著者
中原 逸郎
出版者
日本オーラル・ヒストリー学会
雑誌
日本オーラル・ヒストリー研究 (ISSN:18823033)
巻号頁・発行日
no.9, pp.94-106, 2013-09-11

The purpose of this paper is to clarify the conditions for the succession of a traditional Japanese art. For this purpose, I have selected Kamishichiken, one of the five geisha communities of Kyoto that have fostered a culture of hospitality. I analyzed the aspects of succession by participant observation and by collecting the conversations of hosts and guests. In comparison with the Gion-kobu geisha community, I found Kamishichiken is small in scale and self-enclosed but focused on the quality of arts. Furthermore, it has a close relationship with Nishijin textile merchants. And I found that "patrons," called danna, have three features: financial patron, educator of geisha, and individual developing in relation to Kamishichiken. From the viewpoint of the customer, we can see the synergism of social change in the distinctive geisha community by interlacing micro and macro perspectives. Although changes are inevitable, by looking at the change and continuity from various perspectives it is possible to understand the geisha community within the context of broader social changes.
著者
藏本 貴久 奥田 洋司 陳 昱
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_120-3_129, 2014-07-25 (Released:2014-09-10)

金融市場は世界恐慌のようなクラッシュを被り,世界経済は大きな打撃を受けてきた.本研究では,そのようなクラッシュと近代の金融市場における重要な取引手法である空売りの関係性に焦点を当てる.FriedmanとAbrahamのモデルには,利得勾配に応じて取引戦略のレバレッジを変化させるポートフォリオマネージャーが存在するが,そのモデルを基礎として,空売りを導入したシミュレーションモデルを構築した.先行研究と同様に,シミュレーション結果と理論解の比較によりモデルの妥当性の検証を行ったうえで,ミクロ–マクロそれぞれのレベルでクラッシュの統計量に対する空売りの影響を分析した.その結果,空売りのある市場では空売りのない市場に比べてボラティリティが2倍になること,空売りによってクラッシュの発生頻度が増加し,空売りが市場を不安定にする可能性を示した.さらに,損失を生じたエージェントが他のエージェントのレバレッジを下げる戦略選択を誘発すること,一方でクラッシュ直後の取引は空売りのある市場の方が活発になることを発見した.
著者
鯵坂 学 徳田 剛 中村 圭 加藤 泰子 田中 志敬
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.1-87, 2010-05

日本の大都市では2000年を画期として、長らく続いた人口の郊外化がおわり、人口が都心部に向かう都心回帰といわれる状況がみられる。その原因は、不況により都心地域の地価が下がり、オフィス需要が減少し、そこに大型のマンションが建てられ、新しい住民の居住が促進されたためである。本研究では、大阪市の都心区における新しい住民と古くから住んでいた住民との関係について、大阪市特有の地域住民組織である「地域振興会」(振興町会や連合振興町会)に焦点をあて、共同調査を行った。結果として、新住民のそれへの参加は少なく、旧住民中心に運営されてきた振興町会の側も新住民への対応に苦慮していること、新旧住民間の交流やコミュニティの形成が課題となっていることが判明した。
著者
土谷 真紀
出版者
学習院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は、初期狩野派の絵巻物に加え、狩野派の図像摂取の様相をたどるべく、土佐派の涅槃図について調査・分析・発表を行った。特に、「釈迦堂縁起絵巻」第二巻第七段に描かれる涅槃場面に注目し、その図像典拠となっている土佐派系の涅槃図(山口県・周防国分寺本、滋賀県・興善寺本、米国・個人蔵本)を調査し、考察内容を「土佐派による仏涅槃図について」と題して発表した。調査の過程において土佐派の手になると判断された作例もあり、今後さらに関連作例が見出される可能性がある。一連の土佐派系仏涅槃図作例の分析は、狩野派の仏画制作における、先行図像の受容問題を検討していく上で極めて有益なものとなった。本研究の主軸である狩野派絵巻の分析と発表は次の通り行った。「二尊院縁起絵巻」については、「『二尊院縁起絵巻』について一作品紹介とその特質」と題する発表を行い、画風の検証結果を報告するとともに、二尊院の寺史を軸として縁起が構成されていることを指摘した。「酒飯論絵巻」については、文化庁本とやまと絵系絵師の手になる静嘉堂文庫美術館本「酒飯論絵巻」との比較を行い、文化庁本では総じて絵画としての有機的構造が企図されていることを「狩野派における『酒飯論絵巻』の位置」と題した発表において報告した。狩野派絵巻の中で最も重要な作例である「釈迦堂縁起絵巻」については、画面の大部分を占める異国表現について「『釈迦堂縁起絵巻』における中国美術の援用と中国イメージ」と題して発表した。これらの発表については、現在公刊が決定しているものを含め、論文化を進めている所である。さらに、狩野派における物語表現の分析を進めるべく、毛利博物館蔵「源氏物語絵巻」(全五巻)を調査し、現在分析中である。本作例は狩野派における「源氏絵」の意義を明らかにするだけではなく、室町後期から江戸初期にかけての「源氏絵」の展開を考える上でも重要な作例である。
著者
渡辺 晴彦 宮崎 昭 川島 良治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.706-712, 1975-12-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
18

