著者
庄子 和博 後藤 英司 橋田 慎之介 後藤 文之 吉原 利一
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.107-113, 2010-06-01
被引用文献数
6 17

明期の青色光強度がアントシアニン蓄積に影響するかどうかを調べたところ, 明期の青色光量を増やすとアントシアニン蓄積は促進されるが, 処理20日目までは効果が持続しなかった. 次に, LEDランプを用いて連続光条件における赤色光と青色光の割合がアントシアニン蓄積に及ぼす影響を調べた結果, アントシアニン含量は青色光の割合が高まるほど大となることが示された. そこで, アントシアニン生合成の光質応答を分子レベルで理解するために, レッドリーフレタスから単離できたアントシアニンの生合成遺伝子群について(<i>CHS</i>, <i>F3H</i>, <i>DFR</i>, <i>ANS</i>, <i>UFGT</i> )リアルタイムPCR法で発現解析を実施した. その結果, R100区では5遺伝子とも発現は認められなかったが, B100区とR50B50区では<i>CHS</i>, <i>F3H</i>, <i>DFR</i>, <i>ANS</i> および<i>UFGT</i> の発現が4時間までに上昇し, 48時間では低下した. <i>F3H</i>, <i>DFR</i>, <i>ANS</i> の発現が24時間までに上昇し, 48時間では低下したが, <i>CHS</i> と<i>UFGT</i> の発現は大きく変化しなかった. これらの結果より, レッドリーフレタスの光質に対するアントシアニンの生合成や蓄積に関する制御機構には, 赤色光と青色光の割合が密接に関係していることが明らかとなり, 特に<i>CHS</i> と<i>UFGT</i> の発現が青色光のPPFレベルに敏感に応答しているものと考えられた.
著者
近藤 哲哉
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.315-321, 2012-04-01

10年間,線維筋痛症の治療を受けてきたが著明な改善がなく,週に12時間のパートタイム勤務しかできない患者の鍼治療を開始したところ,全身の痛覚過敏のため,ごく軽微な刺激に対しても著明な疼痛顕示行動がみられ,治療が困難であった.治療者と患者の間に,交流分析でいうところの「はい,でも」ゲームが展開していると考えられたため,患者を指圧して圧痛点などを探すという鍼灸治療に特異的な治療構造を生かしたところ,ゲームから脱却でき,併発する全身倦怠感などに対する治療が可能となった.その結果,圧痛が軽減し週に23時間の勤務が可能となった.疼痛顕示行動を呈する慢性疼痛の治療において鍼灸が非常に有効であると考えられたので報告する.
著者
田端 克至
出版者
二松學舎大学
雑誌
二松学舎大学国際政経論集 (ISSN:09193693)
巻号頁・発行日
no.13, pp.19-38, 2007-03

本論文では、マンデル・フレミングモデルの妥当性について検証した議論を整理し、実際に日本経済への応用を試みた。マンデル・フレミングモデルには、現実経済を説明するだけの有効性があると結論づけている。具体的には、BQ(Blanchard-Quah)法を用いて、この理論の妥当性を検証した。
著者
渡辺 誠衛 大野 剛 田口 隆信
出版者
秋田県総合食品研究所
雑誌
秋田県総合食品研究所報告 (ISSN:13453491)
巻号頁・発行日
no.9, pp.20-26, 2007
被引用文献数
4

「色は琥珀色、香りは果実・花様で、さわやかな酸味のファッショナブルでリーズナブルな日本酒」をコンセプトに、アルコール4?5%の新タイプの清酒の開発を目的とした。果実・花様の香りはρフルオロフェニルアラニン(FPA)耐性株からβフェネチルアルコール・酢酸βフェネチル高生産株を分離し、ほのかなバラ様の香りを付与した。さらに、その酵母からレプリカ法により、アルコール感受性酵母から低アルコール生成酵母を分離した。さわやかな酸味は、清酒製造場から分離した優良乳酸菌を利用し、琥珀色は85℃で処理した焙煎麹を用いた。また、トランスグルコシターゼ酵素を用いることにより、非発酵性オリゴ糖の含有量を高め、味にふくらみを付与することができた。試作品は、ほぼ目標の成分と酒質となり、新しいタイプの清酒の1つの製造方法として提示することができた。
著者
吉野 悦雄 ジャミヤン ガンバト
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.31-41, 2006-03-09

