどの国々のことわざも、広く英国にとり入れられるにいたった。
著者
西木 忠一 池田 良子 ニシキ タダカズ イケダ リョウコ Tadakazu NISHIKI Nagako IKEDA
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.232-223, 2002-03-06

平安末期または鎌倉初期に,『源氏物語』愛読者により,「夢の浮橋」の巻後日譚として創作されたのが,「山路の露」である。文章は至って流麗。『源氏物語』に精通した読者の筆になる作品であって,近時「世尊寺伊行」の女「建礼門院右京大夫」を,その作者とする説が提出されている。本注釈は流布本(『続群書類従』物語部所収)を底本にし,「補記」の頂にいささか重みを置いた。本稿に収めた各段の梗概は次ぎのごとくである。髪をおろした浮舟を前に,乳母子の右近は胸のうちを涙ながらに語り,いかなる折にも,決して姫君に遅れまいと心にきめていたものをと,尽きることのない深い悲しみに泣きくずれるのであった(二十八 五重)。右近から薫の愛情の深さに聞くにつけ,浮舟は薫・匂宮という二人の男性の間をゆれ動いたわが心のうちを思い見,これも前世からの報いであったのだと,しみじみ悟るのである(二十九 人目)。いよいよ下山するに至って,浮舟の母は娘を都に連れて帰ろうと言う。だが,浮舟は今更の思いがして帰京の話にのって来ない(三十 客人)。
著者
小島 夏彦
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.155, pp.197-211, 1989-09-30

浜名湖の完新統コア試料から渦鞭毛藻シストが産出した。産出したシスト群集は主にペリディニウムグループに属するBrigantedinium spp., Selenopemphix quanta, Seleno. hamanaensis, ギムノディニウムグループに属するPolykrikos schwartzii, Poly. kofoidii, Pheopolykrikos hartmanniiからなり, ゴニオラックスグループ, テュバクロディニウムグループに属するシストも少量産出した。これらのシストは6つの群集帯にわかれ, 構成種の変化より安定内湾域から汽水湖, さらに淡水湖をへて再び汽水湖という環境変化が推定された。なお, 1新種(Selenopemphix hamanaensis)を含む5種を記載した。
著者
印刷出版所 編
出版者
印刷出版所
巻号頁・発行日
vol.昭和11年版, 1936
著者
李 沢守
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.102-105, 1973

米を主食とする韓国人に味噌は古来から愛用されてきたが, その製造は今もなお自家製が主体であるという。そして工業生産は約50年前から始まり, 軍用民需が共に増大するにつれ規模が拡大してきたとはいえ, 現在もなお企業体の大部分は施設, 賃金の零細性は免れず, したがって製品, 品質面においても消費者の信用をかち得ていないという。<BR>著者は本誌の愛読者ということから韓国の資料を収集してこの稿を寄せられたが, 著者の願いは, 恐らく韓国味噌製造の現状を改良して近代的な食品工業に脱皮したいということにあるのであろう。
著者
秋谷 直矩
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.56-67, 2009
被引用文献数
1

本稿では、高齢者介護施設(デイサービス)でのケアワーカーと高齢者間の会話を分析する。フェイスワーク論に基づいた会話分析を分析法として用い、そこでの会話構造上の制度的特徴を明らかにする。特にケアワーカーの「申し出」に着目した。会話分析の文脈で従来語られてきた「優先構造」的シークエンスや、「申し出」そのものの発話的特徴を仔細に分析していった結果、ケアワーカーが「申し出」として理解される発話を使うことそれ自体が制度的特徴であることが示された。また、その特有の会話構造ゆえに発生するジレンマ的状況も記述された。こうした問題に対処していくため、「何が問題なのか」ということを捉えると同時に、それが「どのような(相互行為的)手続きを経て」問題となったのか、ということを見ていく必要がある。
著者
鈴木 淳
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 文学研究篇 (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.33, pp.47-78, 2007-02

文化初期の成立と目される北尾政美画「隅田川楳屋図」彩色摺り一枚は、かつて『原色 浮世絵大百科事典』第七巻に、浅野秀剛氏により、簡略に紹介され、図版も掲出されたので、その概要はすでに知られていた。しかし、それ以外、本格的に報告されたことを聞かない、極稀な珍図である。板元名を欠くが、蔵版者としては、向島百花園の造園主の佐原鞠塢を想定するのが穏当である。画工は、北尾政美、号蕙斎で、絵の左上に「紹真写」とある。「紹真」の名は、政美が寛政六年、美作津山藩のお抱え絵師となってからの名号であるが、それ以前から彼は、浮絵や狩野派の屏風絵の手法を踏まえ、スケールの大きい俯譈撤的な風景版画というべきものを盛んに手掛けていた。本図もその一例に他ならない。本図の眼目は、向島百花園の開園当時の様子を隅田川の景観を共に描いたところにある。しかも風景はもとより、人物や建物なども描写が細かく、本図を子細に観察することによって、従来、あまり注意が向けられなかった、成立当初の百花園及び隅田川の形姿について、かなり明らかにすることができるのは、たいへん貴重である。いま本図から、文化初年当時の百花園及び隅田川両岸の様子についての読み取りを、標題及び絵の上方から下方へ、即ち西岸、隅田川、東岸の順に試みてみたい。さらに本図及び一枚摺り「角田川御遊覧の伝手」を踏まえ、百花園の水茶屋としての性格について、いささか卑見を述べることにしたい。
著者
柴内 俊次
出版者
口腔病学会
雑誌
口腔病学会雑誌 (ISSN:03009149)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.507-507, 1988-09-30 (Released:2010-10-08)
参考文献数
2
著者
齋藤 ひとみ 三輪 和久
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.258-275, 2003-06-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
23
被引用文献数
6

We investigated cognitive processes of the information seeking on the WWW and the effects of subjects' knowledge and experience on their processes and performance through the protocol analysis. In our experiments, the subjects were assigned to an expert or a novice condition, and required to solve two search tasks. We analyzed the protocol data on the basis of the two space model of scientific discovery suggested by Simon & Lea (1981). We applied this model to the information seeking on the WWW. The information seeking processes on the WWW were considered as the processes of searching the Keyword space and the Web space. The experimental results showed that (1) due to the effects of knowledge and experience, the experts' performance of finding a target was higher than that of the novices, (2) when searching each space, the experts searched each space in detail but the novices did not, and (3) when shifting from one space to the other, the experts searched the two spaces alternately, but the novices tended to cling to a search of one of the two spaces.