著者
若尾 良徳 天野 陽一
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 人文系編 (ISSN:09160027)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.A79-A85, 2008-03
被引用文献数
1

本研究は、20歳時点での恋愛経験人数についての意識に注目した。まず、20歳における平均的な恋愛経験の程度を、調査対象集団における現実の平均より過大に推測している可能性を検討した。また、20歳における理想的な恋愛経験の程度を調べた。さらに、若者一般における理想の恋愛経験の程度を推測してもらい、現実と推測の間にずれが見られるかを検討した。大学生157名(男性73名、女性82名、無回答2名)を対象に、恋愛経験人数についての意識について質問紙調査を行った。 20歳時点での恋愛経験人数の平均については、男女どちらに対しても調査対象集団における現実の平均よりも過大に推測されていた。理想人数については、男女どちらに対してもおよそ3分の2の回答者が2人または3人と回答しており、9割が複数と回答していた。さらに、若者一般の理想人数について、自分の理想より高く推測していた。このような年齢意識が若者に及ぼす影響について議論した。
著者
衛藤 廣隆 藤井 広志 船倉 武夫
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The university bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.5, pp.35-54, 2012-02

阪神・淡路大震災と東日本大震災の記録から抽出した7項目(図書館の避難所利用、応援出務、避難所等でのお話会、避難所等への配本、支援情報の提供、震災関連資料の収集、自館の復旧作業)を大災害時に地域の公共図書館が行った特徴的な業務であると捉え、それぞれを細かく検証した。その検証により、地域の公共図書館の活動が被災地の住民の復旧や生活の維持に貢献するものであることが確認された。 さらに、被災した図書館の支援が図書館関係者によって行われることを前提として、図書館関係者81名に対し、被災地の読書や図書館活動を支援することに関するアンケートを実施した。比較するために行った教員85名、学生31名へのアンケートと併せて分析した結果、勤務地や自宅において行う支援を指向する傾向が確認され、さらに図書館における支援に関する問題が明らかになった。これらの検証によって、被災した公共図書館を支援する体制を検討する際に有益な知見を得た。この知見をもとに新たな支援体制の概念図を作成した。
著者
川瀬 良美 森 和代 吉崎 晶子 和田 充弘 松本 清一
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.119-133, 2004
被引用文献数
12

本研究の目的は,成熟期の女性のPMSの実態について即時的な記録から明らかにしようとするものである.成熟期の25歳以上45歳以下の141名の388月経周期について月経前期と月経期に記録された身体症状,精神症状そして社会的症状の合計51症状について検討した.月経前症状の頻度,平均値,最大値からみた主症状は,精神症状のイライラする,怒りやすい,身体症状の乳房の張りの3症状といえた.また特定の人に強く経験されている症状も認められた.対象者の諸属性のうち,年齢グループ別,出産経験有無別,就労形態別で検討したところ,それぞれの属性で有意に高い平均値を示す症状群が認められた.月経前期から月経期への推移について検討したところ,月経前期から月経へ減少または消失するというPMSの特徴を統計的に有意に示す症状は15症状であった.それら症状の相互関連をクラスター分析によって検討した結果,イライラ,怒りやすい,そして食欲増加という選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に反応するような脳レベルの問題と考えられる症状のクラスターAと,乳房の張り,ニキビができやすいなど卵巣ホルモンが直接発症に関与している症状のクラスターBが見いだされた.また,クラスター分析と属性別の結果から出産経験の有無による相違が認められ,出産経験が症状と特異的に関連していることが示唆された.また,月経前期から月経期へ統計的に有意な増加を示す症状は12症状で,クラスター分析の結果,下腹痛など子宮レベルの問題を背景とした症状と精神症状と社会的症状で構成されたクラスターCが見いだされ,成熟期女性にも周経期症候群(PEMS)の概念で説明できる月経前症状が認められた.以上の結果から,本邦における成熟期女性の月経前症状は,脳レベルの問題,卵巣レベルの問題,子宮レベルの問題を背景として,PMSとPEMSという特徴的な臨床像による2つの概念で説明できる.
著者
岡本 隆
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.37-51, 1984

