著者
伊藤 隆 渚 勝
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

一般のノルム空間をヒルベルト空間上の作用素のなす空間(作用素空間)へ埋め込めるが、ノルム空間が順序を有する場合、順序とノルムの両方を保存して埋め込むことは、一般には成功していない。そこで正値性を保存するために、埋め込みと可換な作用素の研究が必要となった。本研究では、特に埋め込みと可換(テンソルの形)なテープリッツ作用素のなすテープリッツ環の重層構造(アップワードルッキング位相)を解析し、極大イデアルの形を決定した。
著者
有村 公良 高嶋 博
出版者
鹿児島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

甲状腺中毒性周期性四肢麻痺(thyrotoxic periodic paralysis: TPP)はアジア系の男性に多く、遺伝的背景が発症に関与していると考えられる。本年度は甲状腺中毒性周期性四肢麻痺(TPP)の新たな候補遺伝子の検討、その他の低K性周期性四肢麻痺(hypoKPP)の遺伝子検査と臨床所見の検討、および東南アジア各国との共同研究の推進を行った。(1)、本年度は従来TPPでは検討が行われていない、内向き整流性K+チャネルから5種類、KCNJ1、KCNJ5、KCNJ6、KCNJ11、KCNJ12を候補遺伝子とし、TPPの男性患者11名の末梢血DNAから蛋白コード領域をPCRで増幅後、塩基配列を調べた。その結果、KCNJ1遺伝子に1個、KCNJ5遺伝子に4個、KCNJ6遺伝子に2個、KCNJ11遺伝子に3個、KCNJ12遺伝子に7個の変異を認めたが、全てSNP databaseに登録済みの正常多型であり、病因となるような変異は認めなかった。TPPの原因遺伝子検索および異常多型の検出の目的で、Na+チャネル、Ca2+チャネル、K+チャネルを含むTPP専用のresequencing arrayの設計を行ったが、作成には800万円のコストが必要であり、今後は、本年度行ったように、従来の方法による原因候補遺伝子の同定を試み、それでも発見できない場合は、十分なDNAサンプルを収集後、市販のSNP arrayを用いて異常多型の検出を試みることとした。(2)TPP以外のhypoKPPの遺伝子検索で、本邦では弧発例が多く、かつ従来hypoKPPで報告されているチャネル遺伝子異常を認めない例が多数を占めた。特徴的なことはその全例が男性であり、TPPの臨床像と極めて類似していた。このことはTPPの病態を考える上で非常に重要かも知れない。(3)前年、アジア各国と共同研究を進めるべく、共同プロトコールを作成したが、現在そのプロトコールに従い、共同研究を推進中である。各国でのIRB申請の遅れのため、当初予定していたDNAサンプルの収集は果たせなかったが、今後も継続する。
著者
杉浦 光夫 森 光弥 丹羽 敏雄 片山 孝次 大槻 真 笠原 乾吉
出版者
津田塾大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1995年12月9日-12日,津田塾大学において、20世紀シンポジウムを行った。講演者および講演題目は次の通りである。20世紀数学の種々の局面をとらえた興味ある講習が多かった。11月9日13時00-14時 杉浦光夫(津田塾大)ヒルベルトの問題から見た20世紀数学、14時10分-15時10分斎藤利弥(河合塾)ポアンカレのAnalysis Situs.15時20分-16時20分松本幸夫(東京大)基本予想をめぐって、16時30分-17時30分三宅克哉(都立大)類体論とイデ-ル.11月10日 10時-11時 高瀬正仁(九州大)数学史家としてのアンドレ.ヴェイユ,11時20分-12時10分(河合文化研)20世紀数学基礎論の成果と展望、13時30-14時30分齋藤正彦(放送大)超準数学の理想A. RobinsonからE. Nelsonへ、14時40分-15時40分、高橋陽一郎(京大数理研)カオスを巡って、15時50分-16時50分宮野悟(九州大)計算量理論の誕生とその展開11月11日 鹿野健(山形大)解析学が数論してもたらしたもの、11時10分-12時10分堀田良之(東北大)簡約群の表現論における幾何学的描像、13時30分-14時30分佐武一郎(中央大)代数群と保型系数、14時40分-15時40分吉沢尚明(岡山理大)Radon変換の概念の発見と展開、15時50分-16時50分金子晃(東京大)コンピュータ・トモグラフィの歴史-数学者は何故ノ-ベル賞を取り損ねたか-、17時-18時足立恒雄(早稲田大)-フェルマークからヴェイユまで、11月12日 10時-11時小田忠雄(東北大)20世紀における代数幾何の発展、11時10分-12時10分上野健爾(京都大)20世紀代数幾何学-重複度と交点数をめぐって-、13時30-14時30分飛田武幸(名城大)ゆうぎの解析、14時40-15時40分再評価期の確率微分方程式、山田俊雄(立命館大)、15時50分-16時50分池田信行(立命館大)終路空間上の微積分-確率解析とFeynmanの経路積分-、17時-18時山口昌哉(熊谷大)20世紀の数学について、(これらの講演は「20世紀の数学」という題で日本評論社より出版される。)
著者
真鍋 恒博 熊谷 亮平 濱 定史
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、建築の内外装下地材料および構法を対象とし、主としてわが国の近代から現代に至るまでの変遷を明らかにした。各種出版物、社史、カタログ等の文献調査、および関係者へのヒアリング調査により、各時代に発売された主な建築内外装下地材料・製品に関する情報を収集した。これらの資料を様々な視点、例えば製品の特徴、発売時期、各時代に製品に求められる性能、社会的背景、および各項目の時代的変化、などから分析し、変遷の全体像を把握した。また、これまでに蓄積された多量の関連資料を再整理したが、これは構法変遷史に関する後継研究に有用なものとなるであろう。
著者
木梨 友子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