肥育牛に尿素を含む飼料を与えたとき,尿石症の発生が少ない傾向のあることが観察されている.そこで尿石症に対する尿素の作用を確かめるために,めん羊を用いて尿素給与時の水分代謝と尿中ミネラル濃度を検討した.めん羊6頭を2区(だいずたん白質区と尿素区)に分け,予備期14日間,試験期10日間よりなる2期について,ラテン方格法による試験を行った.試験期間中には飲水量,尿量,糞中水分量,尿のpH,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿中のCa, MgおよびP濃度を測定し,その結果を分散分析した.その結果,試験の時期間に有意差(P〈.01)を認めたが,尿素給与の影響のみを調べたところ,代謝体重当たりの尿量は尿素給与時に31%増加し(P〈.05),飲水量は17%増加した.一方,糞中水分量,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿のpH,尿中のCaおよびP濃度には尿素給与による影響はみられなかった.しかし尿中のMg濃度は尿素給与時にやや低かった.そのため,尿素の給与は飲水量と尿量を増加させることによって尿石症の発生を予防するのではないかと思われた.なお,本試験ではめん羊の代謝体重当たりの飲水量と尿量との間には,r=0.931という高い正の相関を認めた.
著者
新井 良彦 柏倉 健一
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
群馬県立県民健康科学大学紀要 (ISSN:18810691)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.45-53, 2012-03

目的:バック・グラウンド・ミュージック(BGM)が単純作業の作業効率に与える影響を,クラシックとポップスを用いて脳科学的に評価する.方法:被験者は成人大学生8名(男女各4名,平均年齢22±0.7歳).単純作業の評価スケールとして内田クレペリン検査を用いた.同一被験者において無音時及びBGM聴取時に内田クレペリン検査を行った.BGMとして,クラシック及びポップス各1曲を用いた.各試行時に,近赤外計測装置を用いて前頭前皮質の機能測定を行った.結果:内田クレペリン検査の作業量は,クラシック音楽聴取時に有意に上昇した.また,脳機能計測において単純作業時及び音楽聴取時に賦活を示す部位を特定した.結論:単純作業に対するBGMの効果は,左外側前頭前皮質に観察された.実験に用いた音楽では,ポップスよりもクラシックの方が賦活は大きかった.
著者
小谷 一郎 古厩 忠夫 丸尾 常喜 丸山 昇 佐治 俊彦 尾崎 文昭 伊藤 虎丸
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.研究会の開催、研究者のネットワーク化私たちは研究計画に基づき、メンバー以外の研究者にも呼びかけながら研究会を組織、開催した。この研究会は平成11年度に4回、12年度に3回、13年度に3回、つごう10回開かれた。研究会には毎回メンバー以外の多くの研究者が参加され、その数は40名前後にも及ぶ。また在中国の研究者からも積極的な支援、協力を得ることができた。その結果、研究者の学際的ネットワーク作りが基本的に終了し、今後の研究発展に向けて大きな足掛かりを得ることが出来た。2.関係資料の発掘、収集、整理、データベース化 本研究の遂行、発展のためには 次資料の発掘、収集が不可欠である。私たちは研究計画に基づきメンバー以外の研究者の協力を得ながら資料の発掘、収集に当たった。その結果、これまで日本国内になかった1920年代から40年代の資料をマイクロフィルムなどのかたちで100点近く入手することが出来た。これらの資料は現在も分析、データベース化が進行中であるが、複製があり埼玉大学に集中してあるので、要請があればいつでも提供可能な状態にある。3.成果の公開私たちは研究会の開催以外に本研究の成果を論文等のかたちで公開してきた。その詳細は別記の通りである。また私たちは発掘、収集した資料のうちすでに,データベース化を終えた13種について、それを『1920-40年代中文稀観雑誌目録・第一集(附著者別索引)』のかたちで公刊した。このデータベース化は現在も進行中である。私たちは本研究の成果を基に今後も研究の発展に努めていく所存である。
著者
橋口 大介 山岸 哲
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.161-170, 1981

