著者
竹内 順子 柴坂 寿子 佐治 由美子 菊地 知子 塩崎 美穂 入江 礼子 小玉 亮子 私市 和子 中澤 智子 石塚 美穂子 肥後 雅代 今井 由美子 片桐 孝子 高坂 悦子 浜崎 由紀子 藤田 まどか 阿部 厚子 江波 諄子 杉本 裕子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

乳幼児0~2歳が過ごす学内保育所(お茶の水女子大学附属「いずみナーサリー(以下、ナーサリー)」)の教育的質の向上と、大学全体のコミュニティとしての教育環境「大学の中で赤ちゃんが笑う」構想を実現するために、下の3つの視点から研究を総合的にすすめた。(1)週1日から週5日の通所日数自由選択や一時保育、また、1日の保育時間もフレキシブルに決められる多元的保育体制において、保育の質を保証するための保育方法、カリキュラム(学び/育ちの履歴)開発(2)環境的教材、芸術的表現教材の開発(3)大学の特性を生かし多世代・他分野との協働を生かしたコミュニティ的実践。平成24年3月に最終報告書「大学の中で赤ちゃんが笑うII」を発行した。
著者
重松 敬一 日野 圭子
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本年度の計画とそれに対する研究実績は以下の通りである。1.前年度の研究から得られた結果に基づいて,「学習ユニット」の構成と評価の視点を明確にする。=> 学習ユニットの構成では,Plan-Do-SeeのサイクルのPlanの段階において,数学的道具をどう組み込むか,それをどう評価するかを考える。更に,(1)数学的道具の異なる側面(「基礎技能」「表現」「処理」「解釈」「問題解決」「道具づくり」),(2)道具使用の場面(「道具を選んでの計算」「数学的探究や説明の中での道具使用」「日常生活の問題解決における道具使用」「総合的な作業における道具使用」)の2つの軸の中での位置付けを考える。尚,電卓・グラフ電卓の使用を組み込んだ学習ユニットの一部として,「ちらしを使って考えよう」「電卓で遊ぼう」(小学校高学年),「バスケットボールのシュートの正確さを予測しよう」(高校)の授業を考え,実践した。2.視点に基づいて,算数・数学科カリキュラム・指導・評価をつなぐシステムを考案する。=> 学習ユニットの構成と評価の視点を織り込んだ具体事例を幾つか考案するところまでを行った。今後の課題が残された。(1)数学的道具を今回は狭い意味で用いたが,数学的活動との関わりなどから,より広く規定していくことが必要である。(2)数学的道具の取り入れを意識するために,指導案を作る上でのガイドラインを更に検討する必要がある。(3)道具の使用を認めるような評価方法についても,更なる検討が必要である。(4)より広く,「道具を使った数学的探究」という総合的な柱についての検討が必要である。
著者
岩堀 健治
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究において詳細にナノ粒子形成条件を検討する事により直径 12 nm の馬由来フェリチンタンパク質の内部空洞内(直径 7 nm)に温熱効果を発揮すると考えられる酸化鉄ナノ粒子の作製に成功した。作製した本ナノ粒子集合体はネオジウム磁石への吸着が肉眼で観察されるとともに、XRD や EDX 分析、高分解能電子顕微鏡観察等を行った結果、作製されたナノ粒子はマグネタイト (Fe3O4) であることが確認された。また、酸化鉄ナノ粒子以外にも詳細な検討作製条件検討によりフェリチン空洞内への CuS 及び FeS, タンタル (Ta) のナノ粒子の作製にも成功し、現在ひきつづき元素分析及び磁性観察を行っている。さらに最近、より DDS に適しているヒトの心臓由来のフェリチンタンパク質の作製と内部への酸化鉄ナノ粒子の作製にも成功した。今後はこれらの作製したナノ粒子の発熱実験とフェリチン表面への認識ペプチドの結合を行うことでバイオナノ粒子を作製し、機能評価を行う。
著者
木田 章義 ZHONG JinWen
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