今年度は、バイスタンダー効果の臨床応用としてホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を受けたときのバイスタンダー効果による人体影響について研究をすすめた。BNCTの生体におけるα線のバイスタンダー効果は、ホウ素化合物の投与の有無の条件下で、中性子照射後に直接α線の照射を受けない正常組織の変化の差を比較することで証明することができる。、BNCTにおいてα線の照射を直接受けない末梢血のTリンパ球のBNCT治療後のマイクロヌクレウスの出現頻度の増加率を中性子照射前のマイクロヌクレウスの出現頻度をもとに算出し、BNCT患者のリンパ球のマイクロヌクレウス形成率の解析により生物学的線量を評価することができた。さらに、従来のライナックによるX線治療や甲状腺のアイソトープ治療と比較し中性子照射の生体への影響を評価した。BNCTを受けた、頭頚部腫瘍患者および脳腫瘍患者患者の治療前後の末梢血リンパ球におけるマイクロヌクレウスの出現頻度の変化を解析し、生物学的被ばく線量の推定を行なったところ、生物学的被ばく線量の平均値は頭頚部腫瘍患者が0.24Gy、脳腫瘍患者が0.20Gyであった。ライナック治療を受けた患者の治療前後の末梢血リンパ球におけるマイクロヌクレウスの出現頻度の変化と比較したところ、BNCTにおける治療前後の末梢血リンパ球におけるマイクロヌクレウスの出現頻度の変化は約三分の一以下の増加率にとどまり、BNCTがX線による放射線治療と比べても、全身への被ばく線量の少ない効果的な選択的放射線治療であることが確認された。
著者
礒部 年晃
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

