著者
宮内 〓
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.59-68, 1996-07-31
参考文献数
20

島根県の美保神社において,氏子が戸外での儀式に酒,つまみ,盃,箸などを運ぶために使用する「イスズ箱」と沖縄地方で御嶽信仰において,お供えを運ぶための「ビンシー」と呼ばれる箱とを比較して,デザインの特質を述べた。1.意味不明のイスズ箱とは,「神に酒を供えるための錫の瓶を収めた箱」であることを明らかにした。2.イスズ箱は,針葉樹の白木製で,隅打付接ないし組手接の箱である。わが国古来のアイデアである中蓋によってつまみ,盃,箸と徳利とをへだて,徳利が壊れないために箱の内部を巧妙に仕切っている。中蓋はお盆としても使用される。3.ビンシーは広葉樹で朱漆塗り,蟻組接である。箱の作り方として中国の影響が指摘される。また,箱自体が神に供物を捧げる台となる。4.二つの箱の機能は類似しているが,デザインが非常に異なるのは,文化,伝統の反映であると考えられる。
著者
木村 祐哉 原 茂雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.349-352, 2008-04-25
被引用文献数
10

鍼治療のもつ長期的効果の検討のため,犬の自律神経の概日リズムに対して電気鍼刺激がもつ影響について,コサイナー法を用いて評価した.自律神経機能の指標としては心拍変動の周波数解析を用いた.温度,日照時間をコントロールした環境制御室において馴化させたビーグル犬を用い,保定のみの場合,あるいは保定した上で電気鍼刺激を加えた場合の24時間心電図データを求めた.保定のみの場合では15分間保定台にくくりつけるのみとし,電気鍼刺激はその間,脊椎上に存在する2箇所の経穴(GV-5, GV-20)に刺入した鍼を電極として5V, 250μsecの電流を2Hzの頻度で加えた.心電図データからは心拍数および心拍変動の変動係数(CVRR),高周波数成分(HF),低周波数成分/高周波数成分比(LF/HF)を求めた.得られた5頭分のデータによると,心拍数は刺激後に最大となり,その後減少する傾向が見られた.その他の心拍変動の指標では明期に減少し,暗期には次第に増加する傾向が見られた.コサイナー法によると刺激の有無に関わらずいずれの指標も有意な24時間周期を示し,それぞれの周期性を比較すると,交感神経活動の指標とされるLF/HFで水準の上昇(P=0.006)と頂点位相の前進(P=0.012)がみられた.結論として,電気鍼刺激は犬における交感神経の概日リズムを前進させ,またその水準を上げる効果をもつことがわかった.
著者
三沢 伸生 大澤 広嗣
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.28, pp.107-126, 2013-01-05

近年になって、「回教政策」をはじめとして、長らく学界で取り上げることがなかった戦前・戦中期における日本とイスラーム世界との関係についての研究が進んできている。第1に「回教政策」やイスラーム研究の中心人物にかかわる研究、第2に第1と同じく関係団体や研究機関にかかわる研究、第3に日本社会における反響、第4に在日タタール人など在日イスラーム教徒や日本とイスラーム世界との関係にかかわる研究である。このなかで第3の日本社会における反響の研究が遅れている。社会科学一般で用いられているようにメディア研究を進めていくことが必要である。代表的日刊新聞に比べて仏教系日刊新聞『中外日報』にはイスラーム関係の記事が多く所収される。現在、1937年から1945年の同紙に所収されるイスラーム関係記事のデータベース化を進めており、本稿ではその一部を紹介しながら、当時の日本社会におけるイスラーム認識の振幅の一例を示す。
著者
山田 耕作
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.703-710, 2005-08-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
菊井 和子 竹田 恵子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.63-70, 2000-06-26

