著者
佐藤 哲也
出版者
熊本県警察本部科捜研
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

1. 研究目的近年、法科学鑑定における体液識別法として、体液に特異的に発現しているmRNAを指標とした方法が報告されている。mRNAの利用は、検査法の一元化による消費試料の削減や高い検出感度を達成できることから、利用価値が高いと考えられている。これまでに報告されているmRNAの検出法は、主に逆転写とリアルタイムPCR法を組み合わせた方法が用いられているが、反応に時間を要し、専用の機器を必要とする。そこで本研究では、逆転写・増幅を等温で迅速行うことができ、増幅を肉眼で簡便に確認できるRT-LAMP法が体液識別に応用可能か検討を行った。2. 研究方法血液、精液、唾液について検討を行った。血液はhemoglobin-bata(HBB)、精液はsemenogelin1(SEMG1)、唾液はstatherin(STATH)を標的とし、プライマーを設計した。各体液からtotal RNAを抽出し、Loopamp RNA増幅試薬キット(栄研化学)を用いて増幅した。増幅の検出は、蛍光試薬を加えて目視で行った。血液、精液、唾液、汗、尿、膣液を用いて体液特異性及び各体液の検出感度について検討した。なお、本研究は日本法科学技術学会倫理審査委員会の承認を得て実施した。3. 研究成果設計したプライマーを用いて増幅を行ったところ、各mRNAに特異的な増幅が見られた。次に、体液特異性について検討したところ、1時間以内の反応で、HBBは血液、SEMG1は精液、STATHは唾液でのみ蛍光を示した。検出感度は、血液は0.3nl、精液は30nl、唾液は0.3μl相当まで検出することができた。以上の結果から、RT-LAMP法は血液、精液、唾液の体液識別においで有効であることが考えられた。ただしSTATHは、鼻汁に含まれるとの報告があるため、唾液についてはその他の標的についても検討する予定である。
著者
浅井 純二
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.13-25, 2015-08-31

本論は,伊勢湾台風被災地である名古屋市南区に設置されたヤジエセツルメント保育所を中心にして救援活動の展開を整理し,被災から復旧・復興に向けた学生・保母・父母・支援者の役割と活動要素,評価を明らかにしている.役割と活動要素は,学生の人道性・開拓性,保母の専門性・継続性,父母の自発性,支援者の協同・連帯性である.保育要求は災害によって顕在化した生活問題とともに働く親の願いと捉えており,保育活動は子どもの利益を守り,地域を組織化するものである.活動の特徴は,被災と貧困という二重の条件を踏まえ,保育活動が,救援から発達保障を求める活動へ変化し,保育活動の多面的な発展のうえで歴史的な起点となったことである.
著者
豊坂 祐樹 藤尾 光彦 廣瀬 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.306, pp.13-17, 2006-10-13
被引用文献数
1

21世紀人類が直面する恐れのあるパンデミックインフルエンザ,あるいはテロ行為による疫病感染拡散などに対してその社会的影響は極めて大きいことを考えると,リスク回避という面から様々な条件のもとでの疫病感染の拡散状況を事前に知っておくことが望ましい.ここでは,空気を媒体にして人から人へ伝染する疫病を想定した人と人とのネットワーク構造をモデル化した上で,初期感染者から未感染者へと疫病が伝染するシミュレーションを行い,最終的なパンデミック段階の感染者蔓延状況を予測することを行った.このことにより,新たな疫病のアウトブレイクやテロ行為による疫病蔓延に対するリスク回避への準備や対策を講じることが可能となる.
著者
森 博康 丹羽 正人
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.12-20, 2014

【目的】本研究の目的は,適切な栄養管理下におけるコンバインドエクササイズ直後のホエイたんぱく質の摂取が,高齢者の身体組成と身体機能に与える影響について検証することである。<br>【方法】対象者は地域在住の高齢者24名(男性6名と女性18名,66.2±4.8歳)とし,ホエイたんぱく質飲料を摂取する群(PRO群:12名)とカロリーゼロのプラセボ飲料を摂取する群(PLA群:12名)の2群に無作為に分けた。運動介入は,週2回9週間に渡るレジスタンス運動と有酸素性運動を組み合わせたコンバインドエクササイズとした。栄養介入方法は,PRO群はコンバインドエクササイズ直後にホエイたんぱく質飲料を,PLA群はコンバインドエクササイズ直後にプラセボ飲料を摂取させた。さらに本研究では,介入中の対象者の栄養状態を把握し,栄養管理を適切に行った。また,介入前後に身体組成や膝伸展筋力,Timed Up & Go(TUG),5 m最大歩行速度などの身体機能を測定した。<br>【結果】PRO群は介入後の除脂肪量(LBM)と膝伸展筋力,TUG,5 m 最大歩行速度の値が,介入前と比べ有意に高い値であった(<i>p</i><0.01)。また,PRO群のΔLBMとΔ膝伸展筋力,ΔTUG,Δ5 m最大歩行速度は,PLA群と比べ有意に高い値であった(Δ膝伸展筋力とΔTUG:<i>p</i><0.05,ΔLBMとΔ5 m最大歩行速度:<i>p</i><0.01)。<br>【結論】本研究の結果より,適切な栄養管理の実施とコンバインドエクササイズ直後のホエイたんぱく質の摂取は,高齢者の骨格筋量や身体機能を改善させる可能性が示唆された。
著者
児玉 浩憲
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.135, no.6, pp.345-345, 2015