■研究目的本研究は、次期学習指導要領で新設されることが決まった低学年「数量関係」領域の具体的なカリキュラムを開発することを目的とした。そのため、関数的な考え方へとつながる内容を第1・2学年の「数と計算」領域の中から抽出し、新たな単元として設定して実践的に研究を進めた。■研究方法新しい単元開発の着眼点として(1)関数的な考え方の伸張、(2)数学的内容の系統・発展、(3)子どもの課題意識の連鎖、の3点を設定した。そして、第1学年、第2学年それぞれ2クラス、計4クラスを取り上げ、授業実践を比較しながら、常に妥当性・客観性を検討して進めていった。■研究成果本研究をとおして、低学年において「数量関係」領域の単元を開発する際には、複数の事象間に共通する性質を帰納的に一般化していく「『きまり』を創発する活動」を位置づけた発展的学習の設定が有効であることが明らかになった。この「きまり」づくりの活動を中核にして、事象の条件を連続的に変化させ、一般化された法則づくり(学級文化づくり)を行うことに、児童は興味をもって追究できることも明らかになった。さらには、「きまり」を考察する活動を設定することで、関数的に事象を追究する主体的な児童の態度を育成することができることが明らかになった。第1学年において、新たに開発した単元は、次の通りである。1.10までの数をつくるたし算はいくつできるか:式の見方と変化2.差が□になる○-△(一位数同士)のひき算は何種類:変化と対応3.繰り上がりがあって和が11〜18の式はいくつできる:式の変化4.繰り下がりがあって差が2〜9の式はいくつできる:差の変化5.数の並びのきまりはずっと変わらないの:数表の見方と数の拡張
著者
川上 養一 船戸 充 岡本 晃一 岡本 晃一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

本研究プロジェクトによって、近接場マルチプローブ分光技術、すなわち、光ファイバー先端に設けた微小開口から試料の微少領域を光励起し、数100 nm程度離れた場所からの光信号を別の微小開口プローブを用いて分光する技術の開発に成功した。これによって、半導体ナノ構造など光材料におけるキャリア・エキシトン・プラズモンなどの素励起の時間的・空間的な再結合ダイナミクスを可視化でき、光物性評価のための新しいツールが開発された。
著者
越村 三幸 長谷川 隆三 藤田 博 峯 恒憲 力 規晃
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ユーザの意図に適合した検索を行うWeb検索支援システムの構築を目指して,ソーシャルブツクマークやODP(OpenDirectoryProject), Twitter,プログ, Web閲覧履歴を用いたユーザの特徴抽出,及び, Wikipediaを知識源とした関連語抽出を行った.抽出した特徴に基づいたユーザ類似性に着目した情報推薦システムを試作した.また,時間的な距離に着目した関連単語の抽出を行い,タイムリーな検索支援に有効であることを確かめた.
著者
北島 宣 片岡 圭子 札埜 高志 羽生 剛 山崎 安津
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