エリザベス・キュブラー・ロスの名著「死ぬ瞬間」(1969年)がわが国に導入されて以後, 死にゆく患者の心理過程はターミナルケアにあたる医療職者にとっても社会全体にとっても重要な課題となった.なかでもその最終段階である"死の受容"についての関心が高まった.キュブラー・ロスは"死の受容"を"長かった人生の最終段階"で, 痛みも去り, 闘争も終り, 感情も殆ど喪失し, 患者はある種の安らぎをもってほとんど眠っている状態と説明しているが, わが国でいう"死の受容"はもっと力強く肯定的な意味をもっている.患者の闘病記・遺稿集およびターミナルケアに関わる健康専門職者の記録からわが国の死の受容に強い影響を及ぼしたと考えられる数編を選び, その記述を検討した結果, 4つの死の受容に関する構成要素が確認された.つまり, 1)自己の死が近いという自覚, 2)自己実現のための意欲的な行動, 3)死との和解, および4)残される者への別離と感謝の言葉, である.わが国における"死の受容"とは, 人生の発達の最終段階における人間の成熟した肯定的で力強い生活行動を言い, 達成感, 満足感, 幸福感を伴い, 死にゆく者と看取るものの協働作業で達成する.
著者
丸山 康司
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.149-164, 1997

<p>環境問題に対する認識が深まるにつれて、自然との共存という概念が注目されてきている。だが、共存の対象となる自然についての認識は必ずしも深まってはいない。自然保護に関する意識を見ると、観念的な自然保護に規定されている傾向が認められ、人間の介入を規制することによって自然が保護されると理解されている。しかし、実際に自然と接触のある地域においては状況が異なり、より具体的なレベルで自然保護を理解している。ここで、注目されるのが生活と環境という領域における諸研究であるが、人間-自然関係のうち親和的ではない関係の持つ意味について、十分検討する必要がある。</p><p>青森県脇野沢村では、天然記念物である北限のサルによる食害問題が深刻化しており、サルの保護と地域社会の両立が大きな問題となっている。このことが問題化した原因としては、明治以降の狩猟、森林伐採、拡大造林、サルの観光資源化、不良作物の投棄などの事実が複合的に作用したことが指摘できる。自然との共存とは、これらを総合的に扱いながら問題の解決へ向けて対策をとることであると思われる。</p><p>ここでは、サルの保護と被害という状況の中で、総合的な解決に向けた試みが行われている。その1つの理由として、サルが存在感に満ちたものとして認識されていることがあげられる。このような認識を得るに当たってサルの否定的な要素も組み入れた上での総合的な接近が重要な意味を持っていると考えられる。</p>
著者
持田 徹 嶋倉 一實 堅田 兼史 佐古井 智紀 長野 克則
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.72, pp.107-116, 1999-01-25
参考文献数
14
被引用文献数
5

暑い環境では,平均皮膚温とともにぬれ面積率が人の生理的状態をよく表すと言われている.本論文では被験者を用いた実験を行い,一定の温熱感を示した時の平均皮膚温とぬれ面積率の関係を調べた.その結果,等しい暑さの度合いを申告した時,平均皮膚温とぬれ面積率はそれぞれ一定値をとらず,湿度の高低によって,異なる値を示すことがわかった.すなわち,湿度が高いほど平均皮膚温は低く,ぬれ面積率は大きな値となり,一方,湿度が低いほど平均皮膚温は高く,ぬれ面積率は小さい値を示し,それらがある一定の関係を有することがわかった.そして,等しい暑熱感を示した五つの環境における微係数を求めたところ,微係数はいずれもマイナスの値を示し,かつ,その絶対値は高湿域では小さく,低湿域になるに従い微係数の絶対値は大きい結果となった.このことは等暖感線が湿り空気線図上で曲線になることを意味している.
著者
彌永 信美
出版者
弘前大学
雑誌
弘前大学國史研究 (ISSN:02874318)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.23-39, 1998-10-30
著者
長坂 成行
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.40, pp.248-229, 2012-03

