著者
村上 覚 神谷 健太 鎌田 憲昭 山田 晋也
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.315-320, 2012-07 (Released:2013-10-08)

ニホンスモモとウメの種間雑種'李梅'の安定生産に向けた知見を得るため,'李梅'のS-haplotypeおよび受粉品種について検討した。'李梅'のS-haplotypeを分析した結果,'李梅'のS-RNase遺伝子はサイモンスモモおよびウメからそれぞれ由来している可能性が高いと考えられた。サイモンスモモはニホンスモモの近縁種で,ニホンスモモと交雑和合性がある。これらのことから,'李梅'はウメだけではなくニホンスモモに対しても,S-haplotypeに関わらず,交雑和合性がある可能性が示唆された。実際にウメ,ニホンスモモ,アンズおよびモモ花粉を用い,'李梅'に人工受粉を行うとウメ,ニホンスモモおよびアンズ花粉では交雑和合性が確認された。特にウメ'宮口小梅',アンズ'平和'は花粉量が多く,花粉稔性が高いうえに,'李梅'と高い交雑和合性を示したので,人工受粉の花粉親として優れていると考えられた。このため,'李梅'においてはこれらの花粉を用いて人工受粉を行うことで,安定的に収量が確保できる可能性が示唆された。
著者
山崎 法子
出版者
国立音楽大学
雑誌
音楽研究 : 大学院研究年報 (ISSN:02894807)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.45-60, 2013

本稿は、フーゴ・ヴォルフのHugo Wolf(1860〜1903)の《メーリケの詩による歌曲集》を研究対象とし、その演劇的表現の諸相について考察することを目的としている。 今回この歌曲集を選んだのは以下の理由にある。第1に《メーリケ歌曲集》がヴォルフのその後の歌曲創作の出発点となったこと、第2にその創作のなかに、以後の《アイヒェンドルフ歌曲集》、《ゲーテ歌曲集》などの手法を確立するヴォルフの最初の独創性が示されていることにある。 ヴォルフの独創性については、先行研究においても、大きく見て3つの観点から論じられてきた。第1に朗唱法の観点(エッガー)、次にピアノ・パートの構造の観点(エップシュタイン)、最後に形式の観点(ガイアー)からである。しかしこれらの研究は、それぞれの楽曲の構造上の特徴を導き出しているものの、ヴォルフの表現の本質を論じるには至っていない。筆者は歌手としての立場から、ヴォルフの歌曲の本質は演劇的な要素を伴った表現にあるのではないかと考えている。ヴォルフの音楽からは、今、そこで、そのことが生起しているようなリアリティーを感じるからである。本稿で述べる「演劇的」とは、「観客を前に、俳優が舞台で身ぶりやセリフで物語の人物などを形象化し、演じてみせるようなもの」である。ヴォルフ自身も、歌手が舞台で演技を行うような表現を、メーリケ歌曲において思い描いていたと推測される手紙を残していることから、それがいかなるものであるかを明らかにすることが、これらの歌曲の本質を探ることにつながる。このことを考察するためには、従来研究されてきた朗唱法、ピアノの描写的効果に加え、歌唱旋律のリズム、音楽の間や呼吸感などを加味する必要がある。本稿は、歌唱旋律に重点をおきながら、この特質を導き出し、ヴォルフがメーリケの詩から鋭敏に読み取って音楽で表現した演劇的並びに心理的な側面を明らかにした。 構成と内容は以下の通りである。第1項ではメーリケの詩の特質をならびにヴォルフの《メーリケ歌曲集》について述べた。第2項では、ガイアーの分類で「リートに近い形式」に属する〈捨てられた少女Das verlassene Magdlein〉と「拡大された形式」に属する〈エオリアンハープに寄せてAn eine Aeolsharfe〉をとりあげ、詩と楽曲の分析を、それぞれシューマンとブラ-ムスの歌曲と比較しながら行った。そして分析の結果、韻律の置き換えやダーシの音楽化など音楽の"間"を通して、「私」をめぐる感情や出来事が、瞬間、瞬間のものとして表現されていることが明らかにされ、手法に差異はあるものの、いずれの楽曲においても、メーリケの詩に即した生き生きとした表現がみられることが導きだされた。 ヴォルフは、音高や音の長さ、休符、強弱、リズムといった音楽要素を媒介して楽譜に記しているが、さらにメーリケの詩に即して、ダーシ、コンマ、余白、といった詩語以外のサインについても意味解釈を行って音楽化している。これらは語り手(あるいは登場人物)の心を写実的に表すことにつながるもので、その演奏は広い意味で「演劇的」と述べてよいと、筆者は考えている。ヴォルフの歌曲を演奏するということは、これを読み解き、演奏によってこれを再現することである。
著者
杉本 洋介 柴田 知己 佐藤 陽彦
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.35-41, 1991