本稿ではモンゴルにおけるGDP計算方法の実態について分析する。モンゴル政府は,国民経済統計を市場経済体制に適応した統計制度に切り替えている。遊牧民の所得はGDPに計算されているが,ミルクなどの畜産物はその諸経費の把握が困難なためにGDPに計算されていない。また,法人企業のGDP計算はほぼ国連SNA基準に基づいて行われている。しかし,個人経営の商店やタクシー屋などの所得は測定できないがゆえに,GDP計算には算入されていない。
著者
福島 賢二
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-14, 2010-03-31

これまで教育における平等の議論は、「標準」と「異なっている(差異)」という理由で不利な扱いを受けてきた人への補償主義的な資源分配に基づいてなされてきた。しかしながら、こうした分配的正義は、既存の社会・文化と親和的な価値を再生産するというアポリアを抱えている。本稿では、マーサ・ミノウの「関係性」アプローチと竹内章郎の「共同性」論を対象として、分配的正義に内在する支配的価値の再生産構造とそこからの脱却的視座を得ることを目的とする。この検討を通じて、分配的正義が人々の「差異」を本質的・帰属的なものと同定していたことが明らかとなるだろう。これは、「差異」が社会的に構築されたものであるという視角から分配的正義を鍛え直す必要性を示唆するものである。
著者
大嶽 秀夫
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

行政改革は、「小さい政府」、「民間活力の応用」、「規制緩和」などをスロ-ガンとして行われたものである。ところが、その実施過程ならびに結果において、コ-ポラティスト的性格が強く現れるというパラドックスが見られた。例えば、電電公社の民営化を通じて、自由化や規制緩和が促進されたことは言うまでもないが、他方で、民営化の過程ならびにその結果において、コ-ポラティスト的特徴は一層強まった。第一に、全電通は、電電三法の国会審議に対し、総力を挙げて圧力行使を行ったが、その過程で従来からの社会党を介した影響力のチャネルばかりでなく、自民党との直接の接触のル-トを開拓、利用した。全電通が、単なる労働条件や雇用の問題を超えて、産業政策についての自らの主張を確立し、それを代表させるチャネルを確立していったという意味で、(メゾ)コ-ポラティズムへの一歩であるといってよい。また、自民党の側も、それまでの労働組合(特に総評系労組)の政治参加のアクセスを拒否する態度から、政治参加を容認、奨励するあり方へ転換した。転換した。この意味でも、日本政治が、行政改革を通じてコ-ポラティズムに一層近付いたと解することができる。他方、経営との関係でも、全電通は、民営化に関して経営者との利害を一致させ、むしろ積極的に民営化を推進したと言って過言ではない。全電通の主張は、経営側とほとんど同じものであり、いわば経営側の尖兵として政治活動を行ったのである。この(ミクロ)レベルでも、自由主義的改革は、コ-ポラティズム的労使協調を一層促進させたのである。また、電電公社の民営化は、一人の解雇者も出さずに実現された。実は、カッツェンシュテインの分析したスイスやオ-ストリアの例が示すように、(国際的)自由化は、国内のコ-ポラティズムを生み出す基礎たりうるのであり、この例と比較すれば、日本が特に特異な構造を示しているというわけではない。「国益」ないしは「企業の利益」という観点が貫徹すれば、国際市場、国内市場における競争のために労使が協力するのは当然のことであるからである。この観点に立てば、ミクロ・レベルのコ-ポラティズムが自由主義的改革によって一層進行したことは何等驚くべきことではない。
著者
大嶽 秀夫
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究は, 戦後日本と西ドイツの防衛政策の展開を, アメリカ政府の軍事政策との関連を一つの焦点におきながら研究する計画の一環である. 二年度にわたる今回の研究では, 両国の再軍備とその展開過程を実証的に分析し, 相互に比較することが中心となった. とくに, 日本の再軍備に関しては, インタビューや資料発掘を通じて, これまで明きらかにされていなかった再軍備政策の様々な側面が解明できたと考える. 報告諸第一部では, その成果として, 一九五〇年七月のいわゆるマッカーサー指令の背景はなんであったか, それが日本政府にいかに受け取られたか, また, マッカーサーや吉田の長期的再軍備構想はいかなるものであったか, その構想が警察予備隊から保安庁へ改組にどう実現したか, などを明らかにした. さらに, 第二部では, これまで研究者に利用されたことのない山本善雄文書を主として使いながら, 旧海軍グループが海上自衛隊の再建にいかなる役割を演じたかを詳細に検討した. 続いて第三部では, 保守党政治家による積極的再軍備論の主張の登場の背景とその展開を分析した. ここでは, とくに芦田, 石橋, 鳩山などいわゆる「リベラリスト」がなぜ, 再軍備論を通じて日本政治の最右翼に位置することになったかを詳しく検討した. ついで, 野党, 即ち日本社会党とドツ社会民主党の再軍備政策の比較を研究成果としてとりまとめた. 即ち, 第四部では, 一九五〇年代におけるドイツ社会民主党の防衛, 経済政策上の「転換」を日本社会党との比較を通じて検討した. さらに, 第五部では, 日本の右派社会主義者の防衛論を検討し, 西ドイツと同様の「転換」に失敗したのはなぜかを分析した. 以上のことから明らかなように, 本研究は, もう一つの特色として, 再軍備を単なる防衛政策の問題としてではなく, 広い政治対立の一側面としてとらえ, その対立のイデオロギー的, 政治文化的背景を検討したところに特徴があろう.
著者
佐々木 憲介
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.105-125, 2001-12-11