西部裕固語(以下彼等の自称「ヨグル語」を使用する)は、トルコ系民族がイスラム化する前に、甘粛省に東遷したので、他のトルコ系民族の受けたイスラム教やアラブ文化の影響がない。そのためもあって、その言語は古代トルコ語の特徴をよく残している。今回の共同研究によって、それが確かめられると同時に、古代日本語の文法現象について、新たな視点が得られた。例えば、ヨグル語では受身形は、時には可能、自発の意味を持つが、それは古代日本語の受身助動詞「る」「らる」と同じである。特に興味深いのは、ヨグル語では受身が可能の意味をもつ過程が跡づけられる点である。日本語の受身形は「自発」を基本として発達したという見解については改めて考える必要がある。ヨグル語の研究は、ほとんど進んでいない。今回、招聘できた鐘進文氏が唯一の研究者と言っても良いが、この共同研究によって鐘氏の文法分析が、中国語や、これまでの漢族の分析の影響を受けて、かなり矛盾のあるものとなっており、丁寧に日本語と対比することによって、分析すべき多くの言語現象があること、文法体系がかなりゆがんで捉えられていることが分かった。日本語と、細部まで比較するためには、あらためてヨグル語の文法書を作成しながら、共同研究を続けなければならない。また、文法書の作成以前に、ヨグル語の単語の正書法を決めなければならない。ヨグル語の表記はローマ字を使うことになるが、その正書法が決まっていないために、同じ単語が全く違った表記になったり、二つの語が融合した形式になっているものも少なくない。資料を残してゆくためにも、正確な文法分析のためにも、正書法を決めることは喫急の作業である。現在、ヨグル語の話手は3千人ほどしか居ず、年々、漢語の影響が強くなり、若者にはヨグル語を解さない者が多くなってきている。放っておけば、この一世代で滅亡してしまうことになるだろう。この共同研究は、ヨグル語が滅亡する寸前に、その言語を記録し、分析する貴重な機会となった。
著者
最上 忠雄 山崎 浩道 松山 成男 石井 慶造
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

加速器と言われる装置で発生される粒子線は、放射線と呼ばれるもので、この放射線を知ることは原子などミクロな世界の現象を知ることであり、しかも社会で非常に役に立っていることはあまり知られていません。ミクロな世界の現象の理解を通した大学院生や大学生による子供たちのための理科教育の中でも放射線を題材とした、寸劇「放射線裁判:怪盗Xの巻」を通じて、皆様が最先端の科学技術に興味をもつきっかけとなってくれることを期待している。対象は、宮城県内の小学生・中学生とし、学校訪問による出張公演を行う。一般に、文科系向きの人も理科系向きの人も共に興味を抱くことができる科学技術は少ない。PIXE(ピクシー)法は、加速器と言われる装置を用いて粒子線を発生させ加速して、それを試料に当て、微量の元素を分析する方法で、考古学試料、食品・飲料水、血液、河川水など何でも高感度で分析できる方法であり、しかも、非破壊なので指輪・ネックレスなど貴重な試料の分析も行えるので、文科系向きの人も理科系向きの人も共に興味を抱くことができる科学技術です。この対象は、オープンキャンパスの期間中、東北大学ダイナミトロン加速器(公開実験)を用いて、高校生・一般とするが特に、「中学生コーナー」を設定した。1.出前授業(演劇)平成16年度 「放射線裁判:怪盗Xの巻」実施校 中学校 4校(10クラス) 実施回数 7回 総参加者数 274名平成17年度 「放射線裁判:怪盗Xの巻」実施校 中学校 2校(4クラス) 実施回数 4回 総参加者数 147名2.オープンキャンパス(公開実験)「中学生コーナー」平成17年 7月28日(木) 志津川町立志津川中学校 3年1名 2年6名男子5名 女子2名 合計7名村田町立村田第二中学校 3年4名 2年2名男子4名 女子2名 合計6名
著者
冨田 爽子 水野 晶子
出版者
拓殖大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は1603年から1642年に英国で出版された ‘Italian Books’ を調査し、研究者が確立したメソッドで、書誌学的記述を試み、イタリア ルネッサンスの大きな影響を受けて英国文化を開花させたその過程で、出版の果たした役割を明らかにすることを目的とする。1642年以降、大変容を遂げる英国の出版活動の直前に、‘Italian Books’ が英国の文人や知識階級、及び、劇作家とどのような文化的邂逅を遂げたかを実証的に検証し、当時の英文学や英国演劇にどのような影響を与えたかを明らかにしようとするものである。研究は概ね順調に進んだ。まだしばらく修正作業が続くが、無事に完成させたい。
著者
三田 明弘
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、日本と中国の説話文学史の融合を目指す研究の一環として、中国の説話文学史上、重要な位置を占めながらも、あまりに大部であるために従来はその内容が十分把握されていなかった『法苑珠林』と『夷堅志』の詳細な分析を行ったものである。『法苑珠林』は仏教百科事典として編纂された説話集であり、その全体構造を解明した。宋を代表する知識人洪邁の著作『夷堅志』については、北宋滅亡の史実が作品に大きな影響を与えていることを明らかにした。
著者
渡辺 義浩
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題の目的は、運動・変形中の物体形状をリアルタイムに取得し得るセンシング技術の確立とその応用展開である。特に、高精度形状復元のためのセンシング情報処理やインターフェースへの応用展開に重点を置いた。まず、3次元センシングの高解像度化技術を開発した。これは、時系列に取得される運動物体の低解像度形状データから、高解像度の形状を復元するものである。次に、非剛体変形の推定を高精度に行う手法を開発した。これは、対象物体の変形に関する物理的特性の数理モデルを推定問題に取り込むことで、計測ノイズや低解像度による取得データの劣化を解消するものである。また、高速3次元センシングを基盤として、インタラクティブなディスプレイシステムを開発した。これは、変形可能なスクリーンを介在物として、仮想空間の3次元物体を操作する機能を提供するものである。さらに、高速な3次元センシングによって、ユーザのめくり動作中に紙面情報をスキャンする技術を開発した。各ページの紙面の変形を連続的に捉え、書籍情報の歪みを3次元の非剛体モデルによって自動補正することが可能であることを実証した。
著者
鍛治 静雄
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