天理大学附属天理図書館に中山正善氏が寄贈した『太平記』写本は、従来存在が知られておらず旧著でも触れえなかったが、披見を許されたのでその調査結果を報告しておく。四〇巻四〇冊存で巻二二をもち、本文的にはいわゆる流布本系統の写本であるが、古活字版のうち慶長一〇年刊本の特徴を多く持ち、同版がかんこうされて以降の書写本と推察される。また書誌的な特徴として、表紙裏張に古活字版『医学正伝』巻二の刷反古を使用していることが挙げられる。『医学正伝』の版種までは確定できていないが、同古活字版の刊行に近い頃に、刷反古を利用できる環境のもとで制作されたと推定できる。学習院大学蔵本『平家物語』写本など、表紙裏張に古活字版の刷反古を使用した本がいくつか報告されており、それらとの関連の上でも注目される写本である。
著者
新矢 麻紀子
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-33, 2013-02

The purpose of this paper is to clarify, using ethnographical data, literacy problems among permanent foreign residents in Japan and discusses the contents and methods of the literacy education they receive. First, the data indicates permanent foreign residents have problems with reading and writing Japanese even if they can speak quite fluently in their daily life. Second, the paper examines the contents and methods of literacy education offered in most community-based Japanese language classes. This study demonstrates that oral education practice is given priority over literacy education, and that this emphasis in language education is not suitable for permanent residents. As a result, many foreigners often miss the chance to study kanji and are unable to read and write sufficiently because of the absence or lack of proper literacy education. Finally, the analysis of educational practices in other classes shows that literacy education suitable for permanent residents would not be `school-type' education, but an education to develop learners' quality of life, and giving them self-confidence, self-esteem, and their own voices through acquiring functional literacy.
著者
安松 みゆき
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.71-84, 2008-06-30

In 1939 wurde die Ausstellung altjapanischer Kunst in Berlin verangestaltet, eine der grossten Ausstellungen von der japanischen Kunst in Europa. In dieser Ausstellung gehorten 94 Werke unter die 126 ausgestellten Objekte zu den staatlichen Kunstdenkmalern von Japan. Aber die politische Situation unter der Nazi-Regierung warf Schatten auf diese Ausstellung. Trotz der seltenen Bedeutung im Kunstaustausch ist sie sowohl in Deutschland als auch in Japan fast Vergessenheit geraten. Seit 1999 untersuche ich uber diese Ausstellung und ihre Hintergrunde der Realisierung. Dieser Beitrag versucht, durch die damaligen Presseberichten, Nachlichtsfilme und sonstigen Quellen die Umstande dieser Ausstellung ausfuhrlicher zu erfassn. Man gelangt zu dem Ergebnis, dass die Materialien die bemerkenswerten Widerspruche und Unterschiede in Haltung und Absicht der Mitspieler dieser Ausstellung zeigen. Das ist: 1) Widerspruch zwischen den japanischen und deutschen Presseberichten uber die Hitlers Interesse an der japanischen Kunst; 2) Die Schatzung der japanischen Kunst und nicht eindeutige Haltung der deutschen Presseberichten zur "Entaltete Kunst", die sie fur die Schatzung der japanischen Kunst herangezogen haben; 3) Schatzung von Ukiyoe und Malerei bzw. Skulptur von den japanischen und deutschen Kunsthistoriker und Politiker.
著者
村井 尚子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.191-202, 2013-01-31

教育学研究においては、ケアと正義を対比させる文脈でケアリング論の検討が行われてきている。本稿では、ケアという語を実践的な行為として捉えるケアリング論とは方向性を違え、まずはケアという語の語源を辿った。ケアは元々は気にかかる、気がかりという意味合いを強くもつもので、ハイデガーの存在論の中心的概念であるSorgeを手がかりに考えることで、我々の生の有り様が照らし出されてくる。気がかりとしてのケアは、親であることの副作用ではなく、気にかけていること自体が親であるという生活そのものであると言える。言い換えれば、気がかりは親であることの原料であり、子どもの生へと自身の生を寄り添わせる接着剤の役割を果たす。子どもの側から見れば、ケアしてくれる=気にかけてくれる存在が、子どもが育っていくためには不可欠なのである。この気がかりは、親であるかぎりずっと続く慢性の病とも言える。つねに気にかけ続けることは、痛みを伴うものでもあるが、子どもを希望として経験することもまた、親であること、ケアすることの原料だとも言えるのである。