In winter, brown dippers are mainly solitary and exclusive in relationship with adjacent conspecific individuals. They drive other individuals out of their surrounding spaces along stream by threat (warning call, confronting) or aggressive behavior (chasing flight). The area along the stream, where a dipper can find others approaching is limited, and this area is defended as a territory. Some individuals are observed within narrow ranges (Sedentary type), and they held stable territorial ranges. On the other hand, others (Nomadic type) live within more extensive ranges, and change their territorial ranges day by day. Roosting individuals in upstream areas must be nomadic ones and they come downstream for feeding during the daytime.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1945年01月16日, 1945-01-16
著者
Kishimoto Takeshi Ando Juko Tatara Seiki Yamada Nobuhiro Konishi Katsuya Kimura Natsuko Fukumori Akira Tomonaga Masaki
出版者
Nature Publishing Group
雑誌
Scientific reports (ISSN:20452322)
巻号頁・発行日
vol.4, 2014-09-09
被引用文献数
7

2歳のふたごチンパンジーに対して、母親以外のおとなも世話行動. 京都大学プレスリリース. 2014-09-12.
著者
斎藤 眞
出版者
日本学士院
雑誌
日本學士院紀要 (ISSN:03880036)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.81-103, 2000
著者
柳沼 寿
出版者
法政大学
雑誌
グノーシス : 法政大学産業情報センター紀要 (ISSN:09169180)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.47-58, 1995-03-31

近年ネットワーク型産業組織に対する関心が高まっているが,本稿では,これを組織の統合と分散という視点から捉え,ネットワーク型産業組織が成立するための条件を特殊中間財の生産に要する費用関数の「劣加法性」あるいは「優加法性」という概念によって検討した。この数学的条件により,経済活動を担う組織形態がネットワーク型となるか,内部統合となるかが規定され,両者を統一的に把握できる組織化の原理が得られることになる。
著者
三重野 勝人
出版者
別府史談会
雑誌
別府史談
巻号頁・発行日
no.18, pp.35-53, 2004-12
被引用文献数
1
著者
大坊 郁夫
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.17, no.73, pp.33-40, 1993-11-25
被引用文献数
2

対人コミュニケーションの過程はメディア、個人属性、対人関係、状況など多くの要因からなる。社会的行動の中心的な要因であり、多くの機能を担っている。それは、情報伝達、相互作用調整、親密さの表出、社会的統制の行使、サービス・作業目標の促進などである。これまでのように、チャネルの用いられ方だけでなくその機能を把握していく必要がある。コミュニケーションは対人的な親密さを反映する。その親密さは発言や視線の直接性を高め、しかもそれは、親密さを意味すると解読される。しかし、親密さが結合段階に達すると、さらには増大せず、減退することにも見られるように、コミュニケーションの機能は関係の段階に応じて変化するものでもある。