'無核紀州'由来の無核性発現には植物生長調節物質は直接的に関与していないことが明らかとなった。この無核性発現機構は、高温条件で解除され、種子が形成されることが明らかとなった。開花0~4週間後の高温が無核性発現機構の解除に関与することが示唆された。
著者
山田 友幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究代表者は従来より、状況理論の枠組みのもとで、J.L.オースティンの真理の理論を拡張することにより、発語内行為の種類の違い(発語内の力の違い)を考慮に入れつつ、発語内行為全般を一貫した仕方で扱うことのできる、発話の内容の理論を構築することを目指してきた。本研究の目標は、この発話の内容の理論を、帰属準拠のアプローチのもとで定式化するとともに、同じアプローチのもとで、発語内の力の理論をも定式化し、両者を統合して、発語内行為の一般理論の基本的な枠組みを確立することである。帰属準拠のアプローチとは、行為者に発語内行為を帰属する形の言明をベースにして、発語内行為の内容と力を、帰属される行為そのものの特徴として統合的に扱おうとする本研究に独自のアプローチである。初年度にあたる平成10年度の研究により、このアプローチは状況理論と折り合いがよく、そのもとで、真偽が問題になる言明や報告などの発話と、真偽が問題にならない命令や約束などの発話の双方に、一貫した扱いを与える発話の内容の理論を定式化しうることが明らかになっている。第2年度および最終年度にあたる平成11〜12年度の研究では、発語内の力の理論に研究の重点を移し、その基礎となる出来事の一般理論に関する調査と、発語内の力の定式化のありうる方式の検討を行った。このうち前者に関しては、バーワイズとセリグマンのチャンネル理論の応用が有望であるとの感触を得ている。また後者に関しては、発語内行為の力の相違を、発語内行為がもたらす状況の変化のタイプの相違の観点から分析することを試み、個別事例に関して興味深い結果を得た。力の理論の形式化には、権利や義務、可能性、命題的態度等をも記述しうる言語が必要であるが、この面でも帰属準拠のアプローチの自然な拡張は、様相演算子の導入に頼ってきた従来の理論とは大きく異なる方向を示唆することが明らかになった。
著者
山本 清洋
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、学校週5日制が施行された前後2ヶ年間の子どもの生活構造と余暇や生活に関する意識の変容を分析し、学校週5日制の課題を明らかにすることである。子どもの生活構造の変容を分析するためには、生活時間調査を用いた。この研究で明らかになった諸点は、次のようなものである。(1).ほとんどの子どもが学校週5日制を好意的に評価し、施行1年後には、普通の休みと同じ感覚で受け入れている。(2).日常生活に対する子どもの満足感は、学校生活に関係が深いので学校のカリキュラムや学校生活を、学校週5日制と関連させて検討することが肝要である。(3).約50%の子どもが、学校と社会教育機関が準備した地域の諸行事へ参加していることが、施行後の最も大きな生活変容である。従って、今後は、この地域の諸行事を子どもの余暇活動として定着させることが課題となる。(4).子どもは、余暇で何をし、どうすればいいかという能力を有していることから、子どもを地域行事の企画か運営に参加させることが必要である。そうすることによって、子どもが自立して余暇を過す能力が育ち、同時に学校週5日制が社会に位置づくことになる。
著者
刑部 育子 戸田 真志 植村 朋弘
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、実践者(教師や保育者)と研究者が共に日常の教育実践や保育活動記録を気軽に共有でき、実践を協働でデザインすることを支援するインターフェイスを構築することを目的としている。インターフェイス・デザインの分野ではデザイナがユーザとともにモノとのかかわりを含めた活動文脈を有し、経験する「参加共有型デザイン(participatory design)」が行われ始めている。この手法を保育・教育実践に応用することで、実践者とともに保育(教育)実践および記録をその日のうちに共有し、新たな実践を共に日常的に創造することを支援するインターフェイスの開発を目指した。本年度は研究計画3年間の最終年であり、観察ツールを実践において使用し保育デザインの循環を構築した。本年の成果の特記事項として、昨年度の試作版ツール開発に関する受賞に続き、拡張版ツール開発における成果が国際教育工学系会議ED-MEDIA2009で発表した結果、657の採択論文のうちの18の受賞論文の一つとして選ばれ、二年連続で受賞したことである(Gyobu, Toda, Uemura, & kudo, 2009)。このツールを実際の保育実践の場で年間の園内研究会で使用した実績も大きな成果であった。実際に使用した結果として、このツールによる、その日のうちに即時の重要な活動のシーンの共有が園内研究会における話し合いを焦点化、活性化させる効果がみられ、複数の人々との議論における、言葉のみの議論にありがちな言葉によるすれちがい、イメージのずれを解消し、建設的な「場面」に基づく事実による保育実践の話し合いが可能となった。
著者
津田 敏隆 堀之内 武 小司 禎教 瀬古 弘 河谷 芳雄 矢吹 正教 佐藤 一敏 川畑 拓矢 國井 勝
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究はGPSや準天頂衛星による衛星測位データを大気科学に活用する「GPS気象学」の一環であり、以下の3課題を実施した。1) 小型低軌道(LEO)衛星を用いたGPS電波掩蔽により、高度分解能と精度が優れた気温・水蒸気プロファイルを解析する、2) GPS掩蔽データと地上GPS観測による可降水量データをメソ数値予報モデルに同化し予報精度向上を評価する、および3) GPS掩蔽データを用いて大気構造・擾乱の時間空間特性を解明する。
著者
眞柄 秀子 井戸 正伸 新川 敏光 鈴木 基史
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