経済学における理論派と歴史派との論争といえば、オーストリア学派の創始者C.メンガーとドイツ歴史学派の総帥G.シュモラーとの間に起こった「方法論争」が有名であるが、実は類似の性格をもった論争が、攻守所を変えて、イギリスでも行われていた。ジョン・ケルズ・イングラム(John Kells Ingram, 1823-1907)は、イギリスにおける方法論争の重要な一翼を担った人物であり、オーギュスト・コントの観点から古典派経済学を批判した人物であった。イングラムは、歴史的方法が理論的方法に取って代わらなければならないと主張し、その歴史的方法によって、歴史の一般的法則を探究しようとした。イングラムはまた、経済学史に関する該博な知識に基づいて、歴史学派運動の経済学史上の意義を明らかにしようとした。つまり、もともと統一されていた社会諸科学の研究から、経済学がいったん部分学として分化し、それが再び統合されるべき時期にきていること、政治的束縛から産業活動を解放した経済的自由主義が、自由な活動ゆえの弊害を生み出し、それを解決するための社会改良が必要な時期にきていること、これらの事情を背景として歴史学派が成長してきたというのである。さらに、歴史学派運動の現在の中心地はドイツであるが、ドイツ歴史学派に先立ってコントとリチャード・ジョーンズとが歴史学派の観点を提示していたとし、イギリス歴史学派の運動もドイツの亜流ではないということを強調した。
著者
藤本 大三郎
出版者
社団法人日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.284-287, 1986-08-20
著者
久留島 典子 林 譲 本郷 恵子 柴山 守 有川 正俊 山口 英男 遠藤 基郎 木村 直樹 山家 浩樹 馬場 基 山田 太造 近藤 成一 小宮 木代良 古瀬 蔵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