空間を滑らかに変形してゆくときに見られる対称性は,その空間に対するリー群の作用によって記述される.その様子は,リー群そのものやリー群が作用する空間の不変量を通して調べることができる.本研究では特に,その幾何学的な不変量と代数的な構造が綺麗に対応している,旗多様体と呼ばれる種類の空間について,代数的位相幾何学の手法を用いた具体的な計算を通してその詳細を考察した.
著者
久保 倫子
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

1990年代後半以降の都心部におけるマンション供給の増加は,日本の住宅市場の大きな転換期にあることを示すものでもある.本研究は東京大都市圏でのフィールドワークを行い,東京大都市圏におけるマンション供給とマンション購入者の特徴を明らかし,以下の仮説を検証することを目的とした.1)1990年代後半以降にマンションを購入している世帯は,戸建住宅志向が主流であった時代の価値観とは異なる居住選好を有し,住宅を選択している.2)マンション供給者は,比較的早期から非標準世帯をターゲットに取り込む戦略をとってきたことで,所有住宅市場におけるマイノリティであった世帯を対象とする物件が増え,これらの世帯が重要な需要者となっている.3)各世帯によってマンション購入の意思決定過程は異なるものの,世帯特性によってその意思決定過程を説明しうる要因が存在している.これらの仮説を検証するため,千葉県千葉市美浜区の幕張ベイタウンおよび千葉県成田市の成田ニュータウンにおいて,居住者の居住地選択(特に,住宅購入に関する意思決定過程)やコミュニティ活動に関する調査を実施し,国内外の学会(日本地理学会,人文地理学会,The Association of American Geographers 2010 Annual Meeting等)において発表した。次に,マンション供給側の供給戦略に関しては,東京都心部における主要なマンション供給社に対するインタビュー調査および不動産データの分析によって,マンション供給戦略の変化を分析し,日本地理学会等で発表し議論を行った.
著者
米澤 宏一
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

発電用水車の羽根車下流に設置された吸出し管(ドラフトチューブ)に生じる流動不安定現象(サージ)について縮小モデルを用いた実験および数値解析による研究を行った.その結果,設計流量と比べて過大流量および低流量のいずれの運転条件においてもサージの発生が確認され,その周波数は渦芯の振れ回り周波数とは異なることが明らかとなった.また,流れの加振実験を行い,キャビテーションの動特性を調べた.
著者
井上 栄二 仲吉 一男
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