構造改革と政治変化に関する日伊比較研究の国際研究集会をミラノ大学と早稲田大学でそれぞれ2回ずつ開催し、最終的な研究成果としてStructural Reforms in Italy and Japan Revisited-Riforme Strutturali in Italia e Giappone : Una Riflessione Critica, The Japan Society for the Promotion of Science Grant-in-Aid for Scientific Research (B) #18402014, Hideko Magara, Waseda University, 18 March 2010, 196p.にまとめた。
著者
伊藤 慶明 田中 和世 大川 茂樹 伊藤 憲三
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

地域FM ラジオ放送のオンデマンド放送化および検索技術の研究開発の推進を行った.ラジオ音声を対象と想定し,音声中の聞きたい区間を容易に検索できる技術の研究を推進し、地域FMでは方言などが含まれるため「語彙外の言葉」でも検索できるように,音素およびさらに細かな系列を開発し,任意の語彙での検索と性能向上を実現・成功した。さらに、様々な音声検索研究手法を公正・公平に評価するため、情報処理学会においてワーキンググループを立ち上げ、共通の音声データ、評価方法の整備を推進し研究者への公開を実施し社会貢献を果たした。
著者
大木 岳志
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

食道ESD後の狭窄抑制を目的とした口腔粘膜上皮細胞シートによる再生医療的治療の経験を基に、大腸ESDへの応用に向けて基礎実験を行った。ミニブタを用いて大腸ESDモデルを作製し移植を試みた。当初、ブタ線維芽細胞シートの作製を行ったが、培養不安定なためヒト口腔粘膜上皮細胞シートを使用した。本実験系は異種移植であったものの短時間であれば移植は可能で、大腸でも細胞シートの移植が可能であることが判明した。本法は穿孔の修復やリスクを回避できる可能性があるため引き続き研究を推し進める必要がある。
著者
田中 正義 藤原 守 郡 英輝 高松 邦彦
出版者
神戸常盤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

超偏極^3Heガスを造影剤とした^3He-MRI(磁気共鳴イメージング)を目指して、極低温と、強磁場による強制偏極法(BFM : Brute Force Method)による超偏極^3Heガス生成法の開発を行った。今回BFMを用いたのは、従来のレーザー光ポンピング法では超偏極^3Heガスの収率が高々1〓/日程度しか期待できないが、BFMではその千倍の収率が期待できるからである。極低温(~10mK)を実現するのに、オランダ・ライデンクライオジェニクスから導入した^3He/^4He希釈冷凍機(DRS2500)を用い、17 Tの強磁場発生には超電導ソレノイドコイルを用いた。本研究では、BFMで生成された超偏極固体^3He生成用のポメランチュクセル、減偏極が起こらないように短時間で気化させる急速融解法を開発し、予備実験を行っている。
著者
松田 博貴 井龍 康文 中森 亨 佐藤 時幸 杉原 薫 佐々木 圭一
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本企画調査は,「気候・海洋環境変動に伴いサンゴ礁分布域の北限・南限(「サンゴ礁前線」)は移動する」というモデルに立脚し,琉球列島を調査対象域として,1)「サンゴ礁前線」の移動に基づくサンゴ礁形成の規制環境要因の解明および気候・海洋環境変動の復元,2)種々の時間スケールでの環境変動に対するサンゴ礁生態系の応答,ならびに3)全球的炭素循環におけるサンゴ礁の機能と影響,を解明するための科学提案「第四紀気候変動に対するサンゴ礁の応答」の実現を目的として実施された.企画調査では,国内外関連研究者13名により,現在のサンゴ礁北限近傍に位置する喜界島でのワークショップ(2003年8月),ならびに東京での公開シンポジウム"氷期にサンゴ礁の北限はどこだったのか??-I0DP/ICDP掘削プロジェクト「サンゴ礁前線の移動に基づく氷期・間氷期の環境変動解析」の実現に向けて-"(2004年1月)を通じて,1)様々な生物指標・化学プロキシーからの気候・海洋情報の抽出・解析法の総括,2)仮説検証に最大効率を生みだす最適掘削地点の選定,3)コア試料を補完する検層の選定と検層計画の最適化,4)サンゴ礁性堆積物における掘削ツールと掘削計画の最適化,について,炭酸塩堆積物,造礁生物,地球化学,年代決定などの観点から,多角的に検討を加えてきた.今後は,これらの討議により明らかにされた問題点や技術的課題について検討していくとともに,データ蓄積の乏しい北限域のサンゴ礁ならびに礁性堆積物の調査を継続し,早期の科学掘削の実現を図る.なお本企画調査の成果については,特集号として出版する予定である.
著者
宮坂 靖子 藤田 道代 落合 恵美子 山根 真理 橋本 泰子 上野 加代子 大和 礼子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