前年度に引き続き東大史料編纂所歴史情報システム(以下、SHIPSと略記)が擁するDB群から、各DBに格納された人物情報を抽出し、人物情報レポジトリへとデータ移行を推進した。レポジトリへ移行を可能とするDB数もさらに2つ増加し、計19種へと拡大することで、総登録データ数は約42万件に達した。前近代における人物情報を総覧する環境が整いつつあり、これを軸として、地理情報・史料典拠情報・史料目録情報といった情報との連接を視野に入れたところである。SHIPS-DBから人物情報レポジトリを参照・応答するAPIについては、前年度に構築したシステムを基盤として、より詳細な応答を実現するモジュールを「新花押データベース」内に実装した。花押を記した人物を比定するために、随意にレポジトリ参照が可能となったことは、より正確な情報蓄積を進めるうえで極めて有効と言ってよい。また人物レポジトリを直接検索するためのインターフェイス(「人名典拠サービスモジュール」)が安定的に運用されるに至り、多様な検索に応答しうる環境が整備されつつある。蓄積データのシームレスな運用という観点からは、前年度に引き続き、人物情報レポジトリ総体のRDFストア化を推進し、検索結果をRDF形式で出力するためのAPIの安定運用を実践することで、オープンデータ環境への移行を目指した。地理情報レポジトリについては、外部参照用APIの運用を開始し、国立歴史民俗博物館の「荘園データベース」との連携を実現した。
著者
高野 勇介 麻生 敏正 長谷川 孝明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.171, pp.67-72, 2008-07-21
被引用文献数
4

本稿では,国道463号線の実道調査結果に基づいて,信号制御評価用シミュレータを拡張した上,高度デマンド信号制御II方式(Advanced Demand Signals-II Scheme; ADS-II方式)の性能評価を行っている.まず国道463号線の一部区間のモデル化とシミュレーションに用いるデータ取得のために実道調査を行う.つぎに調査データに基づき国道463号線の道路構造と系統制御方式をモデル化し,従来の評価用シミュレータに導入する,さらに評価用シミュレータを用いて国道463号線の系統制御方式とADS-II方式の性能比較を行い,ADS-II方式が系統制御方式に比べ,一人当たりの平均アイドリング時間が午前4時台(閑散時に相当)では約70%,午前7時台(混雑時に相当)では約60%削減されることを示している.
著者
大杉 功 加藤 雅彦 米田 征司
出版者
サレジオ工業高等専門学校
雑誌
サレジオ工業高等専門学校研究紀要 (ISSN:18812538)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.73-76, 2009

Experiment was made on temperature dependence of the crystal structure of bismuth telluride, which has recently been investigated as a thermoelectric energy conversion material as well as an electronic cooling material. The crystal lattice parameters estimated from the powder X-ray diffraction profiles increasedmonotonously at low temperatures below 350 °C, while they abruptly changed and some other profiles than those of the telluride appeared at 400°C. The result of this experiment suggested that the crystal lattice is normally expanded at low temperatures below 350°C, while it is abruptly changed by dissociation andsublimation of the elements and some other substances such as oxides are composed at 400°C.
著者
籠嶋 岳彦 赤嶺 政巳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.1405-1411, 2000-06-25
被引用文献数
18

本論文では, ピッチ周期の変更によるひずみを考慮して, 生成された合成音のひずみが最小になるような音声素片を解析的に生成する方法を提案する.本方式では, 音声素片を用いて合成された音声のひずみを表す評価関数を定義し, この評価関数を最小化するような音声素片を解析的に求めることによって音声素片を生成する.評価関数は, 合成音声と自然音声の波形の2乗誤差によって定義され, 音声データベースより切り出された, 様々な基本周波数の多数の音声セグメントを, 学習のトレーニングベクトルとして用いる.合成器による処理を経て得られる合成音声のひずみを評価し, 音声素片の生成にフィードバックすることから, ここでは本方式を閉ループ学習に基づく解析的生成法と呼ぶ.diphoneを合成単位とする合成器の音声素片を生成する実験を行い, 提案法によって合成音声のひずみが減少し, 合成音声の主観的な品質が向上することを示す.