DAQ(Data Acquisition)ミドルウェアを使ったCC/NET用データ収集システムにワークフローの技術を導入した枠組みを作った。DAQミドルウェアはRT(RobotTechnology)ミドルウェアという国際規格のロボット技術をベースにしたネットワーク分散型のデータ収集システムのフレームワークである。DAQミドルウェアとDAQワークフロー処理を一つGUI上で操作ができるようにしたことで、分散型DAQの利点を活かすことが可能になった。
著者
南澤 良彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、中国の先秦から隋唐に至る科学技術の直面した諸問題を、社会思想的に研究し、科学技術の社会的意義を究明した。前近代中国において科学技術は国家経営の基盤の一つであり、科学技術者たちは官僚制の中に組み込まれた。科学技術は自然科学のみならず人文科学や社会科学と密接に関係しており、科学史研究に止まらず、広く社会思想的研究の対象とされるべきであり、本研究により、従来、理系出身学者が行ってきた科学技術史研究を補完し、中国古代中世科学技術史研究を、より有意義で実り豊かなものとした。
著者
保世院 座狩屋
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、建設廃棄物を用いた透水性セメント複合材による盛土堤防の安全率を求めた。 各種盛土堤防に対する所要の安全率が確保できる補強材の最適設計を行った。仮定した盛土法面を対象にエクセルソフトを用いた安定解析を提案し、デザインチャート化を試みた。計算内容がわかりやすく、誰にでも扱いやすいエクセルソフトによる解析を行い、各種盛土堤防に対する設計手法を確立した。補強してない盛土堤防の安全率を仮定した3種の法面勾配(30°,45°,60°)についてそれぞれ求めた。
著者
竹森 幸一 山本 春江 浅田 豊
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、大学における新たな教育方法、すなわち学生がある事例をもとにしたシナリオに基づいて、自主的、自立的に学習し、学生間で相互に助け合いながら学習するという教育方法であるPBL (Problem Based Learning)の手法を、地域住民の生活習慣改善に応用した新しい教育モデルを開発することである。平成15,16年度は青森県N町、17年度は青森県T町で減塩を中心とした食生活改善教室を開催しながら、新教育モデルの開発を行った。教室参加住民は、開発したTYA方式の主特徴であるシナリオを基盤として、チューターによるサポートを受けて、減塩を中心とする生活習慣改善のための知識やスキルを習得することができた。各年度のグループワークの質的分析の結果、前半の学習では(1)自分の減塩行動・工夫点の振り返り、(2)自分の食生活の振り返り等の学習過程、後半では(1)確実かつ長期的に実行可能な目標の導出・再構築、(2)生活習慣全体に関わる健康行動の重要性の理解等の学習過程を経た。参加住民同士が、お互いの生活経験を学習資源とした自由な討議を行なうことが減塩に関する行動変容・実践につながったと捉えられる。N町教室終了後の追跡において、教室参加群は教室終了後の低下した食塩レベルを維持していたグループ(維持群)とリバウンドがみられた群(戻り群)に分けられた。維持群の喫煙、飲酒、運動などの健康習慣レベルが戻り群や検査群のレベルより高かった。このことから食習慣は他の生活習慣と関連しあっており、生活習慣改善を目指す健康教育は主目的とする生活習慣と共に他の生活習慣の改善も組み込んだプログラムが効果的であると考えた。
著者
嶋田 義仁 DUCROS Garance GARANCE Ducros
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

嶋田はDr.Ducrosとともに、変革期にある日仏家族内における非物質的相続関係の研究をおこなった。Dr.Ducrosは、フランスにおける「家族の記憶」をめぐる研究史(M.Halbwachs、A.Gotman、B.Le Wita,J.Coenen-Huther,I.Bertaux-Wiane,A.Muxel)を通じて析出した「家族の記憶」分析の諸カテゴリーをふまえて、日本における「家族の記憶」のあり方を探った。本年その事例としたのは、70歳後半の新宗教教団幹部で支部大教会の会長である。海外布教に専心し、ヨーロッパ、東南アジア、アルゼンチンなど海外数カ国での布教活動をおこなった。家族の財はその祖父の代に教団に寄贈したという家族であった。ライフ・ヒストリーを通じて衝撃であったのは、家族と言うよりも教団の一員としての意識が強烈であったことである。とりわけ教団の組織確立者であり、教団の海外布教の推進者であった教祖を深く尊敬していた。ただし、これは教団への盲目的な服従心とことなり、その後の教祖たちについては批判的であった。特集技能者の成長過程は、家族という親族的論理と、特殊技能であるがゆえに家族の親族的論理の枠を超えた社会集団の論理(宗教団体、茶道や華道団体、学問や大学組織、企業、スポーツ界)がかかわる。職業的社会集団は、フランスではデュルケーム社会学が個人を越えた独自の存在として重視した社会集団である。家族/職業的社会集団という異なる2種の社会原理の相克と補完関係についてのよい事例が得られた。他方嶋田は、この2組織原理にくわえて、地縁原理の重要さを指摘し、家族、職業的社会集団、地縁社会という、3つの原理がどのようにかみあっているのかを考察した。この3原理は、世界の諸社会・諸文化の比較研究のうえにも役立つことが、嶋田の研究しているアフリカ社会の考察でも明らかになった。部族主義の伝統のあるアフリカでは、家族親族集団が部族あるいはその下位単位のリニージにまで広がる。他方、イスラムなどの世界宗教が広がる地域では、宗教的アイデンテティが第4の要素として巨大化する。
著者
上野 大介
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