女性労働力率のパターンに着目すると、本調査の対象地域は、「逆U字(台形)型」の中国・タイ、30歳代から次第に低下する「キリン型」のシンガポール・台湾「M字型」の日本・韓国の3類型に分けられる。つまり日本・韓国以外の地域においては、出産・育児後も共働きが一般的であった。中国、タイ、シンガポールの共働きを支えてきたのは、親族(特に親)による育児支援と、必要な場合の家事使用人の雇用(家事・育児の市場化)であった。しかしより詳細に見ると、特にその後の展開においては各国で差違が見出された。現在の中国(南部)では、親族(特に祖父母)による援助と父親による育児・家事参加により、出産・育児期の女性の就労が可能になっている。タイ(都市中間層)の場合は、同居の親(一般的には妻方)からの援助と住み込みのメイドであったものが、近年インフォーマルな民間の託児所(保育ママさんによる保育)と家事の市場化に依存する形に変化してきている。都市中間層では専業主婦も誕生してきており、1998・1999年にはバンコクの女性労働力率にはM字の落ち込みが初めて出現した。シンガポールでは、親族、有料の養親、住み込みのメイドが主流である(養親とは、保育園に入れる2、3歳までの間有料で子どもを預かってもらうもの)が、最大の特徴は、住込みのメイドによる家事・育児の市場化である(特に家事に関しては、妻夫双方とも行わない)。最後に日本と韓国というM字型社会においても、女性の就業率は上昇している。それを支えている共通点は、妻型の親の育児援助と保育園の利用、および父親の育児参加である。ただし韓国では日本以上に緊密な親族ネットワークや他の多様なネットワーク(近隣、友人など)が存在しており、母親の育児の孤立化は生じていない。育児不安はアジア社会において日本固有の特徴であると言える。
著者
仁平 義明
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1)急速反復書字によるスリップの発生メカニズム特に書字速度を独立要因とした実験結果から、急速反復書字によってスリップが発生する原因は、次のようなものから構成されることが明らかになった:(1)急速な書字では、活性化された書字運動プログラムのうちトリガ-すべき運動記憶の選択機構が障害される。(2)活性化された不適切な運動記憶の抑制機構も急速という条件によって同時に障害される。(3)運動記憶のネットワ-クを通じて不適切な運動記憶に波及した活性化の水準が時間的加重によって高進する。従ってトリガ-されやすくなる。(4)反復は自動的なトリガ-部分だけをくりかえすことになるため、選択機構の機能低下が生じる。2)スリップがあらわれるときの書字時間インタ-バルは短縮される傾向があり、「わりこみトリガリング」によってスリップが生じることが示唆された。3)ネットワ-ク内の活性化の波及・活性化は書字対象の文字とリンクしている単一の文字だけではなく、ネットワ-ク全体に波及することがスリップの出現様式から分かる。ネットワ-ク内の書字運動記憶には、このようにきわめて密接なリンクがある。4)文字の運動記憶は、単純なネットワ-ク構造になっているのではなく、文字のための違った種類の運動記憶からなる重層的なネットワ-クを形成している。