肥満を予防しようと,"カロリーゼロ"の食品や飲料がもてはやされている。ところがなかなか減量にはつながらない。それもそのはず,砂糖の代わりに混ぜられた人工甘味料に重大な"副作用"があるからだ。
著者
青野 友哉
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.118, no.1, pp.11-22, 2010-06-01
参考文献数
13

本稿は,埋葬時の遺体周辺が充填環境か空隙環境かによって骨の移動に差が生じるとの考え(奈良,2007)を基に,人骨の出土状況から遺体周辺の環境を判断するための基本事項を整理した。まずは,「充填環境」と「空隙環境」とは埋葬時から白骨化の完了までの遺体周辺の環境を表しており,白骨化の途中で空隙環境から充填環境へと移行する例を示すことで,環境変化を時間的に捉える必要性を指摘した。また,遺体の一部分が空隙となる「部分的空隙環境」には,土砂の流れ込みなど,空隙環境から充填環境への移行時に起こる状況と,遺体を包装するなどの理由で埋葬時から生じる状況の2パターンが存在すると考えた。そして,時間的変化を考慮して人骨の出土状況を観察することで,全パターンの判別と具体的な環境変化の復元が可能となるとの方法論を提示した。次に北村遺跡出土の縄文人骨42例に対して遺体周辺の環境判断を行い,方法論の検証を行った。まずは,充填環境においても遺体の腐食による沈み込みは存在し,埋葬姿勢によっては骨が移動することや,甕被り葬や枕石の存在が骨の移動の要因であることを明らかにした。その結果,明らかに判断可能な人骨の割合は95.2%を占め,人骨を用いた遺体周辺の環境判断は大部分が可能であることを示した。<br>
著者
山崎 朗
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.317-326, 2009-12-30

首都圏においても,人口はまもなく減少に転じる.人口減少,高齢化に対して,どの範囲の地域単位で,いかなる政策主体によって,どのような対応策を検討,実施するのかが問われている.1人当たり県民所得格差を是正する意義は,乏しくなっている.人口減少下において,豊かな生活を維持するための「生活圏」の構築,国際競争力を高めるための広域的な地域での戦略という二面的な対応が求められている.サービス化時代の地域政策への転換が必要である.地域政策の手段をこれまでのように,企業誘致と社会資本整備に限定してはいけない.科学技術政策,大学政策,産業政策,環境政策,医療政策,通信政策,交通政策,税制などを含めて,多様な手段を地域政策として意識的に活用する時代に入ったのである.どの政策を柱とするかは,地域の範囲,地域特性と地域の戦略によって異なる.地域政策の政策主体を地方自治体や国に限定する必要性もない.NPO,NGO,住民組織,あるいは,社会的企業や大企業も地域政策の担い手となる.逆に,廃屋,廃店舗,廃工場などの解体,跡地利用については,行政がより積極的に関与しなければならない.人口密度がきわめて低くなる「低密度居住地域」では,物流機能を地域政策の柱としつつ,インターネットを活用した新しいライフスタイルへとシフトさせることが求められている.長期的な観点からいえば,生活コストの高いエリアから撤退することも選択肢の一つとなる.広域的なエリア(メガ・シティ)における,それぞれの都市,地域,社会資本の機能分担と有機的な連携による,地域全体の競争力強化という視点も,国際化時代の地域政策としてきわめて重要になっている.
著者
上野 徳美
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.31-37, 1991-07-20 (Released:2010-02-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究は, 説得メッセージの反復提示と圧力 (自由への脅威) が説得の受容と抵抗の両側面にどのような影響を及ぼすかについて検討することを目的とした。本研究で用いられた要因は, メッセージの提示回数 (1, 3, 5回) と圧力 (大小) の2要因であり, 2×3の要因計画のもとに実験が実施された。実験では順態度的メッセージが用いられ, 被験者にはテープ・レコーダーを通してメッセージが提示された。メッセージの効果は質問紙によって多面的に測定された。本研究では, 説得メッセージの圧力の主効果が生じるとともに, メッセージの反復提示と圧力との交互作用効果 (反復提示の効果はメッセージの圧力の大きさによってかなり異なった様相を呈する) が得られるであろう, と予測した。実験の結果, まずメッセージの圧力の主効果が認められた。圧力の小さいメッセージにおいては説得の肯定的な効果が生じたのに対して, 圧力の大きいメッセージにおいては反対に説得への抵抗や否定的効果が生じた。また, メッセージ評価や意見といった測度において, メッセージの反復提示と圧力の要因の交互作用効果が得られた。すなわち, 圧力小のメッセージでは, 提示回数と説得効果の間に逆U字型 (3回提示の時に肯定的効果が最大) の傾向が生じ, 過度な反復 (5回提示) は否定的効果を引き起こした。他方, 圧力大のメッセージでは反対にU字型の傾向が認められ, 3回提示の時に否定的効果が最大であった。後者のU字型のパターンに関しては予測と一部異なったものの, それ自体注目すべき結果を示した。以上の結果は, メッセージの反復という要因が説得の受容や抵抗を規定する重要な要因になりうることを示した。また, メッセージ反復による説得の受容や抵抗の生起過程は, リアクタンス理論とELM (Elaboration Likelihood Model: 精緻化可能性モデル) をもとに考察された。
著者
島村 史郎
出版者
日本統計協会
雑誌
統計 (ISSN:02857677)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.67-74, 2012-11
著者
森部 陽一郎
出版者
近畿大学
巻号頁・発行日
1999

学位の種類:工学 学位授与年月日:1999/3/23 指導: 黒須, 顕二 教授 報告番号:甲第501号 学内授与番号:産4 NDL書誌ID:000000335701