平成21年度では下記の2つの成果が得られた。1つ目の成果は、高齢者の感情が記憶の記銘と検索に及ぼす影響に関する脳機能データの収集を行った点である。これは、高齢者の感情を伴う記憶の記銘と検索の基礎メカニズムを明らかにし、本年度実施する予定であった研究の実施に寄与するものであった。具体的には、認知機能や気分調整機能を統制せずに、ネガティブとポジティブの感情が喚起される状況と感情が喚起されない状況を統制し、そこで記銘項目である文字の記銘時と検索時の脳機能をMEGによって測定した。用いた実験手続きは高齢の対象者に負担を与えるものではなく、おおむね順調に実施できた。しかしながら、本実験を一人で実施するには実施側の負担が大きかった。よって実験手続き自体は変えずに実施し、複数で実験を実施する、もしくは複数の対象者に対して同時に実験を実施するなどの改善点が得られた。2つ目の成果は、心理学評論に掲載された高齢者の記憶と感情に関する資料論文の執筆に携わることができた点である。これは研究代表者が特に従事していた研究テーマである「高齢者の記憶と感情」に関する研究を日本の研究者に紹介することができた点で意義があったと思う。そしてこの分野が主に欧米中心で実施されており、アジアにおけるこの分野の実施、さらなる分野の発展が多いに期待できると認識した。よって、高齢者の記憶と感情が日本国内でも発展するきっかけの一つにこの論文が寄与することを願う。しかしながら交付申請書の提出時に計画していた学会での発表などが実施できず、得られなかった成果もある。よって今後は柔軟に計画を立案し、見直しながら、研究を実施することも念頭に入れる必要がある。
著者
早島 大祐
出版者
京都女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究でとりあげる守護創建禅院は,従来、せいぜい郷土史研究の一コマをいろどるものに過ぎなかった。しかし、本研究課題を遂行するなかで明らかにした通り、分国内の国菩提寺はまちがいなく、京都と分国をむすぶ、ターミナルの一つであり、室町期の社会を読み解くうえで、重要な検討課題であることが明らかになった。また京都にたてられた京菩提寺には、守護の分国に所領が設定されることに加えて、荘園経営の安定化をもとめる京都の寺社・公家たちが、集い、こちらもやはり都鄙交通の拠点の一つになっていた。以上の点は、従来、禅僧の荘園経営の様子が古記録などから断片的に指摘されてきたが、本研究課題では、西山地蔵院文書をもとに、その具体相を詳細に解明できた点に特色があり、禅僧の活動が、単なる一寺院の動向というにとどまらず守護の創建禅院の禅僧という、この時代の政治史の問題とも密接に関わる動きでもあったことが明瞭になった。
著者
嶋野 法之 広永 美喜也
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

デジタルミュージアムは貴重な絵画を画像データベースとして蓄積し、画像をディスプレイ上にリアルに再現することを試みるものである。作品の印象は昼光や燭光など照明光の分光分布やその強度などの照明環境で大幅に変化する。このように多様な照明環境で人間が見た時の色彩を視覚系の色順応を考慮し画像再現する研究が極めて活発に行われている。本報告書では日本画、油彩画および水彩画の3種類の絵画の分光反射率を絵画を描くのに用いた色材の先験情報を用いずに画像データから正確に復元し、多様な照明環境の下で観察したときの美術作品の色彩を忠実にディスプレイ上に再現するための研究成果について述べる。
著者
今村 利香 高山 忠雄 峰 和治 山之上 卓 下園 幸一 中村 秀俊
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,半構造化面接法にて,DV被害者の実態調査,母子生活支援施設職員及び医療機関職員のDVに関する研修会受講状況と希望する研修について聴き取り調査を実施したほか,郵送調査にて,DV被害者支援を実施している全国の福祉・行政・医療機関のIT整備状況とeラーニング研修の取り組みに関する調査を実施した。その結果を基に,鹿児島県内の福祉・医療機関にてDV 被害者支援を実施している関係職員を対象に,集合研修及びMoodleを用いた研修を実施した。