Nipponitesのら環のシミュレーションおよび標本の形態解析を行った結果, 次のような結論が得られた. (1) Nipponitesの巻きのパターンは全部で9つの係数を有する指数関数と三角関数の組み合わせによって説明することができる. (2) このパターンはx, y, zのどの成分についても原点を中心とした振動関数を示していて, しかも巻きの中心からら環中心までの距離Rの増加率が常に一定となるような, きわめて求心的な関数である. (3) Nipponites 3種(1変種)について, これらの変異を検討した結果, 巻きの基本的なパターンは種間でもほとんど一致していることが分かった. (4) これに対して種間変化の著しい形質は, i) ら環半径の長さに対する成長率とその初期値, ii) Uカーブの程度, iii) 変移点の現われる位置の3点である.これらの形質の違いは, "空間の占有率"に関して大きな差異を生じる原因となっている.
著者
金光 義弘
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.11-18, 1997

本論文では実験已・理学者のM.EP.Seligmanによって提唱された学習性無力感(LearnedHelplessness)理論に関する再考察をし, 今後の適用性についての展望を試みる.主なトピックは4点で, 以下の通りである.(1)学習性無力感理論の実験 : 的検証.(2)学習性無力感理論の理論的背景の再検討.(3)学習性無力感理論の意義についての考察.(4)学習性無力感理論の適用可能性の吟味.本論ではLearnedHelplessnessの概念および理論の重要性を認識したうえで, 学習性無力感現象が生起するための三つの必要条件を指摘する.その第1条件は, 生活体が回避不可能な嫌悪刺激を与えられて, 無力感(helplessness)を知覚する状況であること.第2の条件は, 生活体が行動と結果の間の非随伴性(noncontingency)の認知を獲得する過程があること.第3の条件は, 統制不能性(uncontrollability)の期待によって動機づけレベルが低下すること, である.最後に, 学習性無力感の原形(オリジナル学習性無力感)理論こそ, 人間の精神的および行動的異常の問題に対する適用において, 妥当性と有効性が認められることを主張する.
著者
野村 駿
出版者
東海社会学会
雑誌
東海社会学会年報 (ISSN:18839452)
巻号頁・発行日
no.10, pp.122-132, 2018-07

本稿の目的は,「音楽で成功する」といった夢を掲げ,その実現に向けて活動するロック系バンドのミュージシャン(以下,バンドマン)を事例に,夢を追う若者がフリーターを積極的に選択・維持するプロセスとその背景を,若者文化の側面に着目して明らかにすることである. 若者の学校から職業への移行を扱ったこれまでの研究が,フリーターを積極的に選択・維持する若者の移行過程を看過してきたという問題意識から,バンドマンを対象とした聞き取り調査のデータを分析し,次の3つの知見を導出した.第1に,バンドマンはバンド活動を「やりたいこと」だと見なしながら,それと同時にバンドメンバー同士の相互作用の中でフリーターを選択していた.第2に,バンドマンはライブ出演に向けてメンバー間で場所と時間を共有する必要があることからフリーターを選択・維持していた.第3に,フリーターであることによって生起する金銭的困難が,バンドという活動形態の集団性とバンド単位で支払いを求める音楽業界の料金システムによって緩和されていた. 以上の知見を踏まえ,バンドという活動形態の集団性と音楽業界の料金システムが若者文化の内部構造として存在するために,それに適応しなければ夢が追えないバンドマンは合理的な進路としてフリーターを積極的に選択・維持していると結論付けた.
著者
赤江 達也
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.26, pp.28-38, 2013

The purpose of this paper is to analyze the terms and conditions for the formation of the order of national rituals in pre-war Japan, in particular, Shinto shrine rituals. First, the study outlines the Ministry of Home Affairs' process, as part of its administration of Shinto shrines, of designating shrines as places for national rituals. Next, the Ministry of Home Affairs' Bureau of Shrines' unification of the “Procedures for Shrine Ritual Observance” and the government and the public's formation of the genre of shrine ritual procedural manuals are described. Books detailing “Procedures for Shrine Ritual Observance” were used as manuals for training sessions and ritual instructional sessions for members of the clergy. These resulted in the standardization of the evaluation of the participants in these rituals. Finally, this paper shows how, after the 1930s, under these terms and conditions, “indiscretions” in shrine rituals became increasingly problematic.
著者
小川 俊輔
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.1-14, 2012-04-01