本研究は, 健常者における手指触覚によるアルファベット文字およびドット数の知覚に, 左右差があるかどうか調べることを目的とした. 被験者は, 利き手調査票によって分けられた80人の完全な右手利きの男性と, それ以外の10人の男性であった. 刺激は, 能動的な手指動作によって左右いずれかの人さし指に与えられ, 被験者は感じたアルファベット文字あるいはドットの数を口頭で答えるように指示された. 実験の結果, 完全な右手利きのグループでは有意に左手の成績がよく, また左手の優位はアルファベット文字で顕著であった. それ以外のグループでは反対の傾向がみられた. これらの結果より, 完全な右手利きの被験者ではアルファベット文字は右大脳半球で形態として処理されることが示唆された.
著者
姫野 学郎 ヒメノ ガクロウ Gakuro Himeno
雑誌
国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 = OIU journal of international studies
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.195, 2003-03-31

Two theories have appeared in the last decade in Japanese contract scholarship that are labeled as postmodernist: one is Professor Takashi Uchida’s “relational contract theory” that has been profoundly influenced by Professor Ian Macneil; the other is Professor Kenji Yamamoto’s theory that has been inspired by Professor Norbert Horn’s “Duty to Re-negotiate (Neuverhandlungspflicht).” In this short article I seek to analyze the two theories because both are focused on the performance stage of contracts – contract renegotiation. The most significant difference between the two theories is that Yamamoto highlights the tension inherent to the “Duty to Re-negotiate,”an obligation to freely agree (eine Pflicht, sich freiwillig zu einigen), while Uchida deliberately alleviates it by regarding the duty as an “immanent norm.” The reference group in the Yamamoto theory is indeed all the potential discussants (following Jurgen Habermas) whilst that in Uchida’s theory is the interpretative community of the business (following especially Hans-Gearg Gadamer). The two are related, it will be discussed, to the traditional argument about the appropriate relationship between “ratio” and “voluntas,” furthermore between Vertragsgerechtigkeit and Vertragsfreiheit.
著者
藤井 勝之 伊藤 公一 田島 茂
出版者
The Institute of Image Information and Television Engineers
雑誌
映像情報メディア学会大会講演予稿集
巻号頁・発行日
pp.140, 2003 (Released:2004-03-26)

Studies of wearable computers have attracted public attention in these days. And one of the area of interest is the communication system adopted in those wearable computers. As anexample, wearable devices which use the human body as a transmission channel, have been developed. This communication system uses near field region of the electromagnetic wave generated by the device which is eventually coupled to human body by electrodes. However, little is known about the transmission mechanism of such devices in the physical layer. In this paper, we proposed calculation model of the transmitter attached to the arm of whole body in radio anechoic chamber using the FDTD method. From this model, we estimated the electric field distribution around the human body.
著者
ジャベル ニザル 塚本 隆行 野口 伸
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.97-105, 2008-05-01
被引用文献数
2

環境負荷低減を目的として, バイオガス・軽油二燃料機関による農用トラクタの開発を行った。本研究では, バイオガス・軽油二燃料トラクタ機関について, バイオガス供給量を自動制御するバイオガス供給アルゴリズムの開発を目的とした。<br>二燃料運転によるディーゼル機関の基本性能について, 特にバイオガスと軽油の熱量換算の燃料消費率 (BSHC) 及び燃料代替率の検討を行った。二燃料運転の基本性能を把握した後, 吸気管内圧力 (MAP) を機関負荷推定のパラメータとして, バイオガス供給制御アルゴリズムの試作と性能試験を行った。試験の結果, 試作アルゴリズムは安定して機関回転数と負荷に応じてバイオガス供給量を制御できた。