九州地方における「天国」の受容の程度を明らかにするため,九州地方全域300地点において現地調査を行った。調査によって得られた資料から言語地図を描き,考察を行ったところ,「天国」の受容には,宗教差,地域差,場面差のあることが分かった。宗教差については,カトリックと神道の信徒が「天国」を受容しているのに対し,浄土真宗の信徒は「天国」を受容しない傾向がある。彼らは仏教語である「浄土」を持つゆえに,「天国」を受容しない傾向をみせたと推測される。地域差については,宮崎・鹿児島では「天国」の受容が進んでいるのに対し,長崎では遅れている。場面差については,大人が子どもに話しかける場面では「天国」が使用されやすいのに対し,仏教色の強い場面では「天国」が使用されにくい。
著者
長佐古 美奈子
出版者
学習院大学
雑誌
学習院大学史料館紀要 (ISSN:02890860)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-4, 2012-03
著者
中西 大輔
出版者
広島修道大学
雑誌
広島修大論集 人文編 (ISSN:03875873)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.193-207, 2004-02

This study explored confusion between liking and loving. Rubin (1970) showed that males do not distinguish liking and loving toward their partner in a romantic relationship, while females do. The adaptationist perspective, however, predicts the opposite pattern for males and females who are not yet involved in a romantic relationship. To test the prediction, in this experiment, mutually unknown opposite sex dyads jointly engaged in a problem solving task and then assessed their partner with Rubin's love/like scale. The results indicated that the correlation between liking and loving was higher among females than males. Therefore, the adaptationist prediction was supported. Implications of the present study and possible future research topics are discussed.
著者
田中 和夫
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.67-110, 2003
著者
永田 大輔
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.88, pp.137-155, 2016-01-31

This paper discusses the Video Tape Recorder (VTR) spread process in the 1960s and 1970s. Previous studies on videos have mainly focused on two aspects: (1) sexual media and (2) leisure communities' unique consumption. This paper examines how functions such as slow motion, which were usually used by the leisure communities only were prepared in the first process of family spread. This paper researches the industry paper Video Journal in the period 1968-1978. This industrial magazine has a different focus than that of leisure magazines. This magazine discusses multiple markets in the spread process. This paper will examine each market's demands, according to the industry magazine. From the 1960s to the 1970s the video market was supported by an educational demand. Video was a revolutionary media in audio-visual education. Education has diverse functional needs and feedback regarding these needs can reach the market through study groups. These unique functional demands of leisure groups later spread to family use. In the mid -1970s, Video Journal was conscious of the family market, but its development in this market had been late. First, this may be due to a lack of good content on video. But the true reason is the cost of video recording. Thus, the market could not identify families' needs for a long time, and could not predict the time of family spread. Furthermore, educational needs continued and their demand is left. Both family and educational needs continued and their demand is left. Both family and educational needs did not utilize video functions such as slow motion, which were only used by leisure groups.
著者
樋口 匡貴 磯部 真弓 戸塚 唯氏 深田 博己
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.1, pp.53-68, 2001

本研究は,恋愛関係における効果的な告白方策としての言語的方策を明らかにすることを第1の目的とし,そうした告白方策の効果に関する状況差を明らかにすることを第2の目的とした.大学生18O名に対し,19種類の告白の言語的方策を呈示し,それぞれの告白を受けることによって,相手との関係が進展する程度を尋ねた.また状況要因として,告白者に対する被告白者の好意(片思い,両思い)を操作した.因子分析の結果,恋愛の告白に使用する方策は,"単純型","懇願型","理屈型"の3種類に整理されることが明らかになった.さらに,2(性別)×2(状況)×3(言語的方策)の3要因の分散分析を行った結果,①両思い状況で告白した方が片思い状況でよりも関係が進展しやすい,②単純型の告白を用いた場合にもっとも関係が進展しやすい,③単純型告白方策の効果の優位性は,状況および性別を問わない,ということが明らかになった.これらの結果が,言語的方策の持つイメージの点から考察された.